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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1186636
審判番号 不服2006-12434  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-15 
確定日 2008-10-24 
事件の表示 特願2001-312261「電気二重層キャパシタおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-124080〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年10月10日の出願であって、平成18年5月8日付けで、平成18年2月28日付けの手続補正の補正却下がなされるとともに、拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月12日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成20年2月12日付けで審尋がなされ、同年4月9日に回答書が提出されたものである。

第2 平成18年7月12日付けの手続補正(以下、「本件補正1」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年7月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正1の内容
平成18年2月28日付けの手続補正は原審において同年5月8日付けで補正却下されているので、本件補正1の基礎となる明細書は、平成17年10月17日付けの手続補正により補正された明細書である。
そして、本件補正1は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を補正するものであり、特許請求の範囲についての補正は、以下のとおりである。

本件補正1前の請求項1
「【請求項1】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、前記キャパシタ本体は、同数の正極体と負極体と、これらを1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすることを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

本件補正1前の請求項2
「【請求項2】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、前記キャパシタ本体は、同数の正極体と負極体と、これらの正極体または負極体のいずれか一方を1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすることを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

本件補正1前の請求項4
「【請求項4】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタの製造方法において、キャパシタ本体を構成する工程として、金属箔の両面に分極性電極の構成材質としてペースト状のものを塗布するか、または板状のものを貼り合わせることにより、正極体および負極体に加工されるシートを製作する工程と、このシートから所定形状の正極体および負極体を型抜き加工する工程と、2つ折りのセパレータを製作する工程と、同数の正極体と負極体を交互に積層する前にこれらの正極体および負極体の少なくとも一方を1個ずつ2つ折りのセパレータの内側にそれぞれ差し入れる工程と、を備え、2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすることを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。」

本件補正1後の請求項1
「【請求項1】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、前記キャパシタ本体は、同数の正極体と負極体と、これらを1個ずつ挟み込むように2つ折りにした薄物の多孔質膜からなるセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設けることを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

本件補正1後の請求項2
「【請求項2】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、前記キャパシタ本体は、同数の正極体と負極体と、これらの正極体または負極体のいずれか一方を1個ずつ挟み込むように2つ折りにした薄物の多孔質膜からなるセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設けることを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

本件補正1後の請求項4
「【請求項4】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタの製造方法において、キャパシタ本体を構成する工程として、金属箔の両面に分極性電極の構成材質としてペースト状のものを塗布するか、または板状のものを貼り合わせることにより、正極体および負極体に加工されるシートを製作する工程と、このシートから所定形状の正極体および負極体を型抜き加工する工程と、薄物の多孔質膜を2つ折りにしたセパレータセパレータを製作する工程と、同数の正極体と負極体を交互に積層する前にこれらの正極体および負極体の少なくとも一方を1個ずつ2つ折りのセパレータの内側にそれぞれ差し入れる工程と、を備え、2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設けることを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。」

2.補正内容の整理
(1)補正前の請求項1についての補正
(ア)補正事項1
補正前の請求項1の「これらを1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータ」を、補正後の請求項1の「これらを1個ずつ挟み込むように2つ折りにした薄物の多孔質膜からなるセパレータ」と補正したものである。

(イ)補正事項2
補正前の請求項1の「この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすること」を、補正後の請求項1の「この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設けること」と補正したものである。

(2)補正前の請求項2についての補正
(ア)補正事項3
補正前の請求項2の「いずれか一方を1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータ」を、補正後の請求項2の「いずれか一方を1個ずつ挟み込むように2つ折りにした薄物の多孔質膜からなるセパレータ」と補正したものである。

(イ)補正事項4
補正前の請求項2の「この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすること」を、補正後の請求項2の「この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設けること」と補正したものである。

(3)補正前の請求項4についての補正
(ア)補正事項5
補正前の請求項4の「2つ折りのセパレータを製作する工程」を、補正後の請求項4の「薄物の多孔質膜を2つ折りにしたセパレータセパレータを製作する工程」と補正したものである。

(イ)補正事項6
補正前の請求項4の「2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすること」を、補正後の請求項4の「2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設けること」と補正したものである。

3.補正の目的の適否について
(1)補正事項2,4,6について
補正事項2,4,6についての補正は、「前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」との構成を削除するものであるから、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。よって、補正事項2,4,6についての補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、また、同法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号に掲げる請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないから、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

4.小むすび
したがって、その他の補正事項について検討するまでもなく、補正事項2,4,6についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしておらず、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の認定
平成18年7月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成17年10月17日付けの手続補正で補正された、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものである。

第4 新規事項について(特許法第17条の2第3項について)
1.最後の拒絶理由通知の概要
原審における平成17年12月28日付けの最後の拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。
「平成17年10月17日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



・請求項:1,2,4
・備考
補正により請求項1,2,4には、「この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」と記載されている。
そして、出願人が上記補正の根拠とする発明の詳細な説明の段落0030には、「2つ折りのセパレータ4に折り重ね部4cが加わるため、2つ折りの折れ曲げ線4aおよび折り重ね部4cの折り曲げ線4bを基準にモジュール1は縦横の2方向に位置決め可能となり、薄物どうし(正極体および負極体とこれらの間に位置されるセパレータ4と)のズレが適確に防止される。」と記載されている。
しかしながら、上記段落0030には、折り重ね部がセパレータに対するモジュール(正極体および負極体)の位置決めを行って、前記モジュールと前記セパレータとのズレを防止することは記載されているが、「キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」ことまで、記載されているとは認められない。また、それ以外の明細書又は図面に、「キャパシ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」ことが記載されているとも認められない。
したがって、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。」

2.平成17年10月17日付けの手続補正
(1)補正の内容
平成17年10月17日付けの手続補正(以下、「本件補正2」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1,請求項2及び請求項5を補正後の特許請求の範囲の請求項1,請求項2及び請求項4と補正するとともに、補正前の明細書の0005段落,0006段落,0009段落,0010段落,0015段落及び0016段落を補正後の明細書の0005段落,0006段落,0009段落,0010段落,0015段落及び0016段落と補正し、さらに、補正前の明細書の0008段落及び0014段落を削除するものであり、補正前の請求項1,請求項2及び請求項5と、補正後の請求項1,請求項2及び請求項4は各々以下のとおりである。

本件補正2前の請求項1
「【請求項1】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、前記キャパシタ本体は、同数の正極体と負極体と、これらを1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成したことを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

本件補正2前の請求項2
「【請求項2】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、前記キャパシタ本体は、同数の正極体と負極体と、これらの正極体または負極体のいずれか一方を1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成したことを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

本件補正2前の請求項5
「【請求項5】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される容器と、を備える電気二重層キャパシタの製造方法において、キャパシタ本体を構成する工程として、金属箔の両面に分極性電極の構成材質としてペースト状のものを塗布するか、または板状のものを貼り合わせることにより、正極体および負極体に加工されるシートを製作する工程と、このシートから所定形状の正極体および負極体を型抜き加工する工程と、2つ折りのセパレータを製作する工程と、同数の正極体と負極体を交互に積層する前にこれらの正極体および負極体の少なくとも一方を1個ずつ2つ折りのセパレータの内側にそれぞれ差し入れる工程と、を備えたことを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。」

本件補正2後の請求項1
「【請求項1】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、前記キャパシタ本体は、同数の正極体と負極体と、これらを1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすることを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

本件補正2後の請求項2
「【請求項2】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、前記キャパシタ本体は、同数の正極体と負極体と、これらの正極体または負極体のいずれか一方を1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすることを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

本件補正2後の請求項4
「【請求項4】同数の正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、このキャパシタ本体を電解液と共に収容して密封される樹脂フィルムからなる容器と、を備える電気二重層キャパシタの製造方法において、キャパシタ本体を構成する工程として、金属箔の両面に分極性電極の構成材質としてペースト状のものを塗布するか、または板状のものを貼り合わせることにより、正極体および負極体に加工されるシートを製作する工程と、このシートから所定形状の正極体および負極体を型抜き加工する工程と、2つ折りのセパレータを製作する工程と、同数の正極体と負極体を交互に積層する前にこれらの正極体および負極体の少なくとも一方を1個ずつ2つ折りのセパレータの内側にそれぞれ差し入れる工程と、を備え、2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをすることを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。」

(2)本件補正2の内容の整理
(2-1)本件補正2の内、補正前の請求項1についての補正内容を整理する。
〈補正事項1〉
本件補正2前の請求項1の「密封される容器」を、本件補正2後の請求項1の「密封される樹脂フィルムからなる容器」と補正すること。
〈補正事項2〉
本件補正2前の請求項1の「これらを1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成した」を、本件補正2後の請求項1の「これらを1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、」と補正すること。
〈補正事項3〉
本件補正2前の請求項1の「ことを特徴とする」の前に、本件補正2後の請求項1の「前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」との構成を付加すること。

(2-2)本件補正2の内、補正前の請求項2についての補正内容を整理する。
〈補正事項4〉
本件補正2前の請求項2の「密封される容器」を、本件補正2後の請求項2の「密封される樹脂フィルムからなる容器」と補正すること。
〈補正事項5〉
本件補正2前の請求項2の「いずれか一方を1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成した」を、本件補正2後の請求項2の「いずれか一方を1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、」と補正すること。
〈補正事項6〉
本件補正2前の請求項2の「ことを特徴とする」の前に、本件補正2後の請求項2の「前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」との構成を付加すること。

(2-3)本件補正2の内、補正前の請求項5についての補正内容を整理する。
〈補正事項7〉
本件補正2前の請求項5の「密封される容器」を、本件補正2後の請求項4の「密封される樹脂フィルムからなる容器」と補正すること。
〈補正事項8〉
本件補正2前の請求項5の「同数の正極体と負極体を交互に積層する前にこれらの正極体および負極体の少なくとも一方を1個ずつ2つ折りのセパレータの内側にそれぞれ差し入れる工程と、を備えた」を、本件補正2後の請求項4の「同数の正極体と負極体を交互に積層する前にこれらの正極体および負極体の少なくとも一方を1個ずつ2つ折りのセパレータの内側にそれぞれ差し入れる工程と、を備え、2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け、」と補正すること。
〈補正事項9〉
本件補正2前の請求項5の「ことを特徴とする」の前に、本件補正2後の請求項4の「前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」との構成を付加すること。

3.本件補正2についての検討
(1)願書に最初に添付した明細書または図面の記載
本願の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)又は図面(以下「当初図面」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項4】2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気二重層キャパシタ。」
「【0011】
【発明の効果】第1の発明においては、同数の正極体と負極体は1個ずつ、2つ折りのセパレータに挟み込まれる。つまり、キャパシタ本体は、正極体とこれを挟むセパレータと、負極体とこれを挟むセパレータと、が交互に積層する構造に組成される。2つ折りのセパレータにおいて、その折れ曲げ線を基準に正極体または負極体を位置決めすることにより、薄物どうし(正極体および負極体とこれらの間に介在させるセパレータと)のズレが防止される。正極体および負極体とセパレータとの間にズレを生じると、正極体と負極体との絶縁が不完全となり、短絡する可能性が考えられるのである。」
「【0014】第4の発明においては、2つ折りのセパレータに折り重ね部が加わるため、互いに直交する折れ曲げ線を基準に正極体または負極体を縦横の2方向に位置決めすることにより、薄物どうし(正極体および負極体とこれらの間に位置されるセパレータと)のズレが適確に防止される。」
「【0020】キャパシタ本体は、容器に収容して電解液に浸される。図示しないが、容器は金属層を含む積層構造の樹脂フィルム(たとえば、アルミラミネート)から形成され、その一側から1対の端子(一部)が引き出される。容器の内部は、真空引きにより、余分な電解液を抜き取り、真空状態に密封されるのである。
【0021】このような構成により、2つ折りのセパレータ4において、その折れ曲げ線4aを基準にモジュール1の位置決めが可能となる。たとえば、図3のようにモジュール1を挟み込む2つ折りのセパレータ4をその折れ曲げ線4aが水平な下辺となる縦置き状態で積層などを処理すると、2つ折りのセパレータ4の折れ曲げ線4aがモジュール1の位置を規制するため、製造過程における、薄物どうし(正極体1aおよび負極体1bとこれらの間に介在させるセパレータ4と)のズレが防止される。」
「【0025】図5は、電気二重層キャパシタの製造工程(一部分)を説明するものであり、(a)?(c)はモジュール1を製作する工程、(d)?(f)は2つ折りのセパレータ4を製作する工程、(g)はモジュール1を2つ折りのセパレータ4に挟み込む(組み付ける)工程、を表す。」
「【0028】(f)において、2つ折りのセパレータ4は、その折り曲げ線4aと直交する折り曲げ線4bをもって2つ折りに重なる両面(半面どうし)の辺部に折り重ね部4cが設けられる。なお、これら折り重ね部4cは、2つ折りのセパレータ4(所定の大きさの生地13)において、その折り曲げ線4aの形成する一辺を除く三辺(モジュール1の分極性電極3を覆う領域の周囲)に設定の余白を利用して形成される。
【0029】(g)において、(c)のモジュール1に(g)のセパレータ4が組み付けられる。モジュール1は、開放される(折り曲げのない)一辺からセパレータ4の内側へ差し入れられるのである。
【0030】このような工程により、正極体1aおよび負極体1bは、シート10から型抜き加工することにより、所定形状のモジュール1に容易かつ能率的に作成される。2つ折りのセパレータ4に折り重ね部4cが加わるため、2つ折りの折れ曲げ線4aおよび折り重ね部4cの折り曲げ線4bを基準にモジュール1は縦横の2方向に位置決め可能となり、薄物どうし(正極体および負極体とこれらの間に位置されるセパレータ4と)のズレが適確に防止される。」

(2)補正事項3の新規事項の追加の有無についての検討
(2-1)当初明細書の記載について
(a)「前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」との記載は、当初明細書には一切記載されていない。
(b)さらに、「位置決め」に関する当初明細書の0030段落の「2つ折りのセパレータ4に折り重ね部4cが加わるため、2つ折りの折れ曲げ線4aおよび折り重ね部4cの折り曲げ線4bを基準にモジュール1は縦横の2方向に位置決め可能となり、薄物どうし(正極体および負極体とこれらの間に位置されるセパレータ4と)のズレが適確に防止される。」との記載について検討すると、「2つ折りの折れ曲げ線4aおよび折り重ね部4cの折り曲げ線4b」によりモジュール1(正極体および負極体)とセパレータ4が縦横の2方向に位置決めされ、モジュール1とセパレータ4とのズレが防止されること、言い換えると、キャパシタの構成要素である「モジュール1」と「セパレータ4」との、相互のズレの防止について記載されているだけで、モジュール1を積層した構成であるキャパシタ本体について「キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」ことは、記載されておらず、また上記記載から自明な事項でもない。
(c)よって、「前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」ことは、当初明細書には記載されておらず、また当初明細書の記載から自明な事項でもない。

(2-2)当初図面の記載について
セパレータに折り重ね部が形成されていることが示されているのは、図5(f)(g)のみであるが、これらは、単体のセパレータにすぎず、セパレータの組み合わせについては示されていないから、「前記キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」ことは、当初図面に記載されているということはできない。

(2-3)補正事項3についてのまとめ
よって、補正事項3についての補正は、当初明細書又は当初図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(3)補正事項6,9の新規事項の追加の有無についての検討
上記2.(2)(2-2),(2-3)の補正事項6,9についての補正も、上記3.(2)(2-1)ないし(2-3)において検討したと同様の理由により、当初明細書又は当初図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(4)本件補正2についてのまとめ
以上、検討したとおり、補正事項3,6,9を含む本件補正2は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第5 進歩性について(特許法第29条第2項について)
仮に、平成17年10月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとして、本件補正2後の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)が、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしているか否かについて検討する。

1.刊行物に記載された発明
(1)刊行物1:特開平10-326608号公報
原審の平成17年8月22日付けの拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には、「袋状セパレータ及び二次電池」(発明の名称)に関して、図1?図3、図6とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下、同様。)
「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、極板を内部に配置した本発明の一実施の形態の袋状セパレータの斜視図であり、図2は図1のII-II線断面図である。両図に示すように、袋状セパレータ1は、極板2を包む形状に1枚のセパレータ材料シートを半分に折り曲げて、折り曲げ部の両側に2つのセパレータ部材3,4を形成するように構成されている。本例では、図3の平面図に示すポリエチレンの不織布からなるセパレータ材料シートS1を用い、セパレータ材料シートS1の破線A1を折り曲げて袋状セパレータ1を形成した。なお、セパレータ材料シートS1に付した符号は、袋状セパレータ1を形成した際の各部の符号に対応している。袋状セパレータ1の一方のセパレータ部材3は、図2に詳細に示すように、縁部に一対の起立部3a,3bを有しており、他方のセパレータ部材4も、縁部に一対の起立部4a,4bを有している。これらの起立部3a,3b及び4a,4bは、極板2を挿入する袋状セパレータ1の開口部を構成する辺の両側に位置する一対の辺がセパレータ部材の主面に対して同じ方向に起立して折り曲げられて構成されている。また、起立部4a,4bの互いに向い合う面4a1 ,4b1 が極板2の両側部の面2a,2bとそれぞれ同一面上に位置するように、起立部3a,3b及び4a,4bは折り曲げられている。本例では、起立部3a,3b及び4a,4bは、それぞれセパレータ部材の主面に対してほぼ直角に起立している。そして、一方のセパレータ部材3の一対の起立部3a,3bの内側に他方のセパレータ部材4の一対の起立部4a,4bがそれぞれ位置して、対応する二つの起立部3a,4a及び3b,4bの縁部が溶着により接合されて一対の接合部5a,5bが形成されている。また、起立部3a及び4aは、その端部の面3a_(1 )及び4a_(2 )が同一面上に位置するように形成されており、起立部3b及び4bもその端部の面3b_(1 )及び4b_(2 )が同一面上に位置するように形成されている。これにより、セパレータ部材3の幅寸法W_(1 )は、セパレータ部材4の幅寸法W_(2 )よりも長くなる(図2)。本例では、セパレータ部材3の幅寸法W_(1 )は、セパレータ部材4の幅寸法W_(2 )よりも極板2の厚みの約2倍分長くなっている。」
「【0013】図6は、図1に示す袋状セパレータを用いた鉛二次電池(鉛蓄電池)の断面図である。本図に示すように、鉛蓄電池は、3枚の負極板21…と袋状セパレータ1内にそれぞれ収納された2枚の正極板2,2とが交互に重合された極板群22が電槽23内に収納されて構成されている。2つの袋状セパレータ1,1の接合部5a及び5b,5a及び5bは、それぞれが負極板21及び正極板2が重合される同一方向に曲がっている。そして、これら一対の接合部5a,5bの外側部5a_(1 ),5b_(1 )は、電槽23の対向する一対の内壁面23a,23bと接触している。また、一対の接合部5a,5bの内側部5a_(2 ),5b_(2 )は、隣接する負極板21の両側部とそれぞれ接触している。」
以上から、刊行物1には、
「3枚の負極板と袋状セパレータ内にそれぞれ収納された2枚の正極板とが交互に重合された極板群と、電槽と、を備える鉛蓄電池において、前記極板群は、3枚の負極板と2枚の正極板と、正極板がそれぞれ収納された袋状セパレータと、からなり、この袋状セパレータは1枚のセパレータ材料シートを半分に折り曲げて、折り曲げ部の両側に2つのセパレータ部材を形成するように構成され、一方のセパレータ部材は縁部に一対の起立部を有しており、他方のセパレータ部材も縁部に一対の起立部を有しており、前記極板群は、袋状セパレータの同一方向に曲がった外側部が電槽の対向する一対の内壁面と接触している鉛蓄電池。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)刊行物2:特開平11-162787号公報
原審の平成17年8月22日付けの拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2には、「電気化学的蓄電素子用電極体製造法」(発明の名称)に関して、図5(b)とともに以下の事項が記載されている。
「【0052】( キャパシタの組み立て )この電極体のそれぞれ15枚づつを、正電極体および負電極体として、図5(b)に示すように、間にセパレータとして、105mm角、厚み0.15mmのプロピレン繊維性不織布をはさんで積層し、積層素子体を得た。これを、100℃で3時間乾燥した。」
また、図5(b)には、電気二重層キャパシタの素子として、同数枚の正極体及び負極体を間にセパレータを介在させて交互に積層させたものが示されている。
以上から、刊行物2には、「同数の正極体及び負極体を間にセパレータを介在させて交互に積層させた素子を用いた電気二重層キャパシタ」が記載されている。

(3)周知例1:特開2001-217165号公報
本願の出願前に日本国内で頒布された周知例1には、「電気二重層コンデンサ及びその製造方法」(発明の名称)に関して、図5とともに以下の事項が記載されている。
「【0023】このラミネート材は、液体の封止性に優れ、かつ、薄膜として製作可能なことから、電気化学部品への応用が検討され、アルミ電解コンデンサ(例えば、特開昭56-049513号,特開昭59-051512号及び特開昭60-213016号に記載されている。)や電気二重層コンデンサ(例えば、特開平02-094619号に記載されている。)などに採用さている。
【0024】また、このようなラミネート材は、製造プロセスが簡単で、コスト削減にも寄与するという特徴があり、さらに、電気二重層コンデンサにとっては、減圧下で基本セルを封止する際に大気圧によって素子に加圧が可能であり、構成材料間の接触抵抗を低減できるといった効果があった。
【0025】このラミネート材は、具体的には、厚さが10?100μmのアルミニウム箔またはアルミニウム合金の箔の両側に、数十μmの樹脂フィルムが接着されており、内側の融着面には、一般的に、ポリエチレン樹脂,エチレン共重合樹脂又はポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂を使用している。」
また、図5には、ラミネートフィルムを電気二重層コンデンサの容器として用いることが示されている。
以上から、周知例1には、素子を樹脂フィルムからなる容器で密封した電気二重層コンデンサが記載されている。

(4)周知例2:特開2000-353645号公報
本願の出願前に日本国内で頒布された周知例2には、「蓄電装置及び積層型蓄電装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0012】
【実施例2】市販されているポリエチレンフィルムを素子の大きさに合わせて切断し、2枚重ねとしてこの3方を予め封止して袋体を形成しておく。この袋体内に、上述した電解液を染み込ませた電気二重層コンデンサ素子1を入れ、シール装置を用いて袋体の開口部を真空封止して電気二重層コンデンサとする。」
以上から、周知例2には、素子をポリエチレンフィルムからなる袋体で密封した電気二重層コンデンサが記載されている。

2.本願発明と引用発明の対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「負極板」、「正極板」、「電槽」は、それぞれ本願発明の「負極体」、「正極体」、「容器」に相当する。
(b)引用発明の「正極板がそれぞれ収納された袋状セパレータと、からなり、この袋状セパレータは1枚のセパレータ材料シートを半分に折り曲げて、折り曲げ部の両側に2つのセパレータ部材を形成するように構成され、一方のセパレータ部材は縁部に一対の起立部を有しており、他方のセパレータ部材も縁部に一対の起立部を有しており、」は、刊行物1の図1?3,図6から明らかなように、起立部を形成するため、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線を設けているから、本願発明の「正極体」「を1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線を」「設け」に相当し、「正極体」は、「これらの正極体または負極体のいずれか一方」に含まれる。
(c) 引用発明の「3枚の負極板と袋状セパレータ内にそれぞれ収納された2枚の正極板とが交互に重合された極板群」と本願発明の「正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成されるキャパシタ本体」は、「極板群」という点で一致する。
(d)引用発明の「鉛蓄電池」と、本願発明の「電気二重層キャパシタ」は、「蓄電装置」という点で一致する。

ゆえに、両者は、
「正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成される極板群と、容器と、を備える蓄電装置において、前記極板群は、正極体と負極体と、これらの正極体または負極体のいずれか一方を1個ずつ挟み込む2つ折りのセパレータと、から積層体に構成し、この2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線を設けたことを特徴とする蓄電装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]本願発明は、蓄電装置が「電気二重層キャパシタ」であり、容器に「キャパシタ本体を電解液と共に収容して密封され」ているのに対し、引用発明は、蓄電装置が「鉛蓄電池」である点。
[相違点2]本願発明は、「同数の正極体と負極体」という構成を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
[相違点3]本願発明は、「樹脂フィルムからなる」容器を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
[相違点4]本願発明は、「2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け」るという構成を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
[相違点5]本願発明は、「キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」という構成を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
引用発明の「鉛蓄電池」と本願発明の「電気二重層キャパシタ」とは、正極体と負極体をこれらの間にセパレータを介在させて交互に積層して構成される点で類似の技術であるから、引用発明の「鉛蓄電池」の技術を、電気二重層キャパシタの技術に転用し、容器に「キャパシタ本体を電解液と共に収容して密封」することは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
刊行物2には、「同数枚の正極体及び負極体を間にセパレータを介在させて交互に積層させた素子を用いた電気二重層キャパシタ」が記載されているから、引用発明において、「同数の正極体及び負極体」との構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点3について]
周知例1には、「素子を樹脂フィルムからなる容器で密封した電気二重層コンデンサ」が記載されており、周知例2には「素子をポリエチレンフィルムからなる袋体(本願発明の「樹脂フィルムからなる容器」に相当)で密封した電気二重層コンデンサ」が記載されているから、引用発明において「樹脂フィルムからなる」容器という構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点4について]
刊行物1の図1?3,図6から明らかなように、起立部を形成するため、「2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け」ているから、相違点4について、本願発明と引用発明とは、実質的に相違しない。
仮に、相違点であるとしても、引用発明において、「2つ折りのセパレータは、2つ折りの折り曲げ線と直交する折り曲げ線をもって2つ折りに重なる両面の辺部に折り重ね部を設け」る構成を備えることは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点5について]
引用発明においても、横方向の位置決めをする必要があることは明らかであるから、本願発明のごとく「キャパシタ本体は、各セパレータの折り重ね部を重ね合わせて横方向の位置決めをする」との構成を備えることは、当業者が容易になし得たことである。

3.進歩性についてのむすび
したがって、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明及び周知例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

第6 むすび
以上のとおり、平成17年10月17日付けの手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、仮に、平成17年10月17日付けの手続補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとしても、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-21 
結審通知日 2008-08-26 
審決日 2008-09-09 
出願番号 特願2001-312261(P2001-312261)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01G)
P 1 8・ 56- Z (H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸本 泰広  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 橋本 武
大澤 孝次
発明の名称 電気二重層キャパシタおよびその製造方法  
代理人 後藤 政喜  

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