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審決分類 |
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1186626 |
審判番号 | 不服2006-6001 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-30 |
確定日 | 2008-10-24 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 10562号「ビデオ記録装置およびそれを用いたビデオカメラ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月29日出願公開、特開平10-143977〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成9年1月23日(優先権主張 平成8年9月10日)に出願したものであって、平成17年9月8日付けの拒絶理由通知に対する応答期間内の同年11月11日付けで手続補正がなされたが、平成18年2月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年3月30日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年5月1日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成18年5月1日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年5月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成18年5月1日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、明細書及び特許請求の範囲についてするもので、そのうち特許請求の範囲については、補正前に 「【請求項1】 映像を記録媒体に記録すると共に、記録された信号に関する管理情報を記録するビデオ記録装置において、 記録した映像が不要であることを示す情報を生成させる操作部を有し、 上記操作部の操作により上記情報を上記管理情報として記録し、 記録動作中に上記記録媒体の残記録容量が無くなったときには、上記管理情報を参照することで不要とされる映像が記録された領域を検出し、検出された領域に新たな映像を上書きする ことを特徴とするビデオ記録装置。 【請求項2】 上記不要とされる信号が記録された領域のうち、最もデータ量の大きい領域から新たな映像を上書きする ことを特徴とする請求項1記載のビデオ記録装置。 【請求項3】 上記不要とされる映像が記録された領域のうち、上記記録媒体の残記録容量が無くなったときの記録ヘッドの位置に最も近接する領域から新たな映像を上書きする ことを特徴とする請求項1記載のビデオ記録装置。 【請求項4】 記録媒体を用いて撮像信号の記録を行うビデオ記録装置を有するビデオカメラ装置において、 記録した撮像信号が不要であることを示す情報を生成させる操作部を有し、 上記記録媒体には撮像信号を記録すると共に、記録された撮像信号に関する管理情報を記録するものとし、 上記操作部の操作により上記情報を上記管理情報として記録し、 撮影中に上記記録媒体の残記録容量がなくなったときには、上記管理情報を参照することで不要とされる撮像信号が記録された領域を検出し、検出された領域に新たな撮像信号を上書きする ことを特徴とするビデオカメラ装置。 【請求項5】 上記不要とされる撮像信号が記録された領域のうち、最もデータ量の大きい領域から新たな撮像信号を上書きする ことを特徴とする請求項4記載のビデオカメラ装置。 【請求項6】 上記不要とされる撮像信号が記録された領域のうち、上記記録媒体の残記録容量が無くなったときの記録ヘッドの位置に最も近接する領域から新たな撮像信号を上書きする ことを特徴とする請求項4記載のビデオカメラ装置。 【請求項7】 上記記録媒体の残記録容量がなくなったときの、上記不要とされる撮像信号が記録された領域への新たな撮像信号の上書きは、所定の操作部が操作されて記録時間の延長が選択されたときに行う ことを特徴とする請求項4記載のビデオカメラ装置。」 とあったところを、 「【請求項1】 映像を記録媒体に記録すると共に、記録された信号に関する管理情報を記録するビデオ記録装置において、 記録した映像が不要であることを示す情報及び記録時間の延長処理を行わせる操作信号を生成させる操作部を有し、 上記操作部の操作により上記映像が不要であることを示す情報を上記管理情報として記録し、 記録動作中に上記記録媒体の残記録容量が不足する場合には、上記管理情報を参照することで不要とされる映像を判別して新たな映像を上書きすることにより、上記操作信号に応じた記録時間の延長処理を行う ことを特徴とするビデオ記録装置。 【請求項2】 上記不要とされる映像が記録された領域のうち、最もデータ量の大きい領域から新たな映像を上書きする ことを特徴とする請求項1記載のビデオ記録装置。 【請求項3】 上記不要とされる映像が記録された領域のうち、上記記録媒体の残記録容量が無くなったときの記録ヘッドの位置に最も近接する領域から新たな映像を上書きする ことを特徴とする請求項1記載のビデオ記録装置。 【請求項4】 記録媒体を用いて撮像信号の記録を行うビデオ記録装置を有するビデオカメラ装置において、 記録した撮像信号が不要であることを示す情報及び記録時間の延長処理を行わせる操作信号を生成させる操作部を有し、 上記記録媒体には撮像信号を記録すると共に、記録された撮像信号に関する管理情報を記録するものとし、 上記操作部の操作により上記撮像信号が不要であることを示す情報を上記管理情報として記録し、 撮影中に上記記録媒体の残記録容量が不足する場合には、上記管理情報を参照することで不要とされる撮像信号が記録された領域を判別し、該判別した領域に新たな映像信号を上書きすることで、上記操作信号に応じた記録時間の延長処理を行う ことを特徴とするビデオカメラ装置。 【請求項5】 上記不要とされる撮像信号が記録された領域のうち、最もデータ量の大きい領域から新たな撮像信号を上書きする ことを特徴とする請求項4記載のビデオカメラ装置。 【請求項6】 上記不要とされる撮像信号が記録された領域のうち、上記記録媒体の残記録容量が無くなったときの記録ヘッドの位置に最も近接する領域から新たな撮像信号を上書きする ことを特徴とする請求項4記載のビデオカメラ装置。」 と補正しようとするものである。 1.補正の目的の適否 <限定的減縮の違反> 本件補正に関し、審判請求人は請求の理由(平成18年5月1日付けの請求の理由の手続補正書の(3)(b)を参照)で、「本請求の理由と同日付けの手続補正書において、記録時間の延長処理を行わせる操作信号が生成されることは、出願当初の明細書段落番号[0016][0025]の記載から明らかな事項である。また、残記録容量が不足する場合、管理情報を参照することで不要とされる映像(撮像信号)を判別して新たな映像(撮像信号)を上書きすることにより、操作信号に応じた記録時間の延長処理が行われることは、出願当初の明細書段落番号[0028][0030][0031]の記載から明らかな事項である」旨主張している。 ところで、本件補正は、審判請求時になされたものであるから、特許法第17条の2第4項各号に規定する事項を目的とするものに限られているところ、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮は、『特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)』とされている。 そこで、上記補正について検討する。 上記補正は、請求項の数は補正前に7個であったものを本件補正により6個と減縮するものであるが、単に請求項を減らしただけでなく、請求項1,4については、主として「操作部」に関し、「記録した映像が不要であることを示す情報を生成させる」としていたものを、本件補正により「記録した映像が不要であることを示す情報及び記録時間の延長処理を行わせる操作信号を生成させる」として特に、下線部の構成は操作部の内容を変更乃至拡張するものであり、このような補正は、補正前の請求項1,4に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。 また、請求項1,4に係る上記補正が、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。 3.補正についてのむすび したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たさないものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 4.独立特許要件についての検討 上記「1.?2.」で検討したとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する要件を満たさないものであるから、本来これ以上の検討は不要であるが、仮に、本件補正が、「操作部」を限定するものであり、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについても、以下に検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-98964号公報(平成7年4月11日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1-1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 円板状の記録媒体に情報信号をデジタル信号で記録すると共に少なくとも前記情報信号が記録された際の日付情報を記録するように成された記録再生装置において、新たに追加して記録する情報信号の時間長が記録媒体の空き領域よりも小ない場合に、既に記録されている情報信号に換えて、前記空き領域に記録できなかった続きの情報信号を記録することを特徴とする記録再生装置。 【請求項2】?【請求項3】(省略)。」 (1-2)「【0004】ディスク上の空きエリアの時間を確認せずに追加の記録を行い、もしもディスク上の空きエリアの時間が追加して記録する音楽情報の演奏時間より短かった場合には、追加して記録する音楽情報を全て記録できないという不都合が生じてしまう。」 (1-3)「【0007】 【実施例】以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について詳述する。 【0008】?【0010】(省略) 【0011】さらに、45はMDシステムを制御するMD制御回路で、メカニズム(図示せず)の記録-再生-早送り-早戻しの各モードへの移行とキー入力端子49やサブコードデータの処理を行い、前記デジタル信号処理回路33、デジタル信号処理回路40、サーボ制御回路44を制御する。 【0012】図2は前記光磁気ディスク30の断面を示した図であり、同図において、50はリードインエリアでディスク情報が予め記録されている領域、51はUTOCエリアでレコーディング情報が記録-再生できる領域、52はプログラムエリアで音楽情報が記録-再生できる領域、53はリードアウトエリアである。」 (1-4)「【0021】続いて本発明の他の実施例について、図5乃至図8に基づいて説明する。 【0022】先ず図5において、1,2,3,4は、前記と同様に、既に記録済みの音楽情報のTNOを示しており、T2はディスクの空きエリアの時間である。このディスクに、新たにTNOが5で記録時間がT1(T2<T1)の音楽情報を記録する場合、始めに制御回路45は、ディスクのUTOCエリア51を読み出し、空きエリアの開始点がP点であることを認識し、記録用磁気ヘッド31及び光ピックアップ38をディスクの空きエリアの開始点Pに移動して記録を開始する。 【0023】次に、記録用磁気ヘッド31及び光ピックアップ38が駆動され、実際にディスクに対してディジタル信号が記録される過程について、図7及び図8のタイムチャートに基づいて説明する。 【0024】アナログ音声信号等の情報信号は、ATRAC処理回路34により情報量が約1/4に圧縮されているため、ディスクに対して実際に記録・再生のためにアクセスする時間長も約1/4である。従って、図7に示すように、TAから記録を開始したとすれば、ディスクに対して実際に記録を行っている時間はa1で示されるtrの時間であり、txは空き時間である。a1からa8までで1曲(1つのトラックNO分の記録データ)を構成しているとすれば、a1からa8までディスクに対して間欠記録(再生)動作を行っており、各々の間に空き時間txが存在しているのである。 【0025】ディスクの空きエリアの時間T2(図5参照)経過以前にディスクの空きエリアが無いことを制御回路45が判断すると、制御回路45はディスクのUTOCエリア51を読み出し、表3に示すような記録日時タイムテーブルを参照する。表3の例では、 【0026】 【表3】(略) 【0027】TNO3の記録日時が最も古いため、図6において、任意の時点TBから記録を開始したとすれば、ディスクに対して実際に記録されるa11で示される時間長trの経過後、空き時間のtxを利用して、tyの時間に光ピックアップ38をTNO3の開始点U(図5参照)に移動し、TCからx1で示されるtpの時間よりTNO3の音楽情報を再生を開始する。 【0028】音楽信号等の情報信号はATRAC処理回路34により情報量が約1/4に圧縮されているため、実際にディスクに対して再生のためにアクセスする時間長も約1/4であり、x1,x2,x3の各々の時間tpを間欠再生するだけでTNO3の音楽情報の再生が可能である。TNO3の音楽情報を再生することにより、制御回路45は使用者に対してTNO3の音楽情報を消去してもよいかを表示器(図示せず)等を利用して促す。もし、使用者が消去してはいけないという指示をキー入力端子49等から与えれば、TNO3の記録日時の次に古いTNOを記録日時タイムテーブルより検索する。 【0029】前記表3の例ではTNO2の記録日時が次に古いため、任意の時点TDから記録を開始したとすれば、同様にディスクに対して実際に記録されるa14で示される時間長trの経過後、空き時間を利用してtyの時間に光ピックアップ38をTNO2の開始点R(図5参照)に移動し、TEからy1で示されるtpの時間よりTNO2の音楽情報の再生を開始し、制御回路45は、使用者に対してTNO2の音楽情報を消去してもよいかを表示器(図示せず)等を利用して促す。 【0030】もしも、TF時点までに使用者が消去しても良いという指示をキー入力端子49等から与えれば、TNO5の音楽情報をP点からQ点まで記録後(図5参照)、TNO2の開始点R(図6参照)に光ピックアップ38を移動し、TNO2の記録済みの音楽情報の記録順序に従ってTNO5の音楽情報を記録する。TNO5の音楽情報の記録終了点はSとなり、記録終了後において、制御回路45はディスクのUTOCエリア51内のTNOの記録開始-終了-連続性の記録エリアを、 【0031】 【表4】(略) 【0032】というように書き換える。このディスクを再生すると、TNO2を選曲した場合には、S点より再生が開始され、TNO5を選曲した場合には、P点より再生が開始されQ点まで到達した後、R点からS点まで再生される。 【0033】本発明は、追加記録を行う際に追加される音楽情報の時間長が不明である屋外生録やエアチェック時には特に有効であり、タイムスタンプが古い音楽情報から順番に消去するため、常に最新の音楽情報のみディスク上に存在する。さらに、消去してもよいかの判断を使用者に問い合わせるため、誤消去も防止できる。」 上記摘示事項の記載を参酌すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「円盤状の記録媒体(ディスク)に情報信号を記録すると共に前記情報信号が記録された際の日付情報を記録する記録再生装置において、 キー入力端子と、 制御回路と を有し、 制御回路は、 ディスクの空きエリアの時間経過以前にディスクの空きエリアが無いことを判断すると、UTOCエリアを読み出し記録日時タイムテーブルを参照して記録日時の古い情報信号を再生し、キー入力端子から消去指示を与えると、記録済みの記録順序に従って情報信号を記録する 記録再生装置。」 また、拒絶査定時に提示された特開平4-207679号公報(平成4年7月29日公開、以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。 (1-5)「VTR2には、記録開始媒体位置、記録終了媒体位置、未再生/再生済フラグ及び、消去可/消去不可フラグ等の記録情報の属性をビデオテープ等の記録媒体(第3図に模式的に示す)9の一部分、例えば第3図に示すようにテープ先頭から一定の領域、即ち、属性情報格納領域10に記録及び再生する属性記録再生手段が内蔵されている。また、例えば、再生のために記録媒体9をVTR2に挿入すると、記録媒体9の属性情報格納領域10に記録されている属性情報の一部が属性記録再生手段により再生されて、表示手段としてのTV1の画面に表示される。即ち、例えば第2図に示すように、TV1の画面には録画チャンネル3、録画日4、録画開始時刻5、録画終了時刻6、未再生/再生済フラグ7及び消去可/消去不可フラグ8が表示される。 VTR2には、前記記録情報の内で消去を許可するものに対して記録情報の属性の消去可/消去不可フラグを消去可に設定入力し、消去を許可しないものに対して前記消去可/消去不可フラグを消去不可に設定入力する第1の入力手段が設けられ、この第1の入力手段の設定結果がVTR1の画面に表示されることになる。 …(中略)… 前記消去可/消去不可フラグ8は録画されている番組の中で新たな番組の録画により消去されても構わない情報(番組)を指定するものであり、録画時の記録媒体9の空き領域、即ち、未使用領域及び既使用領域の中の消去可とされた領域を検出するのに使用する。」(3頁左下欄3行?4頁左上欄4行) (1-6)「以上、本発明をVTRを使用する場合を例にとって説明したが、本発明はビデオディスク等の他の映像音響記録装置にも適用することができる。」(5頁右上欄7?9行) (2)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 (2-1)本願補正発明の「映像」は、「情報信号」の下位概念であるから、引用発明の「情報信号」と共通する。 (2-2)引用発明の「ディスク(記録媒体)」は、本願補正発明の「記録媒体」に相当する。 (2-3)引用発明の「UTOCエリアを読み出し」は、情報信号としての記録日時タイムテーブルを含み、記録された信号に関するものであるから、本願補正発明の「管理情報」に相当する。 (2-4)引用発明の「記録再生装置」は、本願補正発明の「ビデオ記録装置」と共通する。 (2-5)引用発明の「キー入力端子」であるが、引用例1に制御回路でキー入力端子の処理を行う(上記(1-4)参照)と記載されているから、本願補正発明の「操作部」に相当する。 (2-6)引用発明の「空きエリア」は、本願補正発明の「残記録容量」に相当する。そして、引用発明の「ディスクの空きエリアの時間経過以前にディスクの空きエリアが無いことを判断」は、残記録容量の有無をみているものであり、及び「記録済みの記録順序に従って情報信号を記録」は、空きエリアが無いことを判断した後に記録日時の古い情報信号に上書きして記録時間を確保していくことから、本願補正発明の「記録動作中に上記記録媒体の残記録容量が不足する場合」及び「新たな映像(情報信号)を上書きすることにより、記録時間の延長処理を行う」に相当する。 そうすると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「映像(情報信号)を記録媒体に記録すると共に、記録された信号に関する管理情報を記録するビデオ(情報信号)記録装置において、 操作部を有し、 記録動作中に上記記録媒体の残記録容量が不足する場合には、不要とされる映像(情報信号)を判別して新たな映像(情報信号)を上書きすることにより、記録時間の延長処理を行う ビデオ(情報信号)記録装置。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> (a)「操作部」について、本願補正発明は、「記録した映像が不要であることを示す情報及び記録時間の延長処理を行わせる操作信号を生成させる」のに対し、引用発明は、そのような機能をもたせることについて記載されていない点。 (b)本願補正発明は、「上記操作部の操作により上記映像が不要であることを示す情報を上記管理情報として記録」しているのに対し、本願補正発明は、そのような構成について記載されていない点。 (c)「不要とされる映像」の判別について、本願補正発明は、「上記管理情報」を参照することで判断するのに対し、引用発明は、UTOCの記録日時タイムテーブルを参照し、情報信号を再生して消去可をもって判断する点。 (d)「記録時間の延長処理」について、本願補正発明は、「上記操作信号に応じた」ものであるのに対し、引用発明は、そのようになされていない点。 (3)判断 そこで、上記各相違点について検討する。 相違点(a)について 引用例2には、記録情報の内で消去を許可するものに対して記録情報の属性の消去可/消去不可フラグを消去可に設定する入力手段を設けること、要するに、記録情報が不要であることを示す消去可フラグ(情報)を生成する入力手段(操作部)の記載がなされている。 また、記録再生技術の分野において、新たな機能を付加する場合、操作部の切換制御により行わせることは極く普通に採用されている手段にすぎない。 そうすると、引用発明において、引用例2に記載された技術事項及び常套手段を適用して、相違点(a)のように「操作部」を「記録した映像が不要であることを示す情報及び記録時間の延長処理を行わせる操作信号を生成させる」とすることは、当業者が容易に想到できたものである。 相違点(b)について 引用例2には、入力手段で設定された消去可/消去不可フラグ等の記録情報の属性を記録媒体の属性情報格納領域に記録すること、要するに、入力手段の設定により記録情報が不要であることを示す消去可フラグ(情報)を属性情報格納領域に記録情報の属性(管理情報)として記録することが記載されている。 そうすると、引用発明において、上記技術事項を適用して、相違点(b)のように、「上記操作部の操作により上記映像が不要であることを示す情報を上記管理情報として記録」することは、当業者が容易に想到できたものである。 相違点(c)について 引用例2には、「消去可/消去不可フラグは録画されている番組の中で新たな番組の録画により消去されても構わない番組を指定するものであり」と記載(上記(1-5))されている。要するに、消去可/消去不可フラグ(情報)により、不要とされる番組が判別されるものである。 そうすると、引用発明において、上記技術事項を適用して、相違点(c)のように、「上記管理情報」を参照することで不要とされる映像を判別することは、当業者が容易に想到できたものである。 相違点(d)について 相違点(a)で検討したように、操作部で記録時間の延長処理を行わせる操作信号を生成させることは、当業者が適宜に採用しうる設計的事項であるから、記録時間の延長処理を「上記操作信号に応じて」行うことも適宜なし得るものである。 そして、本願補正発明が奏する効果は引用例1、引用例2及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (4)独立特許要件のむすび 以上のとおり、本件補正は、仮に平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成18年5月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年11月11日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2 1.」の補正前の「請求項1」として記載したとおりである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、引用例の記載事項は、上記「第2[理由]4.(1)」に示したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2[理由]4.(2)(3)」で検討した本願補正発明から、概略、「記録時間の延長処理を行わせる操作信号」及び「上記操作信号に応じた」を省略したものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]4.(2)(3)」に記載したとおり、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることがであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-19 |
結審通知日 | 2008-08-26 |
審決日 | 2008-09-10 |
出願番号 | 特願平9-10562 |
審決分類 |
P
1
8・
574-
Z
(G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B) P 1 8・ 121- Z (G11B) P 1 8・ 575- Z (G11B) P 1 8・ 573- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田付 徳雄 |
特許庁審判長 |
小松 正 |
特許庁審判官 |
江畠 博 漆原 孝治 |
発明の名称 | ビデオ記録装置およびそれを用いたビデオカメラ装置 |
代理人 | 山口 邦夫 |