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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02N
管理番号 1186895
審判番号 不服2007-16641  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-14 
確定日 2008-10-30 
事件の表示 特願2004-355666「スタータ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日出願公開、特開2006-161724〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成16年12月8日の出願であって、平成18年12月22日付けで拒絶理由が通知され、平成19年3月8日に意見書が提出されたが、同年5月9日付けで拒絶査定がなされ、同年6月14日に審判請求がなされ、同年8月30日に審判請求理由を補充する手続補正書(方式)が提出されたものであって、その請求項1?3に係る発明は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲並びに図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
モータと、
このモータへの通電を入切する電磁スイッチと、
前記モータからの回転力を内燃機関のリング歯車に歯合するピニオン歯車に伝達するとともにリング歯車に対して往復動可能なクラッチと、
前記電磁スイッチのプランジャに一端部が係合されているとともに、二股に分かれ前記クラッチを跨いだ跨ぎ部を有するシフトレバーと、
前記跨ぎ部の両端部に回転可能に設けられているとともに、前記クラッチのクラッチハウジングの外周面に周方向に沿って形成された溝部に係合されているシフトピースとを備え、
前記プランジャの往復動に連動して前記シフトレバーがシーソ回動し、そのシーソ回動に連動した前記クラッチの往復動により前記ピニオン歯車が前記リング歯車と歯合し、あるいは解除されるスタータにおいて、
前記シフトピースは、矩形状をした平板であり、かつこの平板の対角線の長さ寸法が、前記溝部の軸方向の幅寸法よりも短いことを特徴とするスタータ。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された実公昭48-31766号公報(以下、「引用文献」という。)
(A)引用文献には、次の事項が図面とともに記載されている。
(a)「本考案は押込み式スターターモーター、さらに具体的に言えば、スターターの始動時にマグネツトスイツチが作動してピニオンを移動させる際のシフトレバーに附属するシフトピースに関するものである。」(公報第1欄第18?21行)
(b)「従来押込み式スターターモーターのシフトピースとしては第1図に示すものが一般に使用されている。すなわち、モーター回転軸1の一部に嵌合されるピニオン2がクラツチ3を介してスプラインスリーブ4と連結せられ、該スプラインスリーブ4は回転軸1とスプライン結合している。」(公報第1欄第22?27行)
(c)「スプラインスリーブ4の外周の一部にはスピリング5を介してシフトスリーブ6とシフトプレート7とが隣接して摺動自在に外挿せられ、該シフトスリーブ6及びシフトプレート7の間に介挿されるシフトピース8が9でヒンジされるシフトレバー10のフオーク状先端に取付けられていて、シフトレバー10の他端はプランジヤ11と連結されている。」(公報第1欄第27?34行)なお、「スピリング5」は「スプリング5」の誤記であると解される。
(d)「上記従来構造において、スタータースイッチ(図示せず)を入れるとプランジャー11が実線矢印方向に移動し、その結果シフトピース8はシフトレバー10を介して左方に移動し、これに押されてシフトスリーブ6、したがつてスプリング5を介してスプラインスリーブ4及びピニオン2が回転しながら実線矢印方向に移動してエンジンを回転させるものである。」(公報第1欄第35行?第2欄第4行)
(e)「このように起動の度毎にシフトピース8がシフトスリーブ6と摺動しながらこれに押圧されるのでシフトピース8の摺動面aが摩耗してついに第2図Bに示す状態となり、円滑な作動が困難となる。」(公報第2欄第4?7行)

(B)上記(A)及び図面から分かること
(a)上記(A)(a)及び(b)から「スターター」は、「モーター回転軸1」を備えているであるから、「モーター」も当然に有していることが分かる。
(b)上記(A)(d)から「ピニオン2」の回転により、「エンジン」を回転させることから、「エンジン」は「ピニオン2」からの回転力を伝達するための「歯合部材」も当然に有していることが分かる。
(c)上記(A)(b)及び(c)から、「シフトレバー10」は「フオーク状」、すなわち、「二股に分かれ」た形状であることが分かり、また、第1図から「シフトレバー10」は「クラツチ3」を跨いだ跨ぎ部を有することが分かる。
(d)上記(A)(c)及び第2図(A)(B)から、「シフトレバー10」の先端部に取り付けられた「シフトピース8」は、回転可能であることが分かる。
(e)上記(A)(c)及び第2図(A)(B)から、「シフトピース8」は、「シフトスリーブ6」と「シフトプレート7」との間に周方向に沿って形成された凹部に係合されることが分かる。
(f)上記(A)(c)及び第1図の「プランジヤー11」の右方の矢印及び「シフトレバー10」の左方の矢印から、「シフトレバー10」は、「9」をヒンジとしてシーソ回動することが分かる。

(C)上記(A)及び(B)並びに図面によると、引用文献には、
「モーターと、このモーターへの通電を入切するマグネツトスイツチと、前記モーターからの回転力をエンジンの歯合部材に歯合するピニオン2に伝達するとともに前記歯合部材に対して往復動可能なクラツチ3と、前記マグネツトスイツチのプランジヤー11に一端部が係合されているとともに、二股に分かれ前記クラツチ3を跨いだ跨ぎ部を有するシフトレバー10と、前記跨ぎ部の両端部に回転可能に設けられているとともに、シフトスリーブ6とシフトプレート7との間に形成される凹部に係合されているシフトピース8とを備え、前記プランジヤー11の往復動に連動して前記シフトレバー10がシーソ回動し、そのシーソ回動に連動した前記クラツチ3の往復動により前記ピニオン2が前記歯合部材と歯合し、あるいは解除されるスターターにおいて、前記シフトピース8は、矩形状をした平板であるスターター。」
という発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「モーター」、「マグネツトスイツチ」、「エンジン」、「ピニオン2」、「クラツチ3」、「プランジヤー11」及び「スターター」は、本願発明における「モータ」、「電磁スイッチ」、「内燃機関」、「ピニオン歯車」、「クラッチ」、「プランジャ」及び「スタータ」にそれぞれ相当する。
そして、引用文献記載の発明における「歯合部材」は、「ピニオン2」に歯合するという限りにおいて、本願発明における「リング歯車」に相当する。
したがって、本願発明と引用文献記載の発明は、
「モータと、このモータへの通電を入切する電磁スイッチと、前記モータからの回転力を内燃機関の歯合部材に歯合するピニオン歯車に伝達するとともに歯合部材に対して往復動可能なクラッチと、電磁スイッチのプランジャに一端部が係合されているとともに、二股に分かれ前記クラッチを跨いだ跨ぎ部を有するシフトレバーと、前記跨ぎ部の両端部に回転可能に設けられているシフトピースとを備え、前記プランジャの往復動に連動して前記シフトレバーがシーソ回動し、そのシーソ回動に連動した前記クラッチの往復動により前記ピニオン歯車が前記歯合部材と歯合し、あるいは解除されるスタータにおいて、前記シフトピースは、矩形状をした平板であるスタータ。」
という発明で一致し、次の(1)?(3)の点で相違している。
(1)ピニオン歯車が歯合する内燃機関の「歯合部材」が、本願発明においては、「リング歯車」であるのに対して、引用文献記載の発明においては、「歯合部材」が明確ではない点。(以下、「相違点1」という。)
(2)「跨ぎ部の先端に設けられるシフトピース」が、本願発明においては、「クラッチのクラッチハウジングの外周面に周方向に沿って形成された溝部に係合されている」のに対して、引用文献記載の発明においては、シフトスリーブ6とシフトプレート7との間に形成される凹部に係合されている点。(以下、「相違点2」という。)
(3)矩形状の平板である「シフトピース」が、本願発明においては、「対角線の長さ寸法が、溝部の軸方向の幅寸法よりも短い」のに対して、引用文献記載の発明においては、対角線の長さ寸法が、凹部の軸方向の幅寸法に対して特に定められていない点。(以下、「相違点3」という。)

4.当審の判断
上記相違点1?3について、以下に検討する。
相違点1について
ピニオン歯車を内燃機関の「リング歯車」に歯合させることは周知の技術である。(以下、「周知技術1」という。例えば、実願昭52-2304号(実開昭53-97234号)のマイクロフィルムの第3頁第2?4行、実願昭52-149284号(実開昭54-74833号)のマイクロフィルムの第4頁第13?16行、特開平9-177645号公報の段落【0019】参照。)
そして、この周知技術1を引用文献記載の発明に適用することにより、上記相違点1に係る本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。

相違点2について
クラッチのハウジングとシフトピースが係合する溝部とを一体的に設けることは周知の技術である。(以下、「周知技術2」という。例えば、実願昭52-149284号(実開昭54-74833号)のマイクロフィルムの第3頁第9?13行、特開平9-177645号公報の段落【0016】参照。)
そして、この周知技術2を引用文献記載の発明に適用することにより、上記相違点2に係る本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。

相違点3について
シフトピースの偏摩耗により円滑な作動が困難となるという課題は、上記2.(A)(e)に記載されているように従来から知られている。
また、回転可能なシフトピースが溝部内で円滑に作動するように、シフトピースの最大長さ寸法を溝部の軸方向の幅寸法よりも短くすることは周知の技術である。(以下、「周知技術3」という。例えば、実願昭52-2304号(実開昭53-97234号)のマイクロフィルムの第5図、実願昭52-149284号(実開昭54-74833号)のマイクロフィルムの第1図参照。)
してみれば、この周知技術3を引用文献記載の発明に適用するにあたって、シフトピースの対角線の長さ寸法が、溝部の軸方向の幅寸法よりも短いものとして、上記相違点3に係る本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用文献記載の発明及び上記周知技術1?3から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術1?3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-27 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-16 
出願番号 特願2004-355666(P2004-355666)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 金澤 俊郎
中川 隆司
発明の名称 スタータ  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  
代理人 大宅 一宏  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  
代理人 上田 俊一  

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