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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1185634
審判番号 不服2007-342  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-09 
確定日 2008-10-06 
事件の表示 平成10年特許願第 64296号「反射型液晶ディスプレイ用カラーフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月17日出願公開、特開平11-248931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成10年2月27日の出願であって、平成18年7月3日付けで手続補正がなされ、平成18年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年1月9日に審判請求がなされるとともに、平成19年2月8日付けで手続補正がなされたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成18年7月3日付け及び平成19年2月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「反射型液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタであって、該カラーフィルタの赤色画素に含まれる赤色顔料の透過曲線が、400nm?700nmの可視光波長領域において、420?450nmの波長領域で50%以上の透過率、そして600?650nmの波長領域で90%以上の透過率を示し、さらに透過率が最も低い波長λmaxが460nm?570nmの波長領域にあり、かつ波長510nmにおける透過率が30%以下で、450nmにおいて60%以上の透過率を示すことを特徴とするカラーフィルタ。」

なお、平成19年2月8日付けの補正は、その補正前の請求項1を削除し、その削除に伴って、その補正前の請求項2,3を請求項1,2に繰り上げたものであるから、この補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平9-68608号公報(以下、「引用例1」という。)、同じく特開平7-258592号公報(以下、「引用例2」という。)、原査定の備考欄に周知例として引用された特開昭61-254905号公報(以下、「引用例3」という。)、及び、同じく特開平4-344615号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。

a.引用例1;

反射型カラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタ用着色組成物およびカラーフィルタに関するもので、
記載事項ア.【0006】
「【本発明が解決しようとする課題】本発明は、耐熱性および耐光性に優れ、かつ染色法により製造されるカラーフィルタと同等以上の色純度を有する、反射型カラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタ用着色組成物およびカラーフィルタの提供を目的とする。」

記載事項イ.【0007】
「【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、透明樹脂媒体中に、一般式【化2】で表される顔料を分散してなる反射型カラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタ用着色組成物を提供する。
本発明は、また、透明基板上に、上記着色組成物を用いて少なくとも1色の画素を形成してなることを特徴とするカラーフィルタを提供する。」

記載事項ウ.【0008】
「カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、一般にレッド(R),グリーン(G),ブルー(B)加法混色型であるが、反射型液晶表示装置のカラー化の例として、補色関係にあるシアン(C)とレッド(R)の2色からなるカラーフィルタを用いて4色のマルチ表示を行う方式が発表されている(日経マイクロデバイス、1994年6月号、47頁)。本発明の着色組成物は、これらのカラーフィルタのレッド色形成用として特に有効であり、耐熱性および耐光性に優れ、かつ染色法により製造されるカラーフィルタと同等以上の色純度を有するカラーフィルタが得られる。」

記載事項エ.【0009】
「【発明の実施の形態】上記一般式で表される顔料の具体例としては、カラーインデックスナンバーのC.I.Pigment Red 48:1、48:2、48:3および48:4が挙げられる。」

記載事項オ.【0035】?【0037】の[実施例1]
PR48:1未処理品分散体を用いた着色レジスト材塗布基板を作製し、色度測定した例。

記載事項カ.【0038】?【0041】の[実施例2]
PR48:1ソルトミリング品分散体を用いた着色レジスト材塗布基板を作製して色度測定し、さらに、該着色レジスト材を用いてストライプ状カラーフィルタを作製し、カラーフィルタを評価した例。

前記記載事項ア.ないし記載事項カ.の記載からして、引用例1には、
「反射型カラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタであって、カラーフィルタのレッド色形成用の顔料としてC.I.Pigment Red 48:1(PR48:1)を用いるカラーフィルタ」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

b.引用例2;

カラーフィルタ用のインキ組成物に関するもので、
記載事項キ.【0002】、【0003】
「【0002】
【従来の技術】液晶ディスプレイ(LCD)においては、近年、カラー化の要請に対応するために、アクティブマトリックス方式および単純マトリックス方式のいずれにおいてもカラーフィルタが用いられている。例えば、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス方式の液晶ディスプレイでは、カラーフィルタは透明基板上に形成された赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色からなる着色パターンを備えている。
【0003】具体的には、LCDにおいては、バックライト(3波長管)の光を液晶に電界をかけることによりON,OFFさせ、さらに、R,G,Bの3原色の光をカラーフィルタによってそれぞれ分けることによりカラー表示を行っている。従って、カラーフィルタの最も重要な特性は分光特性である。」

記載事項ク.【0008】
「本発明はかかる事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、分光特性が優れているのみならず印刷適性が優れ、連続印刷線幅安定性の良好なカラーフィルタ用のインキ組成物を提供することを目的とする。」

記載事項ケ.【0009】
「【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明は、インキ中重量含有率で、アントラキノン系レッド色素およびジスアゾ系イエローからなり、その総重量含有率が10?30wt%であるとともにそのうちジスアゾ系イエローの含有率が2.5?10wt%である赤色顔料、ハロゲン化シアニン系グリーン色素およびジスアゾ系イエローからなり、その総重量含有率が10?30wt%であるとともにそのうちジスアゾ系イエローの含有率が4?12wt%である緑色顔料、ならびにフタロシアニン系ブルー色素およびジオキサジンバイオレットからなり、その総重量含有率が5?30wt%であるとともにそのうちジオキサジンバイオレットの含有率が0?4wt%である青色顔料の中から選択された少なくとも一種の着色顔料と、ステアリン酸カルシウム、酸化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよび有機ベントナイトの中から選択された少なくとも一種の体質顔料を含有するように構成した。」

記載事項コ.【0013】
「赤色顔料中のアントラキノン系レッド色素の具体例を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで表示すると、次のごとき顔料が使用できる。
赤顔料:C.I.Pigment Red 122,123,177,208,209」

c.引用例3;

カラーフィルタに関するもので、
記載事項サ.「特許請求の範囲」
「基板と、該基板上に形成された有機顔料含有ポリイミドからなる膜体と、該膜体上に形成された非着色ポリイミドからなる膜体とを備えてなるカラーフィルタ。」

記載事項シ.1頁左欄
「(従来技術)
従来、カラーフィルタとしてはゼラチンを染色したものや、ポリイミドに顔料を分散したものが知られ、カラーの固体撮像管やカラー液晶テレビに使用されている。」

記載事項ス.3頁左下欄
「有機顔料の例としては、たとえばR(赤)としては、Co1or Index No.73905 Pigment Red 209、46500 Pigment Violet 19で示されるキナクリドン系顔料、・・・・・等が挙げられる。」

記載事項セ.4頁の「実施例1」
赤色用有機顔料としてピグメントレッド209を用いてカラーフィルタを作製した例。

d.引用例4;

カラ-フィルタに関するもので、
記載事項ソ.【特許請求の範囲】【請求項1】
「基体、有機着色層および透明導電層をこの順に積層したカラ-フィルタであって、該透明導電層が多結晶体であり、そのグレインサイズが0.1?1μmの範囲であることを特徴とするカラ-フィルタ。」

記載事項タ.【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は液晶表示素子に使用されるカラ-フィルタに関するものであり、さらに詳しくは、エッチング特性や低抵抗の点で優れた透明導電層を有するカラ-フィルタに関する。」

記載事項チ.【0023】の「実施例1」
赤顔料としてColor Index No.73905 Pigment Red 209で示されるキナクリドン系顔料を用いてカラーフィルタを作製した例。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の対象である「反射型カラー液晶表示装置に用いるカラーフィルタ」は、本願発明の対象である「反射型液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタ」に相当する。

(b)引用発明の「カラーフィルタのレッド色形成用の顔料」は、本願発明の「カラーフィルタの赤色画素に含まれる赤色顔料」に相当する。

(c)有色顔料の各波長に対する光透過率の値は、実験により測定できるものであり、引用発明において「カラーフィルタの赤色画素に含まれる赤色顔料」として用いる「PR48:1」についても例外ではない。
そして、前記「PR48:1」の透過曲線は、本願発明との対比において、「400nm?700nmの可視光波長領域において、420?450nmの波長領域で50%以上の透過率、そして600?650nmの波長領域で90%以上の透過率を示し、さらに透過率が最も低い波長λmaxが460nm?570nmの波長領域にあり、かつ波長510nmにおける透過率が30%付近の点であり、450nmにおいて60%付近の点の透過率を示す」ものである。(本願の添付図面参照。)

前記(a)乃至(c)に記載したことからして、本願発明と引用発明の両者は、
「反射型液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタであって、該カラーフィルタの赤色画素に含まれる赤色顔料の透過曲線が、400nm?700nmの可視光波長領域において、420?450nmの波長領域で50%以上の透過率、そして600?650nmの波長領域で90%以上の透過率を示し、さらに透過率が最も低い波長λmaxが460nm?570nmの波長領域にあるカラーフィルタ。」である点で一致し、次の相違点が存在する。

[相違点]
使用する赤色顔料が、本願発明は、波長510nmにおける透過率が30%以下で、450nmにおいて60%以上の透過率を示す顔料であるのに対して、引用発明は、そのような限定がされていない点。

4.当審の判断
前記相違点について検討する。

本願発明では、「透過曲線が、400nm?700nmの可視光波長領域において、420?450nmの波長領域で50%以上の透過率、そして600?650nmの波長領域で90%以上の透過率を示し、さらに透過率が最も低い波長λmaxが460nm?570nmの波長領域にあり、かつ波長510nmにおける透過率が30%以下で、450nmにおいて60%以上の透過率を示す」赤色顔料として、具体的にはPR209を使用している。

しかしながら、引用例2乃至4に示されるように、液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタにおいて、カラーフィルタの赤色画素に含まれる赤色顔料としてPR209を使用することは、普通に知られたことである。
しかも、引用例2乃至4の液晶ディスプレイ用カラーフィルタを、反射型液晶ディスプレイ用に用いることができない特別の事情はない。
引用例2については、その記載事項キ.の【従来の技術】の項中【0003】には、カラーフィルタを透過型液晶ディスプレイ用に用いることを示唆する記載があるが、この箇所の記載を以て、引用例2のカラーフィルタは、透過型液晶ディスプレイ用に限定されるものではない。

よって、引用発明の反射型液晶ディスプレイ用カラーフィルタの赤色画素に含まれる赤色顔料として、引用例2乃至4に記載されるように普通に知られたPR209を用いて、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易になし得ることである。

また、本願発明によってもたらされる作用・効果についても、引用例1乃至4の記載から予測される範囲内のもので、格別のものではない。

したがって、本願発明は、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-01 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-26 
出願番号 特願平10-64296
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 勇竹村 真一郎下村 一石  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 越河 勉
森林 克郎
発明の名称 反射型液晶ディスプレイ用カラーフィルタ  
代理人 柳川 泰男  

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