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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1185320
審判番号 不服2005-17862  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-15 
確定日 2008-10-01 
事件の表示 特願2002-230670「外国文の表現指導表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 70091〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成14年8月7日の出願であって、平成17年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明は、平成17年7月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「外国語の文章に沿って、当該文章を読む際の抑揚に応じた高低の波線を表記しておき、該波線に従って抑揚をつけて読めるようにしたことを特徴とする外国文の表現指導表示方法。」

2.特許法第29条柱書きについて
以下、本願発明は、特許法第2条にいう発明に相当するか否かについて検討する。

特許法は、「発明」について、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義し(特許法第2条第1項)、また、「産業上利用することができる発明」に対して、所定の要件を充足した場合に、特許を受けることができると規定する(同法第29条第1項)。
したがって、たとえ技術的思想の創作であったとしても、その思想が、専ら、人間の精神的活動を介在させた原理や法則、社会科学上の原理や法則、人為的な取り決めを利用したものである場合には特許を受けることができない。この点は、技術的思想の創作中に、自然法則を利用した部分が全く含まれない場合はいうまでもないが、仮に、自然法則を利用した部分が含まれていても、ごく些細な部分のみに含まれているだけで、技術的な意味を持たないような場合も、同様に、特許を受けることができないというべきである。
そこで、本願発明について検討する。
本願発明は、「外国文の表現指導表示方法」に係るものであり、本願発明の「外国語の文章に沿って、当該文章を読む際の抑揚に応じた高低の波線を表記しておき、該波線に従って抑揚をつけて読めるようにした」は、外国文の表現指導表示方法を規定するものである。そうすると、本願発明は特定の表示内容を有する外国文の表現指導表示方法と認められる。
「表記しておき」という記載から紙等の記録媒体に表記されていることは明らかであり、記録媒体そのものが自然法則を利用して作られた生産物であるとしても、記録媒体そのものは、例示するまでもなく周知のものであるから、本願発明の創作的特徴は外国文の表現指導表示方法の表記内容そのものといえる。
外国文の表現指導表示方法の表記内容そのものは、人間の精神活動又は人為的な取り決めを利用したものを対象とする創作であり、自然法則を利用した創作ということはできない。本願発明においては、創作的部分に自然法則が利用されておらず、単に既存の自然法則を利用した技術により創作されたものが一部利用されているだけにすぎない。

よって、本願発明に記載された事項は、「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しないから、同項の規定により特許をすることができない。

3.進歩性について
上記に検討したように、本願発明は特許法にいう発明とはいえないものであるが、仮に本願発明が発明であるとの仮定に立った上で、新規性或いは進歩性を備えたものかについても検討する。

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特公平6-25905号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.「音声の時系列情報および上記音声の時系列情報に対応する文字情報を記憶している記憶装置と、上記音声の時系列情報と上記文字情報を対応づける音声・文字対応装置と、上記音声の時系列情報を音声に変換しかつ出力する音声出力装置と、上記音声の時系列情報から単位時間毎の音声特徴量を抽出する音声特徴抽出装置と、カラー表示を行なうカラー表示装置とを具備し、上記音声の時系列情報と上記文字情報は上記音声・文字対応装置によって予め逐一対応づけられて記憶させておき、上記文字情報を意味上および発音上の区切り毎に色分けして上記カラー表示装置に表示し、かつ上記文字情報に対応し、上記音声特徴抽出装置によって抽出された上記単位時間毎の音声特徴量も同一の色で色分けして、同時に上記カラー表示装置に表示することを特徴とする発音練習装置。」(請求項1)
イ.「しかしながら、上記のような構成においては文字情報と音声特徴量が逐一対応しないので、単位時間毎の音声特徴量を表示しているにもかかわらず、どの文字に対応するかわからないという問題点を有していた。
発明の目的
本発明の目的は文字情報と単位時間毎の音声特徴量の対応をわかりやすいように表示することを可能とする発音練習装置を提供することである。」(第2ページ第3欄第39?46行目)
ウ.「第2図において5は音声の時系列情報および上記音声の時系列情報に対応する文字情報を記憶している記憶装置、6は上記音声の時系列情報と上記文字情報を対応づける音声・文字対応装置、7は上記音声の時系列情報を音声に変換しかつ出力する音声出力装置、8は上記音声の時系列情報から単位時間毎に音声特徴量である振幅およびピッチを抽出する音声特徴抽出装置、9はカラー表示を行なうカラー表示装置である。
第3図は本発明の一実施例における発音練習装置のカラー表示装置の正面図を示すものである。
以上のように構成された本実施例の発音練習装置について以下その動作を説明する。まず、記憶装置5に記憶されている音声の時系列情報は、音声出力装置7によって音声に変換されかつ出力されるとともに、音声特徴抽出装置8によって単位時間毎の振幅とピッチを抽出される。上記音声の時系列情報と上記文字情報は音声・文字対応装置6によって予め逐一対応づけられているので、上記音声特徴抽出装置8によって抽出された音声特徴量である単位時間毎の振幅とピッチも上記文字情報に逐一対応づけられる。上記文字情報を意味上および発音上の区切り毎に色分けし、かつ上記文字情報に対応する振幅とピッチも同一の色で色分けして、同時に第3図のようにカラー表示装置9に表示する。
以上のように本実施例によれば、カラー表示装置を具備し、音声の時系列情報および上記音声の時系列情報に対応する文字情報を音声・文字対応装置によって予め逐一対応づけて記憶し、文字情報と音声特徴量を対応づけて色分け表示を行なうことにより、文字と音声特徴量がわかりやすい発音練習装置を実現している。」(第2ページ第4欄第40行目?第3ページ第5欄第19行目)
エ.「発明の効果
以上の説明から明らかなように、本発明は音声の時系列情報および上記音声の時系列情報に対応する文字情報を記憶している記憶装置と、音声の時系列情報と文字情報を対応づける音声・文字対応装置と音声の時系列情報を音声に変換しかつ出力する音声出力装置と、音声の時系列情報から単位時間毎の音声特徴量を抽出する音声特徴抽出装置と、カラー表示を行なうカラー表示装置とで構成し、音声の時系列情報と文字情報は上記音声・文字対応装置によって予め逐一対応づけられて記憶されているので、音声特徴抽出装置によって抽出された単位時間毎の音声特徴量と文字情報も逐一対応づけられ、対応する音声特徴量と文字は同じ色で色ぬりされてカラー表示装置に表示されるので、各々の文字に対応する音声特徴量がどのようになっているかを目で確認することができ、学習者が発音する際に、単に正しい発音を聞くだけよりも、優れた学習効果が得られる。」(第3ページ第6欄第30?46行目)
カ.【第3図】より、英語の文章が記載され、その下に、英文に対応した抑揚が、四角形の要素の高さ方向の位置により表示されていることが看取できる。

この記載事項を含む刊行物全体の記載によると、刊行物には「英語の文章に沿って、当該文章を読む際の抑揚に応じた高低を示す四角形の要素の高さ方向の位置による表示が行われ、該表示に従って抑揚をつけて読めるようにした英文の表現指導表示方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「英語の文章」、「英語」は、それぞれ本願発明の「外国語の文章」、「外国語」に包含される。
引用発明の「文章を読む際の抑揚に応じた高低を示す四角形の要素の高さ方向の位置」と本願発明の「文章を読む際の抑揚に応じた高低の波線」は「文章を読む際の抑揚に応じた印」の点で共通し、引用発明の「表示が行われ」と、本願発明の「表記しておき」は「示される」点で共通する。

<一致点>
「外国語の文章に沿って、当該文章を読む際の抑揚に応じた印を示し、該印に従って抑揚をつけて読めるようにした外国文の表現指導表示方法。」
<相違点>
本願発明では、「文章を読む際の抑揚に応じた印」を「示し」たものが、「文章を読む際の抑揚に応じた高低の波線」を「表記しておく」のに対し、引用発明ではそのような特定がされたものではない点。

(3)相違点についての検討
<相違点>について検討する。
「文章を読む際の抑揚に応じた印」をどのようにするかは、当業者が必要に応じ適宜設計するものであって、例えば引用発明に示された「文章を読む際の抑揚に応じた高低を示す四角形の要素」の高さ方向の位置を、わかりやすく表現するためになめらかな線で結ぶことにより高低の波線とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
また、文章を読む際の抑揚に応じた印を示すにあたり、引用発明は、「文章を読む際の抑揚に応じた印」である音声情報から抽出されたピッチ(抑揚)を、文章がカラー表示装置上に表示されると同時に表示する点で、文章を読む際の抑揚に応じた高低の波線を予め「表記して」おく本願発明と相違する。しかしながら、外国文の表現指導表示方法として、文章を読む際の約束事を予め表記しておくものは、例えば特開平5-289607号公報(【0012】?【0015】、【図1】)等に示されるように周知であるから、引用発明における「文章を読む際の抑揚に応じた印」を、予め表記したものとすることも、当業者であれば容易に想到し得る事項である。

以上のとおり、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
そして、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、産業上利用することができる発明であるとは認められないから、特許法第29条柱書きに該当せず、仮に、本願発明が特許法上の発明であるとしても刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-23 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-18 
出願番号 特願2002-230670(P2002-230670)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
P 1 8・ 14- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 酒井 進
七字 ひろみ
発明の名称 外国文の表現指導表示方法  
代理人 福島 康文  

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