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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1187267
審判番号 不服2007-19298  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-10 
確定日 2008-11-04 
事件の表示 特願2001-398301「気体圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月18日出願公開、特開2003-201965〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成13年12月27日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年6月11日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「圧縮室内に吸入された冷媒ガスを圧縮し、この圧縮された高圧冷媒ガスを吐出弁部を介して吐出室側に吐出する圧縮機構部を有する気体圧縮機であって、
上記吐出弁部は、
上記圧縮室側に一端が開口され、上記吐出室側に他端が開口されて上記圧縮室と吐出室とを連通する吐出孔と、
上記吐出孔の吐出室側開口端の縁部にその基部が支持され、閉時にはその先端部が当接して上記吐出室側開口を塞ぎ、開時にはその先端部底面に作用する圧縮室内圧により弾性変形して上記吐出室側開口を開くように開閉動作するリードバルブと、
上記リードバルブ上に設けられ、上記吐出室側開口に当接するリードバルブの先端部に突出形成されてなるリードバルブ幅方向に横一文字のリブからなり、上記閉時に該リードバルブが吐出孔内へと押し込まれて撓み変形するのを防止する補強手段と、
を具備することを特徴とする気体圧縮機。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭58-126495号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「ロータリコンプレツサでは、第1図に示す如く、吸込管或いはインジエクシヨン管等よりシリンダ1内に入つた冷媒はローラ2の偏心回動によつて圧縮され、吐出孔3から吐出されて吐出マフラーに入るようになつている。尚、4はケース、5はメインベアリング、6はサブベアリング、7はシヤフトである。上記吐出孔3はサブベアリング6に形成されており、その出口周縁には弁座が形成され、弁座及び吐出孔3を覆つて第2図及び第3図に詳示する如き吐出弁8が設置されている。吐出弁8先端部の動きを一定の範囲内に規制するために、吐出弁ストツパー9が設けられている。この吐出弁8によれば、吐出孔3から冷媒が吐出されると開き、その冷媒の吐出が終了すると閉じて、吐出孔3における逆流を防止することができる。
しかし、従来の吐出弁8はその先端部の周縁或いは弁座に当たる部分が折損するという問題がある。」(1頁左下欄20行?同頁右下欄18行)

・「本発明は・・・その目的とするところは、吐出弁自身を補強することで耐衝撃性が向上するようになし、吐出弁破損という故障のない、信頼性の高いロータリコンプレツサを提供するにある。」(2頁左上欄14?18行)

・「第4図及び第5図に示す如く、吐出弁8先端部の周縁を折り曲げて折曲げ部19を形成し、折曲げ部19をもつて吐出弁8を補強する補強部が構成されている。これによれば、吐出弁8先端部の周縁が補強されるため、折損事故を防止することができる。
第6図及び第7図に示す実施例では、吐出弁8先端部の弁座が当たる部分に補強部としてリブ20を設け、その部分における折損を防止している。
第8図に示す実施例は、リブ20をプレス加工で形成した場合を示し、第9図に示す実施例は、吐出弁8にリブ20を固着して設置した場合を示す。
第10図及び第11図に示す実施例では、中心から外側へ放射方向にリブ20を設けており、吐出弁8先端部の周縁及び弁座の当たる部分の双方を補強することができる。
このような補強部19,20を有する吐出弁8は、第12図に示す如く、サブベアリング6に形成した吐出孔3及び弁座21を覆うように取り付けられ、その弁リフトを弁ストツパー9で設定されている。」(2頁右上欄1行?同頁左下欄3行)

・「尚、ロータリコンプレツサには、第17図に示す如く、ブレード10が設けられ、スプリング11の力によつてローラ2に押し付けられており、第18図に示す如く、シリンダ室を圧縮室12と吸込室13とに仕切つている。」(2頁左下欄14?18行)

・また、第1図、第18図には、シリンダ1、ローラ2、ブレード10等により構成される圧縮機構部が示され、第1図、第12図には、吐出孔3と吐出弁8とを具備する吐出弁部、吐出孔3が外側で連通する吐出室、及び、吐出孔3の吐出室側開口の近傍にその基部が支持され、先端部が吐出室側開口に当接して吐出孔3を閉じるようにした吐出弁8が示され、さらに、第6図ないし第11図には、吐出弁8の先端部に突出形成されてなるリング状や放射状のリブ20が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「圧縮室12内に入った冷媒を圧縮し、この圧縮された冷媒を吐出弁部を介して吐出室側に吐出する圧縮機構部を有するロータリコンプレッサであって、
上記吐出弁部は、
上記圧縮室12側に一端が開口され、上記吐出室側に他端が開口されて上記圧縮室12と吐出室とを連通する吐出孔3と、
上記吐出孔3の吐出室側開口の近傍にその基部が支持され、吐出孔3から冷媒が吐出されると開き、その冷媒の吐出が終了すると先端部が上記吐出室側開口に当接して吐出孔3を閉じる吐出弁8と、
上記吐出弁8上に設けられ、上記吐出室側開口に当接する吐出弁8の先端部に突出形成されてなるリング状や放射状のリブ20からなり、吐出弁8自身を補強する補強部と、
を具備するロータリコンプレッサ。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者の「圧縮室12内に入った冷媒」は「冷媒」の一種としてガス状のものも含まれることから、前者の「圧縮室内に吸入された冷媒ガス」に相当し、以下同様に、「圧縮された冷媒」は「圧縮された高圧冷媒ガス」に、「ロータリコンプレッサ」は「気体圧縮機」に、「吐出孔3の吐出室側開口の近傍」は「吐出孔の吐出室側開口端の縁部」に、「吐出孔3から冷媒が吐出されると開き、その冷媒の吐出が終了すると先端部が吐出室側開口に当接して吐出孔3を閉じる吐出弁8」は「閉時にはその先端部が当接して吐出室側開口を塞ぎ、開時にはその先端部底面に作用する圧縮室内圧により弾性変形して上記吐出室側開口を開くように開閉動作するリードバルブ」に、それぞれ相当している。
また、後者のものにおいて、「吐出弁8自身を補強する」ことにより吐出弁8自身の変形が防止されることは明らかであるから、後者の「リング状や放射状のリブ20からなり、吐出弁8自身を補強する補強部」と前者の「リードバルブ幅方向に横一文字のリブからなり、上記閉時に該リードバルブが吐出孔内へと押し込まれて撓み変形するのを防止する補強手段」とは、「リブからなり、変形するのを防止する補強手段」との概念で共通している。

したがって、両者は、
「圧縮室内に吸入された冷媒ガスを圧縮し、この圧縮された高圧冷媒ガスを吐出弁部を介して吐出室側に吐出する圧縮機構部を有する気体圧縮機であって、
上記吐出弁部は、
上記圧縮室側に一端が開口され、上記吐出室側に他端が開口されて上記圧縮室と吐出室とを連通する吐出孔と、
上記吐出孔の吐出室側開口端の縁部にその基部が支持され、閉時にはその先端部が当接して上記吐出室側開口を塞ぎ、開時にはその先端部底面に作用する圧縮室内圧により弾性変形して上記吐出室側開口を開くように開閉動作するリードバルブと、
上記リードバルブ上に設けられ、上記吐出室側開口に当接するリードバルブの先端部に突出形成されてなるリブからなり、変形するのを防止する補強手段と、
を具備する気体圧縮機。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
補強手段に関し、本願発明では、「リードバルブ幅方向に横一文字の」リブからなり、「閉時にリードバルブが吐出孔内へと押し込まれて撓み」変形を防止するものであるのに対し、引用発明では、「リング状や放射状の」リブからなり、また、変形を防止する対象である撓み変形について明確にされていない点。

4.判断
上記相違点について、以下検討する。
例えば、実公昭45-28483号公報(2欄15?21行の「第2図、第3図で示すように弁板7の表面にたわみ方向I-Iと直角な方向の細い2本の凸条8,9・・・を設けた。そうすると弁板7は自由にたわみ、しかもI-I方向と交わる方向のたわみに対して大きい抵抗力を発揮する。」なる記載参照。)や実願昭55-38259号(実開昭56-141261号)のマイクロフィルム(明細書2頁16?17行の「弁体3の背面には取付板6に平行に数本のリブ4が一体に成形,配置されており」、同3頁19行?4頁4行の「弁体3が閉止した時にかかる逆圧に対して補強するために・・・リブ4A,4B,4の長さを弁座2の口径をまたぐように、しかし弁体3の周辺までには達していないように配置してあるので、強度的にも充分であり、且つ気密性にも優れている。」なる記載参照。)に開示されているように、リードバルブにおいて、リードバルブ幅方向に直線状に形成されたリブからなり、閉時に該リードバルブが吐出孔内へと押し込まれて撓み変形するのを防止し得る補強手段を設けることは周知技術である。
また、リブの本数は、補強箇所の形状、大きさや、補強の程度、加工のし易さ等を勘案して、適宜決定し得る設計的事項にすぎず、特に1本とすることに格別の困難性が伴うともいえず、また、それにより格別の作用効果が奏されるとも認められない。
そうすると、引用発明において、リードバルブの先端部に突出形成されてなるリブからなる補強手段に上記周知技術を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明及び上記周知技術から、当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-02 
結審通知日 2008-09-03 
審決日 2008-09-22 
出願番号 特願2001-398301(P2001-398301)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 米山 毅
仁木 浩
発明の名称 気体圧縮機  
代理人 和田 成則  

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