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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1187236 |
審判番号 | 不服2007-13080 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-05-07 |
確定日 | 2008-11-06 |
事件の表示 | 平成11年特許願第165137号「帯電用磁性粒子、帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び電子写真装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 3日出願公開、特開2000- 66446〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明・手続の経緯の概要 本願は、平成11年6月11日(優先権主張平成10年6月11日)に出願されたものであって、本願の請求項1ないし17に係る発明は「帯電用磁性粒子、帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び電子写真装置」に関するものと認められる。 本願の手続の経緯の概要は、次のとおりである。 平成18年10月24日(発送日)拒絶理由通知(起案は10月19日付け) 平成18年12月15日 意見書 平成18年12月15日 手続補正書 平成19年1月23日(発送日)拒絶理由通知(起案は1月15日付け) 平成19年3月12日 意見書 平成19年3月12日 手続補正書 平成19年4月3日 拒絶査定 平成19年5月7日 審判請求 平成19年5月29日 手続補正書(審判請求書の「請求の理由」の補正) 2.原査定の拒絶理由の概要 原査定の拒絶理由は、平成19年1月15日付けで通知した拒絶理由の理由でありその内容は次のとおりである。 「 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 明細書の段落【0137】等の記載を参照すると、請求項1に係る発明は、「長期にわたり安定した画像を得ることが可能である」との作用効果を奏するものである。 そこで、請求項1の記載を参照すると、請求項1に係る発明は、磁性粒子が、銅、マンガン及びリチウムの少なくともひとつと鉄を含むフェライト粒子であることに加えて、 (1)磁性粒子全体の体積抵抗値 (2)磁性粒子の平均粒径 (3)粒径5μm以上の磁性粒子の短軸長さ/長軸長さの標準偏差の3種類の数値範囲を定めている。そして、請求項1の記載から、磁性粒子が、銅、マンガン及びリチウムの少なくともひとつと鉄を含むフェライト粒子であって、上記(1)?(3)に記載された数値範囲に含まれるものは、請求項1に係る発明の範囲に含まれるものと認められる。 そこで、発明の詳細な説明等の記載を参照すると、段落【0136】の表1に磁性粒子の製造例が列記され、その磁性粒子を用いた場合の実験結果が、段落【0172】の表2に記載されているが、(2)の平均粒径に関しては、12?55μmの例の実験しか行われておらず、請求項1に記載された数値範囲である10?200μmの範囲のすべての領域で良好な結果を示しうることを客観的に示した根拠は開示されていない。また、(1)の体積抵抗値に関しても、5×10^(6)?8×10^(7)Ωcmの数値範囲において良好な結果を示しうることは開示されているが、請求項1に記載された数値範囲である10^(4)?10^(9)Ωcmのすべての領域で良好な結果を示しうることを客観的に示した根拠は開示されていない。さらに、(3)の粒径5μm以上の磁性粒子の短軸長さ/長軸長さの標準偏差についても、0.1以上で良好な結果を奏しうることを示した例は開示されているが、0.08以上の数値範囲まで拡張ないし一般化できることを客観的に示す根拠が開示されていない。 そして、上記(1)?(3)の数値範囲の全ての領域における全ての組み合わせについて、発明の詳細な説明に記載された作用効果を奏しうることを客観的に示した根拠が、十分に開示されておらず、そのことが、当業者にとって自明であるとも認められない。 出願人は、意見書において、平均粒径が10?200μmの範囲で良好な結果を示すことの根拠として、段落【0043】の記載を挙げているが、段落【0043】の記載は、実験等の客観的な事実に基づくものではなく、憶測にすぎない。 したがって、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張又は一般化できるとは認められない。 請求項1の記載を引用する請求項2?23に係る発明についても同様である。また、請求項2?10、17、20、23に記載された数値範囲についても、その数値範囲のすべての領域において良好な結果を示しうることを客観的に示した根拠は十分に開示されておらず、それらの数値範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張又は一般化できるとは認められない。 請求項2?10、17、20の記載を引用する他の請求項についても同様である。 よって、請求項1?23に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」 3.当審の判断 上記拒絶理由の理由の中で、 ア)本願の特許請求の範囲、請求項1記載の「平均粒径」に関し、発明の詳細な説明等には「(2)の平均粒径に関しては、12?55μmの例の実験しか行われておらず、請求項1に記載された数値範囲である10?200μmの範囲のすべての領域で良好な結果を示しうることを客観的に示した根拠は開示されていない。」とした点、 イ)「粒径5μm以上の磁性粒子の短軸長さ/長軸長さの標準偏差」について、「(3)の粒径5μm以上の磁性粒子の短軸長さ/長軸長さの標準偏差についても、0.1以上で良好な結果を奏しうることを示した例は開示されているが、0.08以上の数値範囲まで拡張ないし一般化できることを客観的に示す根拠が開示されていない。」とした点、 ウ)「上記(1)?(3)の数値範囲の全ての領域における全ての組み合わせについて、発明の詳細な説明に記載された作用効果を奏しうることを客観的に示した根拠が、十分に開示されておらず、そのことが、当業者にとって自明であるとも認められない。」とした点について、これらが解消されたか否かについて以下に検討する。 まず、本願の請求項1の記載は以下のとおり、「平均粒径が10?200μm」と「標準偏差が0.08以上」の各記載は、平成19年3月12日付けの手続補正においてそれぞれ「平均粒径が10?40μm」、「標準偏差が0.1以上」と補正された。 「磁性粒子からなる、全体の体積抵抗値が10^(4)?10^(9)Ωcmである電子写真感光体の帯電に用いられる帯電用磁性粒子であって、平均粒径が10?40μmの範囲にあり、且つ粒径5μm以上の磁性粒子の短軸長さ/長軸長さの標準偏差が0.1以上であり、 該磁性粒子は、銅、マンガン及びリチウムの少なくともひとつと鉄を含むフェライト粒子であることを特徴とする帯電用磁性粒子。」 本願の補正後の特許請求の範囲、請求項1の記載から明らかなとおり、請求項1に係る発明には、「全体の体積抵抗値が10^(4)?10^(9)Ωcmである電子写真感光体の帯電に用いられる帯電用磁性粒子」であって、「銅、マンガン及びリチウムの少なくともひとつと鉄を含むフェライト粒子である」「帯電用磁性粒子」に関して、「平均粒径」が10?40μmの範囲内のもので「粒径5μm以上の磁性粒子の短軸長さ/長軸長さの標準偏差」が0.1以上であるものを含むものである。 そして、本願発明の作用効果について、発明の詳細な説明には、 「本発明の帯電用磁性粒子は、磁性粒子からなり、全体の体積抵抗値が10^(4)?10^(9)Ωcmである電子写真感光体の帯電に用いられる帯電用磁性粒子であって、平均粒径が10?40μmの範囲にあり、且つ粒径5μm以上の磁性粒子の短軸長さ/長軸長さの標準偏差が0.1以上であり、該磁性粒子は、銅、マンガン及びリチウムの少なくともひとつと鉄を含むフェライト粒子であるものである。かかる構成により、耐久性及び画質において顕著な効果が得られた。」(段落【0026】)、 「そこで、クリーナレス画像形成装置を例にとって、本発明の作用効果を説明すると、本発明の磁性粒子を用いることにより(1)磁性粒子と感光体表面との接触性が向上し、転写残りのトナー成分があっても感光体を十分に帯電することができる。(2)磁性粒子同士の表面クリーニング効果があり、長期使用によっても粒子表面への異物堆積が抑制され効果の持続性が大きい。という作用効果が得られる。」(段落【0032】) と記載されている。 しかし、本願明細書では前記「短軸長さ/長軸長さの標準偏差」について、本願発明の実施例として記載された値は0.1?0.15の非常に限られた狭い範囲内のものだけであり(補正後の実施例1?14、表1、表2参照)、該標準偏差が0.15より大きい値であっても所定の効果が奏されるということを示す実施例は記載されていない。 このように、「短軸長さ/長軸長さの標準偏差」についての具体的な数値の開示は限定的なものであり、帯電用磁性粒子の平均粒径に関しても、本願発明の実施例として具体的に記載されたのは12?27μmの限られた範囲内のものだけであり、平均粒径が28?40μmのもので所定の作用・効果が奏されるということを示す実施例は記載されていない。 ところで、電子写真帯電装置における磁気ブラシによる接触帯電では、感光体と粒状体との接触性向上が帯電能を高める重要な要素であることはよく知られていることであり(必要ならば、特開平9-288402号公報,段落【0048】参照)、粒子の粒径と形状(丸さの程度など)の差異に加え、粒径と形状にばらつきがある粒子の分布において差異があれば感光体と粒子の接触状態に影響するので、長期使用で安定した画像が得られなくなる虞があることは自明の事項である。 したがって、形状が異なる粒子の分布状態に関係するパラメータの一つに過ぎない「短軸長さ/長軸長さの標準偏差」が0.1?0.15の範囲で所定の効果をもたらしたとしても、上限がない0.15を越える範囲には、短軸長さ/長軸長さの比がそろっていない様々な形状の粒子を含むものも包含されるから、0.1?0.15の範囲内にあるときと同様の作用効果を奏し得るとすることはできない。 してみると、0.1?0.15の非常に限られた範囲内の「短軸長さ/長軸長さの標準偏差」を採用した本願明細書に記載の実施例をもって、上限の定まらない「短軸長さ/長軸長さの標準偏差」0.1以上の全範囲にわたって、所定の効果が奏されること、即ち本願発明の課題を解決し目的を達成できることを裏付けているとは言えない。 さらに、平均粒径が12?27μmの範囲内である帯電用磁性粒子を用いた実施例で効果があったとしても、平均粒径の違いは感光体との接触に影響を及ぼすパラメータであるから、規定された数値範囲の一部に過ぎない実施例をもって、平均粒径が28?40μmの範囲内にあっても12?27μmの範囲内と同様の作用効果を奏し得るとはいえない。 以上のとおり、帯電用磁性粒子に関して、「短軸長さ/長軸長さの標準偏差」は「0.1以上」であり、「平均粒径」は「10?40μm」という全範囲において、本願明細書に記載の所定の作用効果が得られるという根拠が発明の詳細な説明に記載されておらず、不明であるから、請求項1に記載された範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張することはできない。 よって、本願の請求項1等は、平成19年3月12日付け手続補正によって補正がなされたが、先の拒絶理由で指摘した上記の不備は解消されていない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-03 |
結審通知日 | 2008-09-09 |
審決日 | 2008-09-24 |
出願番号 | 特願平11-165137 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 祐介 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 淺野 美奈 |
発明の名称 | 帯電用磁性粒子、帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
代理人 | 内尾 裕一 |
代理人 | 西山 恵三 |