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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A62C
管理番号 1187181
審判番号 不服2005-5227  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-25 
確定日 2008-10-29 
事件の表示 特願2001-556551「ガス消火方法及び消火設備」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 9日国際公開、WO01/56658〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本件出願は、2001年2月1日(優先権主張 2000年2月3日 日本国)を国際出願日とする出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年2月12日付け手続補正書により補正がなされた特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「アルゴン50体積%及び窒素50体積%の混合ガスからなるガス系消火薬剤と、合成界面活性剤含有水、動植物性気泡性物質含有水、又はフッ素添加界面活性剤含有水からなる泡水溶液とを混合させて前記ガス系消火薬剤を包囲する泡を形成し、この泡を放出し、前記ガス系消火薬剤は前記泡内に包み込まれた状態で泡により火源近くまで運ばれそして泡が炎に接して破れると泡内から流出し、火源周辺の酸素濃度を低下させて消火することを特徴とするガス消火方法。」

2 引用刊行物の記載事項
当審における平成19年12月12日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由1に引用した、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開97/25105号(以下「引用例」という。)には、「消火剤」と題する発明について、以下の記載がある。なお、翻訳として、引用例に対応する国内公表の公報である特表2000-507113号公報の記載を併記する。

(1)「1. Field of the Invention
The present invention relates to a fire-extinguishing agent composition which is used for extinguishing various kinds of fires, and more particularly to a fire-extinguishing agent composition which can firstly extinguish the fire by generating foam which isolates the fire from an oxygen of an air, and can secondarily extinguish the fire by an incombustible liquified gas, which is contained in foam and is come out therefrom when the foams bursts, thereby improving the fire extinguishing effect.」(1頁4行目ないし14行目)
(1.発明の技術分野
本発明は、各種の火災を消火するために用いられる消火剤に関し、特に、まず第一に空気中の酸素から火を絶縁する泡を発生することにより消火でき、第二に泡に含まれ、泡が破裂する際に生ずる不燃性液化ガスにより消火でき、よって消火効果を向上させることができる消火剤に関する。(国内公表の公報3頁4行目ないし8行目参照))

(2)「To achieve the above object, the present invention provides a fire-extinguishing agent composition produced by the method comprising the steps of:
dissolving 6 to 20 volume percent of an aqueous foaming agent in a water;
injecting the dissolved aqueous foaming agent into a pressure vessel; and
filling an incombustible liquified gas into the pressure vessel by applying a pressure, wherein the fire-extinguishing agent composition discharged from the pressure vessel has foam containing the incombustible liquified gas therein.」(6頁18行目ないし7頁10行目)
(上記目的を達成するために、本発明は、水に6乃至20容積パーセントの水性発泡剤を溶解するステップと、溶解した水性発泡剤を圧力容器に注入するステップと、加圧することにより不燃性液化ガスを圧力容器に充填するステップとからなる方法によって生成される消火剤であって、圧力容器から排出される消火剤は、不燃性液化ガスを含む泡を有することを特徴とする消火剤を提供する。(国内公表の公報5頁6行目ないし10行目参照))

(3)「Light-Water 3% , which is manufactured by 3M company of U.S.A., is preferably used as an aqueous foaming agent of the present invention. Light-Water(commonly called AFFF 3%) consists of 60 weight percent of water, 30 weight percent of 2-2-butoxy ethanol, below 5 weight percent of fluoroalkyne surfactant, below 6 weight percent of synthetic detergent, and below 0.1 weight percent of methyl benzotriazol.
Light-Water is an aqueous foaming agent, and is generally used for extinguishing the fire caused by petroleum products. As is well known, Light-Water is diluted with water in the density of 3% or 6% when it is used, and products foam by means of a pressure pump or a water supply pump.
In the present invention, the aqueous foaming agent(AFFF 3%) mixed with water is injected into the pressure vessel and a incombustible liquified gas(Halon 1301) is filled in the pressure vessel as a foam generator. In addition, in order to measure the volume and condition of foam discharged from the pressure vessel, both the pressure vessel, which has a capacity of 3.55 l and is endurable at the pressure of 150 kg/cm^(2 ), and a measuring instrument which can measure 75 l of foam are used. 」(8頁17行目ないし10頁2行目)
(好ましくは、米国のスリーエム社によって製造されている軽水(light water)3%が本発明の水性発泡剤として使用される。
軽水(通常AFFF3%と称される)は、60重量パーセントの水と、30重量パーセントの2-2-ブトキシ・エトキシ・エタノール(2-2 butoxy ethoxyethanol)と、5重量パーセント以下のフルオロアルカン界面活性剤(fluoroalkayne surfactant)と、6重量パーセント以下の合成洗剤と、0.1重量パーセント以下のメチル・ベンゾトリアゾールとからなる。
軽水は水性発泡剤であり、一般に石油製品により発生した火災の消化(「消火」の誤記)に使用される。周知のように、軽水は、使用される際は3乃至6%の密度で水に希釈され、圧力ポンプもしくは給水ポンプによって泡を生成する。
本発明においては、水と混合された水性発泡剤(AFFF3%)は、圧力容器に注入され、不燃性液化ガス(ハロン1301)は、発泡剤として圧力容器に充填される。加えて、圧力容器から排出される泡の体積および状態を測定するために、3.55リットルの容積を有し、150kg/cm^(2)の圧力に耐えられる圧力容器と、75リットルの泡を測定できる測定装置の両方を用いる。(国内公表の公報5頁下から4行目ないし6頁14行目参照))

(4)「In addition, though Halon is generally used as a incombustible liquified gas of the present invention, it is also possible to use a substitute material as the incombustible liquified gas instead of Halon.」(13頁13行目ないし16行目)
(加えて、ハロンが本発明の不燃性液化ガスとして一般的に用いられているが、ハロンの代わりに不燃性液化ガスとして代用材料を用いることも可能である。(国内公表の公報9頁5行目ないし6行目参照))

(5)「As described above, the fire-extinguishing agent composition of the present invention can generate foam, which produces a film on the combustible material so that the fire is isolated from the oxygen of the air, thereby extinguishing the fire. At the same time, the fire-extinguishing agent composition of the present invention can dilute the density of the oxygen in the air by the incombustible liquified gas, which is contained in foam and is come out therefrom when foam bursts, thereby improving the fire-extinguishing effect.」(17頁6行目ないし15行目)
(上記のように、本発明の消火剤は、火が空気中の酸素から絶縁されるように可燃性物質上に薄い膜を形成する泡を生成し、これにより消火を行うことができる。
同時に、本発明の消火剤は、泡に含まれ、泡が破裂する際にそこから出る不燃性液化ガスにより空気中の酸素の密度を薄め、これにより消火効果を向上させることができる。(国内公表の公報11頁下から1行目ないし12頁5行目参照))

ここにおいて、引用例には、消火剤に関する発明とともにその消火方法についても記載されているといえるから、引用例には次の発明(以下「引用例記載の発明」という。)が開示されているものと認めることができる。
「ハロン1301などからなる不燃性液化ガスと、フルオロアルカン界面活性剤などを含有する水性発泡剤とを混合させて、前記不燃性液化ガスを含む泡を排出し、これにより消火を行うと同時に、泡に含まれ、泡が破裂する際にそこから出る前記不燃性液化ガスにより空気中の酸素の密度を薄め、これにより消火を行う消火方法。」

3 対比
本願発明と引用例記載の発明とを比較すると次のことが明らかである。
・本願発明の「アルゴン50体積%及び窒素50体積%の混合ガスからなるガス系消火薬剤」と、引用例記載の発明の「ハロン1301などからなる不燃性液化ガス」とは、ともに、「ガス系消火薬剤」という点で共通する。
・引用例記載の発明の「フルオロアルカン界面活性剤などを含有する水性発泡剤」は、本願発明の「フッ素添加界面活性剤含有水からなる泡水溶液」に相当する。
・引用例記載の発明の「不燃性液化ガスを含む泡を排出し、これにより消火を行うと同時に、泡に含まれ、泡が破裂する際にそこから出る前記不燃性液化ガスにより空気中の酸素の密度を薄め」る点について、ひとつに、泡の排出により消火を行うというのであるから、この泡は火源まで運ばれているといえ、また、泡の破裂により出る不燃性液化ガスが空気中の酸素の密度を薄めるというのであるから、泡は炎に接したあたりで破裂するということができるから、この引用例記載の発明の上記の点は、本願発明の「ガス系消火薬剤を包囲する泡を形成し、この泡を放出し、前記ガス系消火薬剤は前記泡内に包み込まれた状態で泡により火源近くまで運ばれそして泡が炎に接して破れると泡内から流出し、火源周辺の酸素濃度を低下させ」る点に相当するといえる。

すると、両者は、
「ガス系消火薬剤と、フッ素添加界面活性剤含有水からなる泡水溶液とを混合させて前記ガス系消火薬剤を包囲する泡を形成し、この泡を放出し、前記ガス系消火薬剤は前記泡内に包み込まれた状態で泡により火源近くまで運ばれそして泡が炎に接して破れると泡内から流出し、火源周辺の酸素濃度を低下させて消火するガス消火方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点; ガス系消火薬剤に関し、本願発明が「アルゴン50体積%及び窒素50体積%の混合ガス」からなるものであるのに対して、引用例記載の発明は「ハロン1301など」からなるものである点。

4 相違点についての検討
一般に、ガス系消火薬剤として、二酸化炭素、窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス、又は、これらの混合ガスを使用することは、例えば、特開平8-150226号公報、特開平8-266677号公報、特開平11-267240号公報などにも記載があるように周知の技術である。そして、特開平8-150226号公報の【表1】には、混合ガスの例として、窒素とアルゴンとを50%ずつ混合したものも挙げられている。そして、引用例においても、ガス系消火薬剤としてハロン以外の使用が示唆されている。
そうすると、引用例記載の発明において、ガス系消火薬剤としてのハロンなどに代えて、窒素とアルゴンとを50体積%ずつ混合したガスを採用し、本願発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

そして、本願発明が奏する効果も、引用例記載の発明及び周知の技術から当業者が予測し得たものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-29 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-16 
出願番号 特願2001-556551(P2001-556551)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A62C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 成彦  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 柴沼 雅樹
岸 智章
発明の名称 ガス消火方法及び消火設備  
代理人 風早 信昭  
代理人 浅野 典子  

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