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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1186344
審判番号 不服2006-26228  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-21 
確定日 2008-10-14 
事件の表示 特願2001-334393「デジタル放送受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月16日出願公開、特開2003-143026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月31日の出願であって、平成18年6月28日付けで拒絶理由通知がなされ、同年8月23日付けで手続補正がなされたが、同年10月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年11月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年11月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
平成18年11月21日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 1つの周波数でデータ番組を含む複数の番組が送信されるデジタル放送の放送受信装置において、
受信信号中に含まれるデータ番組の内容に関するデータ番組情報を取得し、取得された前記データ番組情報に基づいて、選択可能なデータ番組のリストを作成して所定の記憶媒体に格納する制御手段であって、前記データ番組情報を取得してから前記リストを作成及び前記所定の記録媒体に格納するまでの動作を、映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、ユーザによって操作部を介して所定の指示操作が行われた際に、前記所定の記憶媒体に格納された前記リストを表示する制御を行うこと、を特徴とするデジタル放送受信装置。」
と補正された。
この補正は、実質的に、本件手続補正前の請求項1に係る発明(平成18年8月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)における「制御手段」が「映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行する」動作として「前記データ番組情報の取得、前記リストの作成及び前記所定の記録媒体への格納」とあったものを「前記データ番組情報を取得してから前記リストを作成及び前記所定の記録媒体に格納するまでの動作」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
なお、上記本件手続補正後の請求項1の記載における「・・・前記所定の記録媒体に格納するまでの動作・・・」との記載は「・・・前記所定の記憶媒体に格納するまでの動作・・・」の明らかな誤記と認められる。そこで、上記「記録媒体」との記載を「記憶媒体」に訂正した本件手続補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-112899号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディジタル放送番組に関する情報を記述した電子番組表を作成,表示するディジタル放送受信装置に関するものである。」

B.「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
実施の形態1.図1は本発明の実施の形態1によるディジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【0013】図において、11はチューナであり、放送局から放送される多重化されたディジタルデータを受信する。
・・・(中略)・・・
17はサービス情報蓄積部であり、サービス情報取得部16で取得したサービス情報データをメモリに保持あるいは更新する。18はサービス情報検索部であり、表示制御部からの指示によりサービス情報蓄積部17に保持されたサービス情報データを検索して、必要なサービス情報データを表示制御部に送る。19は表示制御部であり、入力部12の入力内容に基づいて、必要なデータをサービス情報検索部18に指示して入手し、該サービス情報データに基づいて電子番組表を作成し、テレビモニタ画面に表示させる。20はテレビモニタ画面であり、デコード部15でデコードされた放送ディジタルデータ,及び表示制御部19からの電子番組表を表示する。」

C.「【0014】図2は本発明の実施の形態1によるデータ放送受信装置において受信する多重化ディジタルデータの内容を示す図である。図2に示すように、多重化ディジタルデータは、現在放送されている全放送番組に関する,画像データおよび音声データ、並びにサービス情報データからなり、放送局で、該画像データ,該音声データ,及び該サービス情報データの先頭に、それぞれ識別のための識別ヘッダを付与した後、多重化されたものである。また、上記サービス情報データには、チャンネル情報データおよび放送される番組ごとの番組情報データが含まれる。さらに、上記チャンネル情報データには、チャンネルNo.,チャンネル名,チャンネルの種類(テレビ,ラジオ,データなど),視聴許可状況(無料番組,視聴制限番組,PPV番組など)などが含まれ、上記番組情報データには、当該番組が放送されるチャンネルNo.,番組名,開始日時などが含まれる。」

D.「【0017】まず、受信装置がチューナ11で受信した多重化ディジタルデータは、多重化分離部14に送られる。多重化分離部14では、上記識別ヘッダを基に、該多重化ディジタルデータをサービス情報データと放送ディジタルデータに分離した後、指定したチャンネルの放送ディジタルデータの画像データおよび音声データを抽出してデコード部15に送る。抽出されたディジタルデータは、デコード部15でアナログ変換されてテレビモニタ20に送られ、モニタ画面上で放映される。同時に、多重化分離部14では、サービス情報データをサービス情報取得部16へ送信する。サービス情報取得部16は獲得したデータをサービス情報蓄積部17のメモリに保持する。多重化分離部14から新しいデータを送信してきたとき、サービス情報取得部16はサービス情報蓄積部17のメモリ上のデータを更新する。」

E.「【0018】次に、外部からの入力により、視聴者がリモコンに設けられた「番組表キー」を押すと、入力部12は入力内容を解釈し、電子番組表を表示する旨を表示制御部19に指示する。表示制御部19では、該電子番組表を表示するために必要なサービス情報について、サービス情報検索部18に要求を出す。サービス情報検索部18では、サービス情報蓄積部17に保持されたサービス情報データを検索し、図2に示した番組情報データの中からチャンネルNo.,番組名,及び開始日時を抽出して表示制御部19にデータを渡す。表示制御部19では、このデータをOSD(On Screen Display )上に表示し、テレビモニタ20の画面上には、番組が放映されている最中に、図3に示した番組表が表示される。」

F.「【0019】さらに、外部からの入力により、視聴者がリモコンに設けられたカーソルキーによって上記電子番組表上のカーソルを移動させて、たとえばM番組をカーソルが示した状態で、リモコンに設けられた決定キーを押すと、入力部12は入力内容を解釈し、M番組を選局する旨を選局部13へ指示する。選局部13では、多重化分離部14へ選局すべきチャンネルを指示し、多重化分離部14は、指示されたチャンネルの放送ディジタルデータの画像データおよび音声データを抽出してデコード部15に送る。抽出されたディジタルデータは、デコード部15でアナログ変換されてテレビモニタ20に送られ、モニタ画面上にはM番組が放映される。」

G.「【0022】実施の形態2.図4は本発明の実施の形態2によるディジタル放送受信装置において、テレビモニタの画面上に表示される電子番組表のその他の例を示す図である。図において、(a)は現在時刻に放送中の番組に関する番組情報(チャンネルNo.,番組タイトル,放送日,放送開始時刻,及び放送終了時刻)を表示した「番組表」であり、現在番組を中心に前後4番組の番組情報を4行に渡って記述している。(b)は現在時刻におけるチャンネル情報(チャンネルNo.,チャンネル局名,チャンネルの種類,及び視聴許可状態)を表示した「チャンネル情報表」であり、現在画面上に放映中のチャンネルを中心に前後4チャンネルのチャンネル情報を4行に渡って記述している。
・・・(後略)・・・」

上記AないしGの記載、及び、関連する図面を参照すると、次のことがいえる。

(あ)上記G、並びに、図4(a)及び(b)に示される電子番組表によれば、現在時刻において「A番組」、「F番組」及び「M番組」などといった複数の番組が放送されているところ、901チャンネルではM番組が放送されており、かつ、そのチャンネルの種類が「データ」であることから、現在時刻において901チャンネルで放送されているM番組は、「データ番組」ということができる。
同様に、図4(a)及び(b)に示される電子番組表によれば、現在時刻において102チャンネルで放送されているA番組、及び、101チャンネルで放送されているF番組は、それぞれ、「テレビ番組」及び「ラジオ番組」ということができる。

(い)「サービス情報データ」のデータ構造に着目すると、上記C及び図2に示される、多重化ディジタルデータに含まれる「サービス情報データ」には、番組情報データが含まれており、また、その番組情報データは、さらに、番組名等のデータを有するものである。
ところで、上記Dには、「多重化分離部14では、サービス情報データをサービス情報取得部16へ送信する。サービス情報取得部16は獲得したデータをサービス情報蓄積部17のメモリに保持する。」と記載されており、また、上記Bの第0013段落には、「19は表示制御部であり、・・・該サービス情報データに基づいて電子番組表を作成し」と記載されている。
よって、サービス情報データには、番組名を有する番組情報データが含まれることから、「サービス情報取得部16」は、サービス情報データに含まれる「番組名を有する番組情報データ」を取得し、「サービス情報蓄積部17」は取得した当該「番組情報データ」を保持し、「表示制御部」は当該保持された「番組情報データ」に基づいて電子番組表を作成するということができる。

(う)上記Dには、「多重化分離部14では、上記識別ヘッダを基に、該多重化ディジタルデータをサービス情報データと放送ディジタルデータに分離した後、指定したチャンネルの放送ディジタルデータの画像データおよび音声データを抽出してデコード部15に送る。抽出されたディジタルデータは、デコード部15でアナログ変換されてテレビモニタ20に送られ、モニタ画面上で放映される。同時に、多重化分離部14では、サービス情報データをサービス情報取得部16へ送信する。サービス情報取得部16は獲得したデータをサービス情報蓄積部17のメモリに保持する。」と記載されていることから、引用例のものは指定したチャンネルのデータをモニタ画面上で放映すると同時に、サービス情報データを取得するものと解することができる。
ところで、上記(い)でしたデータ構造に係る検討を鑑みれば、サービス情報取得部は、サービス情報データに含まれる「番組名を有する番組情報データ」を取得するものといえる。
これらのことから、引用例のものは、番組をモニタ画面上に放映する動作と同時に、番組名を有する番組情報データを取得する動作を実行するものといえる。

(え)上記Fには、「上記電子番組表上のカーソルを移動させて、たとえばM番組をカーソルが示した状態で、リモコンに設けられた決定キーを押すと、入力部12は入力内容を解釈し、M番組を選局する旨を選局部13へ指示する。」と記載されているところ、図4(b)に示される電子番組表は、上記(あ)で検討したとおり、現在時刻において放送されている番組に関する表であるから、当然、この電子番組表に示された番組は、選局可能な番組であるといえる。

上記(あ)ないし(え)の事項を踏まえると、引用例には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、当該発明を「引用例記載の発明」という。)
「 テレビ番組、ラジオ番組、及びデータ番組を含む複数の番組が送信されるディジタル放送の放送受信装置において、
受信した多重化ディジタルデータ中に含まれ、番組名を有する番組情報データを取得するサービス情報取得部と、前記サービス情報取得部が取得した番組情報データを保持するサービス情報蓄積部と、前記サービス情報蓄積部に保持された番組情報データに基づいて、選局可能な番組の電子番組表を作成して表示する制御を行う表示制御部と、を備え、
前記サービス情報取得部は、前記番組情報データを取得する動作を、番組の放映動作と同時に実行し、
前記表示制御部は、視聴者によって電子番組表を表示する旨を指示するための番組表キーが押された際に、前記サービス情報蓄積部に保持された前記番組情報データに基づいて、選局可能な番組の電子番組表を作成して表示する制御を行うこと、を特徴とするディジタル放送受信装置。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用例記載の発明の「ディジタル放送」、「テレビ番組」、「ラジオ番組」、「視聴者」、「番組表キー」及び「放映動作」は、本願補正発明の「デジタル放送」、「映像番組」、「音楽番組」、「ユーザ」、「操作部」及び「再生動作」にそれぞれ相当する。

(イ)引用例記載の発明における「受信した多重化ディジタルデータ」は、「受信信号」に他ならない。

(ウ)一般に「番組名」とは番組の内容に関する情報に他ならず、また、引用例記載の発明は「テレビ番組」、「ラジオ番組」のみならず「データ番組」をも受信するものであって、番組名には「データ番組」の番組名も含まれていることから、引用例記載の発明における「番組名を有する番組情報データ」は、本願補正発明における「データ番組の内容に関するデータ番組情報」に相当する情報をも含むものである。

(エ)引用例記載の発明において、番組を選局するということは、番組を選択することに他ならないから、引用例記載の発明における「選局」は、本願補正発明における「選択」に相当する。また、引用例記載の発明において、選局可能な番組には「データ番組」も当然含まれると解される。

(オ)一般に「リスト」とは、「目録。名簿。一覧表。」(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)という意味を有する用語であるところ、引用例記載の発明における「電子番組表」は、まさに番組の一覧表であるから、本願補正発明における「リスト」に相当する。

(カ)引用例記載の発明は、「番組情報データを取得する動作を、番組の放映動作と同時に実行」するものであって、本願補正発明のごとく「データ番組情報を取得してからリストを作成及び所定の記憶媒体に格納するまでの動作を、映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行する」ものではない。
しかし、上記(ウ)に示したとおり、引用例記載の発明は、番組として「テレビ番組」、「ラジオ番組」及び「データ番組」を受信するものであり、また、「番組情報データ」は、本願補正発明における「データ番組情報」に相当する情報を含むものである。また、上記(ア)に示したとおり、引用例記載の発明における前記「テレビ番組」及び前記「ラジオ番組」は、本願補正発明の「映像番組」及び「音楽番組」にそれぞれ相当し、また、引用例記載の発明における「放映」は、本願補正発明の「再生」に相当する。さらに、引用例記載の発明における「同時に実行」する動作は、本願補正発明における「並行して実行する」動作と同様のものである。
これらのことから、本願補正発明と、引用例記載の発明とは、少なくとも、「データ番組情報を取得する動作を、映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行する」という点において共通する。

(キ)上記(ウ)で検討したとおり、引用例記載の発明における「番組名を有する番組情報データ」は、本願補正発明における「データ番組の内容に関するデータ番組情報」に相当する情報を含むものであるから、引用例記載の発明における「サービス情報取得部」は、データ番組情報を取得するという機能を有し、また、上記(エ)、(オ)で検討した事項から、引用例記載の発明における「表示制御部」は、選択可能なデータ番組のリストを作成し、リストを表示する制御を行うという機能を有するものといえる。
してみれば、本願補正発明における「制御手段」と、引用例記載の発明における「サービス情報取得部」及び「表示制御部」の双方を合わせた部分とは、少なくとも、データ番組情報の取得、リストの作成、及びリストの表示制御を行うという点において、同等の機能を有するものであるから、その限りにおいて、引用例記載の発明における「サービス情報取得部」及び「表示制御部」の双方を合わせた部分は、本願補正発明における「制御手段」に対応する構成であるということができる。

(ク)引用例記載の発明は、「視聴者によって電子番組表を表示する旨を指示するための番組表キーが押された際に、サービス情報蓄積部に保持された番組情報データに基づいて、選局可能な番組の電子番組表を作成して表示する制御を行う」ものであって、本願補正発明のごとく、「ユーザによって操作部を介して所定の指示操作が行われた際に、所定の記憶媒体に格納されたリストを表示する制御を行う」ものではない。
しかし、上記(ア)、上記(ウ)、上記(エ)及び上記(オ)の検討を鑑みれば、本願補正発明と、引用例記載の発明とは、少なくとも、「ユーザによって操作部を介して所定の指示操作が行われた際に、選択可能なデータ番組のリストを表示する制御を行う」という点において共通する。

上記(ア)ないし(ク)の事項を踏まえると、本願補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違する。

(一致点)
本願補正発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「データ番組を含む複数の番組が送信されるデジタル放送の放送受信装置において、
受信信号中に含まれるデータ番組の内容に関するデータ番組情報を取得し、選択可能なデータ番組のリストを作成する制御手段であって、前記データ番組情報を取得する動作を、映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、ユーザによって操作部を介して所定の指示操作が行われた際に、選択可能なデータ番組のリストを表示する制御を行うこと、を特徴とするデジタル放送受信装置。」
である点。

(相違点)
相違点1:
データ番組を含む複数の番組が、本願補正発明は、「1つの周波数で」送信されるのに対し、引用例記載の発明は、1つの周波数で送信されるかどうかが明らかでない点。

相違点2:
本願補正発明においては、
「制御手段」が、
「取得されたデータ番組情報に基づいて、選択可能なデータ番組のリストを作成」し、
作成した「リスト」を「所定の記憶媒体に格納」し、
「データ番組情報を取得してからリストを作成及び所定の記憶媒体に格納するまでの動作を、映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行」し、
「ユーザによって操作部を介して所定の指示操作が行われた際に、所定の記憶媒体に格納されたリストを表示する制御を行う」のに対し、
引用例記載の発明においては、
「表示制御部(制御手段)」が、
「サービス情報蓄積部に保持された番組情報データ(データ番組情報)に基づいて、選局(選択)可能な番組(データ番組)の電子番組表(リスト)を作成」するものの、作成した「電子番組表(リスト)」を所定の記憶媒体に格納することは行っておらず、
「サービス情報取得部(制御手段)」が、
「番組情報データ(データ番組情報)を取得する動作」を「番組(映像番組、音楽番組、又はデータ番組)の放映動作(再生動作)と同時に実行(並行して実行)」しているものの、「電子番組表(リスト)」の作成、及び所定の記憶媒体への格納は同時に実行しておらず、
前記「表示制御部(制御手段)」が、
「視聴者(ユーザ)」によって「番組表キー(操作部)」を介して「電子番組表(リスト)を表示する旨」の指示操作が行われた際に、「サービス情報蓄積部に保持された番組情報データ(データ番組情報)に基づいて、選局(選択)可能な番組(データ番組)の電子番組表(リスト)を作成して表示する制御を行う」点。

(4)判断
そこで、上記相違点1及び2について検討する。

(相違点1について)
デジタル放送の技術分野において、1つの周波数で複数の番組を放送することは、ごく普通に行われていることにすぎないから、引用例記載の発明において、データ番組を含む複数の番組が1つの周波数で送信されるようにすることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

(相違点2について)
一般に、常時伝送されてくる番組情報を取得し、取得された番組情報に基づいて、常時、番組表を作成して所定の記憶媒体に格納することは、例えば、特開平6-90182号公報の第0015段落ないし第0017段落に記載されているように、周知の技術にすぎない。
してみれば、引用例記載の発明において、上記周知の技術を適用し、電子番組表(リスト)を表示する旨の指示操作の前に、常時伝送されてくる番組情報データ(データ番組情報)を取得し、取得された番組情報データ(データ番組情報)に基づいて、常時、電子番組表(リスト)を作成して所定の記憶媒体に格納し、電子番組表(リスト)を表示する旨の指示操作が行われた際に、所定の記憶媒体に格納された電子番組表(リスト)を表示する制御を行うようにすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎず、またその際、常時の電子番組表(リスト)の作成及び格納を実現するために、「番組情報データ(データ番組情報)を取得する動作」のみならず、「番組情報データ(データ番組情報)を取得してから電子番組表(リスト)を作成及び所定の記憶媒体に格納するまでの動作」をも、「番組(映像番組、音楽番組、又はデータ番組)の放映動作(再生動作)と同時に実行(並行して実行)」するよう構成することもまた、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、引用例記載の発明を、「取得されたデータ番組情報に基づいて、選択可能なデータ番組のリストを作成して所定の記憶媒体に格納」し、「データ番組情報を取得してからリストを作成及び所定の記憶媒体に格納するまでの動作を、映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行」し、「ユーザによって操作部を介して所定の指示操作が行われた際に、所定の記憶媒体に格納されたリストを表示する制御を行う」制御手段を備えるようなものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知の技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成18年11月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年8月23日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載からみて、次のとおりのものと認める。(以下、この請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「1つの周波数でデータ番組を含む複数の番組が送信されるデジタル放送の放送受信装置において、
受信信号中に含まれるデータ番組の内容に関するデータ番組情報を取得し、取得された前記データ番組情報に基づいて、選択可能なデータ番組のリストを作成して所定の記憶媒体に格納すると共に、ユーザによって操作部を介して所定の指示操作が行われた際に前記所定の記憶媒体に格納された前記リストを表示する制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記データ番組情報の取得、前記リストの作成及び前記所定の記憶媒体への格納を、映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行すること、を特徴とするデジタル放送受信装置。」
なお、平成18年8月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記所定の記録媒体への格納」なる記載は、「前記所定の記憶媒体への格納」の誤記と認められるので、当該誤記を訂正した上で上記のとおり本願発明を認定した。

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、実質的に、上記2.で検討した本願補正発明における「制御手段」の「映像番組、音楽番組、又はデータ番組の再生動作と並行して実行する」動作について、「前記データ番組情報を取得してから前記リストを作成及び前記所定の記憶媒体に格納するまでの動作」を「前記データ番組情報の取得、前記リストの作成及び前記所定の記憶媒体への格納」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに実質的に相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載の発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-19 
結審通知日 2008-08-20 
審決日 2008-09-02 
出願番号 特願2001-334393(P2001-334393)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 宣博佐藤 敬介  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 飯田 清司
長 由紀子
発明の名称 デジタル放送受信装置  
代理人 松岡 修平  

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