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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02K
管理番号 1187906
審判番号 不服2006-14725  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-10 
確定日 2008-11-12 
事件の表示 特願2001-386735「ガスタービン用の機械加工されたファン出口ガイドベーン取付ポケット」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月19日出願公開、特開2002-202004〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月19日の出願(パリ条約による優先権主張2000年12月19日、アメリカ合衆国)であって、平成17年1月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成17年7月19日付けで意見書及び補正書が提出され、平成18年4月3日付けで拒絶査定がなされた。
そして、平成18年7月10日付けで拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、平成18年8月9日付けで、明細書を補正する手続補正書が提出され、平成18年9月21日付けで、請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1乃至32に係る発明は、平成18年8月9日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至32に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項29に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項29】 ガスタービン用のベーンであって、
第1の端部と第2の端部とを有するエアフォイル構造と、
エアフォイル構造の第1の端部を取り巻くブーツとを有してなり、
前記ブーツは、前記ベーンと一体に形成され前記ベーンから分離できない、ことを特徴とするベーン。」


3.刊行物記載の発明、技術
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-85103号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「本発明の一つの例示的実施例として、第3図に示された軸流ガスタービンエンジンの圧縮機セクション40の一部について考える。圧縮機セクション40はステータ組立体42と該ステータ組立体に軸線方向に隣接するロータ組立体44とを含んでいる。ロータ組立体44はエンジン軸線48の周りに回転するディスク46と、該ディスクに対し通常の要領にて取付けられ周縁方向に配列された一列のブレード50とを含んでいる。ブレード50はディスク46より作動媒体ガス流路52を横切って半径方向外方へ延在している。第4図に於て、ステータ組立体42はアウタベーン支持構造体54と周縁方向に配列された一列のベーン56とを含んでおり、ベーンはアウタベーン支持構造体54に取付けられており、該構造体より半径方向内方へ延在している。アウタベーン支持構造体54の半径方向内向き面58は作動媒体ガス流路52の外縁境界を郭定している。またステータ組立体42はインナベーン支持構造体60を含んでいる。インナベーン支持構造体60の半径方向外向き面は作動媒体ガス流路52の内縁境界を郭定している。インナベーン支持構造体60はラビリンスシール62を含んでおり、該シールはディスク46と一体に形成されたナイフエッジ64と係合し得るようになっている。
各ステータベーン56は半径方向に互いに対向する外端部66と内端部68とを有している。」(3ページ左下欄14行?右下欄20行。なお、下線は当審で付した。以下同様。)

イ.「キャビティの側壁112の曲率の度合はエーロフォイル形をなすベーンの内端部68の曲率の度合と同様であるが、各キャビティの軸線方向の幅は各ベーンの内端部68の厚さよりも大きく、キャビティの幅は軸線方向後方へ向かうにつれて減少している。」(5ページ上左欄7?13行)

ウ.「各ステータベーン56の基準線126はシュラウドセクションの曲率中心124を通る半径方向の線上に存在していることが好ましい。振動減衰シリコンゴム材料128が各ベーンの内端部68を保持すべく各キャビティ82に嵌込まれている。シリコンゴム材料128はキャビティの壁面に接合されており、各キャビティ82を完全に充填しており、これにより各ベーンの内端部68を囲繞し且これに接合されている。」(6ページ左上欄19行?右上欄8行)

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

「ガスタービン用のベーンであって、
内端部68と外端部66とを有するエーロフォイル形をなすベーン56と、
エーロフォイル形をなすベーン56の内端部68を囲繞する振動減衰シリコンゴム材料128とを有してなり、
前記振動減衰シリコンゴム材料128は、前記ベーン56の内端部68に接合されているベーン。」

(2) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭58-165503号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「第1図には軸流高バイパス比ガスタービンエンジン10のファン組立体の一部域を示す。ガスタービンまたはターボファンエンジン10は実質的に円筒形のステータ外側ケーシング12に包囲されたファン組立体を含む。このファン組立体は、周方向に相隔たりかつ半径方向に延在する複数のファン動翼11を含むファン動翼列からなる。ファン動翼11の半径方向内端は回転軸13に適切に連結されている。
複数のファン動翼11の下流には出口案内翼列が存し、この翼列は、周方向に相隔たりかつ半径方向に延在する複数の出口案内翼14を含む。翼14はアルミニウムおよび他の金属で製造しうるものであるが、軽量高強度の複合材料が好ましい。さらに詳述すると、複合材料は塑性樹脂のような均質マトリックスに埋設された高強度繊維、例えば、ホウ素または黒鉛繊維で構成されうる。
各出口案内翼14は半径方向内端部すなわち先端部15と半径方向外端部すなわち根部16を有する。出口案内翼14は先行技術において見られるような複雑な形の先端部15と根部16を含みうるが、本発明の一実施例による改良型翼取付け組立体は平端翼14を含む。
さらに詳述すると、各翼14は、第2図の翼14Cに詳細に示されているように、簡単な形状の、好ましくは翼形の先端部15と根部16を有する細長い翼形部材からなる。代替的に、例えば、先端部15と根部16は長方形のような他の形を有しうる。翼14の先端部15と根部16はそれぞれステータケーシング12と内側支持シュラウド17とに弾性的に装着されており、これらは後述のようにエンジンに適切に固定されている。」(4ページ左上欄11行?左下欄2行)

イ.「翼14の根部16は取付け整形体21,22の凹み24内に直接固着されうるが、取付け整形体21,22はさらに、翼14の根部16を弾性的に支持するために凹み24内にはめ込まれたエラストマー製ブートすなわち閉底挿入体39のようなエラストマー製受入れ手段を含むことが好ましい。このように、取付け整形体は翼14から受けるいかなる発生荷重に耐えるような剛性構造をもつように設計され得、エラストマー製ブート39は翼14の振動をさらに減衰させうる構造的に柔軟な弾性支承体として役立つ。」(6ページ左上欄13行?右上欄3行)

ウ.「各取付け整形体21または22とそれに対応するブート39と翼14は組立て可能な組立てユニットをなし、そしてエポキシのような接着剤を用いてブート39を翼14の根部16に接着するときに凹み24内に接着しうる、代替的に、翼14の根部16を対応する取付け整形体21または22の凹み24に配置しそしてブート39を適所に成形しかつ硬化させることができその際ブート39の材料はブート39を翼14の根部16と凹み24の壁とに接合する接着剤として作用する。」(6ページ左下欄13行?右下欄2行)

したがって、刊行物2には、次の技術(以下、「刊行物2記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

「ガスタービン用の翼14において、ブート39が、適所に成形しかつ硬化され、翼14に接合する接着剤として作用すること。」


4.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「内端部68」、及び「外端部66」は、それぞれ本願発明の「第1の端部」及び「第2の端部」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「エーロフォイル形をなすベーン56」は、その形状からみて、本願発明の「エアフォイル構造」に相当するから、刊行物1記載の発明の「エーロフォイル形をなすベーン56の内端部68を囲繞する振動減衰シリコンゴム材料128」は、本願発明の「エアフォイル構造の第1の端部を取り巻くブーツ」に相当する。
そして、刊行物1記載の発明の「前記ベーン56の内端部68に接合されている」は、「接合」の結果、「振動減衰シリコンゴム材料128」と「ベーン56の内端部68」とが一体化しているから、少なくとも「ベーンと一体化された」という点では、本願発明の「前記ベーンと一体に形成され前記ベーンから分離できない」と共通する。

してみると、両者は、
「ガスタービン用のベーンであって、
第1の端部と第2の端部とを有するエアフォイル構造と、
エアフォイル構造の第1の端部を取り巻くブーツとを有してなり、
前記ブーツは、前記ベーンと一体化されたベーン。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
「ブーツ」を「ベーン」に一体化するにあたり、本願発明は、「前記ベーンと一体に形成され前記ベーンから分離できない」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、そのようなものであるのかが明らかではない点(以下、単に「相違点」という。)。


5.判断
上記相違点について検討する。
刊行物2記載の技術の「翼14」は、本願発明の「ベーン」に相当する。
そして、刊行物2記載の技術の「ブート39が、適所に成形しかつ硬化され、翼14の根部16に接合する接着剤として作用する」ことは、「ブート39」自体が「成形しかつ硬化され」て「接着剤として作用する」ことで、「翼14」と一体に形成されること、すなわち、そのままでは分離できなくなることであるから、刊行物2には、本願発明に対応して記載すれば、「ガスタービン用のベーンにおいて、ブーツは、ベーンと一体に形成され前記ベーンから分離できないこと。」という技術が記載されているといえる。
刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術が、いずれも「ガスタービン用のベーン」に関する技術という点で共通し、しかも、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術いずれの「ブーツ」も、振動減衰を目的とするものである(上記3.(1)のウ.及び3.(2)のイ.参照。)ことを勘案すれば、刊行物1記載の発明において、「ブーツ」を「ベーン」に一体化するにあたり、刊行物2記載の技術を適用し、上記相違点に係る本願発明のごとく構成することは、当業者が設計上適宜に定める程度のことに過ぎない。

また、本願発明を全体として検討しても、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-16 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-07-01 
出願番号 特願2001-386735(P2001-386735)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 石井 孝明
金澤 俊郎
発明の名称 ガスタービン用の機械加工されたファン出口ガイドベーン取付ポケット  
代理人 鈴木 正剛  

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