• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1188488
審判番号 不服2005-21474  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-07 
確定日 2008-11-27 
事件の表示 特願2001-251134「入力装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月22日出願公開、特開2002- 82773〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成8年8月5日に出願した特願平8-205610号の一部を平成13年8月22日に新たな特許出願としたものであって、平成17年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年11月7日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年12月6日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年12月6日付け手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。
「所定の大きさの筐体に格納され、情報を入力する携帯型の入力装置において、
前記筐体全体の回転に伴う前記筐体の互いに直交する3軸方向の姿勢の変位を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記変位およびユーザ操作に基づいて、表示部全体のスクロール表示を制御する表示制御手段と、
前記検出手段により検出された前記変位およびユーザ操作に基づいて、前記表示部における表示が制御されている情報の中から、表示部内の所定の位置にある情報を選択する選択手段と
を備えることを特徴とする入力装置。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である表示制御手段について、「前記変位に基づいて」とあるのを「前記変位およびユーザ操作に基づいて」と限定し、「表示部における表示を制御する」とあるのを「表示部全体のスクロール表示を制御する」と限定し、選択手段について、「前記変位に基づいて」とあるのを「前記変位およびユーザ操作に基づいて」と限定し、「所定の情報を選択する選択手段」とあるのを「表示部内の所定の位置にある情報を選択する選択手段」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平7-302158号公報」(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はテレビのリモートコントローラ、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、グラフィックシステム、ゲーム機器等種々のコンピュータシステムにポインティング情報を入力しメニュー選択やカーソル操作等に使用する情報入力器具に関する。」(第2頁左欄)

「【0005】
【課題を解決するための手段】上述した従来の技術の課題に鑑み、本発明は使用環境や使用条件に特別の制限がなく自由に取り扱う事のできる情報入力器具を提供する事を目的とする。又、手等が不自由な作業者にも容易に取り扱う事ができる情報入力器具を提供する事を目的とする。さらに、ポインティング情報に加えキー情報をも同時に入力可能な情報入力器具を提供する事を目的とする。かかる目的を達成する為に以下の手段を講じた。即ち、本発明にかかる情報入力器具はコンピュータに対してポインティング情報を入力するものであり、姿勢制御可能に人体の所望部位に保持又は装着されるボディと、これに内蔵された姿勢検出器とからなる。前記姿勢検出器は重力方向に対する傾斜角を検出してボディの姿勢を抽出しポインティング情報としてコンピュータに出力する事を特徴とする。
【0006】本発明の一態様によれば、前記ボディは人体の両腕により保持可能な形態を有し、さらに複数のキーを備えており指で選択操作する事によりポインティング情報の他にキー情報もコンピュータに送出する。他の態様では、前記ボディは人体の頭部に装着され、オペレータの首振り運動に応じてポインティング情報が入力される。
【0007】好ましくは、前記姿勢検出器は重力に応答する質量体と、該質量体の重量ベクトルを検知する感圧素子とから構成されている。具体的には、前記質量体は球形状を有し、前記感圧素子は該質量体に接触して圧力を受け容量が変化する誘電体型感圧素子を用いる。
【0008】本発明を具体化した形態では、例えば前記ボディは情報入力の対象となるコンピュータ自体を内蔵しており、携帯情報機器を構成する。この場合、ボディはコンピュータに加えて、入力されたポインティング情報に基づきメニュー選択やカーソル移動を可視表示するディスプレイを内蔵している。」(第2頁右欄?第3頁左欄)

「【0009】
【作用】本発明によれば、人体の所望部位に保持又は装着されたボディを傾けると、内蔵した姿勢検出器が重力方向に対する傾斜角を検出してボディの姿勢を抽出する。抽出した姿勢をポインティング情報としてコンピュータに入力する事により、例えばディスプレイに表示されたカーソルがボディの傾斜に連動して移動し、メニュー選択等所望のポインティング操作を行なう事ができる。例えば、情報入力器具のボディをオペレータの頭頂部に装着すると、前後左右に首振り運動を行なう事によりディスプレイに表示されたカーソルの移動を自在に行なえる。本発明にかかる情報入力器具は両腕で保持する形態としても良く、手元操作でポインティング情報を入力できる。この場合にはボディに複数のキーを設け、テキストデータの入力時等には主として親指等を用いてキー情報を入力すれば良い。入力器具を両手で保持した状態で操作できるので、特に作業台等を必要としない。さらに、入力器具にコンピュータやディスプレイを内蔵して携帯情報機器とする事もできる。例えばメガネの様に頭部マウント型の形態とすれば、通勤電車の中でも首を動かす余裕があればコンピュータ作業を行なう事ができる。又下半身が不自由なオペレータでも自在に取り扱う事ができる。」(第3頁左欄)

「【0010】
【実施例】以下図面を参照して本発明の好適な実施例を詳細に説明する。図1は本発明にかかる情報入力器具の第1実施例を示す模式図である。本実施例にかかる情報入力器具1はコンピュータ2に対してポインティング情報を入力する為に用いられる。コンピュータ2にはディスプレイ3が接続しており、画面4にメニュー5とカーソル6が表示されている。コンピュータ2は情報入力器具1から送られたポインティング情報に応じてカーソル6を移動し、所望のメニュー選択操作等を行なう。
【0011】情報入力器具1は姿勢制御可能に人体の所望部位に保持又は装着されるボディ7と、これに内蔵された姿勢検出器とから構成されている。本例ではボディ7はバンド8を介して人体頭部9に装着されている。ボディ7に内蔵された姿勢検出器は重力方向に対する情報入力器具1の傾斜角を検出してボディ7の姿勢を抽出し、ポインティング情報としてコンピュータ2に送出する。本例ではディスプレイ3に対面したオペレータが前後左右に首振り運動を行なうと、これに連動してカーソル6が移動する。頭部9を前後方向に傾けるとカーソル6は画面4のY方向(垂直方向)に移動する。頭部9を左右方向に傾けるとカーソル6は画面4のX方向(水平方向)に移動する。」(第3頁左欄?右欄)

「【0014】図4は本発明にかかる情報入力器具の第2実施例を示す模式的な平面図である。本情報入力器具21はオペレータの両腕により保持可能な形態のボディ22を有している。ボディ22の表面には複数のキー23が設けられており、主として親指で選択操作する事によりキー情報をコンピュータに入力できる。個々のキー23にはアルファベットや句読点等の記号が割り付けられている。又スペースキー23aやキャリジリターンキー23bも備えている。
【0015】第1実施例と同様にボディ22の内部には姿勢検出器24が内蔵されており、重力方向に対するボディ22の傾斜角を検出してその姿勢を抽出しポインティング情報としてコンピュータに送出する。ポインティング情報の入力に関連してボディ22の前面部にスイッチ25a,25bが取り付けられている。一方のスイッチ25aはキー情報の入力からポインティング情報の入力に切り換える時操作される。他方のスイッチ25bは、例えばポインティング情報に応じたカーソルによりドラグ操作を行なう時にオンされる。
【0016】本実施例ではボディ22自体に情報入力の対象となるコンピュータ26を内蔵している。又液晶表示パネル等のディスプレイ27を備えており、ポインティング情報に基づきメニュー選択やカーソル移動を可視表示する。かかる構成により入力器具とコンピュータ及びディスプレイを一体化した携帯情報機器を構築できる。
【0017】図5は、図4に示した携帯情報機器の使用方法を示す説明図である。図示する様に操作者28は両腕で情報入力器具21のボディ22を保持する。スイッチ25aを操作しポインティング情報の入力モードに切り換えた後、手元でボディ22を前後左右に傾斜すると、これに応じてディスプレイ27に表示されたカーソルが移動し所望のメニュー選択等を行なえる。一方キー情報の入力モードに設定した時は、主として親指でキー23を押す事により所望のテキストデータ等をコンピュータに入力できる。情報入力器具21を操作する為に何等作業机等を要しない為、例えば通勤途上の車内で立ったままの姿勢で作業が行なえる。あるいは、ソファに座った安楽な姿勢で作業が行なえる。」(第3頁右欄?第4頁左欄)

「【0021】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、情報入力器具は姿勢制御可能に人体の所望部位に保持又は装着されるボディと、これに内蔵された姿勢検出器とからなり、重力方向に対する傾斜角を検出してボディの姿勢を抽出しポインティング情報としてコンピュータに送出する。従来のマウスの様に作業机等を要しないので使用環境や使用条件に特別な制限がなく自在な取り扱いが可能になるという効果がある。又従来の光ポインタの様に高価な撮像素子を用いる事なく、感圧素子等の比較的安価な姿勢検出器によりポインティング情報を入力できるので価格の点で有利となり、テレビのリモートコントローラ等民生用に適用できるという効果がある。ボディを両腕に保持可能な形態としさらに複数のキーを備える事により、手数を煩わせる事なくポインティング操作とキー操作を自在に行なえ作業効率が改善できるという効果がある。又、人体頭部等に装着する構成として、手の不自由なオペレータや手が塞がっている場合でもポインティング操作が可能になるという効果がある。姿勢検出器として重力に応答する質量体とその重量ベクトルを検知する感圧素子の組み合わせを用いる事により、応答性が良く且つ簡便安価な構造の情報入力器具を構築できるという効果がある。加えて、情報入力器具にコンピュータやディスプレイを内蔵して携帯情報機器を構築でき、使用場所や使用環境等を問わず自在に取り扱う事ができるという効果がある。」(第4頁右欄)

これら引用刊行物1の記載から、引用刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ボディに内蔵された姿勢検出器によりポインティング情報を入力する携帯情報入力器具であって、
ボディの前後・左右の傾斜角を検出するそれぞれ1つの感圧素子からなる姿勢検出器、スイッチ25a、スイッチ25b、複数のキー、及びディスプレイを有し、
スイッチ25aによりキー入力からポインティング情報の入力に切換えて姿勢検出器の出力によりディスプレイに表示されたカーソルを移動してメニュー選択を行い、
スイッチ25bをオンすることにより例えばポインティング情報に応じたカーソルの移動によりドラグ操作を行うことができる、
情報入力器具。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平7-84716号公報」(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パーソナルコンピュータやテレビゲーム機等の入力装置として使用されるデータ入力装置に関する。」(第2頁左欄)

「【0009】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例に使用される振動ジャイロ素子の斜視図を示す。振動ジャイロ素子11は、例えばセラミックジャイロ素子であり、この振動ジャイロ素子11に回転運動を与えることにより、その回転方向に対応する極性と回転運動の速度に比例した振幅の電気信号をその出力端子12に発生する。
【0010】図2は図1に示される矢印aまたはbの方向に角速度を与えることにより、得られる信号波形例を示すグラフである。同図に示されるように、与える角速度の方向a、bにより正あるいは負の極性を有し、角速度の強弱に応じた振幅量が得られる。
【0011】図3は本発明の一実施例において振動ジャイロ素子に与えられる角速度の回転方向を示す座標である。互いに直行するX、Y、Z軸の原点に、互いに直交させて配置した3個の振動ジャイロ素子を含むデバイス本体13が配置される。そして、このデバイス本体13は、XZ平面内でY軸を中心に、YZ平面内でX軸を中心に、XY平面内でZ軸を中心にそれぞれ回転動作を与えられる。
【0012】図4は本発明のデータ入力装置の全体構成を示すブロック図である。デバイス本体13内には、X軸を中心にYZ平面の角速度変位量を検出する振動ジャイロ21、Y軸を中心にXZ平面の角速度変位量を検知する振動ジャイロ22、Z軸を中心にXY平面の角速度変位量を検知する振動ジャイロ23がそれぞれ直交配置されている。それぞれの振動ジャイロ21、22、23からの出力信号は、増幅器24、25、26を通し、A/Dコンバータを内蔵した1チップマイクロコンピュータ27に供給する。1チップマイクロコンピュータ27は、これらの入力信号から図示しない表示装置画面上でのカーソルの移動方向及び速度を示す信号及び従来のマウス本体における左右スイッチのON/OFF信号と同様の信号に変換し、図示しないパーソナルコンピュータ等へ出力する。
【0013】例えば、デバイス本体13を人体の額に装着することを考えた場合、首を左右に振った時の角速度変位量を振動ジャイロ21で検出し、首を前後に振った時の角速度変位量を振動ジャイロ22で検出し、更に首を直立させた状態で回転させた時の角速度変位量を振動ジャイロ23で検出するようにすれば良い。そして、首を左右に振った時にはカーソルをX軸方向に移動させ、首を前後に振った時にはカーソルをY軸方向に移動させ、首を直立させた状態で右回りあるいは左回りに所定角度以上回転させた時に従来のマウス本体における右あるいは左スイッチのON信号を発生するようにすれば良い。」(第3頁左欄?右欄)

「【0014】図5は、本発明の他の実施例を示すデータ入力装置のブロック図である。この実施例ではX軸用セラミックジャイロ素子31とこれに直角となるように配置されたY軸用セラミックジャイロ素子32の2個の振動ジャイロ素子が図示しないデバイス本体内に設けられている。これらのセラミックジャイロ素子31、32の各出力信号は増幅回路33、34で増幅された後、A/Dコンバータを内蔵した1チップマイクロコンピュータ35により、デジタルデータに変換される。このデジタルデータは超音波送受信回路36により超音波信号に変換されてデバイス本体から外側に送信される。この超音波信号はデータを入力すべきパーソナルコンピュータ等(図示せず)に設けられた受信側の超音波送受信回路37により受信されてデジタルデータに変換された後、1チップマイクロコンピュータ38によりデバイス本体の移動方向及び移動速度を示す電気信号に変換され、ケーブル39を通してパーソナルコンピュータ等に入力される。
【0015】この実施例によれば、パーソナルコンピュータやテレビゲーム機等より離れたところから、デバイス本体を空中にもったまま、X軸またはY軸の任意の方向に角速度、即ち手首の回転を与えることで、移動速度と移動方向を決定することができ、外部出力が可能となる。
【0016】なお、この実施例においても、第1の実施例と同様に、セラミックジャイロ素子31、32のそれぞれに直交するように第3のZ軸用セラミックジャイロ素子を配置して、従来のマウス本体における左右スイッチのON信号を発生する機能を持たせても良い。」(第3頁右欄)

「【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、デバイス本体を移動させるための平面空間を必要とせず、空間での回転操作のみによりパーソナルコンピュータ等へのカーソル位置指定等のデータ入力が可能となる。したがって、機械的・物理的な接触部分をなくすことにより耐久性を向上させることができる効果がある。特に、手または指の操作を必要としないため、身体障害者がデバイス本体を頭または額に装着し、首を中心に回転動作を行うことで簡単に操作できる効果がある。更に、耐環境性を向上させる効果もある。」(第4頁左欄)

これら引用刊行物2の記載から、引用刊行物2には以下の技術が記載されているものと認められる。
「デバイス本体内に設けられ、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸(あるいはX軸、Y軸)に配置したデバイス本体の角速度変位量を検出する角速度変位量検出手段(振動ジャイロ素子)を有し、
デバイス本体のX軸、Y軸、Z軸(あるいはX軸、Y軸)を中心とした回転を前記角速度変位量検出手段により検出する、データ入力装置。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開昭63-83830号公報」(以下「引用刊行物3」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「第2図は本実施例における計算機の基本構成を示すもので、計算機本体1とディスプレイ2、キーボード3のほかにパラメータを選択するための操作者が操作する選択操作手段たる操作装置4からなる。」(第2頁左下欄第11?15行)

「このような制御系により、ディスプレイ2の画面には第4図のような画像が表示される。
20はディスプレイ2の表示画面であり、画面20に表示された下画21内にテンプレート画22が嵌め込まれた形で表示され、画面20の中央には指示点23が固定されて表示されている。
第4図においてはテンプレート画22に示されたEND命令が指示点23により指定される状態にあるが、MOVE命令を指定したいときは操作装置4の操作によりテンプレート画22を右下に移動して第5図に示すように指示点23がMOVEの横に並ぶ位置とすることでMOVE命令を指定することができる。」(第2頁右下欄下から第8行?第3頁左上欄第5行)

「以上の実施例ではテンプレート画22が表示画面20より小さい例について述べたが、テンプレート画22は画面20の大きさに拘束されることなく画面20を越える場合でも適用でき、そのような場合の例を第7図に示す。
同図においてテンプレート画22は画面20より大きく一部が画面20に表示されることになる。
画面20および表示された指示点23は固定された状態でテンプレート画22が操作者の操作により適当に移動し、所要の選択肢を指示点23に合致させることによりパラメータを指定することができる。」(第3頁左下欄第3?13行)

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「携帯情報入力器具」は本願補正発明の「携帯型の入力装置」に相当する。
引用発明の「ボディ」は所定の大きさを有することは当然のことであるから、本願補正発明の、所定の大きさの「筐体」に相当する。
また、引用発明の「姿勢検出器」はそれぞれ1つの感圧素子により、筐体(ボディ)の前後・左右の傾斜角を検出しているから、引用発明の「姿勢検出器」は本願補正発明の筐体全体の回転に伴う前記筐体の互いに直交する3軸方向の姿勢の変位を検出する「検出手段」と筐体の変位に伴う姿勢の変位を検出する「検出手段」である点で一致する。
また、引用発明はスイッチ25aによりキー入力からポインティング情報の入力に切換えて検出手段(姿勢検出器)の出力によりディスプレイに表示されたカーソルを移動してメニュー選択を行い、また、スイッチ25bをオンすることによりドラグ操作を行うから、引用発明は、本願補正発明と同様に、検出手段により検出された変位及びユーザ操作に基づいて表示を制御する「表示制御手段」、前記検出手段により検出された変位及びユーザ操作に基づいて表示部における表示が制御されている情報の中から、表示部内の所定の位置にある情報を選択する「選択手段」を有しているということができる。

したがって、両者は
「所定の大きさの筐体に格納され、情報を入力する携帯型の入力装置において、
前記筐体全体の変位に伴う前記筐体の互いに直交する方向の姿勢の変位を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記変位およびユーザ操作に基づいて、表示部の表示を制御する表示制御手段と、
前記検出手段により検出された前記変位およびユーザ操作に基づいて、前記表示部における表示が制御されている情報の中から、表示部内の所定の位置にある情報を選択する選択手段と
を備えることを特徴とする入力装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1
本願補正発明の検出手段は筐体全体の回転に伴う3軸方向の姿勢の変位を検出するのに対して、引用発明の検出手段は筐体全体の傾き伴う2軸方向の姿勢の変位を検出している点。

相違点2
本願補正発明の表示制御手段は、検出手段により検出された前記変位およびユーザ操作に基づいて、表示部全体のスクロール表示を制御するのに対して、引用発明の表示制御手段は、検出手段により検出された前記変位およびユーザ操作に基づいてドラグを行い、あるいはカーソルを移動させている点。

(3)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
相違点1について
引用刊行物2には入力装置の検出手段が入力装置の回転に伴う3軸方向の姿勢の変位を検出することが記載されており、さらに、実願平2-95681号(実開平4-52267号)のマイクロフィルム(以下、「周知刊行物1」という。両面ディスプレイを備えたセンサー内蔵型ICカード(第1頁下から第7?4行)に関し、加速センサー(2)により加速したことを検出すること(第4頁第11?12行)、回転を3軸方向に検出しその方向に従ってディスプレイ画面をスクロールすること(第5頁第12?14行)が記載されており、ディスプレイ画面をスクロールするための入力手段として3軸方向の回転センサを設けることが記載されているということができる。)、原査定において周知刊行物として引用された特開平6-318058号公報(以下、「周知刊行物2」という。第2頁請求項1、図1には、3軸方向にジャイロを設けて画像表示装置の回転を検出して画像表示装置の画像を変化させる事が記載されており、画像表示装置の画像を変化させる入力手段において3軸方向の変位を検出する検出手段を設けることが記載されているということができる。)に記載されているように、入力装置の回転に伴う3軸方向の姿勢の変位を検出する検出手段を有する入力装置は周知である。
そして、引用発明の検出手段に引用刊行物2の技術あるいは周知技術を適用して、検出手段を筐体全体の回転に伴う3軸方向の姿勢の変位を検出するようにして本願補正発明の様に構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

相違点2について
引用刊行物3、上記周知刊行物1(第5頁第12?14行)にも記載されているように、マウス等の検出手段により検出された変位およびユーザ操作に基づいて画面のスクロールを制御することは周知であるから、引用発明の検出手段により検出された変位によりカーソルを移動させる表示制御手段に適用して、検出手段により表示部全体のスクロール表示を制御するように構成することは当業者が適宜になし得ることである。

そして、本願補正発明のように構成したことによる効果も引用発明、引用刊行物2に記載の技術及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用刊行物2に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年12月6日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「所定の大きさの筐体に格納され、情報を入力する携帯型の入力装置において、
前記筐体全体の回転に伴う前記筐体の互いに直交する3軸方向の姿勢の変位を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記変位に基づいて、表示部における表示を制御する表示制御手段と、
前記検出手段により検出された前記変位に基づいて、前記表示部における表示が制御されている情報の中から、所定の情報を選択する選択手段と
を備えることを特徴とする入力装置。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の表示制御手段について、「前記変位に基づいて」とあるのを「前記変位およびユーザ操作に基づいて」と限定し、「表示部における表示を制御する」とあるのを「表示部全体のスクロール表示を制御する」と限定し、選択手段について、「前記変位に基づいて」とあるのを「前記変位およびユーザ操作に基づいて」と限定し、「所定の情報を選択する選択手段」とあるのを「表示部内の所定の位置にある情報を選択する選択手段」と限定する補正を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含みさらに限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明、引用刊行物2に記載の技術及び及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用刊行物2に記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用刊行物2に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-25 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願2001-251134(P2001-251134)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森田 充功石田 信行圓道 浩史  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 角田 慎治
清水 稔
発明の名称 入力装置および方法  
代理人 稲本 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ