• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1186552
審判番号 不服2006-8098  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2008-10-22 
事件の表示 特願2000-249234「半導体基板表面の酸化膜形成方法および半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開、特開2002- 64093〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年8月21日の出願であって、平成17年12月1日付拒絶理由通知に対して、平成18年2月13日付けで手続補正がされたが、平成18年3月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年5月29日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年5月29日付け手続補正について
結論
平成18年5月29日付けの手続補正を却下する。
理由
(1)補正後の本件発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「半導体基板を113℃以上に加熱した熱濃硝酸に浸漬して表面に0.3nm以上の厚い酸化膜を形成することを特徴とする半導体基板表面の酸化膜形成方法。」
と補正された。
上記補正は、補正後の請求項1に対応する補正前の請求項1から「その後不活性ガス中で熱処理すること」の限定を省いている。
したがって、この補正は、特許請求の範囲の請求項の限定的減縮を目的としたものとは認められない。また、この補正は、誤記の訂正を目的とするものとも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定するいずれの目的にも該当しないものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年5月29日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年2月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「半導体基板を加熱した酸化性の薬液に浸漬して表面に酸化膜を形成し、その後不活性ガス中で熱処理することを特徴とする半導体基板表面の酸化膜形成方法。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第90/13911号パンフレット(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
a.「(1)酸素及び/又は酸素を含む分子を含有する溶液を、酸化膜を形成しようとする基体の表面に接触させて該基体の表面に酸化膜を形成する第1工程、
酸素、酸素を含む分子もしくは不活性ガスまたはこれらのうちの2種以上の混合物の気相中において、前記酸化膜を20℃以上の温度で熱処理することにより前記酸化膜中の基体表面を構成する原子と酸素の結合を強くする第2工程、
とを少なくとも備えたことを特徴とする酸化膜の形成方法。」(特許請求の範囲、請求項1)
b.「本発明によれば、例えば、シリコン基板を溶存酸素量が9容積ppmの超純水に浸し、その後酸素ガス中若しくは窒素ガス中で加熱すると、3nm以上の厚さを有しかつシリコンと酸素の結合が強い酸化膜を低温で形成できることが明らかとなった。」(第5頁第4行?第5頁第8行)
c.「本発明の第1工程において酸素及び/又は酸素を含む分子を含有する溶液とは、たとえば酸素が溶存する溶液、オゾンが溶存する溶液、過酸化水素水、硫酸・過酸化水素水溶液、・・・等が挙げられる。・・・
本願発明の第1工程では上記酸素及び/又は酸素を含む分子を含有する溶液を基体の表面に接触させて、基体の表面に酸化膜を形成する。・・・
たとえば、室温では30分間で1nmの酸化膜が形成され、70?85℃の温度範囲では24時間で2?5nmの酸化膜が形成される。」(第5頁第24行?第6頁第17行)
d.「本発明の第2の工程で使用される酸素を含む分子としては前記第1工程と同様のものを気相で用いることができる。前記不活性ガスとしては、たとえば窒素ガス、アルゴンガス、・・・等が挙げられる。・・・
第2工程の前記酸化膜の温度は20?600℃が好ましく、100?500℃がより好ましいが500℃に近い温度の方が、短時間で目的が達せられて実用的な意味が大きいためさらに好ましい。
第2工程の熱処理温度はウエハの状態が許す限り高い温度が望ましい。」(第7頁第14行?第8頁第7行)
e.「さらに、酸化膜1の形成された2枚のウエハのうちの1枚を、窒素ガス(不純物濃度数ppb以下)中において、800℃×1時間の熱処理を行った。・・・この熱処理後の酸化膜を酸化膜2とする。
・・・
酸化膜1及び酸化膜2に1Vの電圧を印加したところ、酸化膜1には1A/cm^(2)以上の電流が流れたのに対し、酸化膜2には、1×10^(-4)A/cm^(2)の電流しか流れなかった。」(第13頁第6行?第22行)

(2)対比
引用例1には次の事項が記載されている。
「70?85℃の温度範囲の過酸化水素水を、酸化膜を形成しようとするシリコン基板の表面に接触させて該基体の表面に酸化膜を形成する第1工程、
酸素、酸素を含む分子もしくは不活性ガスまたはこれらのうちの2種以上の混合物の気相中において、前記酸化膜を500℃に近い温度で熱処理することにより前記酸化膜中のシリコン基板表面を構成する原子と酸素の結合を強くする第2工程、
とを少なくとも備え、熱処理後の酸化膜2に1Vの電圧を印加したところ、1×10^(-4)A/cm^(2)の電流しか流れていない酸化膜の形成方法」(以下、「引用発明」という。)

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の、「70?85℃の温度範囲の過酸化水素水」、「シリコン基板」、「接触」が、本願発明の、「加熱した酸化性の薬液」、「半導体基板」、「浸漬」にそれぞれ対応するから、両者は、「半導体基板を加熱した酸化性の薬液に浸漬して表面に酸化膜を形成し、その後ガス中で熱処理することを特徴とする半導体基板表面の酸化膜形成方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願発明では、熱処理するガスが不活性ガスであるのに対し、引用発明では、酸素、酸素を含む分子もしくは不活性ガスまたはこれらのうちの2種以上の混合物のガスである点

(3)判断
引用発明においては、不活性ガスをそのまま用いることも含まれており、酸化性ガスを添加するのは、酸化膜の膜厚を増加させるためであるから、酸化膜厚を増加させる必要のない場合には酸化性ガスを添加しない不活性ガスのみを用いることは当業者が適宜成しうることである。
そして、本願発明の効果も引用発明のものから予測しうる程度のものである。

(4)むすび
よって、本願請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
従って、その余の請求項について論及するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-12 
結審通知日 2008-08-19 
審決日 2008-09-01 
出願番号 特願2000-249234(P2000-249234)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 粟野 正明
市川 裕司
発明の名称 半導体基板表面の酸化膜形成方法および半導体装置の製造方法  
代理人 長谷川 文廣  
代理人 渡部 章彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ