• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1185720
審判番号 不服2007-18698  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-05 
確定日 2008-10-09 
事件の表示 特願2003- 31985「ゲーム装置、ゲーム制御サーバ、ゲーム制御プログラムおよびそのプログラムが記録された記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月26日出願公開、特開2004-237003〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年2月10日に出願された特願2003-31985号であって、平成19年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年8月2日付けで手続補正がなされた。
その後、平成20年5月15日付けで審尋がなされ、これに対して平成20年6月27日付けで回答がなされたものである。

第2 平成19年8月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成19年8月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容
(1)平成19年8月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1について、

「複数のプレイヤが、予め決めたプレイ順にしたがって順番に所定の基本操作を行う一方で、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果所定の条件が満たされたときには、他のプレイヤが前記プレイ順に拘わらず、前記条件と関連づけられた所定の割込操作を行うことができるネットワーク対戦型ゲームをプレイする際に、前記ネットワーク対戦型ゲームを制御するゲーム制御サーバに接続して使用するゲーム装置であって、
前記プレイ順に拘わらず、前記条件が満たされる以前に、呼出操作を受け付けて、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある状態となっている条件を表示させると共に、該条件が満たされた場合の対応の選択肢を画面に表示させる表示出力制御手段と、
いずれかの選択肢の指定入力を受け付けることにより、該条件が満たされた場合の対応を表す予約情報を生成する予約情報生成手段と、
該条件が満たされた場合に該予約情報に示される対応に相当する処理が、前記ゲーム制御サーバによって実行されるように、該予約情報を、前記ゲーム制御サーバが参照可能な状態で所定の記憶媒体に記憶せしめる操作予約手段と、
を備えたことを特徴とするゲーム装置。」



「複数のプレイヤが、予め決めたプレイ順にしたがって順番に所定の基本操作を行う一方で、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果所定の条件が満たされたときには、他のプレイヤが前記プレイ順に拘わらず、前記条件と関連づけられた所定の割込操作を行うことができるネットワーク対戦型ゲームをプレイする際に、前記ネットワーク対戦型ゲームを制御するゲーム制御サーバに接続して使用するゲーム装置であって、
前記プレイ順に拘わらず、呼出操作を受け付けて、前記条件が満たされる以前に、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある状態となっているすべての条件を表示させると共に、前記条件のうちプレイヤが指定する条件が満たされた場合の、対応の選択肢を画面に表示させる表示出力制御手段と、
いずれかの選択肢の指定入力を受け付けることにより、該条件が満たされた場合の対応を表す予約情報を生成する予約情報生成手段と、
該条件が満たされたときに、該予約情報に示される対応に相当する処理が、前記ゲーム制御サーバによって実行されるように、該予約情報を、前記ゲーム制御サーバが参照可能な状態で所定の記憶媒体に記憶せしめる操作予約手段と、
を備えたことを特徴とするゲーム装置。」

と補正することを含むものである。

(2)請求項1についての本件補正は、
ア 「プレイ順に拘わらず、前記条件が満たされる以前に、呼出操作を受け付けて」を、「プレイ順に拘わらず、呼出操作を受け付けて、前記条件が満たされる以前に」とする補正、

イ 「いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある状態となっている条件を表示させる」を、「いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある状態となっているすべての条件を表示させる」とする補正、

ウ 「条件が満たされた場合の対応の選択肢を画面に表示させる」を、「条件のうちプレイヤが指定する条件が満たされた場合の、対応の選択肢を画面に表示させる」とする補正、

エ 「該条件が満たされた場合に該予約情報に示される対応に相当する処理が、前記ゲーム制御サーバによって実行される」を、「該条件が満たされたときに、該予約情報に示される対応に相当する処理が、前記ゲーム制御サーバによって実行される」とする補正、

からなるものである。

そこで、まず、上記補正事項イの、「いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある状態となっている条件を表示させる」の「条件」として、「すべての」条件であることが追加された点について、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているか否かを、以下に検討する。

2 新規事項の追加の違反についての検討
(1)願書に最初に添付した明細書又は図面の記載事項
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、上記補正事項イと関連して、以下の記載がなされている。

ア 「【0015】
ここで、「基本操作」は自分の順番が回ってきたときに定期的に行う操作であり、「割込操作は、それ以外の状況で不定期に行う操作である。具体例として麻雀ゲームを挙げれば、自分の順番で牌を捨てる操作が「基本操作」、他人の順番でポン、カン、チーあるいはロンをするのが「割込操作」に相当する。
【0016】
「いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある条件」は、基本操作がどのようなものであるかによって異なるので、ゲームごとに定義されるべきものであるが、例えば麻雀ゲームの例で説明すれば、「ポンできる牌を誰かが捨てた」ことなどが「所定の条件」となり得る。」

イ 「【0063】
第2の機能は、他のプレイヤが捨てた牌の中に、ポン、カン、チーあるいはロンすることができる牌があった場合に、ポン、カン、チーあるいはロンをするか否かを予め予約することができる機能である。第1の機能と同様、第2の機能も自分の順番であるか否かに拘わらず呼び出すことができる。
【0064】
例えば、北家プレイヤに順番が回った状態で、南家プレイヤが第2の機能を呼び出す操作(例えば、家庭用ゲーム機器のコントローラの□ボタンを押す)を行うと、図4の予約画面28が表れる。予約画面28では、南家プレイヤの手牌23Bのうち、ポン、カン、チーあるいはロンできる状態にある牌27A?27Dが、色付きで表示される。
【0065】
次に、牌27A?27Dのいずれかに、前述の牌指定カーソル26を合わせると、図5に示すように、予約メニュー29が表示される。予約メニュー29には、東家、西家、北家プレイヤにより捨てられた牌の中に牌指定カーソル26を合わせた牌27Dと同じ牌32があった場合の対応の選択肢が、メニュー項目として表示される。図の例では、牌32が捨てられた場合に、「ポンする」か、「ポンしない」か、「その場で考える」かの3つの選択肢が示されている。」

ウ 図4には、南家プレイヤの手牌23Bとして、東、東、2筒、3筒、3筒、5筒、1万、2万、3万、9万、2索、9索、9索が、
そのうち、ポン、カン、チーあるいはロンできる状態にある牌27Aとして、東、東が、同牌27Bとして、3筒、3筒が、同牌27Cとして、2筒、3筒が、同牌27Dとして、9索、9索が、それぞれ記載されている。

(2)当初明細書等の記載から理解できる事項
以上摘記した当初明細書等の記載をまとめると以下のようになる。

ア 麻雀ゲームで、自分の順番で牌を捨てる操作が「基本操作」であること。

イ 図4の予約画面28では、南家プレイヤの手牌23Bのうち、ポン、カン、チーあるいはロンできる状態にある牌27Aとして、東、東が、同牌27Bとして、3筒、3筒が、同牌27Cとして、2筒、3筒が、同牌27Dとして、9索、9索が、色付きで表示されること。

ウ 図4の予約画面28では、南家プレイヤの手牌23Bのうち、少なくとも、3筒、5筒の牌がチーできる状態にあること。

(3)当審の判断
ア 上記(2)ア及びイから、麻雀ゲームで、任意のプレイヤが自分の順番で牌を捨てる操作である基本操作の結果、ポン、カン、チーあるいはロンできる状態にある牌を、色付きで表示させることが、当初明細書等に記載されているといえるので、上記補正事項イのうち、「いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある状態となっている」「条件を表示させる」ことは、当初明細書等に記載された事項である。

イ 上記補正事項イのうち、「いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある状態となっている条件を表示させる」の「条件」として、「すべての」条件であることは、上記(2)ウの3筒、5筒の牌が色付きで表示されていないことから、当初明細書等に記載された事項ではない。
また、「ポン、カン、チーあるいはロンできる状態にある牌」として、具体的にどのように、少なくとも3筒、5筒の牌を除く、牌27A?27Dを選択して、色付きで表示するのかも、当初明細書等には記載されていないので、前記「すべての」条件を表示することが、当初明細書等に記載された事項から自明な事項であるとも、認められない。

ウ したがって、上記補正事項イにより追加された事項を含む本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものではない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」欄で述べた理由により、平成19年8月2日付けの手続補正が却下されたことにより、当審が審理すべき発明は、平成19年2月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項7に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「複数のプレイヤが、予め決めたプレイ順にしたがって順番に所定の基本操作を行う一方で、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果所定の条件が満たされたときには他のプレイヤが前記プレイ順に拘わらず所定の割込操作を行うことができるネットワーク対戦型のゲームを制御するゲーム制御サーバであって、
前記各プレイヤがそれぞれ使用する複数のゲーム装置について、前記プレイ順にしたがって順番に、前記基本操作の受付けを含む基本処理を実行する基本処理実行手段と、
前記各ゲーム装置により生成され所定の記憶媒体に記憶された情報であって、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある条件、および該条件が満たされた場合の対応が登録された、前記条件ごとの予約情報を取得する予約情報取得手段と、
前記予約情報取得手段により取得された予約情報に登録されている条件が満たされた場合に、該条件が満たされた場合の対応として登録されている対応に相当する処理を、自動的に実行する予約処理自動実行手段とを備えたことを特徴とするゲーム制御サーバ。」

2 引用例及びその記載事項
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、三上 洋,使いこなせなかった人のための定番ソフト完全マスター ハンゲーム 人気の麻雀ゲームへの参加と操作方法,YOMIURI PC 2002年12月号,読売新聞東京本社,2002年12月1日,第7巻第15号(以下、「引用例」という。)には、写真とともに以下の事項が記載されている。

ア 「インターネット上の麻雀対戦ゲームはいくつもあるが、「ハンゲーム」の麻雀は、ゲーム開始者がルールを自由に設定できるのが特徴だ。」(第106頁上段)

イ 「麻雀では4人が集まり、ゲーム開始者が「開始」を押すとゲームが始まる。ツモ牌は自動的に来るが、ほかの人が捨てた牌で鳴けるものがあると、そちらを優先してしまうので注意。鳴かずに面前で役を作ろうと考えている場合は、下にあるメニューで「食いキャンセル」を押そう。するとポン、チー、カンはすべて無視して、ツモ牌が自動的に手元に来る。」(第106頁上段)

ウ 「ルールを確認したら「参加」をクリックしよう。4人集まると麻雀のゲーム画面が開く」(第106頁中段左「待機中のゲームに参加する場合」の画面写真の注)

エ 第106頁下段画面写真の右側中段には、「手持ちの牌に関する操作画面。ポンやチーができる状態になると、それぞれのボタンを押せるようになる」と記載され、また、同記載から導かれる線により囲まれる画面写真の領域には「食いキャンセル」のボタン表示が見受けられる。

上記記載事項ア乃至エ及び写真から、引用例には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という。)

「4人が参加するインターネット上の麻雀対戦ゲームであって、
ツモ牌は自動的に来るが、ほかの人が捨てた牌で鳴けるものがあり、ポンやチーができる状態になると、操作画面のポンやチーのボタンが押せるようになり、ポンやチーを優先し、
「食いキャンセル」ボタンを押すと、ポン、チー、カンはすべて無視して、ツモ牌が自動的に手元に来る、
インターネット上の麻雀対戦ゲーム。」

3 対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

・対応関係1
引用発明の、インターネット上の麻雀対戦ゲームに参加する「4人」及び「インターネット上の麻雀対戦ゲーム」は、本願発明の、「複数のプレイヤ」及び「ネットワーク対戦型のゲーム」に相当する。

引用発明の「麻雀対戦ゲーム」は、複数のプレイヤが、予め決めたプレイ順にしたがって順番で牌を捨てる操作を行う一方で、いずれかのプレイヤによる牌を捨てる操作の結果、ポン、カン、チーあるいはロンできる牌を捨てたという条件が満たされたときには他のプレイヤが前記プレイ順に拘わらずポン、カン、チーあるいはロンの操作を行うことができるものであることは、明らかである。
前記「予め決めたプレイ順にしたがって順番で牌を捨てる操作」は、本願発明の「基本操作」に、前記「ポン、カン、チーあるいはロンできる牌を捨てたという条件」は、本願発明の「所定の条件」に、前記「プレイ順に拘わらずポン、カン、チーあるいはロンの操作」は、本願発明の「プレイ順に拘わらず所定の割込操作」に相当する。
してみれば、引用発明の「麻雀対戦ゲーム」は、本願発明の「複数のプレイヤが、予め決めたプレイ順にしたがって順番に所定の基本操作を行う一方で、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果所定の条件が満たされたときには他のプレイヤが前記プレイ順に拘わらず所定の割込操作を行うことができる」「対戦型のゲーム」に相当する。

引用発明では、「インターネット上の麻雀対戦ゲーム」を行うために、インターネット上に、ゲームを制御するためのゲーム制御装置を備えていることは、明らかである。

したがって、引用発明の「4人が参加するインターネット上の麻雀対戦ゲーム」と、
本願発明の「複数のプレイヤが、予め決めたプレイ順にしたがって順番に所定の基本操作を行う一方で、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果所定の条件が満たされたときには他のプレイヤが前記プレイ順に拘わらず所定の割込操作を行うことができるネットワーク対戦型のゲームを制御するゲーム制御サーバ」とは、
「複数のプレイヤが、予め決めたプレイ順にしたがって順番に所定の基本操作を行う一方で、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果所定の条件が満たされたときには他のプレイヤが前記プレイ順に拘わらず所定の割込操作を行うことができるネットワーク対戦型のゲームを制御するインターネット上のゲーム制御装置」である点で一致する。

・対応関係2
インターネットが、複数の人がそれぞれ使用する装置とサーバを含むことは、明らかなので、引用発明の「4人が参加するインターネット上の麻雀対戦ゲーム」を行うためには、4人がそれぞれゲームのために使用する装置を有していることは明らかである。
引用発明の前記「4人がそれぞれゲームのために使用する装置」は、本願発明の「各プレイヤがそれぞれ使用する複数のゲーム装置」に相当する。

上記「・対応関係1」で述べたように、引用発明の「麻雀対戦ゲーム」では、「プレイ順にしたがって順番で牌を捨てる操作を行う」ことから、引用発明では、牌を捨てる操作の受付けを含めた処理が実行されていることは、明らかである。
してみれば、引用発明の「麻雀対戦ゲーム」で行われる、「プレイ順にしたがって順番で牌を捨てる操作を行う」ことは、本願発明の「プレイ順にしたがって順番に、前記基本操作の受付けを含む基本処理を実行」することに、相当する。

したがって、引用発明は、本願発明の「各プレイヤがそれぞれ使用する複数のゲーム装置について、前記プレイ順にしたがって順番に、前記基本操作の受付けを含む基本処理を実行する基本処理実行手段」を有しているといえる。

・対応関係3
引用発明では、「食いキャンセル」ボタンを押すと、優先されるポンやチーを無視することから、「食いキャンセル」ボタンにより、無視するための情報が生成されていることは、明らかである。
また、前記「無視するための情報」が、取得されて記憶されることは、引用発明が「インターネット」を用いていることから、明らかである。

上記「・対応関係2」で述べたように、引用発明では、麻雀対戦ゲームに参加する4人がそれぞれゲームのために使用する装置を有していることは、明らかなので、前記「無視するための情報」が、前記「ゲームのために使用する装置」により、「食いキャンセル」ボタンが押されることで、生成されることも、明らかである。

引用発明では、「食いキャンセル」ボタンを押して、ポン、チー、カンをすべて無視することは、鳴ける(ポンやチーができる)牌をほかの人が捨てたという条件が満たされたときに行われるので、引用発明の、「ほかの人が捨てた牌で鳴けるものがあり、ポンやチーができる状態になる」ことは、本願発明の「いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある条件」が「満たされた場合」に相当する。
ポン、チー、カンをすべて無視するためには、「食いキャンセル」ボタンを、ポン、チー、カンする前に予め押さなければならない、言い換えれば、ポン、チー、カンをすべて無視することを「予約」しなければならない、ことは、明らかある。
してみれば、上記「無視するための情報」は、鳴ける(ポンやチーができる)牌をほかの人が捨てたという条件、および該条件が満たされた場合の対応としての無視することに関する予約情報であるといえる。

したがって、引用発明の「4人が参加するインターネット上の麻雀対戦ゲーム」で、前記「「食いキャンセル」ボタンを押すと、ポン、チー、カンはすべて無視して、ツモ牌が自動的に手元に来る」ための構成と、
本願発明の「各ゲーム装置により生成され所定の記憶媒体に記憶された情報であって、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある条件、および該条件が満たされた場合の対応が登録された、前記条件ごとの予約情報を取得する予約情報取得手段」とは、
「各ゲーム装置により生成され記憶された情報であって、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある条件、および該条件が満たされた場合の対応に関する予約情報を取得する予約情報取得手段」である点で一致する。

・対応関係4
上記「・対応関係3」で述べたように、引用発明では、鳴ける(ポンやチーができる)牌をほかの人が捨てたという条件、および該条件が満たされた場合の対応としての無視することに関する予約情報が生成されていることが明らかであり、また、引用発明では、ポン、チー、カンはすべて無視し、ツモ牌が自動的に手元に来るので、前記予約情報の条件が満たされた場合の対応としての無視することが、自動的に実行されて、ツモ牌が手元に来ることは明らかである。

してみれば、引用発明の、「食いキャンセル」ボタンを押すと、ポン、チー、カンはすべて無視し、ツモ牌が自動的に手元に来るための構成と、
本願発明の「予約情報取得手段により取得された予約情報に登録されている条件が満たされた場合に、該条件が満たされた場合の対応として登録されている対応に相当する処理を、自動的に実行する予約処理自動実行手段」とは、
「予約情報取得手段により取得された予約情報に関する条件が満たされた場合に、該条件が満たされた場合の対応に相当する処理を、自動的に実行する予約処理自動実行手段」である点で一致する。


したがって、本願発明と引用発明とは、

「複数のプレイヤが、予め決めたプレイ順にしたがって順番に所定の基本操作を行う一方で、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果所定の条件が満たされたときには他のプレイヤが前記プレイ順に拘わらず所定の割込操作を行うことができるネットワーク対戦型のゲームを制御するインターネット上のゲーム制御装置であって、
前記各プレイヤがそれぞれ使用する複数のゲーム装置について、前記プレイ順にしたがって順番に、前記基本操作の受付けを含む基本処理を実行する基本処理実行手段と、
前記各ゲーム装置により生成され記憶された情報であって、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある条件、および該条件が満たされた場合の対応に関する予約情報を取得する予約情報取得手段と、
前記予約情報取得手段により取得された予約情報に関する条件が満たされた場合に、該条件が満たされた場合の対応に相当する処理を、自動的に実行する予約処理自動実行手段とを備えたことを特徴とするインターネット上のゲーム制御装置。」、

である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1
「ネットワーク対戦型のゲームを制御するインターネット上のゲーム制御装置」が、本願発明では、「ゲーム制御サーバ」であるのに対し、引用発明では、インターネット上での具体的な構成が明らかでない点。

・相違点2
本願発明では、予約情報が「所定の記憶媒体に」記憶されるものであるのに対し、引用発明では、予約情報をどのように記憶するのか、明らかでない点。

・相違点3
「記憶された情報であって、いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある条件、および該条件が満たされた場合の対応に関する予約情報」が、本願発明では、「いずれかのプレイヤによる基本操作の結果満たされる可能性がある条件、および該条件が満たされた場合の対応」を「登録」したものであり、かつ、「条件ごと」の情報であるのに対し、引用発明では、具体的にどのような態様で記憶するのか、明らかでなく、
また、「予約処理自動実行手段」における、「予約情報に関する条件が満たされた場合」及び「条件が満たされた場合の対応に相当する処理」が、本願発明では、「予約情報に登録されている条件が満たされた場合」及び「条件が満たされた場合の対応として登録されている対応」であるのに対し、引用発明では、具体的にどのような「条件」が満たされた場合及びどのような「対応」であるのか、明らかでない点。

4 当審の判断
以下、相違点1乃至相違点3について検討する。

・相違点1について
本願出願前に、インターネット上のゲームを、ゲーム制御サーバが制御することは、周知慣用技術(一例として、本願明細書に【特許文献2】として提示の特開平11-242645号公報を参照。)であるので、引用発明の「インターネット上の麻雀対戦ゲーム」を制御するための装置に、前記周知慣用技術を適用して、ゲーム制御サーバが制御するようにすることは、当業者が容易に想到できたといえる。

してみれば、相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたといえる。

・相違点2について
本願出願前に、情報を所定の記憶媒体に記憶することは、例を挙げるまでもない、周知慣用技術であるので、引用発明の、「食いキャンセル」ボタンを押すことにより生成される、無視するための情報に、前記周知慣用技術を適用して、前記無視するための情報を所定の記憶媒体に記憶することは、当業者が容易に想到できたといえる。

してみれば、相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたといえる。

・相違点3について
情報を具体的にどのような態様で記憶するかは、情報をどのように表現するかに関して、当業者が適宜選択、設計し得る事項であるので、引用発明の「食いキャンセル」ボタンを押すことにより、ポン、チー、カンはすべて無視して、ツモ牌が自動的に手元に来るための情報として、具体的に、鳴ける(ポンやチーができる)牌をほかの人が捨てたという条件、および条件が満たされた場合の対応としての無視すること、を「登録」して記憶するようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。
その際には、本願発明の「予約処理自動実行手段」に相当する、引用発明の、ポン、チー、カンはすべて無視して、ツモ牌が自動的に手元に来ることが、前記登録されている、「条件」及び「対応」を用いて行われることは、あわせて、容易に推考し得るものである。

引用発明では、「食いキャンセル」ボタンを押すことにより、ポン、チー、カンはすべて無視しているが、キャンセルを、鳴ける牌すべてを単位として一つのキャンセルボタンにより行うか、ポン、チー、カンの一つ一つ等を単位として、複数のキャンセルボタンにより行うか、は、ゲームのルールや操作性等を考慮して、当業者が適宜選択、設計し得る事項である。
してみれば、引用発明の「食いキャンセル」ボタンを、ポンをキャンセルするボタン、チーをキャンセルするボタン、カンをキャンセルするボタン等の複数のボタンとすることは、当業者が容易に推考し得るものであり、その際には、本願発明の「予約情報」に相当する、上記ポン、チー、カンはすべて無視して、ツモ牌が自動的に手元に来るための情報は、ポンを無視する場合、チーを無視する場合、カンを無視する場合等の複数の「条件ごと」に記憶されることは、明らかである。

したがって、引用発明に適宜設計、変更を行うことにより、相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたといえる。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、及び周知慣用技術から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

したがって、本願発明は、引用発明、及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-08 
結審通知日 2008-08-12 
審決日 2008-08-25 
出願番号 特願2003-31985(P2003-31985)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清藤 弘晃宮本 昭彦  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森林 克郎
武田 悟
発明の名称 ゲーム装置、ゲーム制御サーバ、ゲーム制御プログラムおよびそのプログラムが記録された記録媒体  
代理人 高橋 英樹  
代理人 高田 守  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ