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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1185616
審判番号 不服2005-15663  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-15 
確定日 2008-10-06 
事件の表示 平成 9年特許願第294661号「文書処理方法及び該方法を実現する文書処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月21日出願公開、特開平11-134263〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成9年10月27日の出願であって、平成16年10月27日付けで審査請求がされるとともに同日付けで手続補正がされ、平成17年1月21日付け拒絶理由通知に対して、同年3月28日付けで手続補正がなされたが、同年7月12日付けで拒絶査定され、これに対して、同年8月15日に審判が請求されたものである。そして、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】入力された文書データを指定された送信先に送信するための文書処理方法であって、
文書データを入力する入力工程と、
前記入力工程で入力される文書データがカラー文書であるかモノクロ文書であるかを識別する識別工程と、
前記識別工程による識別結果に基づき、記憶手段に記憶されている文書データがカラー文書である場合のファイルフォーマットとモノクロ文書である場合のファイルフォーマットを示す情報に応じてファイルフォーマットを特定する特定工程と、
前記入力工程で入力された文書データを、前記特定工程で特定されたファイルフォーマットに変換する変換工程と、
前記変換工程において前記特定工程で特定されたファイルフォーマットに変換された文書データを、指定された送信先に送信する送信工程とを有することを特徴とする文書処理方法。」

2 引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成9年10月21日に頒布された「特開平9-274580号公報 」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0029】ドキュメント名は、各図面に付けられた名称であり、ドキュメントの種類は、各図面を作成したアプリケーションの名称などである。また、各ドキュメント毎にプリンタ出力用、プレビュー用、長期保存用の用途に応じた図面ファイルのフォーマットが定義されている。プリンタ出力用フォーマットは、プリンタやプロッタへの出力用に登録時作成したデータのフォーマットである。」
(2)「【0037】図面を登録する場合は、ドキュメント名、及びドキュメントの種類を与えて登録する。従って、図面Aを登録する場合は、ドキュメント名=図面A、ドキュメントの種類=A-CADで与えられる。登録の処理では、まず、指定されたドキュメントの種類を基に、メディアテーブル8をサーチして用途毎のフォーマットを取り出す(ステップ101)。この時、指定されたドキュメントの種類のAーCADに対応するプリンタ出力用フォーマット=HPGL、プレビュー用フォーマット=TIFF、長期保存用フォーマット=SGMLが取り出される。
【0038】次に、ドキュメントの種類を変換元フォーマットとし、用途毎のフォーマットを変換後フォーマットとして、フォーマット変換テーブル12から用途毎の変換手順を取り出す(ステップ102)。この時、プリンタ出力用フォーマットとして、変換元フォーマットのAーCADを変換後フォーマットのHPGLに変換する際の変換手順がフォーマット変換テーブル12から取り出され、プレビュー用フォーマットとして、変換元フォーマットのAーCADを変換後フォーマットのTIFFに変換する際の変換手順がフォーマット変換テーブル12から取り出され、長期保存用フォーマットして、変換元フォーマットのAーCADを変換後フォーマットのSGMLに変換する際の変換手順が取り出される。なお、変換手順には、変換元フォーマットを変換後フォーマットに変換する手順のプログラムが書き込まれている。なお、基本的にこのテーブルには、プログラム名を持たせている。
【0039】次に、図面Aのデータを、用途毎の変換手順で展開し、用途毎のフォーマットファイルを作成する(ステップ103)。ここで、作成された用途毎のフォーマットファイルを図示したのが、図6のBである。次に、ドキュメント管理テーブル6に、ドキュメント名、ドキュメントの種別、用途毎のフォーマットを設定し、図面AのA-CADデータとともに用途毎のフォーマットファイルを登録する(ステップ104)。具体的に登録するデータファイルは、図6のCである。」
(3)「【0041】また、本実施の形態は、編集可能なCAD図面とは別にプリンタ出力用フォーマットデータを保持するように構成したため、以前出力した内容と全く同じ形状の図面を電子的に保管することができる。逆に、編集可能なCAD図面を保持するように構成したため、改訂も行うことができる。但し、再登録されるまでは、全てのデータの書き換えは起こらないので、その意味でも確実にドキュメントを保管することができる。なお、プレビュー用や長期保存用についても同様である。
【0042】従来、例えば、プロッターにCADデータを出力する時、CADはメーカー毎に変わってくるので、ソフトとハードを繋ぐ時は何らかのフォーマット変換が必要になり、このフォーマット変換を出力の度に行わなければならないので、システムとしての負荷、性能の点で問題があった。これに対し、本実施の形態は、用途毎のフォーマットデータを登録する際、一度作るだけで済ませることができるので、従来行われてきた利用の都度変換する方式に比べて、システムとしての負荷、性能を向上させることができる。
【0043】さて、図面を出力する場合、ドキュメント名だけを指定してプリンタは自動的に選択させて行う場合と、ドキュメント名、及びプリンタ名を指定して行う場合の二通りがある。ドキュメント名だけを指定してプリンタは自動的に選択させて行う場合の実施の形態を実施の形態2で説明し、ドキュメント名及びプリンタ名を指定して行う場合の実施の形態を実施の形態3で説明する。
【0044】実施の形態2.図9は本発明に係る実施の形態2のドキュメント保管・出力システムにおける登録図面を指定したプリンタに出力する時の処理フローを示すフローチャートである。本実施の形態も、ドキュメント保管・出力システムの構成自体は図1の実施の形態1と同様であるので、図1を用いて説明する。テーブルは、図2?5のテーブルと同じものを用いて説明する。ドキュメント名(=図面A)だけを指定して、プリンタはシステムで自動選択させて出力する場合、ドキュメント出力部4は、まず、指定された図面のドキュメント名を基に、図2のドキュメント管理テーブル6をサーチし、指定された図面Aのプリンタ出力用フォーマット(HPGL)を取り出す(ステップ201)。
【0045】次に、ドキュメント出力部4は、図4のデバイステーブル10より図面Aのプリンタ出力用フォーマット(HPGL)が出力可能なプリンタをサーチする(ステップ202)。ドキュメント出力部4は、出力可能なプリンタが見つかったかをチェックし(ステップ203)、出力可能なプリンタが見つかった場合、見つけたプリンタ(plotter2)に、図面Aのプリンタ出力用フォーマットデータ(HPGL)を出力する(ステップ204)。」

これらの記載事項によると、引用例には、「ドキュメントの種類を変換元フォーマットとし、プリンタ出力や長期保存用などの用途毎のフォーマットを変換後フォーマットとして、フォーマット変換テーブルから用途毎の変換手順を取り出し、ドキュメントのデータを用途毎の変換手順で展開し、用途毎のフォーマットファイルを作成してドキュメント管理テーブルに登録し、出力をするときはドキュメント名を指定するとドキュメント管理テーブルから出力用フォーマットを取り出して出力するドキュメントの保管・出力システム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「ドキュメント」は「文書」の意味だから、引用発明の「ドキュメント」は本願発明の「文書データ」に相当する。
引用発明の「ドキュメントの種類を変換元フォーマットとし用途毎のフォーマットを変換後フォーマットとして、フォーマット変換テーブルから用途毎の変換手順を取り出し、」とする構成は、同じ種類のドキュメントでも用途によって変換手順が異なる場合に、変換元フォーマットと変換後フォーマットの関係を記憶したフォーマット変換テーブルにより変換手順を探すことであるから、本願発明の「特定工程」に対応する。
さらに「ドキュメントのデータを用途毎の変換手順で展開」することは文書データを特定のファイルフォーマットに変換することに相当する。
よって、両者は「文書データを特定工程で特定されたファイルフォーマットに変換する変換工程を有する文書処理方法。」である点で一致し、次のA、Bの点で相違する。
A.本願発明が、「入力された文書データを指定された送信先へ送信するための」文書処理方法であり、「文書データを入力する入力工程」と「変換工程において前記特定工程で特定されたファイルフォーマットに変換された文書データを、指定された送信先に送信する送信工程」を有するのに対して、引用発明の文書処理方法には上記入力工程及び送信工程が記載されていない点。
B.本願発明は、「文書データがカラー文書であるかモノクロ文書であるかを識別する識別工程」を有し、「記憶手段に記憶されている文書データがカラー文書である場合のファイルフォーマットとモノクロ文書である場合のファイルフォーマットを示す情報に応じてファイルフォーマットを特定」しているのに対して引用発明にはそのような記載がない点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
相違点Aについて
引用発明もドキュメントを処理している以上、何らかの手段でドキュメントを入力する必要があるから、そのための入力工程を設けることは適宜実施し得る程度のことである。また文書データを宛先に送信することは普通に行われていることであるから、変換された文書を指定された送信先へ送信する送信工程を設けて本願のように構成することも必要に応じて適宜実施し得る事項である。
相違点Bについて
特開平7-271533号公報、特開平3-145873号公報、特開平4-199982号公報に記載されているように文書をカラー文書かモノクロ文書に区別すること、カラー文書であるかモノクロ文書であるかを識別して処理することは周知技術であり、引用発明の「フォーマット変換テーブル」は変換元フォーマットと変換後フォーマットの関係を記憶し一方から他方を特定するものであるから、上記変換元フォーマットを「カラー文書である場合」、「モノクロ文書である場合」とし、変換後フォーマットとして「カラー文書である場合のファイルフォーマットとモノクロ文書である場合のファイルフォーマットを示す情報」として「ファイルフォーマットを特定」するように構成することは引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることができたものである。

そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用発明及び上記周知技術から予測できる程度のものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-07 
結審通知日 2008-08-11 
審決日 2008-08-22 
出願番号 特願平9-294661
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 茂和  
特許庁審判長 江嶋 清仁
特許庁審判官 角田 慎治
大野 克人
発明の名称 文書処理方法及び該方法を実現する文書処理装置  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  

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