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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1185605
審判番号 不服2005-2644  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-16 
確定日 2008-10-08 
事件の表示 特願2000- 11986「パチンコ機のタンクレール」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月23日出願公開、特開2000-140315〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一、手続きの経緯
本願は、平成10年11月13日に出願した特願平10-341101号の一部を平成12年1月20日に新たな特許出願としたものであって、平成15年12月19日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成16年3月8日付けで手続補正がなされ、さらに同年9月16日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年11月29日付けで手続補正がなされ、上記平成15年12月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって平成17年1月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月16日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年3月11日付け手続補正書によって明細書の一部が補正され、その後、当審において平成20年2月22日付けで、前記平成17年3月11日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶理由が通知され、これに対し、平成20年4月30日付けで手続補正がなされたものであり、その請求項1乃至3に係る発明は、上記平成20年4月30日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。

「【請求項1】 球タンクの開口から導き出されたパチンコ球を球払出装置の球供給筒に導く球供給通路を備えたパチンコ機のタンクレールにおいて、
前記球供給通路は後面壁と該後面壁と対向する前面壁と底壁とにより断面凹状に形成され、前記後面壁及び前面壁の内面に下流側の通路幅が漸次狭くなるような段差を交互に設けると共に一側壁の段差から他側壁の段差までの通路の幅が一定となるように形成し、前記球供給通路の通路幅はその上流端を14mm乃至パチンコ球が2個並ばない寸法の範囲内としパチンコ球が整列した際にジグザグ状に並ぶように設定したことを特徴とするパチンコ機のタンクレール。」(以下「本願発明」という。)

第二.当審の拒絶理由
当審は、上記平成20年2月22日付けの拒絶理由通知で、本願の請求項1乃至4に係る発明は、下記の刊行物1乃至5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を通知した。

第三.刊行物に記載された発明
刊行物1;特開平8-238366号公報
刊行物2;特開平5-237221号公報
刊行物3;実公平4-858号公報
刊行物4;特開平7-250957号公報
刊行物5;特開平7-313697号公報

当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された特開平8-238366号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1-1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、球タンクから流出したパチンコ球を受けて流下させる球流下通路の構造を改良したパチンコ機に関する。」
(1-2)「【0006】そこで、本発明の目的は、パチンコ球を1列に整列する構成でありながら、球流下通路内において球詰まりが発生することを確実に防止できると共に、簡単な構成にて実現することができるパチンコ機を提供するにある。」
(1-3)「【0011】
【実施例】以下、本発明の第1の実施例につき図1ないし図4を参照しながら説明する。まず、パチンコ機全体の背面側を示す図4において、機本体1の背面側上部には、多数のパチンコ球2を貯留する球タンク3が配設されている。・・・
【0012】上記球タンク3の下方には、球流下通路4が図4中左から右へ向けてやや斜め下方に傾斜するように配設されている。この球流下通路4は、その左端部分の球受け部分5で上記球タンク3の底部開口部から流出されたパチンコ球2を受けるように構成されている。・・・更に、パチンコ球2は、球流下通路4内を左から右へ流下するときに、1列に整列されて球流下通路4の右端部分6に至るようになっている。
【0013】ここで、上記球流下通路4の具体的構造について、図1ないし図3を参照して説明する。図1は球流下通路4の上面図であり、この図1に示すように、球流下通路4は、底面部7と、機本体1の背面部側に沿って配置される側壁部8と、この側壁部8と対向する側壁部9と、左端部において上記2つの側壁部8、9を連結する連結壁部10とを有して構成されている。上記側壁部9のうちの球受け部分5に対応する部分である左端平面部分9aは、上記側壁部8とほぼ平行に配設されている。この場合、側壁部9の左端平面部分9aと側壁部8との間隔、即ち、球流下通路4の左端部分の球受け部分5の内側幅寸法は、パチンコ球2をほぼ4個分収容可能な程度の寸法に設定されている。・・・
【0014】さて、上記側壁部9のうちの左端平面部分9aの右側には、曲率半径の大きい円弧状をなすような形状で側壁部8に近接する曲面部分9bが連続して形成されている。そして、この曲面部分9bの右側には、側壁部8とほぼ平行に配設された中間平面部分9cが連続して形成されている。更に、この中間平面部分9cの右側には、側壁部8に徐々に近接するように斜めに配設された平面部分9dが連続して形成されている。この平面部分9dの右端部と側壁部8の右端部との間隔が、1個のパチンコ球2が通過可能な間隔、即ち、パチンコ球2の直径よりも少し大きい程度の間隔となるように構成されている。これにより、球流下通路4の内側幅寸法は、側壁部9の曲面部分9b及び平面部分9dにおいて徐々に狭くなるように構成されており、もって、球流下通路4の右端部分6においてパチンコ球2が1列に整列される構成となっている。この場合、曲面部分9bは、球流下通路4の内側幅寸法が狭くなり始める部位である。
【0015】ここで、球流下通路4の内底部の一方の隅部、具体的には、球流下通路4の底面部7と側壁部9の中間平面部分9c及び平面部分9dとが直交する隅部には、凸条部11が内方へ向けて突設されている。・・・この場合、凸条部11は、側壁部9の中間平面部分9c及び平面部分9dに沿って設けられていることから、球流下通路4の内側幅寸法が狭くなり始めた部位(具体的には、曲面部分9bと中間平面部分9cとの境界部)から、パチンコ球2が1列に整列して流れる部位(具体的には、平面部分9dの右端部)までわたるように設けられる構成となっている。」
(1-4)「【0018】一方、図4に示すように、球流下通路4の右端下方には、該球流下通路4内を流下したパチンコ球2を受ける賞球排出装置12が配設されている。・・・
【0019】このような構成の本実施例によれば、球流下通路4の内底部の一方の隅部、即ち、球流下通路4の底面部7と側壁部9の中間平面部分9c及び平面部分9dとが直交する部分に、凸条部11を内方へ向けて突設する構成とした。これにより、球流下通路4の内側幅寸法がパチンコ球2の直径のほぼ整数倍(例えば3倍や2倍)になる部位において、上記整数個のパチンコ球2が球流下通路4の幅方向に1直線状に並ぶことがあったとしても、上記整数個のパチンコ球2のうちの一方の隅部に位置するパチンコ球2が凸条部11の上に乗って上方へ少しずれるようになる。・・・この結果、上記直線状に並んだ整数個のパチンコ球2が球流下通路4内で詰まって止まることがなくなり、パチンコ球2が球流下通路4内をスムーズに流下するようになる。」
(1-5)「【0021】尚、上記実施例の場合、凸条部11を球流下通路4の内底部の一方の隅部における球流下通路4の内側幅寸法が狭くなり始めた部位からパチンコ球2が1列に整列して流れる部位までわたるように設けたが、これに限られるものではなく、例えば球流下通路4の内底部の隅部における球流下通路4の内側幅寸法がパチンコ球2の直径のほぼ整数倍(例えばほぼ3倍やほぼ2倍)になる部位にだけ凸条部を突設するように構成しても良い。この構成においても、上記実施例とほぼ同様な作用効果を得ることができる。」
(1-6)また、上記【0013】における球流下通路4に関する記載と、球流下通路の上面図である【図1】及び球流下通路の部分縦断側面図である【図3】に示された事項を併せると、「側壁部8と側壁部9と底面部7とにより断面凹状に形成された球流下通路4」の事項が示されている。

したがって、上記(1-5)記載の「球流下通路4の内側幅寸法がパチンコ球2の直径のほぼ整数倍(例えばほぼ3倍やほぼ2倍)になる部位にだけ凸条部を突設する」場合について、これらの事項をまとめると、引用刊行物1には、
「その左端部分の球受け部分5で球タンク3の底部開口部から流出されたパチンコ球2を受けるように構成されている球流下通路4と、該球流下通路4内を流下したパチンコ球2を受ける賞球排出装置12が配設されているパチンコ機において、
前記球流下通路4は、底面部7と、側壁部8と、この側壁部8と対向する側壁部9と、左端部において上記2つの側壁部8、9を連結する連結壁部10とを有し、側壁部8と側壁部9と底面部7とにより断面凹状に形成され、
上記側壁部9のうちの球受け部分5に対応する部分である左端平面部分9aは、上記側壁部8とほぼ平行に配設され、側壁部9の左端平面部分9aと側壁部8との間隔、即ち、球流下通路4の左端部分の球受け部分5の内側幅寸法は、パチンコ球2をほぼ4個分収容可能な程度の寸法に設定され、
上記側壁部9のうちの左端平面部分9aの右側には、曲率半径の大きい円弧状をなすような形状で側壁部8に近接する曲面部分9bが連続して形成され、
この曲面部分9bの右側には、側壁部8とほぼ平行に配設された中間平面部分9cが連続して形成され、
この中間平面部分9cの右側には、側壁部8に徐々に近接するように斜めに配設された平面部分9dが連続して形成され、
この平面部分9dの右端部と側壁部8の右端部との間隔が、1個のパチンコ球2が通過可能な間隔、即ち、パチンコ球2の直径よりも少し大きい程度の間隔となるように構成され、
球流下通路4の内側幅寸法は、側壁部9の曲面部分9b及び平面部分9dにおいて徐々に狭くなるように構成されて、球流下通路4の右端部分6においてパチンコ球2が1列に整列される構成となっていて、
球流下通路4の内底部の一方の隅部であって、球流下通路4の内底部の隅部における球流下通路4の内側幅寸法がパチンコ球2の直径のほぼ3倍やほぼ2倍になる部位にだけ、凸条部11を内方へ向けて突設するように構成することにより、
パチンコ球を1列に整列する構成でありながら、パチンコ球2が球流下通路4内で詰まって止まることがなくなり、パチンコ球2が球流下通路4内をスムーズに流下するようになる、パチンコ機。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

また、当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された特開平5-237221号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2-1)「【0018】・・・しかして、落下口56の上方の玉転動板55の側面には、入賞玉の流下方向に対して左右段差状となるように玉整流部材58a,58bが突設されている。即ち、玉整流部材58a,58bは、図1及び図2に示すように、一方の玉整流部材58bが落下口56から前方に長く且つ先端が傾斜状に形成され、他方の玉整流部材58aが落下口56から短く且つ先端が傾斜状に形成されてそれぞれ玉転動板55の側面に突設されている。」
(2-2)「【0020】なお、上記した実施例では、玉整流部材58a,58bを落下口56の直前に設けたものを示したが、玉転動板55の中流部分に左右段差状となるように設けても良い。このように設けても玉整流部材58a,58bで入賞玉を縦方向に整列させて下流側に流下させるので、落下口56部分に到達したときに、入賞玉が一列に通過することになる。また、上記実施例では、入賞玉が2列になって流下する玉転動板55を示したが、それ以上の複数列になって流下する幅を有する玉転動板であっても良い。この場合において、複数の玉整流部材を玉転動板の側面に交互に段差状となるように突設し、横方向に整列する玉数が徐々に少なくなるように玉整列部材の玉転動板への突出量が異なるように形成しても良い。更に、上記した実施例においては、上部入賞空間54を構成する側壁から玉整流部材58a,58bが突設するものを示したが、図20(A)に示すように、上部入賞空間54を構成する側壁自体によって玉整流部材58a,58bを構成しても良いし、あるいは図20(B)に示すように、上部入賞空間54の底面を構成する玉転動板55から上方に向かって玉整流部材58a,58bを突設したものでも良い。要は、上部入賞空間54内に入賞玉の流下方向に対して左右段差状となるように突設されていれば良い。」
(2-3)「【0042】
【発明の効果】以上、説明したところから明らかなように、本発明においては、上部入賞空間に、玉転動板上を転動する入賞玉の流下方向に対して左右段差状となるように玉整流部材を設けたので、玉転動板の流下端に設けられる落下口に到達する前に、入賞玉の流下方向に対して左右段差状に設けられる玉整流部材に当接し、横方向に整列して流下する入賞玉が縦方向に流下するように圧力を受けることになるため、落下口部分に到達するときには、入賞玉が縦方向に並んだ状態となって流下し、落下口をスムーズに落下して玉詰まり現象を起こすことがない。」

したがって、引用刊行物2には、
「入賞玉が複数列になって流下する玉転動板55の側面に、入賞玉の流下方向に対して左右交互に段差状となるように突設される複数の玉整流部材58a,58bであって、
玉転動板55の流下端に設けられる落下口56部分に到達したときに、入賞玉が一列に並んだ状態となって流下し、落下口56をスムーズに落下して玉詰まり現象を起こすことがない、玉整流部材58a,58b。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

また、当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された実公平4-858号公報(以下、「引用刊行物3」という。)において、
(3-1)第3頁第5欄第44行乃至第6欄第7行には「 入賞球誘導樋20は、通過球検出器10の球通路部11を挿入可能な間隔で相対向する入賞球誘導路形成用の2つの側壁21,22と、両側壁間21,22をコ字状に連結する後壁23と、該後壁23の縁に延設した取付用外向フランジ24とを有する。
側壁21,22及び後壁23は、球誘導路25を形成している。」と、
(3-2)第3頁第6欄第20行乃至第25行には「更に、側壁21,22の内側面には、第2図に破線で示すように、樋20内を落下する球に作用させてその流下速度を減少させ、樋20から流出する球の流出方向を変えると共に、樋20の側壁強度を増す目的で、適数個の作用突起28が千鳥状に配設してある。」と、それぞれ記載されている。
(3-3)また、展開斜視図である【第1図】及び背面図である【第2図】には、「側壁21に配設してある作用突起28から側壁22に配設してある作用突起28までの球誘導路25の幅が一定となるように形成され」た事項が示されている。

したがって、引用刊行物3には、
「相対向する2つの側壁21,22の内側面には、樋20から流出する球の流出方向を変える目的で、適数個の作用突起28が千鳥状に配設してある球誘導路25であって、
側壁21の作用突起28から側壁22の作用突起28までの球誘導路25の幅が一定となるように形成された、球誘導路25。」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

また、当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された特開平7-250957号公報(以下、「引用刊行物4という。)には、次の事項が記載されている。
(4-1)「【0010】しかして、本発明では、図3ないし図5に示すように前記景品球排出樋9の上流側ほぼ中央位置に誘導通路12を設けている。誘導通路12は互いに対向する左右一対の通路壁13a,13bによって構成されている。この誘導通路12の球流路14は全体が緩やかな蛇行状に屈曲形成されており、その上流端が景品球払出装置7の払出口7aに臨む位置配置となっている。そして、球流路14の幅は上流端で景品球の直径より若干大きく、下流側に向けて徐々にその幅が狭められ、さらに下流端においては景品球の直径とほぼ等しくなるように形成されている。」

したがって、引用刊行物4には、
「互いに対向する左右一対の通路壁13a,13bによって構成されている誘導通路12であって、
誘導通路12の球流路14の幅は上流端で景品球の直径より若干大きく、下流側に向けて徐々にその幅が狭められ、下流端においては景品球の直径とほぼ等しくなるように形成されている、誘導通路12。」の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

また、当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された特開平7-313697号公報(以下、「引用刊行物5」という。)には、次の事項が記載されている。
(5-1)「【0010】・・・また、入賞球集合空間凹部21は、その下方において入賞球を一箇所に集合させる集合樋23近傍の奥行巾l(図3参照)をパチンコ玉の直径よりもやや大きく形成する一方、該集合樋23上方の空間凹部の奥行巾Lを前記奥行巾lよりも相対的に大きく形成してあり、且つ奥行巾の異なる相互の凹部を傾斜面24にて連結した構造となっている。なお、上記相対的に大きな奥行巾Lは、好ましくはパチンコ玉の直径の2倍よりやや小に選ばれるとよい。・・・」
(5-2)「【0013】・・・しかも集合樋23近傍の機構板20の奥行巾lは、図3に示すようにパチンコ玉の直径よりやや大きく形成してあるので入賞球が一列に順序よく整列して入賞球処理器26に送られ入賞球による賞品玉排出をスムーズに行うことができる。また、集合樋23近傍の上方には、傾斜面24を介して、奥行巾Lが相対的に大きく形成してあるので、一度に多量の入賞球が発生した場合でも入賞球を十分貯溜することができ、且つ多量の入賞球の重合具合を前記傾斜面24によって分散することができるため、入賞球が玉詰りすることなくスムーズに入賞球処理器26に送り出される。」
(5-3)集合樋部分の縦断面図である【図3】には、「入賞球が一列に順序よくジグザグ状に整列」した状態が示されている。

したがって、これらの記載をまとめると、引用刊行物5には、
「集合樋23上方の空間凹部の奥行巾Lをパチンコ玉の直径の2倍よりやや小に形成し、集合樋23近傍の奥行巾lをパチンコ玉の直径よりもやや大きく形成してあるので、入賞球が一列に順序よくジグザグ状に整列して入賞球処理器26に入賞球が玉詰りすることなくスムーズに送り出される、入賞球集合空間凹部21。」の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。

第四.本願発明と引用発明1との比較・検討
(四-1)引用発明1の「球タンク3」は、本願発明の「球タンク」に相当し、以下同様に、「底部開口部」は「開口」に、「流出された」は「導き出された」に、「パチンコ球2」は「パチンコ球」に、「パチンコ機」は「パチンコ機」に、「球流下通路4」は「タンクレール」に、「賞球排出装置12」は「球払出装置」に、「側壁部8」は「後面壁」に、「側壁部8と対向する側壁部9」は「後面壁と対向する前面壁」に、「底面部7」は「底壁」に、「内側幅寸法」は「通路幅」及び「通路の幅」の双方に、「曲面部分9b」及び「平面部分9d」の双方は「段差」に、それぞれ相当する。
(四-2)引用発明1の「球流下通路4内を流下したパチンコ球2を受ける賞球排出装置12」について検討すると、筒状材を介してパチンコ球を流下させ供給することは、当該分野においては普通に行われている事項であるから、引用発明1の「賞球排出装置12」が「パチンコ球2を受ける」筒状材を有していることは技術常識といえる。そうすると、引用発明1は本願発明の「パチンコ球を球払出装置の球供給筒に導くパチンコ機のタンクレール」に相当する技術を有していると認められる。
(四-3)引用発明1の「球流下通路4は、底面部7と、側壁部8と、この側壁部8と対向する側壁部9と、・・・とを有し、側壁部8と側壁部9と底面部7とにより断面凹状に形成され、」の技術事項について検討すると、「パチンコ球2」は「球流下通路4内を流下」するのであるから、「球流下通路4」が球通路を備えていることは明らかである。そうすると、引用発明1の当該技術事項は本願発明の「パチンコ球を導く球供給通路を備えたパチンコ機のタンクレール」及び「球供給通路は後面壁と該後面壁と対向する前面壁と底壁とにより断面凹状に形成され」に相当する技術を有していると認められる。
(四-4)引用発明1の「側壁部9のうちの左端平面部分9aの右側には、曲率半径の大きい円弧状をなすような形状で側壁部8に近接する曲面部分9bが連続して形成され、この曲面部分9bの右側には、側壁部8とほぼ平行に配設された中間平面部分9cが連続して形成され、この中間平面部分9cの右側には、側壁部8に徐々に近接するように斜めに配設された平面部分9dが連続して形成され、」の技術事項、及び「球流下通路4の内側幅寸法は、側壁部9の曲面部分9b及び平面部分9dにおいて徐々に狭くなるように構成されて」の技術事項と、本願発明の「後面壁及び前面壁の内面に下流側の通路幅が漸次狭くなるような段差を交互に設けると共に一側壁の段差から他側壁の段差までの通路の幅が一定となるように形成し、」の技術事項とを比較すると、中間平面部分9cにおける球流下通路4の内側幅寸法が一定であることは「中間平面部分9cが側壁部8とほぼ平行に配設され」ていることから明らかであるから、「前面壁の内面に下流側の通路幅が漸次狭くなるような段差を設けると共に段差から段差までの通路の幅が一定となるように形成し、」において共通する。
(四-5)引用発明1の「球流下通路4の左端部分の球受け部分5の内側幅寸法は、パチンコ球2をほぼ4個分収容可能な程度の寸法に設定され、」の事項は本願発明の「球供給通路の通路幅はその上流端を14mm乃至パチンコ球が2個並ばない寸法の範囲内としパチンコ球が整列した際にジグザグ状に並ぶように設定し」の事項と比較して、「球供給通路の通路幅はその上流端を特定の寸法に設定し」において共通する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

一致点
球タンクの開口から導き出されたパチンコ球を球払出装置の球供給筒に導く球供給通路を備えたパチンコ機のタンクレールにおいて、
前記球供給通路は後面壁と該後面壁と対向する前面壁と底壁とにより断面凹状に形成され、前記前面壁の内面に下流側の通路幅が漸次狭くなるような段差を設けると共に段差から段差までの通路の幅が一定となるように形成し、前記球供給通路の通路幅はその上流端を特定の寸法に設定した、パチンコ機のタンクレール。

相違点
(A)段差を、本願発明では後面壁及び前面壁の内面に交互に設けるのに対し、引用発明1では前面壁の内面にのみ段差を設ける点。
(B)通路の幅が一定となるように形成されたものが、本願発明では一側壁の段差から他側壁の段差までであるのに対し、引用発明1では一側壁の段差から段差までである点。
(C)球供給通路の上流端の通路幅を、本願発明では14mm乃至パチンコ球が2個並ばない寸法の範囲内としパチンコ球が整列した際にジグザグ状に並ぶように設定したのに対し、引用発明1ではパチンコ球をほぼ4個分収容可能な程度の寸法に設定された点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点(A)について
引用発明2及び3には、段差をパチンコ球通路の対向する2面に交互に設けパチンコ球の流下方向に影響を与える技術が記載されている。したがって、引用発明1の球供給通路に当該技術を適用し、相違点(A)に係る本願発明を特定する事項とすることは、引用発明1乃至3が「パチンコ球の流下方向に影響を与える段差を設けたパチンコ球通路」において共通しているから、当業者が容易になし得ることである。
相違点(B)について
引用発明1では、段差が一側壁にのみ設けられているため、通路の幅が一定となる部分は一側壁の段差から段差までの部分となっている。しかしながら、引用発明2及び3の技術を適用して両側壁の内面に段差を交互に設けるのに伴い、通路の幅が一定となる部分が一側壁の段差から他側壁の段差までの部分となることは最も自然であるから、相違点(B)に係る本願発明を特定する事項とすることは、引用発明1に「パチンコ球の流下方向に影響を与える段差を設けたパチンコ球通路」において共通する引用発明2及び3の技術を適用することにより、当業者が容易になし得ることである。
相違点(C)について
引用発明4には、球供給通路(誘導通路12)の上流端の通路幅(球流路14の幅)を、パチンコ球(景品球)の直径より若干大きくした技術が記載され、また、引用発明5には、球供給通路の上流端の通路幅(奥行巾L)を、パチンコ球が2個並ばない寸法の範囲内(パチンコ玉の直径の2倍よりやや小)としパチンコ球が整列した際にジグザグ状に並ぶように設定した技術が記載されている。そして、パチンコ球通路の幅をどのようなものとするかは当業者が適宜採用できる設計上の事項であり、またパチンコ球の直径は略11mmであることが技術常識であることを併せて考えれば、引用発明1の「球供給通路の上流端の通路幅」に引用発明4及び5に記載された「通路幅」を適用し、相違点(C)に係る本願発明を特定する事項とすることは、これらの発明が「パチンコ球の通路」において共通しているから、当業者が容易になし得ることである。
審判請求人は、引用発明4及び5はパチンコ球がほぼ垂直状に落下することから、これらを引用発明1に取り入れて思考することは掛け離れた感が残る旨の主張をしているが、本願発明も球タンクから球供給通路へはパチンコ球がほぼ垂直状に落下しており、双方の構成が格別に掛け離れているとは認められない。

なお、引用発明1の「凸条部11」は「球供給通路の通路幅(内側幅寸法)がパチンコ球(パチンコ球2)の直径のほぼ3倍やほぼ2倍になる部位にだけ」突設されたものであって、当該通路幅がパチンコ球が2個並ばない寸法の範囲内においては「凸条部11」を設けないものであるから、球供給通路の上流端の通路幅をパチンコ球が2個並ばない寸法の範囲内とした場合には「凸条部11」を設けないことは、必然の技術事項である。したがって、「凸条部11」についての本願発明との比較・検討は不要である。

また、効果においても、引用発明1及び引用発明2並びに引用発明5が球詰りすることなくスムーズに供給できるものであるから、本願発明が格別の効果を奏するものとは認められない。

第五.むすび
以上のとおり、本願発明は、当審の拒絶理由通知に引用された上記引用発明1乃至5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2008-07-30 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-19 
出願番号 特願2000-11986(P2000-11986)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米津 潔飯野 茂  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
太田 恒明
発明の名称 パチンコ機のタンクレール  
代理人 伊藤 浩二  

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