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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1188021
審判番号 不服2006-23537  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-18 
確定日 2008-11-13 
事件の表示 特願2003- 10918「柱体保持装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月10日出願公開、特開2003-286836〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成15年1月20日(優先権主張、平成14年1月24日)の出願であって、平成18年2月1日付けで拒絶理由が通知され、同年4月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月13日付けで拒絶査定がなされ、同年10月18日に同拒絶査定に対して審判請求がなされたものであって、その請求項1ないし5に係る発明は、上記平成18年4月4日に提出された手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「筒状部材内に緩衝部材を介して柱体を保持する柱体保持装置の製造方法において、前記柱体の外周に前記緩衝部材を巻回した状態で、押圧体によって前記柱体の軸芯に対して直交する方向に前記緩衝部材を押圧して前記緩衝部材を圧縮すると共に、前記柱体に対する前記緩衝部材の圧縮復元力としての面圧を検出し、該面圧が所定の値となるときの前記柱体の軸芯と前記押圧体の先端との間の所定距離を測定し、前記緩衝部材を巻回した前記柱体を、少なくとも前記緩衝部材を保持する部分の内側の実質的な半径が前記所定距離となるように予め縮径又は拡径した前記筒状部材に対し、前記緩衝部材を前記柱体の外周に巻回した状態で圧入し、前記所定の値の面圧で前記緩衝部材を介して前記柱体を保持することを特徴とする柱体保持装置の製造方法。」

2.引用文献
(1)原査定の拒絶理由に引用された特開2001-355438号公報(以下、単に「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【請求項2】 外周に保持材が装着された触媒担体を保持筒に圧入するに際し、触媒担体の外周に装着された保持材の外径を計測し、この計測値に適合する内径を有する保持筒に保持材が装着された触媒担体を圧入することを特徴とする触媒コンバータの製造方法。
【請求項3】 上記保持材の外径を計測するに際し、所定の圧力を加えた状態で計測することを特徴とする請求項2に記載の触媒コンバータの製造方法。」(特許請求の範囲の請求項2及び請求項3)
(イ)「【0004】
【課題を解決するための手段】‥‥‥また、第2の発明は、外周に保持材が装着された触媒担体を保持筒に圧入するに際し、触媒担体の外周に装着された保持材の外径を計測し、この計測値に適合する内径を有する保持筒に保持材が装着された触媒担体を圧入することを特徴としている。第2の発明においては、上記保持材の外径を計測するに際し、所定の圧力を加えた状態で計測することが望ましい。‥‥」(段落【0004】)
(ウ)「【0005】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図1?図9を参照して説明する。まず、この発明の製造方法によって製造されるべき触媒コンバータの第1の例を図1に基づいて説明すると、図1に示す触媒コンバータAは、保持筒1および触媒担体2を備えている。保持筒1は、両端が開口した断面円形の金属製の筒であり、その軸線方向の中央部には一定の直径を有する固定部11が形成され、その両端部には中央側から端部側へ向うにしたがって小径になるデフューザー部12,12が形成されている。固定部11とデフューザー部12との間には、固定部11から径方向内側へほぼ直角に屈曲してデフューザー部12に至る屈曲部13が形成されている。
【0006】触媒担体2は、周知のように、多孔質のセラミックまたはハニカム構造体からなり、その内部には触媒たる貴金属または貴金属および卑金属等の微小片(図示せず)が設けられている。触媒担体2の両端部を除く外周面には、無膨張マット等からなる筒状の保持材3が装着されている。‥‥」(段落【0005】及び【0006】)
(エ)「【0007】触媒担体2に装着された保持材3の外径は、固定部11の内径より大きくなっており、触媒担体2は固定部11の内周に保持材3を介して圧入固定されている。‥‥‥これにより、触媒担体2の保持筒1の軸線方向への移動が阻止されている。‥‥」(段落【0007】)
(オ)「【0010】次に、上記構成の触媒コンバータA,B,Cの製造方法について説明する。触媒コンバータAを製造する場合には、まず図4に示すように、触媒担体2の外周に装着された保持材3の外径を計測する。この場合、触媒担体2を保持筒1に圧入したときに保持材3に加わる圧力(以下、保持圧という。)と同等の圧力を保持材3に作用させた状態で保持材3の外径を計測するのが望ましい。保持材3に保持圧を作用させたときの厚さが分かっているならば、触媒担体2に装着された保持材3の外径を測定する代わりに、図5に示すように、触媒担体2の外径を測定してもよい。その測定値に保持圧が作用したときの保持材3の厚さの2倍を加えることにより、保持材3の外径が分かるからである。
【0011】次に、保持材3およびメッシュ4が装着された触媒担体2を圧入すべき保持筒1の素材を準備する。保持筒1の素材としては、圧入後の触媒担体2に適正な圧力を作用させることができるような内径を有するものが用いられる。これは、内径が異なる多数の素材を予め準備しておき、その中から適正な内径を有するものを選択することによって達成することができる。他の方法としては、図6に示すように、保持筒1より小さい内径を有する素材1′をバルジ加工等によって拡径させ、適正な内径を有する素材1′とすることができる。なお、素材1′の一端部には、当該一端部から触媒担体2を素材1′に容易に圧入することができるようにするために、中央側から端部側へ向って拡径する拡径部14を形成するのが望ましい。拡径部14は、フレア加工等によって形成することができる。」(段落【0010】及び【0011】)
(カ)「【0012】次に、図7および図8に示すように、保持材3およびメッシュ4が装着された触媒担体2を拡径部14から素材1′の中央部まで圧入する。触媒担体2の圧入に際しては圧入荷重を計測し、圧入荷重が正常範囲のものだけを製品とするのが望ましい。圧入荷重が適正値より小さい場合には、保持材3に加わる接触圧が小さいため、保持筒1の一端部に導入された排気ガスが保持材3を飛散させてしまうおそれがあり、適正値より大きい場合には、触媒担体が過度の圧力によって割れるおそれがあるからである。‥‥」(段落【0012】)
(キ)「【0014】このように、この発明では、触媒担体2を保持筒1に圧入しているので、圧入時に保持筒1が振動することがない。したがって、触媒担体2の圧入時に触媒担体2の一部に過大な圧力が作用することがない。しかも、圧入前に触媒担体2の外径または保持材の外径を計測し、それに適合する内径の保持筒1に触媒担体2を圧入しているので、触媒担体2に過大な圧力が作用するのを未然に防止することができる。したがって、触媒担体2が割れるのを防止することができる。‥‥」(段落【0014】)

(ク)上記の記載事項(ア)ないし(キ)及び図面の記載を総合すると、引用文献には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「保持筒1内に保持材3を介して触媒担体2を保持する触媒コンバータの製造方法において、触媒担体2の外周に保持材3を装着した状態で、保持材3を装着した触媒担体2を保持筒1に圧入したときに保持材3に加わる圧力(すなわち、保持圧)と同等の圧力(すなわち、所定の圧力)を保持材3に加えた状態で保持材3の外径を計測し、保持材3を装着した触媒担体2を、少なくとも保持材3を保持する部分の内側において計測した外径に適合する内径を有し、圧入後の触媒担体2に適切な保持圧を作用させることができる保持筒1であって、予め準備してある内径が異なる多数の素材の中から前記外径に適合する適正な内径を有するものとして選択された保持筒1、あるいは、小さい内径を有する素材をバルジ加工等によって前記外径に適合するように拡径された適正な内径を有する保持筒1に対し、保持材3を触媒担体2の外周に装着した状態で圧入し、前記所定の値の保持圧で保持材3を介して触媒担体2を保持するようにした触媒コンバータの製造方法。」(以下、「引用文献に記載された発明」という。)

3.当審の判断
(1)本願発明と引用文献に記載された発明との対比
本願発明と引用文献に記載された発明とを対比するに、引用文献に記載された発明における「保持筒1」、「保持材3」、「触媒担体2」及び「触媒コンバータ」は、それらの形状、構造及び機能等からみて、本願発明における「筒状部材」、「緩衝部材」、「柱体」及び「柱体保持装置」にそれぞれ相当し、引用文献に記載された発明における「装着」及び「計測」は、それらの意図する技術内容からみて、それぞれ、本願発明の「巻回」及び「測定」と同義語である。
また、引用文献に記載された発明においては、「触媒担体2」に装着した「保持材3」の外径の計測に際して「保持材3に加える所定の圧力」は、「保持材3を装着した触媒担体2を保持筒1に圧入したときに保持材3に加わる圧力(すなわち、保持圧)と同等の圧力」であり、この保持圧は、「保持材3を装着した触媒担体2を保持筒1内に圧入したときに(すなわち、圧入した状態において)」、「触媒担体2」が振動等のために「保持筒1」内で軸方向にずれたりすることなく、また、「触媒担体2」を破損させてしまうような過大な圧力が作用することのないように、「触媒担体2」を「保持筒1」内で適切な位置に適切に保持するのに必要な圧力を意図するものであり、本願発明における「(筒状部材内に緩衝部材を介して柱体を保持する)所定の値の面圧」と同趣旨の技術内容を意図するものである。さらに、引用文献に記載された発明においては、「保持材3」の外径の計測に際して「保持材3に加える(保持圧と同等の)所定の圧力」は、本願発明における「柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離」の測定時に加える所定の値の「面圧」に対応する。そして、「保持材3」の外径の計測時に「保持材3に加える所定の圧力」及び「保持筒1」に圧入したときに「保持材3」に作用する保持圧は、ともに、「保持材3」を圧縮する力として作用するものである。また、引用文献には、「保持材3を装着した触媒担体2」を圧入する「保持筒1」の「保持材3」を保持する部分の内径が計測した「保持材3」の外径に適合するように「保持筒1」を拡径する技術手段も開示されているから、引用文献に記載された発明における「保持筒1」の内径は、計測した「保持材3」の外径に適合するように、「保持筒1」のバルジ加工等により拡径させて形成されている。

したがって、本願発明と引用文献に記載された発明は、
「筒状部材内に緩衝部材を介して柱体を保持する柱体保持装置の製造方法において、柱体の外周に緩衝部材を巻回した状態で、緩衝部材に所定の圧力を加えたときの緩衝部材を巻回した柱体の寸法を測定し、緩衝部材を巻回した柱体を、少なくとも緩衝部材を保持する部分の内側の内寸法が前記測定した寸法に対応するように予め拡径した筒状部材に対し、緩衝部材を柱体の外周に巻回した状態で圧入し、前記所定の圧力で緩衝部材を介して柱体を保持するようになした柱体保持装置の製造方法。」
である点で一致し、次の(ア)ないし(ウ)の点で相違する。
(ア)緩衝部材を巻回した柱体の寸法の測定に際して、本願発明においては、「押圧体によって柱体の軸芯に対して直交する方向に緩衝部材を押圧して緩衝部材を圧縮すると共に、柱体に対する緩衝部材の圧縮復元力としての面圧を検出し、該面圧が所定の値となるときに測定する」ように構成され、測定する対象が「柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離」であるのに対し、引用文献に記載された発明においては、「保持材(緩衝部材)を装着(巻回)した触媒担体(柱体)を保持筒(筒状部材)に圧入したときに保持材(緩衝部材)に加わる保持圧と同等の圧力(すなわち、所定の圧力)を保持材(緩衝部材)に加えた状態で測定する」ように構成され、測定する対象は「触媒担体(柱体)に装着(巻回)した保持材(緩衝部材)の外径」である点(以下、「相違点1」という。)。
(イ)筒状部材の少なくとも緩衝部材を保持する部分の内側の内寸法は、本願発明においては、「実質的な半径」であって、この実質的な半径が測定した柱体の寸法(柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離)となるように筒状部材を予め縮径または拡径しているのに対し、引用文献に記載された発明においては、「内径」であり、この内径は測定した柱体の寸法(外径)に適合するように筒状部材を拡径している点(以下、「相違点2」という。)。
(ウ)筒状部材が緩衝部材を介して柱体を保持するための圧力が、本願発明においては、「所定の値の面圧」であるのに対し、引用文献に記載された発明では、「保持圧」である点(以下、「相違点3」という。)。

(2)相違点についての検討
(2)-1 相違点1について
本願発明においては、「押圧体によって柱体の軸芯に対して直交する方向に緩衝部材を押圧して緩衝部材を圧縮すると共に、柱体に対する緩衝部材の圧縮復元力としての面圧を検出し、該面圧が所定の値となるとき」に、緩衝部材を巻回した柱体の寸法(柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離)を測定しているところであるが、請求項1における記載では、「(測定時における面圧の)所定の値」が、緩衝部材を巻回した柱体を筒状部材に圧入した際に緩衝部材を介して柱体を保持する面圧がその所定の値の面圧となるとしても、その「(面圧の)所定の値」がどのような値を意図しているのか明確でなく特有の値として特定されていない。そこで、本願明細書の発明の詳細な説明の記載や図面等を参酌すると、「(面圧の)所定の値」は、緩衝部材を巻回した柱体を筒状部材に圧入した際に柱体を筒状部材内に適切な位置に適切に保持するために必要な面圧の値を意図しているものと認められる。ところで、引用文献に記載された発明においては、柱体に巻回した緩衝部材の外径の測定に際して緩衝部材に加える所定の圧力と同等の保持圧は、前述したように、緩衝部材を巻回した柱体を筒状部材内に圧入したときに、すなわち、圧入した状態において、柱体が振動等のために筒状部材内で軸方向にずれたりすることなく、また、柱体を破損させてしまうような過大な圧力が作用することのないように、柱体を筒状部材内で適切な位置に適切に保持するのに必要な圧力を意図するものである。してみると、引用文献に記載された発明における測定時に加えられる所定の圧力(すなわち、緩衝部材を巻回した柱体を筒状部材に圧入したときに緩衝部材に加わる保持圧と同等の圧力)と本願発明における「面圧の所定の値」は、表現上相違するとはいえ、ともに、同様の作用効果を得るために設定されるものである。
また、引用文献に記載された発明では、測定する対象は「柱体に巻回した緩衝部材の外径」であり、その図4に示されているように、(柱体に巻回した緩衝部材に所定の圧力を作用させた状態で)相対向する一対の測定子を緩衝部材に当接させて、一対の測定子の間隔の距離(すなわち、緩衝部材の外径)を測定しており、本願発明のように「柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離」を測定するものではない。しかしながら、緩衝部材を巻回した柱体に所定の圧力を作用させた状態で測定する柱体の寸法として、本願発明のように、緩衝部材を巻回した柱体の軸芯を基準とするか、あるいは、柱体に巻回した緩衝部材の一外側面部を基準とするかは、柱体が断面円形である場合には緩衝部材を巻回した柱体の半径と直径にそれぞれ相当するものであり、そのいずれを採用するかは、当業者が必要に応じて適宜設定しうる程度の事項である。
緩衝部材を巻回した柱体の寸法の測定時に加える圧力に関して、引用文献に記載された発明においては、単に所定の圧力を加える(あるいは、作用させる)と記載されているのみであって、所定の圧力を加える具体的な手法については格別記載されていない。しかしながら、物品の寸法測定、特に表面に弾性層等を有する物品の寸法測定、に際して、該物品に当接させる測定子に圧力センサ等を付設して、該圧力センサ等によって物品を押圧する圧力あるいは物品の圧縮復元力としての面圧等を検出し、これらの圧力や面圧が予め設定された所定の値となったときに、測定子により物品の寸法を測定するようにした技術手段は、本願出願前に従来から周知の技術である(以下、「周知の技術」という。必要ならば、例えば、特開平7-139938号公報、実願昭63-90200号(実開平2-12602号)のマイクロフィルム、特開昭57-128808号公報等参照のこと)。してみれば、緩衝部材を巻回した柱体の寸法測定に際して所定の圧力を作用させる際に、本願発明のように、押圧体によって緩衝部材を押圧して緩衝部材を圧縮するとともに柱体に対する緩衝部材の圧縮復元力としての面圧を検出し、該面圧が所定の値となるときに、柱体の寸法を測定するように構成することは、当業者が格別な創意工夫を要することなく必要に応じて適宜設定しうる程度のものである。
したがって、前記相違点1に係る本願発明のような構成とすることは、引用文献に記載された発明や前述した周知の技術手段に基いて、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到し発明することができる程度のものと認められる。

(2)-2 相違点2について
筒状部材の少なくとも緩衝部材を保持する部分の内側の内寸法は、先に測定された柱体の寸法と対応するように設定されるものであり、本願発明では、筒状部材の内側の「実質的な半径」を測定された柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離となるようにしており、引用文献に記載された発明では、筒状部材の内側の「内径」を測定された外径に適合するように設定されている。したがって、測定する柱体の寸法として、緩衝部材を巻回した柱体の軸芯を基準とする柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離と柱体に巻回した緩衝部材の一外側面部を基準とする相対向する一対の測定子の間隔の距離(すなわち、緩衝部材の外径)のいずれを採用するかは、前述したように、当業者が必要に応じて適宜設定しうる程度の事項であり、筒状部材の少なくとも緩衝部材を保持する部分の内側の内寸法を、測定された値(柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離、あるいは、緩衝部材を巻回した柱体の相対向する一対の測定子の間隔の距離(緩衝部材の外径))に応じて設定することもまた当業者が必要に応じて適宜設定しうる程度の事項である。ところで、引用文献に記載された発明においては、筒状部材は、測定された外径に適合する内径を有するように拡径加工されているが、拡径加工された筒状部材の内径が測定された外径と一致するように構成されているとの明確な記載はなされていないけれども、筒状部材の内寸法(実質的な半径または内径)を測定された柱体の寸法(柱体の軸芯と押圧体の先端との間の所定距離または外径)と一致するように形成することは、当業者が必要に応じて適宜設定しうる程度のものである。
よって、前記相違点2に係る本願発明のような構成とすることは、引用文献に記載された発明に基いて、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到しうる程度のものと認められる。

(2)-3 相違点3について
筒状部材に緩衝部材を介して柱体を保持する際の所定の圧力に関して、本願発明においては、「所定の値の面圧」で保持するようにしているが、この「所定の値の面圧」は、柱体の寸法を測定する際に柱体の緩衝部材を押圧して圧縮する際に生じる緩衝部材の圧縮復元力としての面圧の所定の値を受けて「前記所定の値の面圧」としているところであり、この「前記所定の値の面圧」は、前述したように、緩衝部材を外周に巻回した柱体を筒状部材に圧入した際に筒状部材内に緩衝部材を巻回した柱体を適切な位置に適切に保持するために必要な面圧の値を意図しているものと認められるところであり、本願発明における「所定の値の面圧」は、引用文献に記載された発明における「所定の圧力」(すなわち、緩衝部材を巻回した柱体を筒状部材に圧入したときに緩衝部材に加わる「保持圧」)、さらに換言すると、緩衝部材を巻回した柱体を筒状部材に圧入した状態において、柱体を筒状部材内で適切な位置に適切に保持するのに必要な圧力と同様の作用効果を得るために設定されるものであって、圧力に関して表現上の相違があるとはいえ、両者の意図する技術内容に差異は認められず、前記相違点3に係る本願発明のような構成とすることは、引用文献に記載された発明や前述した周知の技術手段に基いて、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到し発明することができる程度のものと認められる。

なお、審判請求人は、引用文献における「触媒担体を保持筒に圧入したときに保持材に加わる圧力(以下、保持圧という。)と同等の圧力を保持材に作用させた状態で保持材の外径を計測するのが望ましい」の記載に関連して、「後工程で保持材に加えられる圧力を推定することは不可能であり、前記の記載は願望の域を脱しておらず、実現可能なものではない」という趣旨の主張をしているが、引用文献に記載された「保持圧」は、前述したように、保持材を装着した触媒担体を保持筒内に圧入したときに、すなわち、圧入した状態において、触媒担体が振動等のために保持筒内で軸方向にずれたりすることなく、また、触媒担体を破損させてしまうような過大な圧力が作用することのないように、触媒担体を保持筒内で適切な位置に適切に保持するのに必要な圧力を意図するものであり、本願発明における「(筒状部材内に緩衝部材を介して柱体を保持する)所定の値の面圧」と同趣旨の技術内容を意図するものであって、表現上相違するとはいえ、同様の作用効果を得るために設定されるものである。したがって、引用文献に記載された「保持圧」は、本願発明における「所定の値の面圧」と同様に、種々のデータからあるいは種々の実験等により適宜算出できるものであり、この点に関する審判請求人の主張は当を得たものではない。
さらに、審判請求人は、「引用文献においては、圧入したときに保持材に加わる圧力と同等の圧力を保持材に作用させた状態で計測した保持材の外径に応じて、保持筒の内径を調整するものでもないことは明らかであり、結局、どのように圧力を作用させた状態で保持材の外径を計測し、どのような計測結果をどのように利用しているかについては定かではない。」という趣旨の主張をしているけれども、引用文献には、保持筒を、保持材を保持する部分の内径を計測した外径に適合するものとし、保持材を装着した触媒担体を保持筒に圧入した後の触媒担体に適切な保持圧を作用させることができるような保持筒を意図するものであり、予め準備してある内径が異なる多数の素材の中から前記外径に適合する適正な内径を有する保持筒を適宜選択することができるとともに、小さい内径を有する素材をバルジ加工等によって前記外径に適合するように拡径された適正な内径を有するように形成した保持筒を用いることも記載されており、保持材を装着した触媒担体を保持筒内に圧入したときに保持材に加わる圧力(保持圧)と同等の圧力を保持材に作用させた状態で計測した保持材の外径に応じて保持筒の内径を適宜選択し調整しうる技術手段が記載されているところであり、この点に関する審判請求人の主張も採用できるものではない。

(3)以上のように、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が格別な困難性を伴うことなく容易に想到し発明をすることができたものと認められ、しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用文献に記載された発明及び周知の技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-05 
結審通知日 2008-09-17 
審決日 2008-09-30 
出願番号 特願2003-10918(P2003-10918)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 石井 孝明
金澤 俊郎
発明の名称 柱体保持装置の製造方法  
代理人 池田 一眞  

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