• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1186353
審判番号 不服2007-15519  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-04 
確定日 2008-10-14 
事件の表示 特願2005-107369号「薄織布可撓性移植片」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月11日出願公開、特開2005-211684号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年7月27日(パリ条約による優先権主張:1994年8月2日、アメリカ合衆国)に出願した特願平7-191780号の一部を平成17年4月4日に新たな特許出願としたものであって、平成19年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年6月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成19年1月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「織られて形成された、一定の径の細長い管状本体からなる織布プロテーゼ移植片であって、前記管状本体は、0.l6mm以下の布壁厚さと、前記管状本体に沿って形成されたクリンプパターンを有するものであり、前記移植片は、カテーテルデリバリのために半径方向に圧縮可能であり、配置の際には開いた管状構造に戻すことができ、使用時にはその形状を維持できるものであることを特徴とする織布プロテーゼ移植片。」

第3 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平4-231954号公報(以下、「引用例」という。)、には、図面と共に次の事項が記載されている。
1 「第一及び第二末端、及び二つの末端の間に配置された壁表面を有する管であって、管の少なくとも一部は腹大動脈瘤内に配置されるのに適合している管;及び管の第一末端を大動脈に固定する手段であって、固定手段は第一及び第二末端及び第一及び第二末端の間に配置された平滑な外側壁表面を含み、壁表面は事実上均一な厚さを有し、及びその中に形成された複数のスロットを有し、スロットはチューブ状部品の長手軸に事実上平行に配置されており、管の第一末端はチューブ状部品の第二末端に固定されており;チューブ状部品は大動脈中にチューブ状部品を管腔内的に送達することが可能な第一直径を有し、及びチューブ状部品は放射状に外側に広げる力をチューブ状部品の内部から加えると第二の拡張し及び変形した直径を有し、及び該第二の直径は可変的でチューブ状部品に加えられる力の量に依存的であり、それによりチューブ状部品は拡張し変形して大動脈にチューブ状部品の第一末端を固定することができる手段を含んで成る、関連した二つの腸動脈を有する大動脈中の腹大動脈瘤を修復するために管腔内的に送達するための大動脈移植片。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
2 「【本発明の技術分野】本発明は管腔内(intraluminal)送達(delivery)用の大動脈移植片、及び腹大動脈瘤を修復するための方法及び装置に関する。」(段落【0001】)
3 「本発明の追加的態様は、管上に生物学的に不活性な被覆を与える段階を含む。本発明の更に別な態様は液の流に不透過性である材料から製造された管の利用又は生体腐蝕性の材料から製造された管の利用である。本発明の他の態様は管、チューブ状部品及びカテーテルが大腿部の動脈を通して管腔内的に送達されることができることである。本発明の他の態様は管、チューブ状部品及びカテーテルが腋窩動脈を通して管腔内的に送達されることができることである。」(段落【0014】)
4 「…(略)…大動脈移植片150は一般に:第一及び第二末端161、162及び及び二つ末端の間に配置された壁表面163を有し、管160の少なくとも一部は動脈瘤151内に配置されるのに適合している管160;及び管160の第一の末端161を大動脈152に固定するための手段165を含んで成ることが見られる。」(段落【0017】)
5 「…(略)…第一及び第二末端161、162の間に配置された管160の中間部分171は、事実上放射状に拡張可能ではないことが好適である。」(段落【0018】)
6 「なお図1-4に関して、管160は一般に円形の断面形状を有することが好適であり、そして管160は、大動脈移植片150として利用するのに必要な強度特性を有し、並びに患者の体により排除されることなく、移植片又は移植材料として使用されるために、人間の体と適合性を有するならば各種の材料から製作することができる。かような材料の例はダクロン(登録商標)及び他のポリエステル材料、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、テフロン被覆ダクロン材料及び多孔性ポリウレタンである。材料は編成又は織成することができ、たて編み又はよこ編みであることができる。材料がたて編みであれば、ベロア、又はタオル様表面を備えることができ、それは管160の大動脈152への結合又は結着を増進し、又は血栓症154への管160の結着を助けるために、管160と接触する血液の凝固を促進する。…(略)…」(段落【0020】)
7 「なお図1-4に関して、管160は波状の(undulating)長手方向断面形態(図1)を形成するようにクリンプした形態を有することができ、それによって後に詳細に記載されるように、動脈瘤151内に管160を固定する時に、よじれ、又は縒り又は折り重なりが極めて少なくなるであろう。この波状の形態は管160の熱間型押しにより、又は他の適当な方法で得ることができ、それにより管160は“記憶”を有し、及びもし縒り又はよじれても元の形態及び配列に戻るであろう。別法として、管160は平滑な外側表面を有することもできる。」(段落【0021】)
8 「図5に例示されるような腹大動脈瘤を修復するための装置は、その形態が図1にも例示されるようであり、図1にも例示されるように管腔内送達手段をを有する。図5に示される形態の場合は、薄壁部品166はその最初のまだ拡張していない、未変形の直径D’を有し、バルーン183は図2においては部分的に膨張しており、図3では完全に膨張している。薄壁部品166の膨張及び変形は普通の方式でバルーン183の拡張により調節される。装置180を管腔内送達している時には、後で詳細に述べるように、装置180が図1に示すように大動脈152内の所望の位置に配置される際には、カテーテル181、薄壁部品166及び管160は普通のカテーテルのシース(sheath)186により囲まれていることが好適である。カテーテルが図4に示すような形状に配置された後には、バルーン183の収縮によりカテーテル181の抜き取り及びバルーン183及びカテーテルの大動脈移植片150からの取り外しが可能である。」(段落【0023】)

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「織成により形成され、かつ、波状の長手方向断面形態を形成するようにクリンプした形態を有する管160からなり、管160は、放射状に拡張可能ではなく、また“記憶”を有し、及びもし縒り又はよじれても元の形態及び配列に戻るものである大動脈移植片150。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「織成により形成され」は、本願発明の「織られて形成され」に相当し、以下同様に、「管160」は「管状本体」に、「大動脈移植片150」は、「織布プロテーゼ移植片」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「波状の長手方向断面形態を形成するようにクリンプした形態を有する管160」、「管160は、放射状に拡張可能ではなく、また“記憶”を有し、及びもし縒り又はよじれても元の形態及び配列に戻るものである」は、本願発明の「管状本体は、」「管状本体に沿って形成されたクリンプパターンを有するもの」、「移植片は、…使用時にはその形状を維持できるものである」と同義である。
そうすると、両者は、本願発明の文言を用いて表現すると、
「織られて形成された、管状本体からなる織布プロテーゼ移植片であって、前記管状本体は、前記管状本体に沿って形成されたクリンプパターンを有するものであり、前記移植片は、使用時にはその形状を維持できるものである織布プロテーゼ移植片。」
で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
本願発明は、管状本体が、一定の径の細長い管状本体であって、0.l6mm以下の布壁厚さを有するものであり、該移植片が、カテーテルデリバリのために半径方向に圧縮可能であり、配置の際には開いた管状構造に戻すことができるものであるのに対して、引用発明は、管状本体、移植片が、そのようなものであるか否か明らかでない点。

第5 相違点の判断
上記相違点について以下に検討する。
移植片の管状本体の径や形状は、置換(修復)されるべき血管の形状に応じて適宜決めるものであるから、管状本体を一定の径の細長いものとすることは、当業者が必要に応じて適宜決める設計的事項である。
また、移植片の技術分野において、移植片の壁厚を、0.l6mm以下とすることは周知技術であり(例えば、特開昭54-151675号公報、特開昭59-11864号公報参照)、しかも、特に0.l6mm以下とすることによる臨界的意義は認められないから、管状本体を、0.l6mm以下の布壁厚さを有するものとすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
さらに、通常、移植片の配置の際は、移植片の形状は、置換(修復)されるべき血管の形状と同じであり、血管内を送達中は、移植片の直径は血管の径よりも細くされるものであって、引用発明の大動脈移植片150(織布プロテーゼ移植片)も、大動脈中の腹大動脈瘤を修復するために、カテーテルによって動脈を通して管腔内的に送達されるものであるから(「第3 1ないし3、7」の記載事項参照)、送達中は、該移植片の直径は血管の径よりも細くされるものであり、配置の際には開いた管状構造に戻すことができるものである。そして、移植片の直径は血管の径よりも細くするために、半径方向に圧縮可能とすることは、移植片が織布から成っていることを考慮すると、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-14 
結審通知日 2008-05-19 
審決日 2008-05-30 
出願番号 特願2005-107369(P2005-107369)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺澤 忠司  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 北村 英隆
山崎 豊
発明の名称 薄織布可撓性移植片  
代理人 中村 稔  
代理人 大塚 文昭  
代理人 小川 信夫  
代理人 宍戸 嘉一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ