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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61H
管理番号 1187915
審判番号 無効2008-800017  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-02-01 
確定日 2008-10-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第3970956号発明「マッサージ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3970956号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3970956号に係る発明は、平成8年4月5日に特許出願されたものであって、平成19年6月15日にその発明について特許権の設定登録がなされた。

これに対し、平成20年2月1日に請求人ファミリー株式会社より無効審判の請求がなされ、平成20年4月18日に被請求人九州日立マクセル株式会社より答弁書が提出され、その後、平成20年6月19日に請求人より口頭審理陳述要領書が、平成20年6月26日に被請求人より口頭審理陳述要領書がそれぞれ提出され、平成20年6月26日に口頭審理が行われ、その後、平成20年7月10日に請求人より上申書が提出されたものである。

2.本件発明

本件特許第3970956号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「マッサージを受ける人が着座する椅子と、当該椅子の前側に移動可能に配設され足裏へのマッサージ効果が得られるマッサージ部と、該マッサージ部を支持するエアーマッサージ部を備えたマッサージ装置において、エアーマッサージ部は一端部を上記椅子のベースに回動自在かつ略水平位置で位置を保持されるように軸支されており、また該エアーマッサージ部の他端側には足裏と接するマッサージ部の底体を椅子の座面より高い位置で椅子に座った人に対向させた状態とするように設けられており、また上記エアーマッサージ部は足裏をマッサージ部31の底体に載せた状態の両足首を下と横から包むように支える形状で、外部より供給された空気で膨張、収縮自在であり、足首を空気圧でマッサージする仕組みを備えており、足裏のマッサージの際に上記エアーマッサージ部が足首を支え、かつ空気圧により足首からふくらはぎ下部にかけてもマッサージを行うことを特徴とするマッサージ装置。」

3.請求人及び被請求人の主張

3-1.請求人の主張

請求人は、特許3970956号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、概略、次の理由及び証拠方法から、本件発明の特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するから無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出している。

[理由]
本件発明は、甲第2号証に記載の発明並びに甲第3号証ないし甲第11号証及び甲第16号証ないし甲第24号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[証拠方法]
甲第1号証:特許第3970956号公報
甲第2号証:特開平8-80230号公報
甲第3号証:特開平5-317376号公報
甲第4号証:特開平8-52183号公報
甲第5号証:MC133型ロイヤルチェアのカタログ
甲第6号証:実願昭63-117550号(実開平2-37625号)の マイクロフィルム
甲第7号証:実願昭47-40284号(実開昭49-789号)のマイ クロフィルム
甲第8号証:実願平1-149892号(実開平3-88524号)のマ イクロフィルム
甲第9号証:特開平5-253264号公報
甲第10号証:特開平8-38562号公報
甲第11号証:実願昭55-93506号(実開昭57-17628号) のマイクロフィルム
甲第12号証:意匠登録第979285号公報
甲第13号証:証明願
甲第14号証:不服2005-7523号審決謄本
甲第15号証:特開昭57-134161号公報
甲第16号証:特公平8-22657号公報
甲第17号証:実公平5-34449号公報
甲第18号証:実公平6-35783号公報
甲第19号証:特開平5-112174号公報
甲第20号証:実願平3-108003号(実開平5-56597号)の CD-ROM
甲第21号証:特開平7-116210号公報
甲第22号証:実願昭57-121347号(実開昭59-100410 号)のマイクロフィルム
甲第23号証:特開平7-59825号公報
甲第24号証:特開平4-82551号公報

3-2.被請求人の主張

これに対して、被請求人は、概略、請求人の主張する無効理由は失当であり、本件審判の請求は成り立たない旨を主張し、次の証拠方法を提出している。

[証拠方法]
乙第1号証:請求人が販売するマッサージ装置(ROBOSTIC)のホ ームページ

4.当審の判断

4-1.甲号証の記載事項

(a)甲第2号証
甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a-1.「【作用及び発明の効果】このように構成された本発明の請求項1に記載の鉄道車両用回転式腰掛け(以下、単に腰掛けという)及び該腰掛けに備えられたフットレストを使用する際には、自席の着座部の下方にある台枠上部,台枠下部,枠壁により形成された収納部に格納されているフットレストを取り出して設置する。使用を中止するときには、フットレストを収納部に格納する。・・・(略)・・・更にこのフットレストにヒーター、マッサージ機等を内蔵させ、快適性を高めることも同じ理由により容易になる。・・・(略)・・・」(段落【0012】?【0013】)
a-2.「【実施例】以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。まず、図1は本発明を適用した2人用の腰掛け1を実施例として示したものであり、図1(a)は該腰掛け1の側面図、図1(b)は正面図である。図1(b)に向かって左側の腰掛けのフットレスト11は使用可能に設置されている。一方、右側の腰掛けのフットレストは格納されている。
腰掛け1の構造は、腰掛けとしての周知の構成である着座部13,脚台15,背ずり17,肘掛け19の他、脚台15に対してこれより上方に位置する部分全体を180°回転可能に支持する回転機構21,その回転機構21と着座部13との間に介在して着座部13を支持する台枠23とから成っている。背ずり17は図示しないリクライニング機構により、着座部13に対する角度が調整できるようにされている。また、台枠23内には、フットレスト移動機構及びその原動機としてのサーボモータが配されている。
台枠23は、直接回転機構21に支持される台枠下部23a,直接着座部13を支持する台枠上部23b,その台枠上部23bと台枠下部23aとに挟持された左右一対の枠壁23cという三種類の板状の部材が組み合わされてなる箱状の部材であり、前方が箱の空き口のようにされ、ここからフットレスト11の搬出・格納が行なわれる。
図3はこのフットレスト11の構成を示したものであり、図3(a)は脚を載せる面を正面から見た図であり、フットレスト11を台枠23の収納部から出した状態を示す側面図である図3(b)のB矢視図になっている。図3(a)に示すようにフットレスト11は、枠27にて規定される略矩形形状をなす板状部材である脚支持部11aと、この先端部にヒンジ25にて接合された板状部材である足裏支持部11bとからなる。足裏支持部11bの脚支持部11aと重合される面には硬質樹脂製の板が貼付してあり、反対側の面11b2にはナイロン生地にて覆われ、内部に詰められたウレタンフォームにより適度な弾性を有するようにされている。」(段落【0019】?【0022】)
a-3.「以上の構成からなる腰掛け1において、フットレスト11を使用する際にはまずスイッチ49を操作する。なお、フットレスト11は図5(a)のように台枠23内に格納された状態、つまり、リンク機構33やスライドレール31は図4(a)のような状態にされているとする。
スイッチ49が操作されると、上記ロック機構が解除され、サーボモータ41が始動し、ギヤボックス34を介して第2のリンク33bが図4(a)において反時計回りに回動される。すると、これに連動する第1のリンク33aが、支持板45をスライドレール31と共に前方(図中の左方)へ水平に押し出す。脚支持部11aは、その中程にスライドレール31の先端が接合され、その後部に突部35を介して配されているカムフォロワ37が溝カム39によって水平方向に移動可能にされているため、スライドレール31が前方に移動すると、脚支持部11aは図2に示す姿勢を保ったまま足裏支持部11bと共に前方へと移動される。なお、この移動は、毎秒10cm程のゆっくりとした速度で行なわれる。
このまま、サーボモータ41が作動を続けると、カムフォロワ37の円柱部が溝カム39の溝側面を転動して、数秒後に溝カム39の屈曲部に達する。屈曲部を通過したカムフォロワ37は溝カム39の形状によってその挙動を変え、前方へ移動されるに伴い上昇されていく。この上昇によりフットレスト11の後部が徐々に上がる一方で、その中程はスライドレール31を介して鞘32により水平移動が維持されるため、フットレスト11はその傾斜角度を大きくしていき、遂にはカムフォロワ37が溝カム39の前端に達して図5(b)に示すような姿勢にされる。このとき、サーボモータ41の始動前に解除されたロック機構が再び作動し、図5(b)の状態にフットレスト11が固定され、設置が完了する。この直後にサーボモータ41は作動を停止するが、上記の如くこのロックは次にスイッチ49が操作されるまで解除されることがなく、サーボモータ41が停止されてもこの状態を維持する。」(段落【0034】?【0036】)
a-4.「以上のようにして設置が完了したフットレスト11は図3(b)の仮想線で示すように使用する。すなわち、ふくらはぎを面11b2のナイロン地の面に載せて、足の裏を宙に浮かせるようにする。若しくは、足裏支持部11bを回動させ、図1(a)に示すような状態にし、面11b2の反対側の硬質樹脂が貼付されている面に足の裏を載せても良い。足裏支持部11bを回動させると、面11b1が鉤部29に当接し、たとえ使用者の脚が載せられても足裏支持部11bと脚支持部11aのなす角が略90°に保たれる。
なお、図1(a)にはふくらはぎが脚支持部11aから浮いているような図になっているが、背ずり17の角度を変えたり腰掛ける姿勢を変えたりすれば、脚支持部11aにてふくらはぎを支えることも可能である。・・・(略)・・・」(段落【0037】?【0038】)
a-5.「また、フットレスト11は足裏支持部11b、脚支持部11aという二つの部材から構成され、足裏支持部11bを脚支持部11aに対して重合したり起こしたりすることにより、ふくらはぎ、足の裏等、使用者の疲労状態や好みに合せた部分を安息させることができる。」(段落【0040】)
a-6.「・・・(略)・・・このフットレストにヒーター、マッサージ機等を内蔵させ、快適性を高めることも同じ理由により容易になり、更に安息効果の高いフットレストとすることができる。」(段落【0042】)

上記記載事項a-1.、a-6.には、フットレスト11にマッサージ機を内蔵させることが開示されているから、上記記載事項a-2.に示される腰掛け1全体の構造を踏まえれば、便宜上、上記腰掛け1のうち、マッサージ機が内蔵されたフットレスト11を除く部分を「椅子」、フットレスト11を含む腰掛け1全体を「マッサージ装置」と呼ぶことができ、上記椅子は、その機能及び構成からみて、マッサージを受ける人が着座するものであることは明らかである。
また、上述したように、上記記載事項a-1.、a-6.には、フットレスト11にマッサージ機を内蔵させることが記載され、しかも、上記記載事項a-5.には、そのフットレスト11は脚支持部11aと足裏支持部11bとから構成されるものであると記載されているから、そこには、脚支持部11a及び足裏支持部11bにマッサージ機能または効果をもたせることが示唆されているといえる。したがって、その機能及び構成からみて、脚支持部11a及び足裏支持部11bは、それぞれ、「マッサージ機能付き脚支持部11a」、「足裏へのマッサージ効果が得られる足裏支持部11b」ということができる。
また、上記記載事項a-3.及び図5をみると、足裏支持部11bは、その構成からみて、上記椅子の前側に移動可能に配設されたものといえる。
また、上記記載事項a-2、a-3及び図5を参酌すると、脚支持部11aは、その機能及び構成からみて、その一端部を上記椅子の台枠23に前側に移動自在かつ傾斜した姿勢で位置を保持されるように支持されたものということができる。
そして、上記記載事項a-2、a-4、a-5を参酌すれば、脚支持部11aと足裏支持部11bとはヒンジ25で接合され、該足裏支持部11bを回動させて上記脚支持部11aに対して起こすことにより、上記足裏支持部11bの面11b2の反対側の面に足の裏を載せるものであるから、その機能及び構成に照らせば、上記脚支持部11aは上記足裏支持部11bを支持するものであること、上記脚支持部11aの他端側には足裏と接する足裏支持部11bが設けられていることは、いずれも明らかである。そして、図1には、該足裏支持部11bの足裏と接する面が、上記椅子の座面よりも低い位置で該椅子に座った人に対向する状態となるように設けられた態様が図示されており、上記足裏と接する面は、便宜上、足裏支持部11bの「底体」と呼ぶことができる。

上記記載事項、明らかな事項及び図示内容を総合し、本件発明の記載ぶりに倣って整理すると、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「マッサージを受ける人が着座する椅子と、当該椅子の前側に移動可能に配設され足裏へのマッサージ効果が得られる足裏支持部11bと、該足裏支持部11bを支持するマッサージ機能付き脚支持部11aを備えたマッサージ装置において、マッサージ機能付き脚支持部11aは一端部を上記椅子の台枠23に前側に移動自在かつ傾斜した姿勢で位置を保持されるように支持されており、また該マッサージ機能付き脚支持部11aの他端側には足裏と接する足裏支持部11bの底体を椅子の座面よりも低い位置で椅子に座った人に対向させた状態とするように設けられているマッサージ装置。」

(b)甲第4号証
甲第4号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
b-1.「【産業上の利用分野】この発明は、椅子式エアーマッサージ機に関し、特に脚部、腿部等のマッサージ効果を向上させるもの関する。」(段落【0001】)
b-2.「【課題を解決するための手段】この発明上記従来の問題を解決するものであり、座部とこの座部の後部に所定の傾斜角度をもって設けられた背もたれ部とを有する椅子本体と、前記座部の前部に設けられた脚載置部と、前記座部、背もたれ部および脚載置部のそれぞれに配設された気密性を有するとともに軟質材からなり圧搾空気の給排気に伴って膨縮する複数の袋体と、圧搾空気を供給する圧搾空気供給手段と、この圧搾空気供給手段からの圧搾空気を給排気管を介して前記座部および背もたれ部に配設された各袋体に分配して供給する分配手段と、少なくとも前記座部に配設された袋体への圧搾空気の給排気動作に同期させて前記脚載置部に配設した袋体への給排気を行う動作モードを含む複数の動作モードを入力する入力手段と、この入力手段から前記動作モードの中から所望の動作モードが入力されたときこの動作モードに応じて前記袋体への給排気を行うように前記各手段を制御する制御手段とを備えた椅子式エアーマッサージ機とした。
【作用】この発明は、上記のように構成したので、座部に配設された袋体への圧搾空気の給排気動作に同期させて脚載置部に配設した袋体への給排気を行う動作モードを選択したときは、座部に設けられた袋体に圧搾空気が供給されるときには脚載置部に設けられた袋体にも同期して圧搾空気が供給されるため、座部の袋体が膨脹して身体が上方に持ち上げられるときは脚部は膨脹した袋体によって締め付けられて押さえられているので腿部および尻部の筋肉は引き伸ばされることになり、ストレッチされつつマッサージがされる。」(段落【0004】?【0005】)
b-3.「つぎに、前記座部2の前部に設けられた脚載置部12について説明する。この脚載置部12は椅子本体1の両肘掛部側2aの下方に位置して設けられている支持枠1bに取り付けられた枢軸14に回動自在に取り付けられ、この枢軸14を回転中心として回動させ、図示しないが例えばラチエット機構等からなる位置決め手段により複数の傾斜角度に位置決めできるようになっており、例えば図2に示すように座部2から若干前方下側に傾斜した状態にして前方に突出させて位置決めしこの位置で固定して、座部2に腰掛けたとき脚をその上に載置できるようになっている。なお、図1は脚載置部12を椅子本体1の下部に収納した状態である。
そして、前記脚載置部12の両側には側壁12a、12bが設けられてており、この両側壁12a、12bの中間部には中間壁12cが設けられている。そして、前記側壁12aと中間壁12cおよび側壁12bと中間壁12cとの間にはこれら各側壁12a?12cにより略U字状の溝12d、12eが形成され、この溝12d、12eは脚のふくらはぎの部分を支持するようになっている。
前記側壁12aと中間壁12cの互いに対向する側壁および側壁12bと中間壁12cの互いに対向する側壁には、それぞれ前記溝12d、12eに載せられた脚のふくらはぎの部分をマッサージするための上記した各袋体と同様の材質からなる脚用袋体15a、15bおよび16a、16bが配設されている。そして、これら脚用袋体15a、15bおよび16a、16bは、圧搾空気が供給され膨脹したとき脚部のふくらはぎ部分を両側から包み込むような大きさとした偏平形状に形成されている。」(段落【0010】?【0012】)
b-4.「そして、リモートコントロール装置31に所望の動作モードが前記各スイッチの操作によって入力されると、その動作モードを指示する信号が前記制御装置30に送信され、制御装置30はこの動作モードを実行するよう前記エアーコンプレッサー17、分配切換器21あるいは電磁弁22を制御し前記各袋体4ないし16bに圧搾空気を給排気し、前記各袋体4ないし16bを膨縮させるものである。」(段落【0023】)

また、図2をみると、脚載置部12に設けられた略U字状の溝12d、12eは、該脚載置部12を座部2から前方に突出させた状態において、着座した人のマッサージ箇所を下と横から包むように支える形状であると認められる。

(c)甲第16号証
甲第16号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
c-1.「本発明は、フートレスト、特に乗客用椅子と組み合わせられたフートレスト装置にして、前記フートレストが椅子のシートに関して脚の後ろ側を支持するように作用する内側支持部材、及び足を置くための外側支持部材を備え、両方の前記支持部材は一緒に連結されこれにより非使用時の折り畳まれた位置及び使用時の折り畳まれない位置を取ることができるフートレストの配列に関する。」(第4欄第12?19行)
c-2.「 図11、12、13及び14においては、内側脚支持部材8はほぼ水平な第3の『主』位置を取り、開かれた使用者位置にある前記連結された足支持部材9は脚支持部材8と実質的に同じ方向に延びている伸長された実質的に水平方向位置を取る。
・・・(略)・・・
本発明によるフートレストの開示された3種の「主」位置は例として説明されただけであることを理解すべきである。フートレストが適切な適宜の角度位置を取り得ることは言うまでもなく、更に種々の使用者位置における足支持部材8と脚支持部材9との間の相互角度は広範囲に変更可能である。
更に、フートレストを明らかにされた種々の角度位置にするために種々の機構、例えばフートレスト7と椅子のフレーム又はシート4とを連結する機構7Aと共同作用する適切な気体ばねを使用できることを理解すべきである。更に、短距離用航空機と長距離用航空機、又はその他の適切な輸送手段との間の再配列に有利な簡単に再取付けできるように製造することができる。
図15には、本発明によるフートレスト7の適切な実施例の側面図が明らかにされ、先の3例の「主」位置に対応する3種の異なった位置が同じ図面に描かれる。
これにはテレスコピックアーム15も示され、これは、その内側端部において、椅子のベースに固定されたブラケット16に取り付けられる。テレスコピックアーム15は気体ばねにより先に説明された機構7Aと共同作用して、例えば使用者シートからの制御により、適切な使用者位置に動かし、その後で使用者は広い限度内でこれらの位置を調整することができる。」(第8欄第40行?第10欄4行)

4-2.本件発明と甲2発明との対比

本件発明と甲2発明とを対比すると、後者の「台枠23」は、その機能または構成からみて、前者の「ベース」に相当し、同様に、後者の「足裏支持部11b」は、足裏へのマッサージ効果が得られるものであるから、前者の「マッサージ部」あるいは「マッサージ部31」に相当する。
また、後者の「マッサージ機能付き脚支持部11a」と前者の「エアーマッサージ部」とは、「マッサージ機能部」という概念で共通している。
したがって、上述の対比事項を踏まえれば、後者において、「マッサージ機能付き脚支持部11aは一端部を上記椅子の台枠23に前側に移動自在かつ傾斜した姿勢で位置を保持されるように支持されて」いることと、前者において、「エアーマッサージ部は一端部を上記椅子のベースに回動自在かつ略水平位置で位置を保持されるように軸支されて」いることは、いずれも、「マッサージ機能部は一端部を上記椅子のベースに移動自在かつ所定位置で位置を保持されるように支持されて」いる点で共通しており、同様に、後者において、「マッサージ機能付き脚支持部11aの他端側には足裏と接する足裏支持部11bの底体を椅子の座面よりも低い位置で椅子に座った人に対向させた状態とするように設けられている」ことと、前者において、「エアーマッサージ部の他端側には足裏と接するマッサージ部の底体を椅子の座面より高い位置で椅子に座った人に対向させた状態とするように設けられて」いることは、いずれも、「マッサージ機能部の他端側には足裏と接するマッサージ部の底体を椅子の座面に対して所定の高さで椅子に座った人に対向させた状態とするように設けられている」点で変わるところはない。

してみれば、両者は、
「マッサージを受ける人が着座する椅子と、当該椅子の前側に移動可能に配設され足裏へのマッサージ効果が得られるマッサージ部と、該マッサージ部を支持するマッサージ機能部を備えたマッサージ装置において、マッサージ機能部は一端部を上記椅子のベースに移動自在かつ所定位置で位置を保持されるように支持されており、また該マッサージ機能部の他端側には足裏と接するマッサージ部の底体を椅子の座面に対して所定の高さで椅子に座った人に対向させた状態とするように設けられているマッサージ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件発明では、マッサージ機能部が、足裏をマッサージ部の底体に載せた状態の両足首を下と横から包むように支える形状で、外部より供給された空気で膨張、収縮自在であり、足首を空気圧でマッサージする仕組みを備えており、足裏のマッサージの際に足首を支え、かつ空気圧により足首からふくらはぎ下部にかけてもマッサージを行うエアーマッサージ部であるのに対し、甲2発明では、マッサージ機能部(マッサージ機能付き脚支持部11a)がどのようにマッサージを行うものであるのか明らかでない点。
(相違点2)
本件発明では、マッサージ機能部は一端部を椅子のベースに回動自在かつ略水平位置で位置を保持されるように軸支され、また、該マッサージ機能部の他端側には足裏と接するマッサージ部の底体を椅子の座面より高い位置で椅子に座った人に対向させた状態とするように設けられているのに対し、甲2発明では、マッサージ機能部(マッサージ機能付き脚支持部11a)は一端部を椅子のベース(台枠23)に前側に移動自在かつ傾斜した姿勢で位置を保持されるように支持されており、また該マッサージ機能部(マッサージ機能付き脚支持部11a)の他端側には足裏と接するマッサージ部(足裏支持部11b)の底体を椅子の座面よりも低い位置で椅子に座った人に対向させた状態とするように設けられている点。

4-3.相違点についての判断

(相違点1)について
甲第4号証には、上記記載事項b-1.?b-4.及び図示内容を総合すると、「椅子式エアーマッサージ機において、その座部2の前部に脚載置部12を設け、該脚載置部12には、その側壁12a、12bと中間壁12cにより、脚のふくらはぎ部分を下と横から包むように支える形状の略U字状の溝12d、12eを形成し、また、上記脚載置部12の側壁12a、12bと中間壁12cには、それぞれ、前記溝12d、12eに載せられた脚のふくらはぎの部分をマッサージするための、圧搾空気の給排気に伴って膨縮する脚用袋体15a、15b、16a、16bを配設し、該脚用袋体15a、15b、16a、16bは、圧搾空気が供給されて膨張したときには、脚のふくらはぎ部分を両側から包み込むような大きさに形成され、脚のふくらはぎの部分をマッサージするように構成されたもの」が記載され、脚のふくらはぎ部分は下肢の一部分であることを考慮すれば、そこには、「マッサージを受ける人が着座する椅子と、下肢の一部分を下と横から包むように支える形状で、外部より供給された空気で膨張、収縮自在であり、下肢の一部分を空気圧でマッサージするエアーマッサージ部を備えたマッサージ装置」の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているということができる。そして、甲2発明と甲4発明は、いずれも、下肢マッサージ部を備えた椅子式のマッサージ装置である点で共通しているから、甲2発明におけるマッサージ機能部に代えて甲4発明のエアーマッサージ部を採用し、マッサージ機能部が下肢のエアーマッサージ部として機能するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。そして、その際に、マッサージ機能部によってマッサージが施される部位を具体的に下肢のどの部分とするかは、当業者が適宜設定し得ることであり、設計的事項にすぎない。

(相違点2)について
一般に、下肢安息機構が設けられた椅子において、該下肢安息機構を椅子のベース側に対して回動自在かつ略水平位置で位置を保持されるように軸支した構成とすることは、例えば、甲第4号証(上記記載事項b-3.、図2等を参照)、甲第16号証(上記記載事項c-1.c-2.、第11?16図等を参照)などにも示唆されるように周知技術にすぎないから、該周知技術を甲2発明にも適用して、マッサージ機能部の一端部を椅子のベースに回動自在かつ略水平位置で位置を保持されるように軸支するように構成し、それに伴い、マッサージ部の底体を椅子の座面より高い位置で椅子に座った人に対向させた状態とするように設けることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本件発明が奏する作用効果も、甲2発明、甲4発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本件発明は、甲2発明、甲4発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび

以上のとおり、本件発明は、甲2発明、甲4発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
したがって、本件発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-26 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-18 
出願番号 特願平8-110161
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A61H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 一ノ瀬 薫  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 鏡 宣宏
新井 克夫
登録日 2007-06-15 
登録番号 特許第3970956号(P3970956)
発明の名称 マッサージ装置  
代理人 森本 聡  
代理人 特許業務法人有古特許事務所  

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