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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1186983
審判番号 不服2006-2783  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-16 
確定日 2008-10-30 
事件の表示 平成 9年特許願第244601号「頭部装着型表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 9日出願公開、特開平11- 65510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件は、平成9年8月25日の出願であって、平成17年12月13日付け(発送日:平成18年1月17日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成18年2月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月17日付けで明細書を補正対象とする手続補正がなされたものである。

2 平成18年3月17日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年3月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成18年3月17日提出の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
音声入力部と、
画像の表示部と、
その音声入力部と表示部とを保持すると共に観察者の頭部に装着可能な保持部と、
操作スイッチと、
システムの制御を行うためのプログラムを記憶するメモリと、
そのプログラムを実行するCPUと、
入力音声に対応するデジタルデータを前記CPUに送る音声信号処理部と、
前記CPUにより制御される画像コントローラとを備え、
前記スイッチの操作により手動使用モードと音声使用モードの切り換え信号が前記CPUに入力されることで、手動使用モードと音声使用モードとに切り換え可能とされ、
前記音声使用モードにおいては、前記画像コントローラの制御により音声入力に対応する画像が表示され、
前記手動使用モードにおいては、前記音声信号処理部の機能が停止されると共に、前記操作スイッチの操作に応じて前記プログラムが実行される頭部装着型表示システム。」
を、
「【請求項1】
工場、大型プラント設備、航空機の整備、点検、メンテナンス、工場の組立ライン、及び販売サービス業におけるオーダーエントリーシステムの作業支援情報を提供する頭部装着型表示システムであって、音声入力部と、画像の表示部と、その音声入力部と表示部とを保持すると共に観察者の頭部に装着可能な保持部と、操作スイッチと、システムの制御を行うためのプログラムを記憶するメモリと、そのプログラムを実行するCPUと、入力音声に対応するデジタルデータを前記CPUに送る音声信号処理部と、前記CPUにより制御される画像コントローラとを備え、前記スイッチの操作により手動使用モードと音声使用モードの切り換え信号が前記CPUに入力されることで、手動使用モードと音声使用モードとに切り換え可能とされ、前記手動使用モードにおいては、前記音声信号処理部の機能が停止されると共に、前記操作スイッチの操作に応じて前記プログラムが実行される頭部装着型表示システム。」
と補正する内容を含むものである。

(2)補正の目的の適合性
この補正により、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「前記音声使用モードにおいては、前記画像コントローラの制御により音声入力に対応する画像が表示され」との事項が削除されていることから、この補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第2号の特許請求の範囲の減縮、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明、のいずれを目的とする補正ともいえない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明
平成18年3月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年8月16日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
音声入力部と、
画像の表示部と、
その音声入力部と表示部とを保持すると共に観察者の頭部に装着可能な保持部と、
操作スイッチと、
システムの制御を行うためのプログラムを記憶するメモリと、
そのプログラムを実行するCPUと、
入力音声に対応するデジタルデータを前記CPUに送る音声信号処理部と、
前記CPUにより制御される画像コントローラとを備え、
前記操作スイッチの操作により手動使用モードと音声使用モードの切り換え信号が前記CPUに入力されることで、手動使用モードと音声使用モードとに切り換え可能とされ、
前記音声使用モードにおいては、前記画像コントローラの制御により音声入力に対応する画像が表示され、
前記手動使用モードにおいては、前記音声信号処理部の機能が停止されると共に、前記操作スイッチの操作に応じて前記プログラムが実行される頭部装着型表示システム。」(以下、「本願発明」という。)
なお、請求項1には「前記スイッチの操作により」と記載されているが、当該記載の前に、単なるスイッチとの記載が無いことから、「前記スイッチの操作により」は、「前記操作スイッチの操作により」の誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。

4 引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-62438号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0012】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1ないし図8は本発明の第1実施例に係り、図1は立体視内視鏡システムの全体構成を示す構成説明図、図2はステレオスコープの構成を示す説明図、図3はステレオスコープによる超音波の送受を説明する説明図、図4はヘッドマウントディスプレイ(HMD)の構成を示す説明図、図5はHMDの側面図、図6はビデオプロセッサの構成を示すブロック図、図7は超音波距離検出部の構成を示すブロック図、図8は映像信号合成部とその周辺部の構成を示すブロック図である。
【0013】本実施例は、立体像観察システムを内視鏡装置に適用した立体視内視鏡システムの構成例である。
【0014】図1に第1実施例の立体視内視鏡システムの全体構成を示す。立体視内視鏡システム1は、立体視可能なステレオスコープ2と、このステレオスコープ2と接続されたビデオプロセッサ3とを有しており、ステレオスコープ2で得られた視差のある被写体像を基にビデオプロセッサ3で画像信号を生成し、左用および右用のモニタ4a,4bに内視鏡で得られた左右の像をそれぞれ表示するようになっている。また、ステレオスコープ2には、照明光を供給するための光源5が接続されている。
【0015】ビデオプロセッサ3には、モニタ4a,4bと同様に、内視鏡像を表示するHMD6が接続されている。このHMD6は顔面装着用モニタ手段として術者の顔に装着され、それによって術者は、内視鏡像を3次元の立体像として観察できるようになっている。
【0016】図2に、ステレオスコープ2の構成を示す。ステレオスコープ2は、その挿入部先端部に撮像部としての左右用のCCD7a,7bが設けられており、これにより2枚の被検体像を撮像する。このCCD7a,7bは、ビデオプロセッサ3からの駆動信号によって駆動され、出力信号は前置増幅器8a,8bによってそれぞれ増幅され、ビデオプロセッサ3へ出力されるようになっている。
【0017】また、内視鏡の先端部には、超音波振動子9が設けられている。この超音波振動子9は、内視鏡の先端と、被検体との間の距離を測定するためのもので、図3に示すように被検体10に対して超音波を送受するためのものである。この送受波した超音波信号より、後述のように距離が求められるようになっている。
【0018】また、内視鏡の挿入部基端部の操作部11には、静止画像を得るためのフリーズスイッチ12と、後述する通常画像と実物大画像とを切換える拡大切換スイッチ13と、内視鏡像とHMD視野像とを切換える視野切換スイッチ14とが設けられている。
【0019】前記HMD6の構成を図4および図5を参照して説明する。HMD6は、内側(目と対面する側)に像を表示するための左右の液晶ディスプレイ15a,15bを有する。前記ビデオプロセッサ3と液晶ディスプレイ15a,15bとにより画像表示手段が構成されている。またHMD6の表面側には、術者の視野の代りに、前方視野像を撮像するCCD16a,16bが設けられている。このCCD16a,16bと後述するビデオプロセッサ3内のHMD用信号処理部,信号合成部とにより前方視野像再現手段が構成されている。
【0020】またHMD6の側面には、前に述べた内視鏡の操作部11に設けられている拡大切換スイッチ,視野切換スイッチと同じ機能を有する切換スイッチ17が設けられている。そして、HMD6の他の側面よりケーブルが延出しており、このケーブルを介してビデオプロセッサ3と接続されるようになっている。」

(2)「【0021】次に、ビデオプロセッサ3の構成を図6を参照して説明する。ビデオプロセッサ3は、内視鏡先端部に設けられてい・・・。」

(3)【0025】前記映像信号合成部22での処理の指示は、ステレオスコープ2およびHMD6に設けられた各スイッチ、あるいはこれと同様に入力部28から入力される命令に基づき動作するもので、制御部29を介して行われるようになっている。すなわち、図示しないが、ステレオスコープ2の拡大切換スイッチ13,視野切換スイッチ14、HMD6の切換スイッチ17は、入力部28同様に制御部29に接続されている。
【0026】また、制御部29には状態表示部30が接続されており、制御部29の制御状態を状態表示部30へ表示させ、術者以外の人に制御状態を告知できるようになっている。
【0027】さらに、制御部29は各種タイミングパルスを作成し、各部の動作を制御するようになっている。」

(4)「【0050】すなわち、本実施例によれば、ステレオスコープ2で得た内視鏡像とHMD6のCCD16a,16bで得られたHMD前方視野像とのどちらかを選択して、HMD6の液晶モニタ15a,15bに像を表示させることができる。
【0051】よって、術者はHMD6を装着したままの状態で、内視鏡像を立体視観察をし、また処置具を用いるなど各種操作を行うときは、一旦HMD6にHMD像を表示させる。これによって、術者はあたかもHMD6をはずした時のような視野を得ることができ、この状態で処置具等をつかみ、内視鏡内に挿入する等の操作を容易に行うことができる。」

(5)「【0056】また、この実物大表示は常に行われるものではなく、必要なときだけ使用できるように切換え機能を有している。よって術者が、実物大表示のみをしていると不快感を覚えるときなどは、所定の大きさの画像(術者が不快感を生じないように、ある程度被検体が遠くに表示されるような画像)を表示することができる。
【0057】また、HMD6に表示された像を静止画観察したいときにフリーズスイッチ12を操作してフリーズすると、映像信号合成部22の画像重合せ回路39a,39bによって、静止画のみでなく静止画と動画が重合された状態の像が、HMD6に表示されるようになっている。
【0058】これは、HMD6に静止画像のみ表示していると、術者は静止画像のみしか観察できなくなり、内視鏡が不用意に動いたときには患者に危険がおよぶこともあるため、リアルタイムの動画像も表示するようにしたものである。すなわち、フリーズした状態でも、現在、内視鏡先端がどのように動いているかを少なくとも感じとれるようにするため、静止画と動画とを重合せて表示する。
【0059】これによって、内視鏡先端が不用意に動いて患者を傷つける、というような問題が発生することを防止できる
【0060】以上本発明の第1実施例を説明したが、その中で切換信号を入力するための手段として、ビデオプロセッサ3に設けられた入力部28、または、ステレオスコープ2の操作部11に設けられた各スイッチ、またはHMD6に設けられた切換えスイッチ17等がある。
【0061】ビデオプロセッサ3に設けられた入力部28の操作は、術者以外のものでも容易に操作できるものである。また、操作部11またはHMD6に設けられたスイッチは、術者が必ずしもスイッチのある場所を確認しなくても、ある程度自在に操作できるように設けられている。
【0062】つまり、術者は、内視鏡の操作には慣れており、どこがどのような形状になっているかがわかり、感覚的な操作が可能である。また、HMD6に設けられたスイッチも、術者は自分の顔に対してスイッチがどのあたりにあるかは感覚的に知ることができる。よって、術者はHMD6で立体的な内視鏡像を見ながらフリーズ等の操作を行うことが可能である。」

(6)「【0063】しかし、操作するスイッチが増加する場合等を考えると、やはりスイッチ類の操作は困難になってくる。
【0064】よって、例えば図9に示すような音声認識の機能を持たせると、より立体視内視鏡システムの操作性を向上することができる。
【0065】音声認識の機能を有した立体視内視鏡システムは、HMD6に音声を検出するためのマイク42が設けられると共に、ビデオプロセッサ3に音声認識装置44が接続されている。前記マイク42によって検出された音声信号は、アンテナ43によって、音声認識装置44へ送出される。音声認識装置44には音声認識回路46が設けられ、前記音声信号がアンテナ45を介して音声認識回路46へ入力される。この音声認識回路46によって術者の音声を認識し、術者の音声による命令に応じてビデオプロセッサの制御等が行われる。
【0066】このように、スイッチの操作等を行うことなく、術者の命令に応じてビデオプロセッサの制御等を行うことができ、術者は指先等に神経を使う必要がなくなり術者の負担を軽減することができる。」

(ア)上記摘記事項(6)における「音声認識の機能を有した立体視内視鏡システムは、HMD6に音声を検出するためのマイク42が設けられると共に、ビデオプロセッサ3に音声認識装置44が接続されている。」との記載、上記摘記事項(1)における「図4はヘッドマウントディスプレイ(HMD)の構成を示す説明図・・・このHMD6は顔面装着用モニタ手段として術者の顔に装着され、それによって術者は、内視鏡像を3次元の立体像として観察できるようになっている。・・・前記HMD6の構成を図4および図5を参照して説明する。HMD6は、内側(目と対面する側)に像を表示するための左右の液晶ディスプレイ15a,15bを有する。」との記載から、音声を検出するためのマイク(42)と、画像を表示するための液晶ディスプレイ(15a,15b)と、該マイク(42)と液晶ディスプレイ(15a,15b)とが設けられると共に術者の顔面に装着可能なHMD(6)を、読み取ることができる。

(イ)上記摘記事項(5)における「その中で切換信号を入力するための手段として、ビデオプロセッサ3に設けられた入力部28、または、ステレオスコープ2の操作部11に設けられた各スイッチ、またはHMD6に設けられた切換えスイッチ17等がある。」との記載や、「ビデオプロセッサ3に設けられた入力部28の操作は、術者以外のものでも容易に操作できるものである。」との記載から、術者以外のものも操作するビデオプロセッサ3に設けられた入力部28は、上記摘記事項(6)に示されたマイク(42)と、一緒に設けられていることは技術的に明白であるから、上記摘記事項(5)及び(6)から、切換信号を入力するための手段としてビデオプロセッサ(3)に設けられた入力部(28)を、読み取ることができる。

(ウ)上記摘記事項(3)における「前記映像信号合成部22での処理の指示は、ステレオスコープ2およびHMD6に設けられた各スイッチ、あるいはこれと同様に入力部28から入力される命令に基づき動作するもので、制御部29を介して行われるようになっている。すなわち、図示しないが、ステレオスコープ2の拡大切換スイッチ13,視野切換スイッチ14、HMD6の切換スイッチ17は、入力部28同様に制御部29に接続されている。」との記載及び図6の記載から、制御部(29)からの信号により制御される映像信号合成部(22)を、読み取ることができる。

(エ)上記摘記事項(2)及び(3)の記載から、制御部(29)と、該制御部の指示に基づき動作する映像信号合成部(22)を有してなるビデオプロセッサ(3)を、読み取ることができる。

(オ)上記摘記事項(6)における「前記マイク42によって検出された音声信号は、アンテナ43によって、音声認識装置44へ送出される。音声認識装置44には音声認識回路46が設けられ、前記音声信号がアンテナ45を介して音声認識回路46へ入力される。この音声認識回路46によって術者の音声を認識し、術者の音声による命令に応じてビデオプロセッサの制御等が行われる。」との記載によれば、音声による命令に応じてビデオプロセッサの制御等が行われていると解され、してみると、該命令がビデオプロセッサ(3)に入力する段においては、デジタルデータであることは技術的に明白である。さらに、上記(エ)の事項を参酌すると、上記摘記事項(2)及び(3)並びに(6)から、検出された音声を音声認識回路(46)によって認識し、認識された音声による命令を制御部(29)に出力する音声認識回路(43)を、読み取ることができる。

(カ)上記摘記事項(5)における「この実物大表示は常に行われるものではなく、必要なときだけ使用できるように切換え機能を有している。・・・以上本発明の第1実施例を説明したが、その中で切換信号を入力するための手段として、ビデオプロセッサ3に設けられた入力部28、または、ステレオスコープ2の操作部11に設けられた各スイッチ、またはHMD6に設けられた切換えスイッチ17等がある。」との記載、及び、上記(オ)の事項を参酌するに、上記摘記事項(2)、(3)、(5)、(6)から、音声により映像信号合成部を制御し、該映像信号合成部の制御により音声命令に対応した画像が表示される構成を読み取ることができる。

(キ)上記摘記事項(5)における「この実物大表示は常に行われるものではなく、必要なときだけ使用できるように切換え機能を有している。・・・以上本発明の第1実施例を説明したが、その中で切換信号を入力するための手段として、ビデオプロセッサ3に設けられた入力部28、または、ステレオスコープ2の操作部11に設けられた各スイッチ、またはHMD6に設けられた切換えスイッチ17等がある。」との記載から、入力部(28)の操作に応じて映像信号合成部を制御し画像を切り換えることを、読み取ることができる。

(ク)上記摘記事項(1)から、HMDを有した立体視内視鏡システムを読み取ることができる。

したがって、上記摘記事項(1)乃至(6)及び図面の記載からみて、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「音声を検出するためのマイク(42)と、
画像を表示するための液晶ディスプレイ(15a,15b)と、
該マイク(42)と液晶ディスプレイ(15a,15b)とが設けられると共に術者の顔面に装着可能なHMD(6)と、
切換信号を入力するための手段としてビデオプロセッサ(3)に設けられた入力部(28)と、
検出された音声を音声認識回路(46)によって認識し、認識された音声による命令を制御部(29)に出力する音声認識回路(43)と、
制御部(29)と、該制御部の指示に基づき動作する映像信号合成部(22)を有してなるビデオプロセッサ(3)とを有し、
音声により映像信号合成部を制御し、該映像信号合成部の制御により音声命令に対応した画像が表示され、
入力部(28)の操作に応じて映像信号合成部を制御し画像を切り換えてなるHMDを有した立体視内視鏡システム。」(以下、「引用発明」という。)

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「音声を検出するためのマイク(42)」は、本願発明の「音声入力部」に相当し、以下同様に、「画像を表示するための液晶ディスプレイ(15a,15b)」は「画像の表示部」に相当する。
(2)引用発明の「該マイク(42)と液晶ディスプレイ(15a,15b)とが設けられると共に術者の顔面に装着可能なHMD(6)」は、本願発明の「その音声入力部と表示部とを保持すると共に観察者の頭部に装着可能な保持部」と、「頭部に」装着可能なとの構成において相違するものの、「その音声入力部と表示部とを保持すると共に観察者に装着可能な保持部」である限りにおいて一致する。
(3)引用発明の「切換信号を入力するための手段としてビデオプロセッサ(3)に設けられた入力部(28)」は、本願発明の「操作スイッチ」に相当する。
(4)引用発明の「制御部(29)」と本願発明の「CPU」とは、各種制御を行うための構成である点で一致するから、引用発明の「検出された音声を音声認識回路(46)によって認識し、認識された音声による命令を制御部(29)に出力する音声認識回路(43)」は、本願発明と「入力音声に対応するデータを制御をおこなうための構成に送る音声信号処理部」である限りにおいて一致し、以下同様に、引用発明の「制御部(29)と、該制御部の指示に基づき動作する映像信号合成部(22)」は、本願発明の「制御を行うための構成により制御される画像コントローラ」である限りにおいて一致する。
(5)引用発明の「音声により映像信号合成部を制御し、該映像信号合成部の制御により音声命令に対応した画像が表示され」は、本願発明の「前記画像コントローラの制御により音声入力に対応する画像が表示され」に相当する。
(6)引用発明の「HMDを有した立体視内視鏡システム」は、本願発明の「頭部装着型表示システム」と、「頭部装着型」との点において相違するものの、人が装着する「表示システム」である限りにおいて一致する。

したがって、本願発明と引用発明の両者は、 以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「音声入力部と、
画像の表示部と、
その音声入力部と表示部とを保持すると共に観察者に装着可能な保持部と、
操作スイッチと、
入力音声に対応するデータを制御を行うための構成に送る音声信号処理部と、
前記制御を行うための構成により制御される画像コントローラとを備え、
前記画像コントローラの制御により音声入力に対応する画像が表示される表示システム。」

<相違点1>
観察者に装着可能な部位が、本願発明では、観察者の「頭部」に装着可能な・・・「頭部」装着型表示システム」であるのに対して、引用発明では、「顔面」に装着可能な・・・表示システムである点。

<相違点2>
本願発明では、「システムの制御を行うためのプログラムを記憶するメモリと、そのプログラムを実行するCPUと、入力音声に対応するデジタルデータを前記CPUに送る音声信号処理部と、前記CPUにより制御される画像コントローラとを備え」とを備えているのに対して、引用発明では、そのような構成を備えるとは限定されていない点。

<相違点3>
本願発明では、「音声信号処理部」が、「入力音声に対応するデジタルデータを前記CPUに送る」のに対して、引用発明では、「音声認識回路(46)」が「認識された音声による命令を制御部(29)に出力する」が、その出力が、デジタルデータであるか、アナログデータであるか明確ではない点。

<相違点4>
本願発明では、「前記操作スイッチの操作により手動使用モードと音声使用モードの切り換え信号が前記CPUに入力されることで、手動使用モードと音声使用モードとに切り換え可能とされ」のに対して、引用発明では、そのように限定されていない点。

<相違点5>
本願発明では、「前記音声使用モードにおいては、前記画像コントローラの制御により音声入力に対応する画像が表示され、前記手動使用モードにおいては、前記音声信号処理部の機能が停止されると共に、前記操作スイッチの操作に応じて前記プログラムが実行される」のに対して、引用発明では、そのように限定されていない点。

6 判断
上記相違点1について検討する。
例えば、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-272484号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0002】本発明は、特に、電池で駆動され、物品に関するデータの収集にデータのキー入力操作と光学的符号読取りの両方が使用でき、これを使用する者が、装置を身に付けて入力作業を行なうことにより、データ収集に際して手が塞がれることがなく、在庫管理作業中に物品を取り上げたり置いたりするといった動作が自由にできるよう、ヘッドホン型装置(headset-以下、「ヘッドセット」という)に一体化された、携帯型トランザクション端末又はデータ入力端末の提供に適する。」

(2)「【0014】ハウジング40内には、符号読取り装置24からの信号を受けるマイクロプロセッサ54が収められている。このマイクロプロセッサは、ディジタル化装置(アナログ-ディジタル変換器)をその中に備えており、また、これに付随する回路(読取りが行なわれた際、読取り装置によって読み取られた符号を信号に変換する)を備えてもいてもよい。読取り装置は、マイクロプロセッサからのコマンドによって作動する。読取り装置24から得た入力データは、マイクロプロセッサに付随するメモリ(RAM)56に記憶される。このメモリは読込み専用部分(ROM)を併せて有していてもよく、この場合、ROMにはマイクロプロセッサに対するオペレーティング及びアプリケーション・プログラム並びに予め決められた、すなわちプリセット・メッセージが記憶される。このプリセット・メッセージは、ヘッドアップ・ディスプレイ38を介して視覚的に、又は、音声合成装置58(これはイアホン20に接続される)を介して聴覚的に表示される。
【0015】コマンド及びキャラクタ(文字及び数字)の名称をマイクロホン28に向かって発音すると、音声認識回路60が働いて、これを符号に翻訳し、これがマイクロプロセッサ54に入力され、また、メモリ56に入る。こうしたコマンドは、たとえば、「(走査)光を照射せよ」("fire")とか「読め」といった単語であり、音声認識回路60によって、それぞれに対応する符号に翻訳される。こうした回路は、他の音声認識装置で使用されているタイプのものでよく、キャラクタやコマンドを符号にデジィタル化し、これをテンプレートと比較し、発音されたキャラクタ又はコマンドワードを表わす符号をマイクロプロセッサに読み込む。
【0016】光を照射せよとか読めといったコマンドが検出されると、マイクロプロセッサは、符号読取り装置24を作動させる出力を与える。次いで、読取り装置が符号を走査し、符号数値を表わすデータがメモリに記憶される。連続的なプリセット・メッセージ(作業員のための操作手順メニューを構成する)やトランシーバ48、モデム50を介して受信されるメッセージがマイクロプロセッサに読み込まれメモリに記憶されるようにしてもよい。ヘッドアップ・ディスプレイや音声合成装置あるいはイアホンは、符号を与えられて対応する聴覚的又は視覚的メッセージを作り出す。ヘッドアップ・ディスプレイを使用する場合には、メッセージはスクリーン34上に表示される。
【0017】読取り装置24で読み取られるすべての符号及びマイクロホンを通して入力されるすべてのデータ(キャラクタ)を視覚的又は聴覚的に表示して、作業員が、正しい符号が入力されたかどうか確認できるようにするのが望ましい。メモリに記憶された符号及びデータは、マイクロプロセッサのデータポート62又はトランシーバ48のモデム50を介して読み出せるようにしてもよい。」

上記周知例1の記載事項によれば、マイクロホンとヘッドアップ・ディスプレイとからなる装置において、頭部に装着する構成も周知技術にすぎない。してみると、上記引用発明における「術者の顔面に装着」する構成に代えて、単に頭部に装着する構成を採用することに特段の困難性はない。

よって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

上記相違点2について検討する。
引用発明においては、制御部(29)の具体的な構成が明確ではないが、電子回路を用いたシステムにおいて、制御部として、マイクロプロセッサと該マイクロプロセッサに付随するメモリと該メモリに記憶されたオペレーティング及びアプリケーション・プログラムを用いて制御を行うことは、例えば、上記周知例1に記載されているように周知技術である。また、一般に、マイクロプロセッサがCPUと同じ意味で用いられていることは、技術常識にすぎないことから、引用発明においても、制御部(29)をCPUと該CPUの制御動作を記述したメモリにより構成し、該メモリに記述された制御動作に基づき該CPUが制御動作を実行するような構成とすることに、特段の困難性は認められない。

よって、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

上記相違点3について検討する。
引用発明では、音声認識回路(46)からの出力が、デジタルデータであるか、アナログデータであるか明確ではないが、音声による命令に応じてビデオプロセッサの制御等が行われていると解されることから、該命令がビデオプロセッサ(3)に入力する段においては、デジタルデータであることは技術的に明白である。また、音声データとは、そもそも原データにおいてはアナログのデータであるから、音声認識回路内でデジタルに変換してから出力するか、音声認識回路からはアナログデータを出力し途中でデジタルデータに変換するかは、単なる設計的事項にすぎない。

よって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

上記相違点4について検討する。
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前の平成9年1月17日に頒布された刊行物である特開平9-16077号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0032】また、目的地設定処理及び立ち寄り地設定処理の操作は、タッチパネル34のタッチ操作、操作スイッチ40のスイッチ操作による手動操作のほか、音声認識装置38によって音声入力による操作が可能である。手動操作と音声入力操作の切り換えは、操作スイッチ40に設けられている切り換えスイッチ41によって行われる。この目的地設定操作処理と立ち寄り地設定処理の切り換え操作も、操作スイッチ40に設けられている切り換えスイッチ42によって行われる。なお、この目的地設定処理(ステップ51)は、新たな目的地設定操作または新たな立ち寄り地設定操作が行われない場合にはジャンプされる。」

本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-233359号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0011】本例においては、テレビジョン受像機の制御を行うリモートコントロール装置としたものである。図1は本例のリモートコントロール装置の構成を示す図で、図中1は操作キーを示し、この操作キー1は装置の前面に複数配置されている。この場合、配置される操作キー1の数は、このリモートコントロール装置が出力する赤外線信号の種類(即ちこの装置で操作できる機能の数)に対応させてある。そして、この操作キー1の操作情報を、このリモートコントロール装置の動作を制御する中央制御装置(CPU)2に供給する。この中央制御装置2はマイクロコンピュータで構成され、メモリ3が接続してある。このメモリ3は、データが予め記憶された読出し専用エリアと、後述する音声登録時にデータの記憶ができる書込み可能エリアとが用意され、読出し専用エリアには各操作キー1に対応する制御データが予め記憶され、何れかのキー1が押された場合、この押されたキー1に対応する制御データを中央制御装置2が読出す。そして、読出された制御データを、リモートコントロール信号発振回路4に供給する。このリモートコントロール信号発振回路4では、供給される制御データに基づいたリモートコントロール信号を作成して、赤外線信号送信部5に供給する。この赤外線信号送信部5は、赤外線発光ダイオードなどで構成され、供給されるリモートコントロール信号を赤外線信号として出力する。そして、この赤外線信号を被制御機器であるテレビジョン受像機(図示せず)で受信させることで、このテレビジョン受像機の遠隔制御が可能になる。
【0012】そして本例においては、音声入力により赤外線信号の出力ができるようにしてある。即ち、このリモートコントロール装置には、モード設定スイッチ6が設けてあり、中央制御装置2でモード設定スイッチ6により設定されたモードが判断される。そして、このモード設定スイッチ6により設定されるモードとしては、キー操作によるモード,音声入力によるモード,音声登録モードの3種類が用意されている。そして、音声入力によるモード,音声登録モードの場合に使用するものとして、マイク7が取付けてあり、このマイク7が拾った音声を、電気的な音声信号として増幅器8を介してアナログ/デジタル変換器9に供給し、このアナログ/デジタル変換器9でデジタル音声データに変換する。そして、変換されたデジタル音声データを、音声認識回路10に供給する。この音声認識回路10では、供給されるデジタル音声データのパターンを認識し、認識したパターンデータを中央制御装置2に供給する。そして、上述したモード設定スイッチ6で音声登録モードが設定されている場合には、中央制御装置2が供給されるパターンデータをメモリ3の所定のエリアに記憶させる。この場合、音声入力と同時に操作されたキー1の種類を中央制御装置2が判断して、このとき押されたキー1に対応する制御データも記憶させる。」

上記周知例2又は3の記載事項によれば、一般に、スイッチ操作による手動操作モードと音声入力による音声入力操作モードとを、切り換えスイッチにより適宜切り換える技術は、周知技術である。
してみると、引用発明と上記周知例2又は3とは、音声による入力と手動操作による入力とを備えた技術に関する発明である点で共通していることから、上記引用発明において、上記周知技術を採用しマイク(42)による音声入力と、ビデオプロセッサに設けられた入力部(28)とをスイッチにより切り換えて使用するような構成とすることに特段の困難性はない。また、引用発明において上記周知技術を採用した際には、制御部(29)において入力部(28)の入力が切り換えられるようになることは技術的に明白である。

よって、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

上記相違点5について検討する。
上記相違点4において検討したように、スイッチ操作による手動操作モードと音声入力による音声入力操作モードとを、切り換えスイッチにより適宜切り換える技術を、引用発明において採用した際には、音声入力操作モードにおいては、音声入力により、映像信号合成部が制御されることは、技術的に明白である。
また、スイッチ操作による手動操作モードを選択した際には、モードが切り換えられていることから、音声入力による音声入力操作の機能が停止することも技術的に明白である。
また、ビデオプロセッサに設けられた入力部(28)は、上記摘記事項(5)に「その中で切換信号を入力するための手段として、ビデオプロセッサ3に設けられた入力部28、または、ステレオスコープ2の操作部11に設けられた各スイッチ、またはHMD6に設けられた切換えスイッチ17等がある。」と記載されているように、一種のスイッチ機能を有していることは技術的に明白であるから、ビデオプロセッサに設けられた一種のスイッチ機能を有してなる入力部(28)からの入力に応じて制御部が映像信号合成部(22)などの制御を行っていることは技術的に明らかである。
また、上記相違点2で検討したように、制御部(29)としてマイクロプロセッサを採用した際には、一種のスイッチ機能を有してなる入力部(28)からの入力に応じてマイクロプロセッサが動作し、該動作に応じて制御に関するプログラムが実行されることは、技術的に明白である。

よって、上記相違点5に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

そして、本願発明の奏する作用効果も、引用例1に記載された事項及び上記周知技術から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明(本願発明)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、よって、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-20 
結審通知日 2008-08-26 
審決日 2008-09-09 
出願番号 特願平9-244601
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 山川 雅也
西島 篤宏
発明の名称 頭部装着型表示システム  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  

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