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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1188445
審判番号 不服2006-5552  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-24 
確定日 2008-11-28 
事件の表示 特願2001-273410「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月18日出願公開、特開2003- 79837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成13年9月10日の出願であって、平成18年2月20日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年3月24日付けで本件審判請求がされたものである。
請求人は本件審判請求後の同年4月18日付けで明細書について手続補正をしたが、同手続補正は当審において却下された。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年11月28日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の遊技図柄を変動表示可能な第1表示部(23a)と第2表示部(23c)と第3表示部(23b)とを有する変動図柄表示手段(22)と、この変動図柄表示手段(22)に特定の組合せ態様を表示するか否か抽選する抽選手段(51,52)と、この抽選手段(51,52)が特定の組合せ態様を表示すると抽選した場合に遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(54)とを備えた遊技機において、
遊技状態に応じて複数種の演出音を発生可能な音発生手段(74)と、
前記第1表示部(23a)と第2表示部(23c)の夫々の遊技図柄の変動停止に関連づけて前記音発生手段(74)で複数種の演出音のうちの特定演出音を発生させるか否か選択する特定音発生選択手段(73a)と、
前記抽選手段(51,52)の抽選結果に応じて、特定音発生選択手段(73a)において特定演出音の発生を選択する選択率を異ならせる制御を行う音選択制御手段(73b)と、
遊技状態に応じて複数種の演出表示を表示可能な演出表示手段(72a?72d,72e?72h)であって前記変動図柄表示手段(22)とは異なる演出表示手段(72a?72d,72e?72h)と、
前記第1表示部(23a)と第2表示部(23c)の夫々の遊技図柄の変動停止に関連づけて前記演出表示手段(72a?72d,72e?72h)で複数種の演出表示のうちの特定演出表示を発生させるか否か選択する特定表示選択手段(71a)と、
前記抽選手段(51,52)の抽選結果に応じて、特定表示選択手段(71a)において特定演出表示の発生を選択する選択率を異ならせる制御を行う表示選択制御手段(71b)とを備え、
前記演出表示手段(72a?72d,72e?72h)は、前記特定演出表示を遊技図柄の変動停止前に発生させ、
前記音発生手段(74)は、前記特定演出音を遊技図柄の変動停止時よりも微小時間遅く発生させる、
ことを特徴とする遊技機。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-54620号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?トの記載が図示とともにある。
ア.「表示状態が変化可能な可変表示装置と、
音を発生可能な音発生手段と、
所定の発光動作が可能な発光手段とを備え、
前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となった場合に遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御可能となる遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための可変表示動作を行なわせる可変表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合と特定の表示態様とならない場合とで異なる選択確率で複数種類の発音演出パターンの中から発音演出パターンを選択する発音演出パターン選択手段と、
前記可変表示動作期間中の所定の期間中において、前記発音演出パターン選択手段により選択された前記発音演出パターンを前記音発生手段から発生させることが可能な発音演出制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合と特定の表示態様とならない場合とで異なる選択確率で複数種類の発光演出パターンの中から発光演出パターンを選択する発光演出パターン選択手段と、
前記所定の期間中において、前記発光演出パターン選択手段により選択された発光演出パターンを前記発光手段に発光動作させることが可能な発光演出制御手段とを備えた、遊技機。」(【請求項1】)
イ.「前記可変表示制御手段は、前記可変表示装置によりリーチ状態が成立した場合に所定のリーチ演出動作表示を行なわせ、
前記所定の期間は、前記可変表示動作期間中における前記リーチ演出動作表示が行なわれていない非リーチ演出表示期間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の遊技機。」(【請求項2】)
ウ.「前記可変表示制御手段は、前記可変表示装置によりリーチ状態が成立した場合に所定のリーチ演出動作表示を行なわせ、
前記所定の期間は、前記可変表示動作期間中における前記リーチ演出動作表示が行なわれている期間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の遊技機。」(【請求項3】)
エ.「この発明の目的の一つは、可変表示装置を可変開始した後表示結果を導出表示するまでの可変表示動作を行なう可変表示動作期間の所定の期間に、多様な演出を行なうことができる遊技機を提供することである。」(段落【0005】)
オ.「図2は、遊技盤6に設けられる装飾ランプおよび装飾LEDの配置を示す遊技盤6の正面図である。図2を参照して、遊技盤6には、可変表示装置8の内部であって上部左右両側部分にそれぞれ設けられる飾りLED111と、装飾ランプカバー25の内部に設けられる飾りLED112と、可変表示装置8の3つのドラム100a,100b,100cの内部にそれぞれに設けられる3つの飾りランプ113と2つの飾りランプ114と、入賞口24の内部に設けられる飾りランプ115と、可変入賞球装置19の内部であって左右両側部分にそれぞれ設けられる飾りランプ116とが配置されている。」(段落【0039】)
カ.「図7は、遊技制御基板31の基本回路53が遊技制御に用いる各種ランダムカウンタを示す図である。図7には、ランダムカウンタ1?8の10種類(ランダムカウンタ3は3-1、3-2、3-3の3つからなる)のランダムカウンタが示されている。」(段落【0072】)
キ.「ランダムカウンタ1は、始動記憶がある場合にその始動記憶に基づく特別図柄の可変表示の結果を大当りとするか否かを決定するために用いられるランダムカウンタである。」(段落【0073】)
ク.「ランダムカウンタ3-1、ランダムカウンタ3-2、ランダムカウンタ3-3は、画像表示領域9に最終的に停止表示される停止図柄(確定図柄)の種類を決定するために用いられるランダムカウンタである。」(段落【0075】)
ケ.「ランダムカウンタ3-1とランダムカウンタ3-2とによって決定される左図柄と右図柄とが同じ図柄となることにより、表示結果が外れとなるリーチ状態となる。また、ランダムカウンタ1により可変表示の結果を大当りとしないことが決定された場合に、ランダムカウンタ3-1、ランダムカウンタ3-2、およびランダムカウンタ3-3とが同じカウンタ値を示す場合には、ランダムカウンタ3-2のカウンタ値が、1加算されたカウンタ値となる。このように、特別図柄の可変表示の結果を大当りとするか否かはランダムカウンタ1のみによって決定されることになる。」(段落【0079】)
コ.「ランダムカウンタ4は、リーチ種類を決定するためのランダムカウンタであり、0から加算されてその上限である121まで加算されると再度0から加算される。リーチ種類とは、可変表示装置がリーチ状態となった場合に表示されるリーチ演出動作の種類をいい、たとえば、中ドラムを定角速度で回転させて中図柄を可変表示するノーマルロング、中ドラムを規則的に間欠して回転させて中図柄を可変表示するコマ送り、中ドラムを不規則に間欠して回転させて中図柄を可変表示する変則コマ送りなどのリーチ演出動作をいう。」(段落【0080】)
サ.「ランダムカウンタ6は、ランダムカウンタ1の値により特別図柄の可変表示の結果を大当りとすることが決定された場合に、発音演出パターンおよび発光演出パターンを決定するために、または、ランダムカウンタ1の値により特別図柄の可変表示の結果を大当りとしないことが決定された場合であってリーチ状態が表示された場合に、リーチ演出動作のさらに詳細な種類を決定するために用いられるランダムカウンタである。ランダムカウンタ1の値により特別図柄の可変表示の結果を大当りとしないことが決定された場合であってリーチ状態が表示された場合には、ランダムカウンタ4とランダムカウンタ6とによりリーチ演出動作が決定される。」(段落【0082】)
シ.「図9は、大当り時の乱数と可変表示装置8の変動パターンとの関係を示す図である。図9を参照して、リーチ用乱数とは、始動入賞があったときにRAM55に記憶されるランダムカウンタ4のカウンタ値を示し、変動動作用乱数はランダムカウンタ6のカウンタ値を示し、再変動用乱数はランダムカウンタ8のカウンタ値を示す。変動パターンは、可変表示装置8が可変開始した後表示結果が導出表示されるまでの可変表示動作をいい、特にリーチ状態となった場合に可変表示される演出動作をリーチ演出動作という。」(段落【0090】)
ス.「本実施の形態における可変表示装置8においては、上述したリーチ演出動作を組合せて12種類の変動パターンを可変表示することができる。そして、ランダムカウンタ1において特別図柄の可変表示の結果を大当りとすると決定された場合には、ランダムカウンタ4,6,8のカウンタ値に基づいて、12種類の変動パターンのうちいずれかの変動パターンが選ばれてリーチ演出動作が定められる。」(段落【0095】)
セ.「図10は、大当り時の変動動作用乱数と音ランプの演出パターンとの関係を示す図である。図10を参照して、変動動作用乱数はランダムカウンタ6のカウンタ値を示す。音ランプは、発音演出パターンと発光演出パターンとの組合せからなる演出パターンを示す。演出パターンには演出0?演出8までの9個の演出パターンがある。演出0?演出8の演出パターンについては後述する。ここでは、演出0?演出5の6個の演出パターンが用いられる。演出パターンは、変動動作用乱数(ランダムカウンタ6のカウンタ値)により定まる。」(段落【0097】)
ソ.「図11は、外れ時の乱数と可変表示装置8の変動パターンと音ランプの演出パターンとの関係を示す図である。」(段落【0098】)
タ.「リーチ用乱数はランダムカウンタ4のカウンタ値を示し、変動動作用乱数はランダムカウンタ6のカウンタ値を示す。音ランプは、発音演出パターンと発光演出パターンとの組合せからなる演出パターンを示す。変動パターンは、可変表示装置8が可変開始した後表示結果が導出表示されるまでの可変表示動作をいい、特にリーチ状態となった場合に可変表示される演出動作をリーチ演出動作という。」(段落【0099】)
チ.「記号dに対応する効果音は、ドラム100aが回転した状態から停止したときに発生される音を示す左図柄停止音である。記号eに対応する効果音は、ドラム100bが回転した状態から停止したときに発生される音を示す中図柄停止音である。記号fに対応する効果音は、ドラム100cが回転した状態から停止したときに発生される音を示す右図柄停止音である。・・・記号hに対応する効果音は、ドラム100cが回転した状態から停止した状態となったときに発生される音であって、本実施の形態では100a、100c、100bの順でドラムが停止するためドラム100cの停止音を変えることでリーチになるときの演出に変化をもたらすことが可能であり、記号d?記号fに対応する効果音とは異なる音を示す特殊停止音である。記号iに対応する効果音は、ドラム100aとドラム100cとが停止して左図柄と右図柄とが同じ図柄となってリーチ状態となったときに発生される音を示すリーチ開始音である。記号jに対応する効果音は、リーチ演出動作においてコマ送りの演出動作が行なわれるときに発生される音を示すコマ送り音である。記号kに対応する効果音は、リーチ演出動作が変則コマ送りとなったときに発生される音を示す変速コマ送り音である。記号lに対応する効果音は、リーチ演出動作がスーパーコマ送りとなったときに発生される音を示すスーパーコマ送り音である。」(段落【0126】)
ツ.「ドラム100a?100cが停止した状態から回転し始めたとき(T1)からドラム100bが減速して停止したとき(T4)までの期間に、演出0?5のいずれかの演出パターンが実行される。」(段落【0129】)
テ.「時刻T4において、左図柄と右図柄とが同じ図柄であれば、リーチ状態となり、リーチ演出動作表示が行なわれる。・・・リーチ状態となったとき(T4)からドラム100bが停止するとき(T5)までに、飾りLED111,112と飾りランプ113?116とで所定の発光演出パターンが行なわれ、スピーカ27より所定の効果音が発生される。この時刻T4から時刻T5までの期間に演出される演出パターンをリーチ中パターンという。」(段落【0131】)
ト.「図22を参照して、ドラム100cが停止して、左図柄と右図柄とが同じとなりリーチ状態となる以前に、演出0?5のいずれかの演出パターンで音と光による演出が行なわれる。したがって、遊技者は、ドラム170cが停止する以前に音と光による複数種類の演出パターンを識別することができ、識別した演出パターンがいずれであるかにより、リーチ状態となるか、あるいは大当りとなるかを期待することができる。」(段落【0133】)

2.引用例記載の発明の認定
引用例の記載ウ(請求項3)は請求項1(記載ア)のみを引用しており、請求項2(記載イ)を引用していないから、記載アの「所定の期間」として、「非リーチ演出表示期間」及び「リーチ演出動作表示が行なわれている期間」の両方を特定した請求項は存在しない。しかし、引用例の記載テは、「非リーチ演出表示期間」に「演出0?5のいずれかの演出パターン」(記載ツ)を実行した後に発光演出パターン及び効果音により演出する旨記載しているのだから、記載アの「所定の期間」として、「非リーチ演出表示期間」及び「リーチ演出動作表示が行なわれている期間」の両方を含む発明も引用例には記載されている。そのことは、引用例の【図22】に「演出0?5」及び「リーチ中パターン」の両方が図示されていることによっても裏付けられる。
記載アの「可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合」(以下「大当り」といい、特定の表示態様となるかどうかは、「ランダムカウンタ1の値」のみにより決する。)には必ず「リーチ演出動作表示が行なわれている期間」が存在し、「特定の表示態様とならない場合」には「リーチ演出動作表示が行なわれている期間」が存在することもあれば存在しないこともあり、どちらになるかは「ランダムカウンタ3-1とランダムカウンタ3-2」の値により決するから、「リーチ演出動作表示が行なわれている期間」の発音演出及び発光演出を行うかどうかは、可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合と特定の表示態様とならない場合とで異なる選択確率で選択される。
そして、記載ア及び記載ウによれば、「リーチ演出動作表示が行なわれている期間」の発音演出及び発光演出についても、「複数種類の発音演出パターン」及び「複数種類の発光演出パターン」の中から選択し、それらの選択確率が可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合と特定の表示態様とならない場合とで異なるとされている。
以上によれば、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「表示状態が変化可能な可変表示装置と、
複数のランダムカウンタと、
音を発生可能な音発生手段と、
所定の発光動作が可能な発光手段とを備え、
前記可変表示装置は、左図柄、中図柄及び右図柄を有し、左図柄、右図柄、中図柄の順に停止し、前記ランダムカウンタの1つの値に基づいて、前記可変表示装置の停止時の表示結果を特定の表示態様とするかしないかを決定し、停止時の表示結果が特定の表示態様となった場合に遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御可能となる遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための可変表示動作を行なわせる可変表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合と特定の表示態様とならない場合とで異なる選択確率で複数種類の発音演出パターンの中から発音演出パターンを選択する発音演出パターン選択手段と、前記発音演出パターン選択手段により選択された前記発音演出パターンを前記音発生手段から発生させることが可能な発音演出制御手段と、
前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合と特定の表示態様とならない場合とで異なる選択確率で複数種類の発光演出パターンの中から発光演出パターンを選択する発光演出パターン選択手段と前記発光演出パターン選択手段により選択された発光演出パターンを前記発光手段に発光動作させることが可能な発光演出制御手段とを備え、
前記可変表示装置の左図柄及び右図柄が停止するまでの非リーチ演出表示期間及び左図柄及び右図柄がリーチ状態で停止した後のリーチ演出動作表示が行なわれている期間に、前記発音演出パターン選択手段により選択された前記発音演出パターン及び前記発光演出パターン選択手段により選択された発光演出パターンに基づいて演出を行う遊技機。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明の「可変表示装置」は本願発明の「変動図柄表示手段(22)」に相当し、そのうち左図柄部分及び右図柄部分が順不同に本願発明の「第1表示部(23a)」及び「第2表示部(23c)」に、同じく中図柄部分が本願発明の「第3表示部(23b)」にそれぞれ相当する。
引用発明において「ランダムカウンタの1つの値に基づいて、前記可変表示装置の停止時の表示結果を特定の表示態様とするかしないかを決定」することと、本願発明において「変動図柄表示手段(22)に特定の組合せ態様を表示するか否か抽選する」こと、及び引用発明の「遊技者にとって有利な特定遊技状態」と本願発明の「遊技者に有利な利益状態」には相違がないから、引用発明は本願発明でいう「抽選手段(51,52)」及び「利益状態発生手段(54)」を備える。
引用発明の「音発生手段」及び「発光手段」は、本願発明の「音発生手段(74)」及び「演出表示手段(72a?72d,72e?72h)」にそれぞれ相当し、それが「遊技状態に応じて複数種の演出音を発生可能」であること及び「遊技状態に応じて複数種の演出表示を表示可能」なこと、並びに「発光手段」(演出表示手段(72a?72d,72e?72h))が「変動図柄表示手段(22)とは異なる」ことは本願発明と引用発明の一致点である。
引用発明の「発音演出パターン選択手段」及び「発光演出パターン選択手段」は、本願発明の「特定音発生選択手段(73a)」及び「特定表示選択手段(71a)」にそれぞれ相当する。また、引用発明が、「複数種の演出音のうちの特定演出音」を発生させない場合及び「複数種の演出表示のうちの特定演出表示」を発生させない場合を含むことは明らかであるから、「複数種の演出音のうちの特定演出音を発生させるか否か選択」及び「複数種の演出表示のうちの特定演出表示を発生させるか否か選択」の点は本願発明と引用発明の一致点である。
引用発明では「前記可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合と特定の表示態様とならない場合とで異なる選択確率」で発音演出パターン及び発光演出パターンを選択するのだから、本願発明の「前記抽選手段(51,52)の抽選結果に応じて、特定音発生選択手段(73a)において特定演出音の発生を選択する選択率を異ならせる制御を行う音選択制御手段(73b)」及び「前記抽選手段(51,52)の抽選結果に応じて、特定表示選択手段(71a)において特定演出表示の発生を選択する選択率を異ならせる制御を行う表示選択制御手段(71b)」は引用発明にも備わっている。
したがって、本願発明と引用発明は、
「複数の遊技図柄を変動表示可能な第1表示と第2表示部と第3表示部とを有する変動図柄表示手段と、この変動図柄表示手段に特定の組合せ態様を表示するか否か抽選する抽選手段と、この抽選手段が特定の組合せ態様を表示すると抽選した場合に遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
遊技状態に応じて複数種の演出音を発生可能な音発生手段と、
前記音発生手段で複数種の演出音のうちの特定演出音を発生させるか否か選択する特定音発生選択手段と、
前記抽選手段の抽選結果に応じて、特定音発生選択手段において特定演出音の発生を選択する選択率を異ならせる制御を行う音選択制御手段と、
遊技状態に応じて複数種の演出表示を表示可能な演出表示手段であって前記変動図柄表示手段とは異なる演出表示手段と、
前記演出表示手段で複数種の演出表示のうちの特定演出表示を発生させるか否か選択する特定表示選択手段と、
前記抽選手段の抽選結果に応じて、特定表示選択手段において特定演出表示の発生を選択する選択率を異ならせる制御を行う表示選択制御手段とを備えた遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉特定演出音及び特定演出表示の発生につき、本願発明が「前記第1表示部(23a)と第2表示部(23c)の夫々の遊技図柄の変動停止に関連づけて」と特定しているのに対し、引用発明では「前記可変表示装置の左図柄及び右図柄が停止するまでの非リーチ演出表示期間及び左図柄及び右図柄がリーチ状態で停止した後のリーチ演出動作表示が行なわれている期間」に発音演出パターン及び発光演出パターンに基づいて演出を行うものの、左図柄及び右図柄の変動停止に関連づけて演出を行うとまではいえない点。
〈相違点2〉本願発明では「前記演出表示手段(72a?72d,72e?72h)は、前記特定演出表示を遊技図柄の変動停止前に発生させ」と限定しているのに対し、引用発明にはかかる限定がない点。
〈相違点3〉本願発明では「前記音発生手段(74)は、前記特定演出音を遊技図柄の変動停止時よりも微小時間遅く発生させ」と限定しているのに対し、引用発明にはかかる限定がない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用発明では非リーチ演出表示期間及びリーチ演出動作表示が行なわれている期間に演出を行うところ、リーチ演出動作表示は第1表示部及び第2表示部が変動停止した後に行われるから、第1表示部又は第2表示部のうち遅く変動停止する表示部(以下、便宜上「第2表示部」とする。)の遊技図柄の変動停止に関連づけて特定演出音及び特定演出表示を発生することは本願発明と引用発明の一致点であり、ここで検討すべきは、第1表示部の遊技図柄の変動停止に関連づけて演出することの容易性である。
引用発明の非リーチ演出表示期間は第2表示部が変動停止するまでの期間であり、第1表示部は同期間内に変動停止し、非リーチ演出表示期間の演出をいつ行うべきかについて、引用発明には特段の限定がない。ところで、演出を行うに当たっては、遊技機の何らかの動作を契機として行うことが一般的であり、引用発明の実施例では、【図22】に見られるように3つの図柄の変動開始を契機として非リーチ演出表示期間の演出を行っている。契機となるべき遊技機の動作として、それ以外にも第1表示部の変動停止があり、実際遊技機の1種であるスロットマシン(3つの回転リールを有する。)では、回転リールの停止に関連づけて各種演出(当選報知)を行うことが周知技術(例として特開2000-135306号公報をあげておく。代表的な機種としては「サンダーV」があげられる。)である。
そうであれば、引用発明における非リーチ演出表示期間の演出(特定演出音及び特定演出表示の発生)を、第1表示部の遊技図柄の変動停止に関連づけて行うことは当業者にとって想到容易というべきである。

(2)相違点2及び相違点3について
相違点1の容易性は前示のとおりであるが、そこで周知技術としてあげたスロットマシンでは、各回転リールは遊技者の停止操作により停止する点で、引用発明及び本願発明の「この抽選手段が特定の組合せ態様を表示すると抽選した場合に遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機」とは異なっている。
スロットマシンでは、上記のとおり遊技者の停止操作により停止するため、停止時期は遊技者が操作するまで確定しないから、回転リールの停止に関連づけて演出する場合に、停止前に演出することは不可能である。
これに対し、本願発明や引用発明では、遊技者の停止操作が介在せず、遊技図柄の変動停止時点は事前に定まっており、そのため、遊技図柄の変動停止に関連づけて演出するに当たっての、変動停止時期との関係では自由度が高い。
さらに、本願発明及び引用発明に共通して「特定の組合せ態様を表示する」かどうかは抽選のみで事前決定されているから、遊技図柄の変動自体も演出の一部というべきである。
そうすると、相違点1に係る本願発明の構成を採用した場合には、遊技図柄の変動停止、特定演出表示の発生及び特定演出音の発生という3つの演出が概略同時点で行われることになる。
そして、概略同時点で行うべき複数の演出を同時に行うか、若干時間をずらせて行うかは設計事項であり、個々の演出をすべて遊技者に認識させることに重きをおくならば、後者が前者に優ることは明らかであるから後者採用はなおさら設計事項というべきであり、3つの演出の時間をずらせる場合、その順序は6通りしかなく、どの順序を採用しても作用効果にさしたる相違があると認めることはできないから、時間差を「微小時間」とすることを含め、順序として、特定演出表示の発生、遊技図柄の変動停止、特定演出音の発生の順序とすることは設計事項というべきである。
以上のとおりであるから、相違点2,3に係る本願発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-29 
結審通知日 2008-10-01 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願2001-273410(P2001-273410)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 河本 明彦
伊藤 陽
発明の名称 遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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