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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B06B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B06B
管理番号 1186667
審判番号 不服2007-7172  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-08 
確定日 2008-10-24 
事件の表示 特願2001-389137「振動リニアアクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 2日出願公開、特開2003-181376〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月21日の出願であって、平成19年1月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月4日に明細書についての補正がなされたものである。

2.平成19年4月4日付の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「永久磁石及び重量体とからなる可動子と、
磁性を持った金属物質からなるエ字状断面をもつ軸対称コアに対して、中心部分をとりかこむように巻かれたコイル部を有する固定子と、
この固定子と前記可動子を連結する弾性体とを備え、
前記可動子は、前記固定子の外周に位置し、
前記重量体は、タングステンを主成分とする金属体であり、
前記弾性体は、固定子と可動子の上下双方の両端面において、それぞれに連結されたことを特徴とする振動リニアアクチュエータ。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「重量体」について「タングステンを主成分とする金属体であり」との限定を付加し、同じく「弾性体」について「固定子と可動子の上下双方の両端面において、それぞれに連結された」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-117721号公報(以下「引用文献」という。)には、「振動モジュール」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポケットベル、腕時計、携帯電話あるいは盲人用信号受信機等の携帯機器を携帯する者に対して、電子ブザーの音による発呼の代わりに、音を主な手段としない振動による報知信号を発生する振動モジュールに関するものである。」
・「【0022】(5)振動モジュールを小型化すると、バネの外径も小さくなり、最適な共振周波数を実現するための有効長の確保が困難になる。そこで、バネの有効長を確保するためにバネに湾曲部を持たせる。しかし、バネに湾曲部を持たせるとバネが振動することにより、バネに捻り運動が生じ、加振重量が異常振動を起こし易くなる。従って、単純な往復運動のみとするために、捻り運動を互いに打ち消すように捻り極性を逆にして、バネが複数の場合は加振重量の上下に対向して、または、バネが1枚の場合を含めて加振重量の少なくとも一方に組み合わせて一体化して配設した。
【0023】(6)バネを2枚使用する場合、振動モジュールを薄型にするために、2枚のバネの中央部の間隔が狭くなるように立体形状とした。」
・「【0029】(4)振動モジュールの加振力を向上するために、振動しているバネに接触することなく、重量を最大にし得る加振重量の形状として……」
・「【0098】また、実施例1と同様にケース410、ケース420の材質は非磁性のものでなければならない。
〔実施例3〕
本発明のさらに別の実施例を図面に基づいて説明する。
【0099】図15において、バネ310は、加振重量100と溶接等により接合され、駆動コイルブロック200にインサート成形等により固着される。駆動コイルブロック200は、駆動コイル220を樹脂製の駆動コイル枠210に巻き付けて構成される。
【0100】また、加振重量100を構成している磁石110は、駆動コイルブロック200の駆動コイル220の外周に配置され、微小な間隙を有して、各々の径方向で対向しており、駆動コイル220に供給される電流と磁石110により電磁力を発生し、振動モジュールの縦軸方向に振動する。ケース410、ケース420は、前記バネ310と加振重量100を接合された駆動コイルブロック200を収納する。」
・「【0102】振動モジュールの共振周波数は、バネ310と加振重量100の重量により決定されるので、磁石110を支持する重り120は、加振重量の重量を調整する目的を有し、小型、薄型の振動モジュールを構成するために、体積が小さくなっても必要な重量を確保できるようにするため、実施例1および、実施例2と同様にタングステン合金、鉛合金等の比重が大きな金属材料により構成した。」

また、図15には、エ字状断面をもつ軸対称の駆動コイル枠210に対して、中心部分をとりかこむように巻かれた駆動コイル220を有する駆動コイルブロック200と、この駆動コイルブロック200と加振重量100を連結するバネ310とを備え、前記加振重量100は、前記駆動コイルブロック200の外周に位置するものが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「磁石及び重りとからなる加振重量と、
樹脂製のエ字状断面をもつ軸対称の駆動コイル枠に対して、中心部分をとりかこむように巻かれた駆動コイルを有する駆動コイルブロックと、
この駆動コイルブロックと前記加振重量を連結するバネとを備え、
前記加振重量は、前記駆動コイルブロックの外周に位置し、
前記重りは、タングステン合金であり、
前記バネは、駆動コイルブロックと加振重量の上下双方の両端面において、それぞれに連結された振動モジュール。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「磁石」はその機能・作用からみて、前者の「永久磁石」に相当し、以下同様に「重り」は「重量体」に、「加振重量」は「可動子」に、「駆動コイル」は「コイル部」に、「駆動コイルブロック」は「固定子」に、「バネ」は「弾性体」に、「タングステン合金」は「タングステンを主成分とする金属体」に、「振動モジュール」は「振動リニアアクチュエータ」に、それぞれ相当する。
また、後者の「樹脂製のエ字状断面をもつ軸対称の駆動コイル枠」と前者の「磁性を持った金属物質からなるエ字状断面をもつ軸対称コア」とは、「エ字状断面をもつ軸対称駆動コイル巻回部」との概念で共通している。
したがって両者は、
[一致点]
「永久磁石及び重量体とからなる可動子と、
エ字状断面をもつ軸対称駆動コイル巻回部に対して、中心部分をとりかこむように巻かれたコイル部を有する固定子と、
この固定子と前記可動子を連結する弾性体とを備え、
前記可動子は、前記固定子の外周に位置し、
前記重量体は、タングステンを主成分とする金属体であり、
前記弾性体は、固定子と可動子の上下双方の両端面において、それぞれに連結された振動リニアアクチュエータ。」である点で一致し、
[相違点]
「駆動コイル巻回部」が、本件補正発明では、「磁性を持った金属物質からなるコア」であるのに対して、引用発明では、「樹脂製の駆動コイル枠」である点で相違している。

(4)相違点に対する判断
磁気回路装置において、磁気効率向上のために駆動コイル巻回部の中心に、磁性を持った金属物質からなるコアを設け、更に可動子の方向にヨークを伸ばすことは磁気効率向上のための周知技術(例.特開平9-139166号公報(図2)、特開2001-179178号公報(図2)等参照。)であるから、引用発明においても磁気効率を向上させるという周知の課題のために「駆動コイル巻回部」を「磁性を持った金属物質からなるコア」で構成することで上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
また、本件補正発明の全体構成により奏される効果は、引用発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年1月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「永久磁石及び重量体とからなる可動子と、磁性を持った金属物質からなるエ字状断面をもつ軸対称コアに対して、中心部分をとりかこむように巻かれたコイル部を有する固定子と、この固定子と前記可動子を連結する弾性体とを備え、前記可動子は、前記固定子の外周に位置することを特徴とする振動リニアアクチュエータ。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記「2.」で検討した本件補正発明から「重量体」について「タングステンを主成分とする金属体であり」との限定、及び「弾性体」について「固定子と可動子の上下双方の両端面において、それぞれに連結された」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-25 
結審通知日 2008-08-26 
審決日 2008-09-08 
出願番号 特願2001-389137(P2001-389137)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B06B)
P 1 8・ 121- Z (B06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 仁木 浩
小川 恭司
発明の名称 振動リニアアクチュエータ  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

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