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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B24D
管理番号 1188540
審判番号 不服2007-16322  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-11 
確定日 2008-11-27 
事件の表示 特願2002-254798「耐熱性樹脂結合砥石及びその製法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 90159〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年8月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、当審で提出された平成20年9月16日付けの手続補正書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は、次のとおりである。(以下「本願発明」という。)
「3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその酸二無水物85?97モル%と2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその酸二無水物15?3モル%とを含む混合物とp-フェニレンジアミンを主成分とするジアミン化合物との重合、イミド化により得られた、結晶性ポリイミド粒子の表面全体が、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその酸二無水物とp-フェニレンジアミンを主成分とするジアミン化合物との重合、イミド化により得られたポリイミド樹脂から形成されている非結晶性ポリイミド被覆層で覆った二重構造を有するポリイミド樹脂粉末20?50容量%、金属粉末50?70容量%そしてダイヤモンド微粒子10?30容量%とからなる組成物を500?5000kg/cm^(2)の加圧下に450?530℃の温度で加熱焼成してなる、ポリイミド樹脂により結合され、かつ隣接する金属粉末の表面間が焼結して焼結構造体が形成されている耐熱性樹脂結合砥石。」

2 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成20年7月16日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成14年4月9日に頒布された特開2002-103363号公報(以下「引用例1」という。)、及び平成10年7月7日に頒布された特開平10-180636号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の発明、事項が記載されている。
(1)引用例1
ア 段落【0028】?【0029】
「実施例1
温度計、攪拌機、窒素導入管および水分定量器を備えた四ツ口フラスコに、窒素ガスを通しながら、乾燥した2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)と3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)とのモル比a-BPDA/s-BPDA=7/93の割合で、ジアミンとしてp-フェニレンジアミン、重合溶媒としてNMPを使用し、ポリマ-濃度17重量%、温度:195℃、時間:4時間で反応させた。N-メチル-2-ピロリドン溶液中に分散したポリイミド樹脂粒子を濾過によって回収し、更に、これを4倍量の熱イオン水で3回洗浄し、4倍量のIPAで1回洗浄後、200℃で減圧乾燥して、対数粘度(30℃、0.5g/100ml濃硫酸)が1.28で、イミド化率が95%以上のポリイミド樹脂粒子を得た。
得られたポリイミド樹脂粒子は、透過型電子顕微鏡による観察から結晶性ポリイミド粒子の表面の全部を非結晶性のポリイミドからなる被覆層で覆ってなる2層構造を有しており、ガラス転移温度は400℃まで観測されず、平均粒子径は9.3μmであった。」
イ 段落【0039】
「実施例6
実施例1で使用したポリイミド微粒子75重量%に対して200メッシュの人造ダイヤモンド25重量%を乾式ブレンドし、得られたブレンド品をステンレス製の砥石基盤を組み込んだ所定の金型内の空隙部に充填し、98MPaの圧力で一軸プレス成形した。この一軸プレス成形体を500℃であらかじめ焼成した後、実施例1と同様の条件でHIP成形を行って、ステンレス基盤に完全に組み付けられたダイヤモンド微粒子を含むポリイミド成形体を有する砥石を得た。この砥石は外観も良好で、良好な性能を示した。」
以上アないしイの記載事項から、引用例には、「3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸の酸二無水物93モル%と2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸の酸二無水物7モル%とを含む混合物とp-フェニレンジアミンを主成分とするジアミン化合物との重合、イミド化により得られた、結晶性ポリイミド粒子の表面全体が、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸の酸二無水物とp-フェニレンジアミンを主成分とするジアミン化合物との重合、イミド化により得られたポリイミド樹脂から形成されている非結晶性ポリイミド被覆層で覆った2層構造を有するポリイミド樹脂粒子75重量%、ダイヤモンド微粒子25重量%とからなるブレンド品を98MPaの圧力で一軸プレス成形し、500℃の温度で焼成した後、HIP成形を行った、ダイヤモンド微粒子を含むポリイミド成形体を有する砥石。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(2)引用例2
ウ 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、超硬金属やセラミックスなどの研削に使用される超砥粒砥石に関する。」
エ 段落【0015】?【0018】
「このような条件を満たすメタルボンド結合材としては、例えば、Cu、Snを使用することができ、比較的低温の300?500℃での焼成が可能な、Cu(60重量%)・Sn(40重量%)を主成分とするものを好適に用いることができる。また充填材としては、耐熱性樹脂として知られている、成形温度300?500℃の直鎖型ポリイミド樹脂を用いることができる。
この直鎖型ポリイミド樹脂は、他のフェノール樹脂やエポキシ樹脂に比べ、特に耐熱性に優れた性質を有し、比較的高温においても炭化したり燃焼することが少なく、本発明において好適に使用することができる。
これら結合剤、超砥粒、充填材の配合率は、メタルボンド結合材97.5?50体積%、超砥粒2.5?37.5体積%、充填材2.5?50体積%が望ましい。メタルボンド結合材の配合率が97.5体積%を越えると物性的に従来のメタルボンド砥石と大差なく、50体積%未満であると物性的に従来のレジノイドボンド砥石と大差なくなり好ましくない。超砥粒の配合率が37.5体積%を越えるとボンド材の焼成を妨げやすくなり、2.5体積%未満であると研削加工には不適となり好ましくない。また、充填材の配合率が50体積%を越えると物性的に従来のレジノイドボンド砥石と大差なくなり、2.5体積%未満であると物性的に従来のメタルボンド砥石と大差なくなり好ましくない。
このような超砥粒砥石は、従来のメタルボンドの製造方法と同様、原料となるダイヤモンド砥粒あるいはCBN砥粒と金属粉末とを、撹拌機によって一定割合に混合し、この粉末を金型内に充填し、これを電気炉内で300?500℃で加熱するとともに、100?500kg/cm^(2)の圧力を加えることにより製造することができる。」
オ 段落【0020】
「本発明品は、原料としてCu粉、Sn粉、樹脂粉、合成ダイヤ(M10/20μm)を用い、これを撹拌した後、金型に充填し、500℃、500Kg/cm^(2)の条件下にて焼成し製造した。」
カ 段落【0024】?【0025】
「図2(a)は、超砥粒、Cu粉、Sn粉、樹脂粉を撹拌した状態を示し、その配合割合に応じて充分に分散している。これに500Kg/cm^(2)の圧力をかけ温度を上げていくと、図2(b)に示すように、約230℃で一番溶けやすいSnが溶け始めCuと反応を始める。その際、全体に圧力がかけられているため、超砥粒、Cu粉、樹脂粉などの他の粒体が移動して、Snが溶けた隙間が埋められる。このような移動によって、メタルボンドの焼成が進み、また樹脂同士が反応しやすくなる。
さらに温度が500℃に近づくと、図2(c)に示すように、CuとSnが合金化をはじめ、また樹脂同士の反応によって原料粉の移動が起こり、これによって同時にメタルボンドの反応も進む。これの繰り返しによって、図1(a)に示したような、メタルボンド内に合成樹脂からなる充填材が分散した状態の超砥粒砥石を得ることができる。」
キ 段落【0029】
「図5は、Cu(60重量%)・Sn(40重量%)からなるメタルボンド中に、直鎖型ポリイミド樹脂粉20体積%、#170の合成ダイヤモンド砥粒を25体積%添加した本発明品、・・・」
ク 上記摘記事項キにおいて、直鎖型ポリイミド樹脂粉が20体積%、#170の合成ダイヤモンド砥粒が25体積%の配合割合であるので、Cu(60重量%)・Sn(40重量%)からなるメタルボンドは55体積%含まれていることが理解できる。
以上ウないしキの記載事項、及びクの認定事項から、引用例2には、「Cu粉、Sn粉からなるメタルボンド結合材55体積%、合成ダイヤからなる超砥粒25体積%、直鎖型ポリイミド樹脂粉からなる充填材20体積%を混合し、500℃、500kg/cm^(2)の条件下で焼成することにより、Snが溶けた隙間が埋められ、メタルボンドの焼成が進み、樹脂同士が反応した超砥粒砥石。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「2層構造」は、本願発明の「二重構造」に相当する。
引用発明1の「ブレンド品」は、明らかに「組成物」である。
引用発明1の「98MPa」の圧力は、換算すると、「約1000kg/cm^(2)」の圧力である。
引用発明1の「ダイヤモンド微粒子を含むポリイミド成形体を有する砥石」は、ポリイミド樹脂を有しているので、「耐熱性樹脂結合砥石」ということができる。
以上の点から、両者は「3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその酸二無水物85?97モル%と2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその酸二無水物15?3モル%とを含む混合物とp-フェニレンジアミンを主成分とするジアミン化合物との重合、イミド化により得られた、結晶性ポリイミド粒子の表面全体が、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその酸二無水物とp-フェニレンジアミンを主成分とするジアミン化合物との重合、イミド化により得られたポリイミド樹脂から形成されている非結晶性ポリイミド被覆層で覆った二重構造を有するポリイミド樹脂粉末、ダイヤモンド微粒子とからなる組成物を500?5000kg/cm^(2)で加圧し、450?530℃の温度で加熱焼成してなる耐熱性樹脂結合砥石。」で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本願発明では、砥石を構成する組成物に金属粉末を加えており、そのため、本願発明では、「ポリイミド樹脂10?30容量%、金属粉末50?70容量%、ダイヤモンド微粒子10?30容量%とからなる組成物とし、当該組成物を500?5000kg/cm^(2)の加圧下に450?530℃の温度で加熱焼成し、ポリイミド樹脂により結合され、かつ隣接する金属粉末の表面間が焼結して焼結構造体が形成されている」ものとしているのに対して、引用発明1では、ポリイミド樹脂75重量%とダイヤモンド微粒子25重量%とからブレンド品を98MPaの圧力で一軸プレス成形し、500℃の温度で焼成した後、HIP成形を行ったものである点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
引用発明2は、Cu粉、Sn粉からなるメタルボンド結合材55体積%、合成ダイヤからなる超砥粒25体積%、直鎖型ポリイミド樹脂粉からなる充填材20体積%を混合し、500℃、500kg/cm^(2)の条件下で焼成することにより、Snが溶けた隙間が埋められ、メタルボンドの焼成が進み、樹脂同士が反応した超砥粒砥石である。すなわち、ポリイミド樹脂粉末を20体積%、金属粉末を55体積%、ダイヤモンド微粒子を25体積%からなる組成物を500kg/cm^(2)の加圧下で500℃の温度で加熱焼成し、隣接する金属粉末の表面間が焼結して焼結構造体が形成され、かつ樹脂同士が反応している砥石である。
一般に、ポリイミド樹脂に、金属粉末と、ダイヤモンド微粒子を加え、加圧下で加熱焼成して砥石とすることは、例えば、特開昭50-144195号公報(第3頁左下欄第11行?右下欄第8行。)、特開昭53-63693号公報(特許請求の範囲、及び第3頁左下欄第10行?第18行。)に記載されているように従来周知の事項である。してみると、引用発明1においても、当該組成物として金属粉末を加え、加圧下で加熱焼成することにより、隣接する金属粉末の表面間が焼結して焼結構造体が形成されている砥石とすることは、引用発明2、及び上記従来周知の事項を勘案することにより、当業者が容易になし得たものとせざるを得ない。そして、組成物中のポリイミド樹脂と金属粉末とダイヤモンド微粒子の配合割合、圧力、焼成温度については、引用発明2の数値がすべて本願発明の数値の範囲内であるものと考えられることから、本願発明と引用発明2との間に組成物におけるポリイミド樹脂、金属粉末、ダイヤモンド微粒子の各成分の配合割合、圧力、焼成温度に関して格別な差異はない。
なお、請求人は、平成20年9月16日付けの意見書において、「そして、拒絶理由通知で指摘されているように、この引用例(当審注:特開平10-180636号公報)の[0015]には、結合材として、Cu、Snが記載され、さらに充填材として、直鎖型ポリイミド樹脂を用いることができる旨の記載があります。すなわち、この記載から明らかなように、このポリイミドは結合材ではなく、単なる充填材です。すなわち、上記のように、メタルボンド砥石では金属成分のみが結合材として作用し、仮に樹脂材料を併用する場合でも、その樹脂材料は充填材に過ぎません。
また、今回の拒絶理由通知で指摘されたように、この引用例には、300?500℃で成形させることの記載はありますが、これは単にメタルボンド砥石の製造条件を示すに過ぎません。すなわち、それらのメタルボンド結合材が、本願発明で規定した特定のコア-シェル構造のポリイミド樹脂粉末との併用して、高温高圧下で焼成した場合に初めて生成する耐熱性樹脂結合砥石を示唆する記載はありません。」(第5頁第34行?第44行。)と主張している。
しかしながら、引用例2の摘記事項カにあるように、引用発明2のポリイミド樹脂は樹脂同士の反応したものであることから、ある程度、ポリイミド樹脂の粉末が結合しているもの、すなわち、本願発明にしたがって言い換えると、程度の差こそあれ、「ポリイミド樹脂により結合され」ているものである。
したがって、請求人の上記意見書による主張は採用することができない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に、引用例2に記載された発明、及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-30 
結審通知日 2008-10-03 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願2002-254798(P2002-254798)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 筑波 茂樹段 吉享  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 鈴木 孝幸
福島 和幸
発明の名称 耐熱性樹脂結合砥石及びその製法  
代理人 柳川 泰男  
代理人 柳川 泰男  

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