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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200722524 審決 特許
不服200629059 審決 特許
判例 特許

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審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1186694
審判番号 不服2006-1739  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-30 
確定日 2008-10-22 
事件の表示 特許権存続期間延長登録願2003-700072「Asp^(B28)インスリン結晶」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。  
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件特許及び本件特許発明
本件出願において延長しようとする特許第2837956号(以下、「本件特許」という。)は平成6年6月21日(パリ条約による優先権主張1993年6月21日、デンマーク国、1993年9月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成10年10月9日に特許権の設定登録がされたものであって、その特許発明は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された次のとおりのものと認める。

【請求項1】AspB28ヒト・インスリンとプロタミンとを含んで成る結晶。
【請求項2】亜鉛を含む、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】0.35?1.5(重量/重量)%の亜鉛を含む、請求項1又は2に記載の結晶。
【請求項4】10?15(重量/重量)%のプロタミンの含む、請求項1?3の中のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項5】水性媒質中に懸濁された、請求項1?4の中のいずれか1項に記載の結晶を含む調製品。
【請求項6】亜鉛を含む、請求項5に記載の調製品。
【請求項7】AspB28ヒト・インスリンの含有量が、10?500IU/mlのレンジ内にある、請求項5又は6に記載の調製品。
【請求項8】亜鉛の含有量が、AspB28ヒト・インスリンの1IU当り0.3μg?2μgの亜鉛のレンジ内にある、請求項6又は7に記載の調製品。
【請求項9】6.5?8のレンジ内のpH値をもつ、請求項5?8のいづれか1項に記載の調製品。
【請求項10】溶解されたAspB28ヒト・インスリンを含む、請求項5?9のいずれか1項に記載の調製品。
【請求項11】一方における、AspB28ヒト・インスリンとプロタミンを含んで成る結晶と、他方における溶解されたAspB28ヒト・インスリンとの間の比が、90:10?50:50のレンジ内にある、請求項5?10のいずれか1項に記載の調製品。

2.本件出願
本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、「本件出願」という。)は、平成15年11月13日に出願され、平成17年10月24日付け(発送日 平成17年11月1日)で拒絶査定がされ、平成18年1月30日に審判請求がされたものである。
本件出願は、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったとして、4年10月29日の特許権存続期間の延長を求めるものであり、当該政令で定める処分として、平成17年6月7日付け手続補正書で補正された願書に、以下の内容を記載している。(以下、「本件処分」という。)

(1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
薬事法第23条において準用する同法第14条第1項の承認
(2)処分を特定する番号
承認番号21500AMY00119000
(3)処分の対象となった物
一般名「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)とプロタミンとを含んでなる結晶」
(4)処分の対象となった物についての特定の用途
インスリン療法が適応となる糖尿病

また、願書の添付書類として提出された「延長の理由を記載した資料」の記載内容を裏付けるための資料として、以下の資料が提出されている。

(1)特許公報
特許第2837956号公報の写し
(2)医薬品輸入承認書及び申請書の写し(承認番号21500AMY00119000号)
(3)医薬品輸入承認書及び申請書の写し(承認番号21500AMY00120000号)
(4)上記両輸入承認書を平成15年9月8日に福島県県中保健所より受領したことを証明する書面
(5)NN-X14Mix 第I相臨床試験受託研究契約書(初回)の写し
(6)治験計画届出書(初回)の写し
(7)「治験成分記号の変更について」と題する書面の写し
(8)「GCP適用治験報告票」と題する受託研究契約一覧の写し

3.原審の拒絶理由の概要
原審の拒絶の理由は、「この出願に係る特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、この出願は、特許法第67条の3第1項第1号に該当する。」というものである。
より具体的には、本件処分の対象となった物は、インスリン アスパルト(遺伝子組換え)であり、処分の対象となった物について特定された用途は、インスリン療法が適応となる糖尿病であると認定した上で、有効成分がインスリン アスパルト(遺伝子組換え)であり、用途がインスリン療法が適応となる糖尿病である医薬品については、株式会社薬事日報社発行 「最近の新薬2002」(2002年)5月9日発行) P68?74に記載されるように本件処分前の処分をもってすでに実施可能となっており、今回の処分に係る医薬品は、特許法第68条の2にいう「物」と「用途」についてみれば先の処分と相違するところはないので、本件特許発明の実施に本件処分が必要であったとは認められない旨を指摘している。

4.当審の判断
4-1 特許権の存続期間の延長登録制度における「物」と「用途」について
特許法第67条第2項は、特許発明の実施について安全性の確保等のために法律の規定によって許可その他の処分を受けることが定められ、その処分の目的、手続等からみて、その処分を的確に行うには相当の期間を要する場合には、処分を受けることが必要であるために特許発明を実施することができなかった期間、5年を限度として、特許権の存続期間を延長することができる旨を定めている。そして、同項は、上記処分については政令で定めるものとし、特許法施行令第3条は、上記処分に当たるものとして、「薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項(同特許法第23条において準用する場合を含む。)の承認」等を定めている。
また、特許法第67条の2は、上記特許権の存続期間の延長登録の出願について定めており、特許法第67条の3第1項第1号は、審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願が「その特許発明の実施に第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとき」には、拒絶をすべき旨の査定をしなければならない旨を定めている。
ところで、薬事法第14条第1項は、厚生労働大臣は、医薬品の製造をしようとする者からの申請があったときは、品目ごとにその製造について承認を与える旨規定し、同条第2項は、前項の承認は、申請に係る医薬品の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用等を審査して行うものとし、1)申請に係る医薬品が、その申請に係る効能、効果又は性能を有すると認められないとき、2)申請に係る医薬品が、その効能、効果又は性能に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品として使用価値がないと認められるとき、3)その他医薬品として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するときには、承認を与えない旨を規定する。したがって、薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認は、名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能等を特定した品目ごとにされるものである。
これに対し、特許法第68条の2は、特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力は、特許法第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には及ばない旨を規定する。この規定は、特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力は、処分の対象となった物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)については、処分の対象となった品目とは関係なく特許権が及ぶ旨の規定と解されるから、特許法は、特許法第67条第2項の政令で定める処分の対象となった品目ごとに特許権の存続期間の延長登録の出願をすべきであるという制度を採っていないことは明らかであり、処分の対象となった物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)ごとに特許権の存続期間の延長登録の出願をすべきであるという制度を採用しているものと解される。
そうすると、最初(1度目)に特許法第67条第2項の政令で定める処分がなされると、その最初になされた処分は、その物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)について製造販売禁止を解除する必要があった処分であったということができるから、その処分に基づいて特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができるが、2度目以降にされた処分については、特許法第67条の3第1項が定める「その特許発明の実施に第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとき」に該当し、その特許権の存続期間の延長登録の出願は拒絶されるものと解される。
以上のように、特許法第67条の3に従って特許権の存続期間の延長登録出願を認めるかどうかの判断に当たっては、延長後の特許権の効力について規定した特許法第68条の2の規定を考慮することによって、特許権の存続期間の延長制度全体について統一的な解釈が可能になるというべきであり、特許法第68条の2にいう「物」は「有効成分」を、「用途」は効能・効果を意味するものと解するのが相当である。
そうであるならば、2度目以降になされた処分が、最初(1度目)になされた処分と同一であって、特許法第67条の3第1項第1号の「政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとき」に当たるかどうかも、「物」すなわち「有効成分」と、「用途」すなわち「効能・効果」という観点から判断すべきである。(平成19年(行ケ)第10017号判決、平成19年(行ケ)第10016号判決、平成18年(行ケ)第10311号判決、平成17年(行ケ)第10184号判決、平成17年(行ケ)第10345号判決 参照)
そこで、本件処分の対象となった「物」すなわち「有効成分」について、本件処分の前に本件処分により特定された「用途」すなわち「効能・効果」において実施することができるようになっていたか否かを、以下検討する。

4-2 本件処分について
平成17年6月7日付け手続補正書で補正された願書には、本件処分の対象となった物として、「一般名「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)とプロタミンとを含んでなる結晶」」と記載されている。
しかし、願書の添付書類として提出された「延長の理由を記載した資料」の記載内容を裏付けるための資料である「延長の理由を記載した資料」4.(2)医薬品輸入承認書及び申請書の写し(承認番号21500AMY00119000号)の【成分及び分量又は本質】の項には、有効成分として「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)」と記載されており、本件申請は、申請のとおり承認されている。
ところで、請求人は、上記申請書の写しには、有効成分として「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)」と記載されているが、本件処分は、実質的には、「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)とプロタミンとを含んでなる結晶」を有効成分としてなされたものであると主張しているので、この点について検討する。
上記申請書の写しの【成分及び分量又は本質】の項には、その他の成分として「硫酸プロタミン」と記載され、硫酸プロタミンの配合目的は持続化剤であることが記載されている。
そして、上記申請書写しの【用法及び用量】の項には、本剤は、超速効型インスリンアナログと中間型インスリンアナログを3:7の割合で含有する混合製剤であることが記載され、「延長の理由を記載した資料」4.(6)治験計画届出書(初回)の写しには、成分及び分量の欄に、「1カートリッジ中に持続化剤、・・・等張化剤を含有するpH7.3の緩衝液にインスリンX14^(*1)・・・を含む超速効型インスリンX14と中間型インスリンX14を3:7の割合で含有する懸濁注射液1.5ml(150単位)カートリッジ製剤。*1:インスリンX14=ヒトインスリンのB鎖28位のプロリンをアスパラギン酸に置換して得られたヒトインスリンアナログ」(上記治験計画届出書(初回)の写しの別紙(1))と、また、製造方法として、「遺伝子組み換え技術を用いて・・・生産され・・・精製して得られたインスリンX14に持続化剤としてプロタミンを加えて、70%がプロタミン・インスリンX14(中間型インスリンX14)になるような条件で結晶化及び製剤化させ、NN-X14 Mixを得る」(同別紙(2))ことが記載されている。
このように、「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)とプロタミンとを含んでなる結晶」は、有効成分である「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)」と当該有効成分の持続化剤である「硫酸プロタミン」とを結晶化して製剤化した物である。
したがって、本件処分は、実質的にも「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)」を「有効成分」としてなされたものである。
上述のとおり、本件処分の処分の対象となった「物」は「一般名「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)」であり、また、その「用途」は、上記申請書の写しの【効能又は効果】の項に記載のとおり、「インスリン療法が適応となる糖尿病」である。
そして、平成16年12月17日付け拒絶理由通知書において示された「最近の新薬2002」 P68?74 株式会社薬事日報社 2002年5月9日発行 には、インスリン アスパルト(遺伝子組換え)を「有効成分」とし、インスリン療法が適応となる糖尿病を「効能・効果」とする医薬品「販売名 ノボラビッド注300」、「販売名 ノボラビッド注100単位/mLバイアル」が、各々、承認番号21300AMY00449000号、承認番号21300AMY00448000号として、本件処分前の平成13年10月2日に承認されたことが記載されている。
これらの記載によれば、本件処分がなされる前に、すでに、「一般名「インスリン アスパルト(遺伝子組換え)」を「物」とし、「インスリン療法が適応となる糖尿病」を「用途」とする医薬品がすでに承認されていたことが認められるから、本件処分の対象である「物」を本件処分において特定されたと同じ「用途」に用いることは、本件処分を受けることなくすでに実施することができたものであり、本件特許発明の実施に本件処分が必要であったとは認められない。

5.むすび
以上のとおり、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当し、本件特許権存続期間の延長登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-20 
結審通知日 2008-05-27 
審決日 2008-06-11 
出願番号 特願2003-700072(P2003-700072)
審決分類 P 1 8・ 71- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 亜希  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 星野 紹英
穴吹 智子
発明の名称 A s p▲上B28▼インスリン結晶  
代理人 樋口 外治  
代理人 石田 敬  
代理人 鶴田 準一  
代理人 中村 和広  
代理人 西山 雅也  
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