• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1188033
審判番号 不服2007-2128  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-18 
確定日 2008-11-13 
事件の表示 平成11年特許願第 69757号「高周波装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月29日出願公開、特開2000-269678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年3月16日の出願であって、平成18年6月27日付けで手続補正がされたが、平成18年12月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成19年1月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同日付けで手続補正がされたものである。

第2.平成19年1月18日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年1月18日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[決定の理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載について、補正前は、
「略四角形をした金属製のフレームと、このフレーム内に装着されると共に第1の混合回路と第2の混合回路とを内蔵する電子回路が実装されたプリント基板と、前記フレームの一方側面の一部を切り欠きした切り欠き部と、この切り欠き部の両側であって前記フレームから一体的に導出して設けられた脚とを備え、前記第1の混合回路と前記第2の混合回路との間に設けられた金属製の仕切板と、前記切り欠き部から前記プリント基板の一部を導出して形成されるとともに前記第1、第2の混合回路の近傍にそれぞれ独立に設けられた第1、第2のコネクタ部と、これら第1、第2のコネクタ部に設けられるとともに前記電子回路に接続されたピン端子と、前記第1、第2のコネクタ部に設けられた孔に貫通させた前記フレームの突起と、前記第1、第2のコネクタ部上に設けられるとともに前記ピン端子と前記フレームの前記突起近くのグランドとの間に接続されたノイズ除去用のコンデンサとから構成された高周波装置。」とあるのを、補正後は、
「地上波放送やCATV放送の信号を受信できる高周波受信装置であって、前記高周波受信装置は、略四角形をした金属製のフレームと、このフレーム内に装着されると共にアンテナ回路と第1の混合回路と第2の混合回路とを内蔵する電子回路が実装されたプリント基板と、前記フレームの一方側面の一部を切り欠きした切り欠き部と、この切り欠き部の両側であって前記フレームから一体的に導出して設けられた脚とを備え、前記アンテナ回路と前記第1の混合回路と前記第2の混合回路との間に設けられた金属製の仕切板と、前記切り欠き部から前記プリント基板の一部を前記フレーム外に導出して形成されるとともに前記第1、第2の混合回路の近傍にそれぞれ独立に設けられた第1、第2のコネクタ部と、これら第1、第2のコネクタ部に設けられるとともに前記電子回路に接続されたピン端子と、前記第1、第2のコネクタ部に設けられた孔に貫通させた前記フレームの突起と、前記第1、第2のコネクタ部上に設けられるとともに前記ピン端子と前記フレームの前記突起近くのグランドとの間に接続されるノイズ除去用のコンデンサとを設けることにより、外部ノイズが前記フレーム外に設けられた前記ピン端子に入ったとしても、前記外部ノイズの前記フレーム内への侵入することを少なくできる高周波装置。」とする補正事項を有するものである。

(2)判断
本件補正によって付加された、「外部ノイズが前記フレーム外に設けられた前記ピン端子に入ったとしても、前記外部ノイズの前記フレーム内への侵入することを少なくできる」との記載事項は、発明特定事項である「高周波装置」が内在する結果を記載したにすぎないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる、「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」、および「明りようでない記載の釈明」のいずれかを目的とするものとはいえない。

(3)まとめ
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明についての審決
1.本願発明
平成19年1月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成18年6月27日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「略四角形をした金属製のフレームと、このフレーム内に装着されると共に第1の混合回路と第2の混合回路とを内蔵する電子回路が実装されたプリント基板と、前記フレームの一方側面の一部を切り欠きした切り欠き部と、この切り欠き部の両側であって前記フレームから一体的に導出して設けられた脚とを備え、前記第1の混合回路と前記第2の混合回路との間に設けられた金属製の仕切板と、前記切り欠き部から前記プリント基板の一部を導出して形成されるとともに前記第1、第2の混合回路の近傍にそれぞれ独立に設けられた第1、第2のコネクタ部と、これら第1、第2のコネクタ部に設けられるとともに前記電子回路に接続されたピン端子と、前記第1、第2のコネクタ部に設けられた孔に貫通させた前記フレームの突起と、前記第1、第2のコネクタ部上に設けられるとともに前記ピン端子と前記フレームの前記突起近くのグランドとの間に接続されたノイズ除去用のコンデンサとから構成された高周波装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、次のとおりのものである。
「本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平10-209669号公報
刊行物2:実願平4-66977号(実開平6-31198号)のCD-ROM
刊行物3:特開平8-18267号公報
刊行物4:実願昭62-152954号(実開平1-57831号)のマイクロフィルム
刊行物5:特開平1-317846号公報
刊行物6:特開平5-211485号公報」

3.引用刊行物とその主な記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平10-209669号公報)、刊行物2(実願平4-66977号(実開平6-31198号)のCD-ROM)、刊行物5(特開平1-317846号公報)、刊行物6(特開平5-211485号公報)には、それぞれ次の事項が記載されている。

(1)刊行物1:特開平10-209669号公報

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント基板をシールド隔壁によりアップコンバート用の局部発振器を有するRF変調回路を実装した区画と、テレビジョン受信回路を構成する部品を実装した区画とに分割すると共に、前記シールド隔壁とシールド側壁のコーナー部から離れた位置に略L字形の接地パターンを形成し、かつ、前記接地パターンに沿って前記テレビジョン受信回路のバンドパスフィルタを構成する部品を実装したことを特徴とする高周波機器ユニットのシールド構造。」

(1b)「【0011】図1?図4に示す高周波機器ユニットは、一例としてビデオテープレコーダのRFフロントエンドを示し、プリント基板3は空きチャネルのRFテレビジョン信号をテレビジョン受像機に出力するためのRF変調回路の区画Aと、放送局からのRFテレビジョン信号を受信するためのTV受信回路の区画Bとに分割されている。一方、シールドケース1には、金属平板を適宜形状に打ち抜いて直角に折り曲げた側板2と、区画A,Bの間を仕切るためのシールド隔壁2aとが形成され、シールド隔壁2aにはプリント基板3上の区画Aの接地パターン3cを貫通するように突起2cが形成されている。また、区画A,Bには他の複数のシールド隔壁2bが形成されている。」

(1c)「【0013】また、区画A側の側板2には図示省略のアンテナに接続するためのコネクタCinと、図示省略のテレビジョン受像機のアンテナ入力端子に接続するためのコネクタCout とが設けられている。この高周波機器ユニットの電気的構成を簡単に説明すると、コネクタCinを介して入力したVHF,UHFのRFテレビジョン信号は、区画Aを経由して区画BのTV受信回路に送られ、BPF3bにより不要な周波数が除去された後、ダウンコンバート用の混合器に送られて局部発振器からの局部発振周波数と混合され、IF信号に変換等される。また、区画Bにおいて生成されたIF信号は区画Aに送られ、RF変調回路を構成するアップコンバート用の混合器に送られて局部発振器からの局部発振周波数と混合されて例えばCH1,CH2のRF信号に変換され、このRF信号がコネクタCout を介してテレビジョン受像機のアンテナ入力端子に印加される。」

(1d)図1及び図4より、シールドケース1がその一側面の側板2の一部を切り欠かれた切り欠け部を有すること、該切り欠け部からプリント基板3の一部がシールドケース外に導出されコネクター部を形成すること、該コネクター部はRF変調回路の近傍に設けられるとともに該RF変調回路に接続された端子が設けられていること、切り欠かれた側板と直交する側板が切り欠かれた側板側にシールドケースから突出し脚を形成していることが見て取れる。

(2)刊行物2:実願平4-66977号(実開平6-31198号)のCD-ROM

(2a)「【0001】
【産業上の利用分野】 本考案は、高調波による電磁波障害を防ぐためのシールド機構に関するものである。」

(2b)「【0015】
【実施例】 図1に本考案の第1の実施例の分解図を示す。尚、従来例と同一部分には同一符号を付け説明は省略する。
【0016】
1は側面に切り欠き部1bを設けたシールドケースである。2は電子部品を主に装着する回路部2aと、コネクタ3a、3bを装着する端子部2bと、それらの境目に設けた切り欠き部或るいは長孔部(以下長嵌通部という)2cとからなるプリント基板である。
【0017】
そして、シールドケース1の嵌入部1aが長嵌通部2cに挿通することにより、シールドが行われる。ここで、切り欠き部1bと嵌入部1aとの関係は嵌入部のほうが大きくなっている。そのため、前述した間隙が小さくなっていることがわかる。例えば、この間隙を1cm以内にすれば、UHF帯域である高い周波数(約700MHz以上)の高いシールド効果を得ることができる。
【0018】
また、端子部2bは回路部2aがシールド部材1で囲まれているために、切り欠き部1bを除き回路部2aと遮断されており、回路部2aで使用している高周波によって生じる電磁波ノイズの影響を受けない。
・・・
【0020】
従来のように、シールドケース1の間隙が長い(間隙:D)とプリント基板を伝わる電磁波ノイズはEMIフィルタ9a、9bで遮断されるが、回路部2aで発生し空間を伝導する電磁波ノイズは間隙を通過し、EMIフィルタ9bに飛び込み、リード線8を伝わって他の基板に影響を及ぼすことがあった。しかしながら、本考案のように、プリント基板2に長嵌通部2cを設け、シールドケース1がプリント基板2を挿通することにより、シールドケース1の間隙を小さくでき、空間を伝導する電磁波ノイズはシールドケース1で遮断され、効果的なノイズ対策ができる。」

(2c)「【0029】
【考案の効果】本考案は、コネクタをシールドケースの外に配置し、シールドケースとプリント基板によって生じる間隙を小さくすることができ、シールド効果を向上させることができる。」

(3)刊行物5:特開平1-317846号公報

(3a)「〔産業上の利用分野〕
本発明は車両に搭載した電子装置の電磁波による誤動作を防止する車載用電子装置に関するものである。」(第2頁左上欄第7行?第10行)
(3b)「以上の考察により、自由空間におかれた導体のインピーダンスは高い周波数の交番電磁波の場合、非常に小さく、また導体で作られた閉曲面内部に電磁波は侵入せず、導体表面ですべて反射されることがわかる。したがって、電子装置の信号綿3をコンデンサ4で導体ケース1と接続することは、一般の電子機器の入出カラインを接地したのと等価であるといえる。」(第4頁左上欄第4行?第11行)

(3c)「次に、詳細構成を示す第2図において、1a、1bは電子装置のケースの“ふた”であり、第2のケース部材を構成し上下それぞれネジ1hでケース本体1cにネジ止めされている。ふた1a、1b、および第1のケース部材を示すケース本体1cは共に電気導体材料(アルミ、鉄等)で作られる。1dはコネクタ手段におけるコネクタ部としてのコネクタハウジング、3aはコネクタ入力端子(信号線手段としてのコネクタピン)であり、一方の側はプリント基板2d上の銅箔パターン3bのうちの入出力領域に接続される。4は高周波電流をバイパスさせるコンデンサで、その一端がコネクタピン3aに銅箔パターン3bを通して接続されている。1eプリント基板2d上の銅箔パターンであり、バイパス用コンデンサ4の他端子が接続されており、このパターン1eは基板取り付け用ネジ1f、1j(保持手段)によってケース本体1cにしっかりと接触しており、コネクタピン3aを通してケース内に入ってきた高周波電流はバイパス用コンデンサ4、パターン1eを通してケース本体1cへと流れる。従って、プリント基板上の構成されたマイコン用のLSI2a、2c、トランジスタ2bなどの電子素子からなる電子回路2に高周波電流が流れ込むことはなく、故に高周波電流によってプリント基板上に構成された電子回路2が誤作動することも防げる。」(第4頁左上欄第18行?左下欄第6行)

(4)刊行物6:特開平5-211485号公報

(4a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CATV受信機などに使用されるダブルスーパヘテロダイン方式によるダブルスーパーチューナに関する。」

(4b)「【0007】図3に示すように、四角形状をしたチューナ筐体にはスリット31を設けて、第1ブロックのアップ部10と第2ブロックのダウン部20に分割されている。アップ部10は、RF信号の入力端子11が入力バンドパスフィルタ(RFBPF)12に取りつけられ、RFBPF12とRFAMP13と1stOSC15とはそれぞれの間にシールド板を介して隣接して配され、第1混合回路14に隣接している。つぎに、スリット31を隔てて配置されるダウン部20には、1stIFBPF21と2ndOSC25が隣接して配され、これに接して1stIFAM22,1stIFBPF23,第2混合回路24が連続して配されるように構成されている。
【0008】以上のように構成された従来のダブルスーパーチューナは、受信されたRF信号は入力端子11から入力してBPF12によって必要な周波数帯域の信号のみを通過し、RFAMP13で増幅したのち第1混合回路14で得た第1中間周波数信号がダウン部20に送られる。ダウン部20で第1中間周波数信号は増幅されたのち第2混合回路24で第2中間周波数信号に変換されて出力端子26から出力する。」

(4c)図1より、シールド板32、33、34(本願発明の「仕切板」に相当)にて第1混合回路14と第2混合回路24を相互に異なるブロックに仕切り、出力端子などの端子を第1混合回路と第2混合回路のそれぞれ近傍において前記ブロックに対応させて二つに独立させチューナ筐体から外部に導出することが見て取れる。

4.当審の判断
(1)引用発明
刊行物1には、(1a)における「プリント基板をシールド隔壁によりアップコンバート用の局部発振器を有するRF変調回路を実装した区画と、テレビジョン受信回路を構成する部品を実装した区画とに分割すると共に、前記シールド隔壁とシールド側壁のコーナー部から離れた位置に略L字形の接地パターンを形成し、かつ、前記接地パターンに沿って前記テレビジョン受信回路のバンドパスフィルタを構成する部品を実装したことを特徴とする高周波機器ユニットのシールド構造。」との記載によれば、「プリント基板をシールド隔壁によりアップコンバート用の局部発振器を有するRF変調回路を実装した区画と、テレビジョン受信回路を構成する部品を実装した区画とに分割する高周波機器ユニット」が記載されているといえる。
そして、(1b)によれば、前記高周波機器ユニットは、図1?図4に図示されており、上記プリント基板、シールド隔壁に加え、シールドケース、側板を有するものであるといえる。
刊行物1の(1b)の「シールドケース1には、金属平板を適宜形状に打ち抜いて直角に折り曲げた側板2・・・が形成され」という記載及び図4の図示によれば、シールドケース1は、金属平板を適宜形状に打ち抜いてそれぞれ直角に折り曲げた複数の側板2によって形成されたものであって、「略四角形状をした金属製」であるといえる。
また、刊行物1の(1b)の「プリント基板3は空きチャネルのRFテレビジョン信号をテレビジョン受像機に出力するためのRF変調回路の区画Aと、放送局からのRFテレビジョン信号を受信するためのTV受信回路の区画Bとに分割されている。」という記載、及び(1c)の「RFテレビジョン信号は、区画Aを経由して区画BのTV受信回路に送られ、BPF3bにより不要な周波数が除去された後、ダウンコンバート用の混合器に送られて局部発振器からの局部発振周波数と混合され、IF信号に変換等される。また、区画Bにおいて生成されたIF信号は区画Aに送られ、RF変調回路を構成するアップコンバート用の混合器に送られて局部発振器からの局部発振周波数と混合され、IF信号に変換等される。」という記載によれば、刊行物1には「ダウンコンバート用の混合器」や「アップコンバート用の混合器」を内蔵する、RF変調回路、TV受信回路等の回路によって構成される電子回路が実装された「プリント基板3」が記載されているといえる。
そして、上記「シールド隔壁」は、シールド機能を有するものであるから、シールドケースの枠体と同様、金属製であるといえるし、刊行物1の(1b)の「区画A,Bの間を仕切るためのシールド隔壁2aとが形成され」という記載によれば、「シールド隔壁2a」は区画Bに配置される「ダウンコンバート用の混合器」と区画Aに配置される「アップコンバート用の混合器」との間に設けられているといえる。
また、図1、図4の説明である(1d)によれば、前記高周波機器ユニットは、シールドケース1がその一側面の側板2の一部を切り欠かれた切り欠き部を有し、該切り欠き部からプリント基板3の一部がシールドケース外に導出されコネクター部を形成し、該コネクター部はRF変調回路の近傍、すなわち、「アップコンバート用の混合器」の近傍に設けられるとともに該RF変調回路、すなわち、RF変調回路、TV受信回路等の回路によって構成される電子回路に接続された端子が設けられており、また、切り欠かれた側板と直交する側板が切り欠かれた側板側にシールドケースから突出して脚が形成されているものといえる。そして、該脚は、通常一対で設けられるものであるから、切り欠かれた側板と直交する両側の側板に設けられていることは明らかである。

上記記載及び認定事項を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次のとおりの発明が記載されているといえる。

「略四角形をした金属製のシールドケースと、このシールドケース内に装着されると共にダウンコンバート用の混合器とアップコンバート用の混合器とを内蔵する電子回路が実装されたプリント基板と、前記シールドケースの一方側面の一部を切り欠きした切り欠き部と、この切り欠き部の両側であって前記シールドケースから一体的に導出して設けられた脚とを備え、前記ダウンコンバート用の混合器と前記アップコンバート用の混合器との間に設けられた金属製のシールド隔壁と、前記切り欠き部から前記プリント基板の一部を導出して形成されるとともに前記アップコンバート用の混合器の近傍に設けられたコネクタ部と、該コネクタ部に設けられるとともに前記電子回路に接続された端子とから構成された高周波機器ユニット。」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを対比してみると、まず、引用発明の「シールドケース」及び「シールド隔壁」は、高周波をシールドする部材であるから、本願発明の「フレーム」及び「仕切板」に相当する。
また、引用発明の「アップコンバート用の混合器」及び「ダウンコンバート用の混合器」は、それぞれ、アップコンバート機能、ダウンコンバート機能を有するから、本願発明において、それぞれ、同様の機能を有する、「第1の混合回路」、「第2の混合回路」に相当する。
さらに、引用発明の「端子」及び「高周波機器ユニット」は、それぞれ、本願発明の「ピン端子」及び「高周波装置」に相当することは明らかである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、「略四角形をした金属製のフレームと、このフレーム内に装着されると共に第1の混合回路と第2の混合回路とを内蔵する電子回路が実装されたプリント基板と、前記フレームの一方側面の一部を切り欠きした切り欠き部と、この切り欠き部の両側であって前記フレームから一体的に導出して設けられた脚とを備え、前記第1の混合回路と前記第2の混合回路との間に設けられた金属製の仕切板と、前記切り欠き部から前記プリント基板の一部を導出して形成されるとともに前記第12の混合回路の近傍に設けられたコネクタ部と、コネクタ部に設けられるとともに前記電子回路に接続されたピン端子とを有して構成された高周波装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点イ:コネクタ部及びコネクタ部に設けられるピン端子について、本願発明では、第1、第2の混合回路の近傍にそれぞれ独立して第1、第2のコネクタ部が設けられ、これら第1、第2のコネクタ部にそれぞれピン端子が設けられているのに対して、引用発明では、コネクタ部が第1の混合回路の近傍にのみ設けられ、該コネクタ部にピン端子が設けられている点。

相違点ロ:本願発明は、第1、第2のコネクタ部に設けられた孔に貫通させたフレームの突起を有するのに対して、引用発明は、そのような孔及び突起を有するのかが不明である点。

相違点ハ:本願発明は、第1、第2のコネクタ部上に設けられるとともにピン端子とフレームの突起近くのグランドとの間に接続されたノイズ除去用のコンデンサを有するのに対して、引用発明は、そのようなコンデンサを有するのかが不明である点。

(3)相違点についての判断
上記相違点イ、ロ及びハについて検討する。

(3-1)相違点イについて

刊行物6には、(4a)?(4c)によれば、CATV受信機などに使用されるダブルチューナにおいて、シールド板(本願発明の「仕切板」に相当)にて第1混合回路と第2混合回路を相互に異なるブロックに仕切り、出力端子などの端子を第1混合回路と第2混合回路それぞれの近傍において前記ブロックに対応させて二つに独立させチューナ筐体から外部に導出することが記載されているといえる。

そして、刊行物6に記載された前記公知技術は、引用発明と同じく2つの混合回路を有する高周波装置に関するものであるから、引用発明に刊行物6記載の前記公知技術を適用し、引用発明において、二つのブロックに対応させて端子を独立して外部に導出させるとともに、コネクタ部をそれぞれの端子に対応させて、それぞれ第1、第2のコネクタ部として独立させ、第1、第2の混合回路の近傍に設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。
してみれば、相違点イは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3-2)相違点ロについて
刊行物2には、(2a)の「本考案は、高調波による電磁波障害を防ぐためのシールド機構に関するものである。」という記載、(2c)の「本考案は、コネクタをシールドケースの外に配置し、」という記載、(2b)の「1は側面に切り欠き部1bを設けたシールドケースである。2は電子部品を主に装着する回路部2aと、コネクタ3a、3bを装着する端子部2bと、それらの境目に設けた切り欠き部或るいは長孔部(以下長嵌通部という)2cとからなるプリント基板である。そして、シールドケース1の嵌入部1aが長嵌通部2cに挿通することにより、シールドが行われる。」という記載、及び、「プリント基板2に長嵌通部2cを設け、シールドケース1がプリント基板2を挿通することにより、シールドケース1の間隙を小さくでき、空間を伝導する電磁波ノイズはシールドケース1で遮断され、効果的なノイズ対策ができる。」という記載を併せみると、シールドケース、すなわち、フレームの側面に切り欠き部を設け、前記切り欠け部からプリント基板の一部を導出しコネクタを装着する端子部、すなわち、コネクタ部とし、前記コネクタ部に長嵌通部、すなわち、孔を設けるとともに、前記フレームには前記孔を貫通する嵌入部、すなわち、突起を設け、前記フレームの前記突起を前記コネクタ部の前記孔に貫通させることにより、高周波装置における電磁波ノイズを遮断することが記載されているといえる。

そして、刊行物2に記載された前記公知技術は、引用発明と同じく高周波装置の電磁シールド技術に関するものであるから、引用発明におけるコネクタ部に刊行物2に記載された前記公知技術を適用し、一層の電磁シールド効果の向上を図ることは、当業者が容易に想到し得るものと認められ、また、複数のコネクタ部のそれぞれに前記公知技術を適用することは、当業者が適宜実施し得る程度のものと認められる。
してみれば、相違点ロは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3-3)相違点ハについて
刊行物5には、(3a)の「電子装置の電磁波による誤動作を防止する車載用電子装置に関するもの」という記載、(3c)の「3aはコネクタ入力端子(信号線手段としてのコネクタピン)であり、一方の側はプリント基板2d上の銅箔パターン3bのうちの入出力領域に接続される。4は高周波電流をバイパスさせるコンデンサで、その一端がコネクタピン3aに銅箔パターン3bを通して接続されている。1eプリント基板2d上の銅箔パターンであり、バイパス用コンデンサ4の他端子が接続されており、このパターン1eは基板取り付け用ネジ1f、1j(保持手段)によってケース本体1cにしっかりと接触しており、コネクタピン3aを通してケース内に入ってきた高周波電流はバイパス用コンデンサ4、パターン1eを通してケース本体1cへと流れる。従って、プリント基板上の構成されたマイコン用のLSI2a、2c、トランジスタ2bなどの電子素子からなる電子回路2に高周波電流が流れ込むことはなく、故に高周波電流によってプリント基板上に構成された電子回路2が誤作動することも防げる。」という記載、及び、(3b)の「電子装置の信号綿3をコンデンサ4で導体ケース1と接続することは、一般の電子機器の入出カラインを接地したのと等価であるといえる。」という記載によれば、プリント基板には、一方の側が「コネクタ入力端子3a」、すなわち、「ピン端子」と電気的に接続し、他方の側が「銅箔パターン1e」と電気的に接続している、高周波電流を除去する「バイパス用コンデンサ4」が配置され、前記「バイパス用コンデンサ4」は、「銅箔パターン1e」を通じ、「ケース本体1c」、すなわち、「フレーム」へと電気的に接続されることにより接地され、電子装置の電磁波による誤動作が防止できることが記載されているといえる。

そして、刊行物5に記載された前記公知技術は、引用発明と同じく高周波装置の電磁シールド技術に関するものであるから、引用発明におけるコネクタ部に刊行物5に記載された前記公知技術を適用し、一層の電磁シールド効果の向上を図ることは、当業者が容易に想到し得るものと認められ、また、複数のコネクタ部のそれぞれに前記公知技術を適用することは、当業者が適宜実施し得る程度のものと認められる。
してみれば、相違点ハは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)小括
以上のとおり、上記相違点イ、ロ及びハは、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。
したがって、本願発明は、引用発明、及び刊行物2、刊行物5、刊行物6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.補足
上記「第2」で述べたとおり、平成19年1月18日付け手続補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものとはいえないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが、仮に、平成19年1月18日付け手続補正が、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとしても、平成19年1月18日付け手続補正による請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、以下に示すとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により本願出願の際独立して特許を受けることができないものといえる。そうすると、前記補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反し、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

すなわち、本願補正発明は、本願発明に以下の(1)?(5)の特定事項を付加したものである。
(1)「地上波放送やCATV放送の信号を受信できる高周波受信装置」であること
(2)プリント基板に実装される電子回路は、アンテナ回路を内蔵すること(3)アンテナ回路と第1の混合回路と第2の混合回路との間に金属製の仕切板を設けること
(4)プリント基板の一部をフレーム外に導出すること
(5)外部ノイズがフレーム外に設けられたピン端子に入ったとしても、外部ノイズのフレーム内への侵入することを少なくできること

上記付加事項について以下検討する。
(1)については、刊行物1の(1a)の「・・・テレビジョン受信回路を構成する部品を実装した区画とに分割すると共に、前記接地パターンに沿って前記テレビジョン受信回路のバンドパスフィルタを構成する部品を実装したことを特徴とする高周波機器ユニットのシールド構造。」という記載、及び、(1b)の「【0011】・・・放送局からのRFテレビジョン信号を受信するためのTV受信回路の区画B」という記載から公知技術と認められるから、当業者が容易に想到し得る事項である。

(2)については、例えば、特開平6-284024号公報の【0031】?【0043】、及び、図5?6に記載されているとおり、本願出願前に周知技術であると認められるから、引用発明において、プリント基板に実装させる電子回路として、第1の混合回路、第2の混合回路に加え、アンテナ回路を内蔵させることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

(3)については、刊行物1の(1b)の「・・・プリント基板3は、・・・RF変調回路の区画Aと、・・・TV受信回路の区画Bとに分割されている。・・・区画A、Bの間を仕切るためのシールド隔壁2aとが形成され」という記載、及び、刊行物6の(4a)の「CATV受信機などに用いるチューナ」において、図1において図示された、「シールド板にて第1混合回路と第2混合回路を仕切る構造((4d)参照)から公知技術と認められるから、当業者が容易に想到し得る事項である。

(4)については、刊行物1の図1及び図4において図示された、切り欠け部からプリント基板の一部がシールドケース外に導出された構造((1d)参照)、及び、刊行物2における(2b)の「回路部2aと、コネクタ3a、3bを装着する端子部2bと、・・・切り欠き部或いは長孔部2cとからなるプリント基板」、(2c)の「本考案は、コネクタをシールドケースの外に配置し、・・・シールド効果を向上させる」という記載から公知技術と認められるから、当業者が容易に想到し得る事項である。

(5)については、刊行物1の図1及び図4において図示されるように、端子をフレーム外に配置すること、刊行物2に記載される、フレームに突起を設け、前記突起をプリント基板に設けた孔に貫通させること、及び、刊行物5に記載される、コンデンサをプリント基板に配置することにより、当然達成されている事項であると認められる。

してみれば、本願補正発明は、引用発明、刊行物2、刊行物5及び刊行物6に記載された発明並びに前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、本願出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-01 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-30 
出願番号 特願平11-69757
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 572- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鏡 宣宏遠藤 邦喜内田 博之  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 平塚 義三
近野 光知
発明の名称 高周波装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ