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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1185481
審判番号 不服2005-21367  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-04 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 平成 9年特許願第177349号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月26日出願公開、特開平11-19301〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年7月2日の出願であって、平成16年10月25日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで手続補正がなされ、平成17年4月4日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年6月10日付けで手続補正がなされ、同年9月28日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がなされ、これに対し同年11月4日に拒絶査定不服審判が請求され、同月30日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
平成17年11月30日付けの手続補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 遊技域中に設けられ、第1の表示画面を備える第1の表示装置と、
前記遊技域中に設けられ、前記第1の表示画面とは別な内容の表示を行う第2の表示画面を備える第2の表示装置と、
前記第1の表示画面に表示する図柄を予め定められた順序に従って連続的に変更する変動表示を行った後、該変動表示を停止させて前記図柄の中から1つの停止図柄を明示する表示制御手段と、
前記停止図柄として当り図柄が明示された場合に、特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
前記第1の表示画面での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき、前記第2の表示画面に複数の図柄を同時に表示し、該第2の表示画面に表示される該図柄を予め定めた順列に従って順次表示する手段と、
前記同時に表示される複数の図柄に、同一の図柄を含ませる手段と、
前記第2の表示画面に表示されている図柄に基づいて、前記特別遊技実行手段による特別遊技の実行の決定を行わせる手段と
を備えることを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】
乱数を発生する乱数発生手段と、
前記乱数発生手段が発生した乱数に応じて、変動表示する図柄の順番を様々に変更した差替順列を作成する順列作成手段と、
前記第2の表示画面に表示される図柄を、前記予め定めた順列に代えて、前記順列作成手段にて作成された差替順列にする手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項3】
前記第2の表示画面に表示される図柄を、前記予め定めた順列に代えて、当り図柄を他の図柄よりも多く含めた差替順列にする特定図柄表示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項4】
変動表示する図柄の順番を定めた差替順列を複数用意する手段と、
前記第2の表示画面に表示される図柄を、前記予め定めた順列に代えて、前記差替順列の何れかにする図柄順列差替手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項5】
前記予め定めた順列のうち一部分を抽出し、該抽出した部分に代えて、当り図柄を含む差替順列を設定する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項6】
前記第1の表示装置、又は第2の表示装置は、液晶表示装置、LED表示装置、又はマトリックス表示装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のパチンコ機。」から、

「【請求項1】 遊技域中に設けられ、第1の表示画面を備える第1の表示装置と、
前記遊技域中に設けられ、前記第1の表示画面がリーチ状態である場合用の内容の表示を行う第2の表示画面を備える第2の表示装置と、
前記第1の表示画面に表示する図柄を予め定められた順序に従って連続的に変更する変動表示を行った後、該変動表示を停止させて前記図柄の中から1つの停止図柄を明示する表示制御手段と、
前記停止図柄として当り図柄が前記第1の表示画面に明示された場合に、特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
前記第1の表示画面での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき、前記第1の表示画面で変動表示中の図柄の表示をやめて、前記第2の表示画面に複数の図柄を同時に表示し、該第2の表示画面に表示される該図柄を予め定めた順列に従って順次表示した後に、該第2の表示画面に表示される該図柄の何れかを次々に明示後、該明示を停止する手段と、
前記同時に表示される複数の図柄に、同一の図柄を含ませる手段と、
前記明示を停止する手段が、前記図柄の明示を停止したときに、該明示されていた該図柄を、前記第1の表示画面で表示をやめた前記図柄の代わりに、該第1の表示画面に表示して、停止図柄として明示し、該第1の表示画面の停止図柄の明示に基づいて、前記特別遊技実行手段による特別遊技の実行の決定を行わせる手段と
を備えることを特徴とするパチンコ機。」
へと補正された。(下線部が本件補正により追加又は変更された箇所。)

本件補正は、上記最後の拒絶理由の指摘に対して「前記第1の表示画面とは別な内容の表示を行う第2の表示画面」を「前記第1の表示画面がリーチ状態である場合用の内容の表示を行う第2の表示画面」として、「別な内容の表示」がどのような表示かをより明確にし、
同じく「当り図柄が明示された場合に、特別遊技を実行する」を「当り図柄が前記第1の表示画面に明示された場合に、特別遊技を実行する」として、当り図柄がどこに明示された場合に特別遊技を実行するのかをより明確にし、
本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の表示画面」について、リーチ状態であるとき、「変動表示中の図柄の表示をやめ」という限定事項を付加し、
同じく「第2の表示画面」について、複数の図柄を「順次表示した後に、該第2の表示画面に表示される該図柄の何れかを次々に明示後、該明示を停止」するという限定事項を付加し、
同じく「特別遊技実行手段による特別遊技の実行の決定を行わせる手段」について、「前記明示を停止する手段が、前記図柄の明示を停止したときに、該明示されていた該図柄を、前記第1の表示画面で表示をやめた前記図柄の代わりに、該第1の表示画面に表示して、停止図柄として明示し、該第1の表示画面の停止図柄の明示に基づいて」決定を行わせるものである旨の限定事項を付加し、
さらに、本件補正前の請求項2?6を削除するものであって、
平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、同項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-117407号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、
「【0011】そして、本発明の目的とするところは、表示器における図柄がリーチ目となったとき、それまでの通常画面に代えて特別画面を現出させて、この特別画面において用意しておいた図柄の全てを表示するとともに、この図柄の内のどれが選択されるのかを表示することにより、液晶モニター等の表示器のメリットを十分生かすことができて、しかも遊技者に不安を与えないで興趣の維持を常に新鮮な状態で行うことのできる遊技機を提供することにある。
【0015】・・・以下に示す実施例では、通常画面11aと特別画面11bとの連続性をもたせるために、左及び中の表示箇所12L及び12Cが同一の図柄20を表示したとき、各表示箇所12L、12C、及び12Rが段階的に縮小されながら通常画面11a上を隅の方に移動するとともに、変更された特別画面11b上にも表示されるものである。
【0018】また、図3に示す実施例では、図3の(イ)に示すように、左及び中の表示箇所12L、及び12Cにおいてリーチ目が生じたときに、図3の(ロ)に示したような特別画面11bに直ちに切り換わるのである。この特別画面11bにおいては、全ての種類の図柄20が図柄枠22上に固定的に表示してあって、この図柄枠22上を当りキャラクター22aが順に移動していくように表示されるものである。そして、この当りキャラクター22aが各図柄20のどこで停止するか、あるいはどの図柄20を食べるかによって、図3の(イ)に示した右表示箇所12Rにおける図柄20の決定がなされるのである。・・・
【0021】図1には本発明に係るパチンコ機100の正面図が示してあり、このパチンコ機100は、その遊技盤の前面に略円状に設けた誘導レールによって区画された遊技領域を有していて、この遊技領域の略中央に、画像表示装置10を構成している液晶モニター等の表示器11を配置して、その画面を遊技盤の前面から見えるようにしたものである。また、このパチンコ機100は、その遊技領域内に少なくとも1個の始動入賞口41を有していて、この始動入賞口41内に配置した始動入賞玉検出スイッチ41aからの信号によって後述する制御回路30を作動させるものであり、これにより画像表示装置10の表示器11において大当り図柄が表示されたとき、遊技領域の下方部分に設けたアタッカー42を開放して大当り遊技状態を現出させるようにしたものである。
【0024】さて、このパチンコ機100の前面から見える表示器11は、図2または図3に示したように、通常は図2または図3の各(イ)にて示した3個(左、中、及び右)の表示箇所12L、12C、及び12Rを表示する通常画面11aと、この通常画面11aにおいてリーチ目が表示された後に通常画面11aに代わって表示される特別画面11bとを表示する機構を有しているものであり、後述する画像表示装置10によって制御されるものである。なお、この表示器11は、遊技盤の表面に取付られる取付基板を有し、この取付基板には略長方形状の表示窓が開設されていて、この表示窓に液晶モニターである当該表示器11が臨むようにしてあるものである。
【0029】ところで、通常画面11aの各表示箇所12L、12C及び12Rにおいては、図2または図3の各(ロ)において示したような全ての図柄20が垂直方向に上から下に向かってスクロールするように表示されるものであり、そのスクロール表示開始は前述した始動入賞口41に入賞玉が入ったとき、あるいは始動記憶ランプの1個消灯時になされるものである。・・・なお、3つ全ての表示箇所12L、12C及び12Rにおいて停止表示された図柄20が、予め設定された大当り図柄(本実施例では全て同じ図柄20となった場合)以外のものに表示されたときは、その回はハズレまたは中当りとされるものであって、アタッカー42の開放操作がなされないか、あるいはその開放が大当りの場合よりも制限されて操作されることはいうまでもない。
【0031】図3の(ロ)に示した特別画面11bでは、全ての図柄20を一つの図柄枠22内で固定的に表示するようにしており、この図柄枠22内の各図柄20上を当りキャラクター22aが動き回るように表示するものである。そして、この当りキャラクター22aは図柄枠22上の所定位置に停止するか、あるいはその場所の図柄20を食べるように表示することによって、右表示箇所12Rにおいて表示すべく選択される図柄20を選択するものである。」
との記載が認められ、
摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、
「 遊技領域の略中央に表示器11を配置し、該表示器11は、3個の表示箇所12L、12C及び12Rを表示する通常画面11aと、この通常画面11aにおいてリーチ目が表示された後に通常画面11aに代わって表示される特別画面11bとを表示する機構を有し、
前記通常画面11aの各表示箇所12L、12C及び12Rにおいては、全ての図柄20が垂直方向に上から下に向かってスクロールするように表示された後、3つ全ての表示箇所12L、12C及び12Rにおいて図柄20が停止表示され、
該停止表示された図柄20が予め設定された大当り図柄に表示されたとき、遊技領域の下方部分に設けたアタッカー42を開放して大当り遊技状態を現出させ、
前記通常画面11aの左及び中の表示箇所12L及び12Cにおいてリーチ目が生じたとき、前記特別画面11bに直ちに切り換わり、該特別画面11bにおいては、各表示箇所12L、12C、及び12Rが縮小表示されるとともに全ての種類の図柄20が図柄枠22上に固定的に表示してあって、この図柄枠22上を当りキャラクター22aが順に移動していくように表示され、該当りキャラクター22aを前記図柄枠22上の所定位置に停止させ、
前記当りキャラクター22aが図柄枠22上の所定位置に停止することによって選択した図柄20を右表示箇所12Rにおいて表示し、前記停止表示された図柄20が予め設定された大当り図柄以外のものに表示されたときはその回はハズレまたは中当りとされ、大当り図柄が表示されたときは遊技領域の下方部分に設けたアタッカー42を開放して大当り遊技状態を現出させる
パチンコ機100。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「遊技領域の略中央に」は、本願補正発明の「遊技域中に」に相当し、以下同様に、
「配置し」は「設けられ」に、
「3個の表示箇所12L、12C及び12Rを表示する通常画面11a」は「第1の表示画面」に、
「全ての図柄20が垂直方向に上から下に向かってスクロールするように表示された後」は「表示する図柄を予め定められた順序に従って連続的に変更する変動表示を行った後」に、
「3つ全ての表示箇所12L、12C及び12Rにおいて図柄20が停止表示」は「変動表示を停止させて前記図柄の中から1つの停止図柄を明示」に、
「停止表示された図柄20が予め設定された大当り図柄に表示されたとき」は「停止図柄として当り図柄が前記第1の表示画面に明示された場合に」に、
「遊技領域の下方部分に設けたアタッカー42を開放して大当り遊技状態を現出」は「特別遊技を実行」に、
「通常画面11aの左及び中の表示箇所12L及び12Cにおいてリーチ目が生じたとき」は「第1の表示画面での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき」に、
「全ての種類の図柄20が図柄枠22上に固定的に表示してあって」は「複数の図柄を同時に表示し、該第2の表示画面に表示される該図柄を予め定めた順列に従って順次表示した後に」に、
「この図柄枠22上を当りキャラクター22aが順に移動していくように表示され」は「該第2の表示画面に表示される該図柄の何れかを次々に明示後」に、
「該当りキャラクター22aを前記図柄枠22上の所定位置に停止」は「該明示を停止」に、
「前記当りキャラクター22aが図柄枠22上の所定位置に停止することによって選択した図柄20」は「前記明示を停止する手段が、前記図柄の明示を停止したときに、該明示されていた該図柄」に、
「右表示箇所12Rにおいて表示し」は「第1の表示画面に表示して、停止図柄として明示し」に、
「パチンコ機100」は「パチンコ機」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献1の記載からみて、以下のことが言える。なお、この項において山括弧内の記載は、相当する本願補正発明の構成を示す。

a.引用発明の「特別画面11b」は、通常画面11a<第1の表示画面>においてリーチ目が表示された後に通常画面11aに代わって表示されるものであるから、本願補正発明の「第1の表示画面がリーチ状態である場合用の内容の表示を行う第2の表示画面」に相当するものといえる。
よって、引用発明の「特別画面11bにおいては」は、本願補正発明の「第2の表示画面に」に相当する。

b.引用発明における「通常画面11a」<第1の表示画面>及び「特別画面11b」<第1の表示画面がリーチ状態である場合用の内容の表示を行う第2の表示画面>を表示する表示器11と、本願補正発明における「第1の表示画面を備える第1の表示装置」及び「第1の表示画面がリーチ状態である場合用の内容の表示を行う第2の表示画面を備える第2の表示装置」とは、第1の表示画面及び第1の表示画面がリーチ状態である場合用の内容の表示を行う第2の表示画面を出す表示装置である点で共通している。

c.引用発明において、図柄20をスクロール表示させたり停止表示させたりするための表示制御手段、大当り遊技状態を現出させるための大当り遊技実行手段<特別遊技実行手段>、特別画面11bにおいて図柄20、図柄枠22、当りキャラクター22aを表示し、該当りキャラクター22aを停止する手段を備えていることは明らかである。

d.引用発明における「停止表示された図柄20が予め設定された大当り図柄以外のものに表示されたときはその回はハズレまたは中当りとされ、大当り図柄が表示されたときは遊技領域の下方部分に設けたアタッカー42を開放して大当り遊技状態を現出させる」ことは、停止表示された図柄20に基づいて、大当り遊技(特別遊技)を実行するか否かを決めていることにほかならないから、引用発明は、実質的に本願補正発明の「第1の表示画面の停止図柄の明示に基づいて、前記特別遊技実行手段による特別遊技の実行の決定を行わせる手段」を備えているということができる。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技域中に設けられ、第1の表示画面及び第1の表示画面がリーチ状態である場合用の内容の表示を行う第2の表示画面を出す表示装置と、
前記第1の表示画面に表示する図柄を予め定められた順序に従って連続的に変更する変動表示を行った後、該変動表示を停止させて前記図柄の中から1つの停止図柄を明示する表示制御手段と、
前記停止図柄として当り図柄が前記第1の表示画面に明示された場合に、特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
前記第1の表示画面での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき、前記第2の表示画面に複数の図柄を同時に表示し、該第2の表示画面に表示される該図柄を予め定めた順列に従って順次表示した後に、該第2の表示画面に表示される該図柄の何れかを次々に明示後、該明示を停止する手段と、
前記明示を停止する手段が、前記図柄の明示を停止したときに、該明示されていた該図柄を、該第1の表示画面に表示して、停止図柄として明示し、該第1の表示画面の停止図柄の明示に基づいて、前記特別遊技実行手段による特別遊技の実行の決定を行わせる手段と
を備えるパチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、「第1の表示画面を備える第1の表示装置」と「第2の表示画面を備える第2の表示装置」を備えているのに対し、引用発明では、1つの表示器11が「通常画面11a」<第1の表示画面>と「特別画面11b」<第2の表示画面>とを表示する機構を有している点。

[相違点2]
本願補正発明は、リーチ状態であるとき、前記第1の表示画面で変動表示中の図柄の表示をやめ、第2の表示画面に表示される図柄の明示を停止したときに、該明示されていた該図柄を、該第1の表示画面に表示するのに対し、引用発明では、リーチ目が生じたときの表示箇所12Rの図柄20の表示状態が明らかでない点。

[相違点3]
本願補正発明は、同時に表示される複数の図柄に、同一の図柄を含ませる手段を備えているのに対し、引用発明は、その様な手段を備えていない点。

(4)判断
[相違点1について]
2つの異なる画面を表示する際に、2つの表示装置を用いて表示したり、1つの表示装置に2つの分割画面を固定的に設けて表示したりすることは、例えば、特開平8-117416号公報(特に、請求項1、段落0051及び図1)、特開平8-117415号公報(特に、段落0018及び図62)及び特開平8-141170号公報(特に、請求項5及び段落0006)に記載されているように、従来パチンコ機の分野において普通に行われており、一般的にも2つの異なる画面を表示する際に、1つの表示装置を用いて適時に切り替えて表示したり、1つの表示装置に2つの分割画面を設けて表示したり、2つの表示装置を用いて表示したりすることが良く知られている。
そして、引用発明のように「表示器11」に通常画面11a及び特別画面11bのいずれかを切り換えて表示するか、本願補正発明のように「第1の表示装置」及び「第2の表示装置」に各々第1の表示画面及び第2の表示画面を表示するかによって奏せられる効果が格別異なるということもないから、相違点1に係る本願補正発明の構成は、パチンコ機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得るものである。
請求人は、2表示装置によれば視線を移動させることができ、これと同様の視線移動を1つの表示装置で提供しようとすると極めて大きな表示装置を用いなければならない旨主張している(請求の理由【本願発明が特許されるべき理由】(4)の項)。
しかし、本願明細書の発明の詳細な説明に「【0088】尚、上記実施例では、表示枠54及び第1?第3図柄表示窓を1つの液晶画面5に表示しているが、表示枠54と第1?第3図柄表示窓とを別々の液晶画面に表示してもよい。」と記載されているように、実施例においては表示装置である液晶画面は1つであり、別々の液晶画面にした場合の画面配置や視線移動については、明細書や図面には記載されていないから、請求人の上記主張は特許請求の範囲や発明の詳細な説明等の記載に基づかない主張である。

[相違点2ついて]
引用文献1の図3(イ)(ロ)では、リーチ目が生じたときの表示箇所12Rには「?」が表示されている。また、引用発明の特別画面11bにおいては、各表示箇所12L、12C及び12Rが縮小表示されるとともに表示箇所12Rのスクロール表示に代わる表示が主としてされているのであるから、遊技者は通常、特別画面の当りキャラクター22aに注目することが明らかである。
そして、パチンコ機の分野では制御負担の軽減を考慮することが常であるから、引用発明において遊技者が注目しない表示箇所12Rのスクロール表示をやめることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、特別画面11bにおいて図柄20が選択された後においては、遊技者が大当り図柄の確認を行おうとすることも明らかであるから、当業者であれば、選択した図柄20の右表示箇所12Rへの表示までやめてしまうことは、通常行わないはずである。

[相違点3について]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-252367号公報(以下「引用文献2」という。)には、リーチが成立している場合におけるFの変動パターンではスクロール表示される図柄にリーチが成立している図柄と同じ種類の図柄を追加したり、リーチが成立している図柄以外の種類の図柄を前記同じ種類の図柄に変更する制御がなされる点が記載されている(特に、段落0139を参照)。
また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-122320号公報(以下「引用文献3」という。)には、リーチ状態で回転する「中の図柄リール7r」について、算用数字の図柄の「7」の1コマ上の「☆」の図柄をもう1つの算用数字の図柄の「7」に入れ替え、さらに中の図柄リール7rの算用数字の図柄「3」の1コマ上の「☆」の図柄をもう1つの算用数字の図柄の「3」に入れ替える点が記載されている(特に、段落0036及び図10を参照)。
そして、引用発明及び引用文献2、3の技術は、いずれもパチンコ機の分野に関するものであり、リーチ時に遊技者に期待感を与えようという課題においても共通しているので、引用発明に引用文献2又は3記載の技術を適用して、相違点3に係る本願補正発明の構成を追加することは、当業者が容易に想到し得る。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2又は3に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2又は3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年11月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年12月28日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 遊技域中に設けられ、第1の表示画面を備える第1の表示装置と、
前記遊技域中に設けられ、前記第1の表示画面とは別な内容の表示を行う第2の表示画面を備える第2の表示装置と、
前記第1の表示画面に表示する図柄を予め定められた順序に従って連続的に変更する変動表示を行った後、該変動表示を停止させて前記図柄の中から1つの停止図柄を明示する表示制御手段と、
前記停止図柄として当り図柄が明示された場合に、特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
前記第1の表示画面での停止図柄の組み合わせが、特定の図柄の組み合わせを構成する可能性があるリーチ状態であるとき、前記第2の表示画面に複数の図柄を同時に表示し、該第2の表示画面に表示される該図柄を予め定めた順列に従って順次表示する手段と、
前記同時に表示される複数の図柄に、同一の図柄を含ませる手段と、
前記第2の表示画面に表示されている図柄に基づいて、前記特別遊技実行手段による特別遊技の実行の決定を行わせる手段と
を備えることを特徴とするパチンコ機。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.(1)」で検討した本願補正発明から、
「第1の表示画面」について、リーチ状態であるとき、「変動表示中の図柄の表示をやめ」という限定事項を省き、
「第2の表示画面」について、複数の図柄を「順次表示した後に、該第2の表示画面に表示される該図柄の何れかを次々に明示後、該明示を停止」するという限定事項を省き、
「特別遊技実行手段による特別遊技の実行の決定を行わせる手段」について、「前記明示を停止する手段が、前記図柄の明示を停止したときに、該明示されていた該図柄を、前記第1の表示画面で表示をやめた前記図柄の代わりに、該第1の表示画面に表示して、停止図柄として明示し、該第1の表示画面の停止図柄の明示に基づいて」決定を行わせるものである旨の限定事項を省き、
さらに、本願補正発明の「前記第1の表示画面がリーチ状態である場合用の内容の表示を行う第2の表示画面」及び「当り図柄が前記第1の表示画面に明示された場合に、特別遊技を実行する」を、それぞれ「前記第1の表示画面とは別な内容の表示を行う第2の表示画面」及び「当り図柄が明示された場合に、特別遊技を実行する」という表現としたものである。

そして、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2又は3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、同様の理由により、引用発明及び引用文献2又は3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2又は3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、他の請求項(請求項2?6)に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-31 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-19 
出願番号 特願平9-177349
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 森 雅之
太田 恒明
発明の名称 パチンコ機  
代理人 足立 勉  

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