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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65C |
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管理番号 | 1188035 |
審判番号 | 不服2007-3997 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-08 |
確定日 | 2008-11-13 |
事件の表示 | 特願2000-352345号「テーパ面を有するテーパ容器用外装ラベル」拒絶査定不服審判事件〔平成14年5月28日出願公開、特開2002-154510号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成12年11月20日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成18年8月24日付け手続補正書により補正された明細書(以下「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によりそれぞれ特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおりのものである。 「軸線を取り囲むテーパ面を有するテーパ容器の表面に取り付けられる外装ラベルであって、 前記外装ラベルは、2つの円弧の端部をそれぞれ結んでなる扇状の外観形状を有し、前記テーパ面に取り付けた際の合せ面が、一方の円弧側から見たとき、前記軸線からテーパ容器の円周外方向に向かう螺旋に近い放射状の曲線を呈した、当該テーパ容器の円周方向に沿って傾斜したラインを形成するように、当該2つの円弧を相互にずらしたものであることを特徴とするテーパ面を有するテーパ容器用外装ラベル。」 2.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-64029号公報(以下、「引用文献」という。)の【特許請求の範囲】、段落【0009】、段落【0012】、段落【0021】及び段落【0023】には、それぞれ、次の事項が図面とともに記載されている。 (a)「【請求項1】予め金型のキャビティ内面に厚紙ラベルを保持し、ボトル本体のブロー成形と同時にラベルと一体化することによって得られる厚紙ラベル付きボトルにおいて、厚紙ラベルが、周方向に2分割されており、2枚を合わせるとボトル本体の胴部全周に巻き回せるだけの横幅を有しており、かつボトル本体と一体化したときには上下方向直線上に連続した隙間が生じない形状であることを特徴とする、厚紙ラベル付きボトル。」 (b)「【0009】 【作用】請求項1に記載の本発明によれば、厚紙ラベルが金型のキャビティ内面に保持されたのち、ブロー成形すると、全周に亘って厚紙ラベルと一体化したボトルが成形される。そして2枚の厚紙ラベルの合わせ目において上下方向直線上に連続した隙間がないので、ボトルの横方向の収縮を集中して受ける部分がなく、ボトルの横方向の収縮の影響が緩和される。従ってラベルの合わせ目でボトル胴部がヒケることがない。」 (c)「【0012】<第1実施例>図1は第1実施例のラベル付きボトルを示す図であり、…(中略)本実施例のボトルは首部から胴部にかけてなだらかな線でつながった、胴部が円筒形状のボトルであり、内容量2000mlである。」 (d)「【0021】また、厚紙ラベルの形状は上記形状に限定されるものではなく、ボトルの胴部に一体化したときに、ラベルの合わせ目において、上下方向直線上に連続した隙間が生じない形状であれば同一の効果を奏することができる。その例を図3を用いて説明する。図3はいずれもボトルに厚紙ラベルを巻き回し、厚紙ラベルの合わせ目が見える方向から表現したものである。」 (e)「【0023】図3(ロ)の厚紙ラベル34も、上記(イ)と同様に、ボトル本体の胴部の全周にわたって巻き付けられる長さを有しており、これを周方向に2枚に分割したものである。そして厚紙ラベル34の形状は右辺と左辺の長さが等しくかつ平行な台形の形をしている。従って、ボトルの胴部に一体化したときにはこの片方のラベル35の右辺35aと他方のラベル36の左辺36aとが近接して位置される。この右辺35aと左辺36aとは平行に傾斜しているため、ラベルの合わせ目37において、上下方向直線上には連続した隙間が生じない。従って、前記第1実施例と同様の効果を奏することができる。」 なお、上記記載における「図3(イ)」及び「図3(ロ)」は、引用文献第5頁【図3】の表記からみて、それぞれ「図3(a)」及び「図3(b)」を、誤って表記したものである。 そして、上記記載(c)からみて、図3(b)に示されたボトル本体の胴部も円筒状であると解することができ、また、同図に示される合わせ目37において、円筒状胴部の表面に取り付けられる厚紙ラベル34の各端辺は、円筒状胴部の軸線に対して、円周方向に沿って平行に傾斜したものということができる。 したがって、以上の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ボトル本体の円筒状胴部の表面に取り付けられる厚紙ラベル(34)であって、 前記厚紙ラベル(34)は2分割されており、全体としてボトル本体の円筒状胴部の全周にわたって巻き付けられ、各厚紙ラベル(34)の合わせ目(37)において、厚紙ラベル(34)の各端辺が、ボトル本体の円筒状胴部の円周方向に沿って平行に傾斜しているボトル用厚紙ラベル。」 3.対比 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。 引用発明の「ボトル本体」は本願発明の「容器」に相当し、この表面に取り付けられる「厚紙ラベル(34)」は、本願発明の「容器用外装ラベル」に相当するものということができる。 さらに、引用発明の「各厚紙ラベル(34)の各端辺」も、「合わせ目(37)」において、ボトル本体の円筒状胴部の表面、すなわち容器の表面に取り付けた際、相互に対向する合せ面を有することは明白である。 したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりとなる。 〈一致点〉 容器の表面に取り付けられる外装ラベルであって、 前記外装ラベルは、容器の表面に取り付けた際の合せ面が、容器の円周方向に沿って傾斜したラインを形成するようにした容器用外装ラベル。 〈相違点〉 本願発明においては、容器が、軸線を取り囲むテーパ面を有するテーパ容器であって、それに伴い、外装ラベルが、2つの円弧の端部をそれぞれ結んでなる扇状の外観形状を有し、容器の表面に取り付けた際の外装ラベルの合せ面が、一方の円弧側から見たとき、軸線からテーパ容器の円周外方向に向かう螺旋に近い放射状の曲線を呈したラインを形成するように、2つの円弧を相互にずらしたものであるのに対し、引用発明においては、容器が円筒状胴部を備えたボトル本体であって、厚紙ラベル(34)は2分割されており、全体としてボトル本体の円筒状胴部の全周にわたって巻き付けられ、各厚紙ラベル(34)の合わせ目(37)において、厚紙ラベル(34)の各端辺が、ボトル本体の円筒状胴部の円周方向に沿って平行に傾斜している点。 4.判断 本願明細書【0002】、【0003】、【0006】、【0013】、【0014】には、本願発明の技術的課題に関連して次のように記載されている。 (a)「【0002】 【従来の技術】 様々な商品が市場に出回る中、他社との差別化を図るため、円錐形容器などのテーパ面を有するテーパ容器の表面全体にラベルを取り付けて装飾を施した容器は既知であり、外装ラベルとして、図4に示す如く、上円弧C1および下円弧C2の中心を通る軸線Oに対して対称な扇形状のラベル10を用いることも周知の事実である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記した従来の外装ラベル10は、テーパ容器に取り付けた後のラベルの合せ面Loを一致させるための調整、所謂、ゼロ点調整が難しい。例えば、テーパ容器11を外装するラベル10がインモールドラベルである場合、テーパ容器は、インモールドラベル10を予め金型内にセットした状態で一体成形されるため、金型内でのラベル10の合せ面Loを断面で示した図5の如く、成形用材料の流れdがインモールドラベル10の合せ面Loを押し開く力Fを発生することがある。このため、従来形状の外装ラベル10をインモールドラベルとして用いると、金型内でのラベル10の合せ面Loをラベル面側から示した図6の如く、ラベル表面にしわ10wが発生したり、最悪の場合、ラベル10を取り付けたテーパ容器11を示した図7ように、ラベルの合せ面Loが完全に離れてしまうという不都合があった。」 (b)「【0006】 本発明は、テーパ容器に取り付けた際の合せ面がテーパ容器の円周方向に沿って傾斜したラインとなるため、テーパ容器の円周方向から加わる力と、テーパ容器の円周方向と直交する方向から加わる力とを同時にテーパ容器の外側に逃がすごとができる。このため、外装ラベルの合せ面が離間したり、合せ面付近にしわが発生することなく、テーパ容器に取り付けた後の合せ面を一致させることができる。従って、本発明によれば、ラベルをきれいに取り付けることができ、外装ラベルを取り付ける工程においての不良率が減少して生産性が向上する。」 (c)「【0013】 これに対して、従来形状のインモールドラベル10は、図1の破線または図4で示す如く、上円弧C1および下円弧C2の中心を通る軸線Oに対して対称な形状である。このため、インモールドラベル10は、テーパ容器11の表面全体に取り付ける際、その合せ面Loは、図2に示す如く、テーパ容器11の円周方向に直交するラインを形成する。 【0014】 つまり、従来形状のインモールドラベル10は、テーパ容器11に取り付けた際の合せ面がテーパ容器11の円周方向に直交するラインとなるため、図5,6の矢印に示す如く、テーパ容器の円周方向と直交する方向から加わる力Fyしかテーパ容器11の外側に逃がすことができない。このため、インモールドラベル10の合せ面Loが離間したり、合せ面Lo付近にしわが発生し、テーパ容器11に取り付けた後の合せ面Loを一致させることができない。」 以上の記載によれば、本願発明の技術的課題は、テーパ面に取り付けた際の合せ面を、テーパ容器の円周方向に沿って傾斜したラインとすることにより、テーパ容器の円周方向から加わる力と、テーパ容器の円周方向と直交する方向から加わる力とを同時にテーパ容器の外側に逃がすようにして、外装ラベルの合せ面が離間したり、合せ面付近にしわが発生することなく、テーパ容器に取り付けた後の合せ面を一致させることにあると解することができる。 すなわち、本願発明の外装ラベルは、テーパ容器の表面に取り付けた際の合せ面を、容器の円周方向に傾斜させ、外装ラベルに作用する応力を、円周方向及びこれに直交する方向に分散させて逃がすようにして、応力の集中を回避するようにしたものということができる。 これに対し、引用発明の技術的課題は、引用文献の記載(b)を参酌すれば、「各厚紙ラベル(34)の合わせ目(37)において、厚紙ラベル(34)の各端辺が、ボトル本体の円筒状胴部の円周方向に沿って平行に傾斜」させることにより、ボトルの横方向の収縮を集中して受ける部分をなくし、ボトルの横方向の収縮の影響により、ラベルの合わせ目でボトル胴部がヒケる、すなわち厚み変動が発生するのを防止することにあるということができる。 してみると、引用発明においては、厚紙ラベル(34)が2分割されているものの、各合わせ目(37)においては、厚紙ラベル(34)の各端辺を円周方向に沿って平行に傾斜させることにより、本願発明と同様に、厚紙ラベル(34)に作用する応力を、円周方向及びこれに直交する方向に分散させて逃がすようにして、応力の集中を回避させているものと解するのが相当である。 ここで、引用発明のボトルは、円筒状胴部を有するものであるが、引用発明を様々な形態のボトルに対応した外層ラベルに適用することは、当業者がごく自然に想起し得ることと解されるところ、円錐形容器等、軸線を取り囲むテーパ面を有するテーパ容器に対し、2つの円弧の端部をそれぞれ結んでなる扇状の外観形状を有した外装ラベルを用いることは、例えば、特開平8-132477号公報(特に段落【0019】参照)、特開平7-137088号公報(特に段落【0025】参照)にみられるように本願出願前より周知の技術である。 したがって、引用発明を、上述したような周知のテーパ容器の外装ラベルに適用することは、当業者が容易に想到し得ることというべきであり、その際、厚紙ラベル(34)の各端辺を、合わせ目(37)において円周方向に沿って平行に傾斜させるため、扇形形状とした厚紙ラベル(34)の2つの円弧を相互にずらしたものとすること、その結果、厚紙ラベル(34)をテーパ容器のテーパ面に取り付けた際、合わせ目(37)が、一方の円弧側から見たとき、軸線からテーパ容器の円周外方向に向かう螺旋に近い放射状の曲線を呈することは、その展開図及びテーパ面への取り付けを想定すれば、当業者が当然に採用し得ることである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、本願出願前より周知の技術等を勘案すれば、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-04 |
結審通知日 | 2008-09-09 |
審決日 | 2008-10-01 |
出願番号 | 特願2000-352345(P2000-352345) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 楠永 吉孝 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
村山 禎恒 熊倉 強 |
発明の名称 | テーパ面を有するテーパ容器用外装ラベル |
代理人 | 澤田 達也 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 来間 清志 |
代理人 | 杉村 憲司 |