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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1188740
審判番号 不服2006-4298  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-09 
確定日 2008-12-05 
事件の表示 特願2003-371868「電子部品自動装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月12日出願公開、特開2004- 48078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年3月16日に出願した特願平7-57390号の一部を平成15年10月31日に新たな特許出願としたものであって、平成17年10月31日付けで拒絶の理由が通知され、平成18年1月10日付けで手続補正がされたものの、同年2月3日付けで拒絶査定がされたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として平成18年3月9日付けで請求されたものであって、平成19年11月27日付けで拒絶理由通知書が送付され、これに対して上記明細書又は図面について、平成20年3月27日付けで補正された同年2月18日付け手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は平成20年2月18日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「取出ノズルで所望の電子部品を所定の順序で部品供給部より取り出しプリント基板に装着する電子部品自動装着装置において、装着順序毎に前記電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、プリント基板に形成されて前記電子部品が装着される凹部或いは他の部分より高い凸部の装着面の高さ位置の情報及び前記電子部品の部品厚の情報を記憶する記憶手段と、取り出しノズルとプリント基板の相対位置を変更させる相対位置変更手段と、前記記憶手段に記憶された前記電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、前記電子部品が装着されるプリント基板の前記凹部或いは前記凸部の装着面の高さ位置の情報及び前記電子部品の部品厚の情報に基づき取出ノズルとプリント基板との水平方向及び高さ方向の相対的位置を変更させ前記部品をプリント基板に装着させるよう制御する制御手段とを設けたことを特徴とする電子部品自動装着装置。」

3.拒絶理由の内容
平成19年11月27日付け拒絶理由通知書で示した拒絶の概要は、次のとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明は、その出願前頒布された下記刊行物1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平5-192824号公報
刊行物2:特開平4-48698号公報
刊行物3:特開平2-62099号公報

4.引用刊行物とその記載事項

刊行物1には、次の事項が記載されている。
(1a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、部品を吸着する吸着ノズルを有する装着ヘッドを部品厚に応じたストロークで昇降させるヘッド昇降装置に関する。」
(1b)「【0009】図2及び図3に於て、(1)はX軸モータ(2)の回動によりX方向に移動するXテーブルであり、(3)はY軸モータ(4)の回動によりXテーブル(1)上でY方向に移動することにより結果的にXY方向に移動するXYテーブルであり、チップ状電子部品(5)(以下、チップ部品あるいは部品という。)が装着されるプリント基板(6)が一対のシュート(161)に図示しない固定手段に固定されて載置される。」
(1c)「【0065】前記RAM(172)には図30に示されるようなNCデータ及び図31に示されるようなパーツデータ等が、格納されている。図30のNCデータにおいて、ステップ番号は基板(6)に部品(5)を装着する順番を示し、ステップ番号毎に「X」で示されるX座標データ、「Y」で示されるY座標データ、「θ」で示されるθ角度データ及び装着されるべき部品種のデータが格納されている。」
(1d)「【0089】部品(5)が吸着位置に供給されると、インデックススピードのデータ「H」の早い速度でインデックスモータ(175)が回動しているため、カム(119)の早い回動によりカムフォロワ(122)を押し、カムレバー(121)及びリンクレバー(123)の揺動を介して支軸(125)を支点に上下揺動レバー(124)が下方に揺動する。すると、引張りバネ(128)の付勢により、ローラ(112)が上下ガイド片(114)に沿って転がりながら、移動体(56)及びレール(110)が下降し、レール(110)と一体の昇降板(55)がガイド(54)に沿って下降する。こうして、昇降ブロック(53)が下降し、既に該ブロック(53)に乗り移っているカムフォロワ(26)(27)を介して取り付け体(25)及びシャフト(24)が下降し装着ヘッド(15)に設けられた図6の右側の如く「最下端位置」まで突出した吸着ノズル(14)が図22の位置より距離「l1-T1+D」だけ下降し、部品(5)を吸着して取り出す。このとき、吸着ノズル(14)が部品(5)に当接して更に下降しようとしてもバネ(41)が縮むことにより衝撃が吸収される。その後、更にカム(119)が回動することにより揺動レバー(124)が図1の反時計方向に回動し、ノズル(14)は吸着した部品(5)の下面レベルがテープ(130)より高くなる元の位置まで上昇する。この位置では突片(57)は円筒カム(29)と同じ高さとなる。」
(1e)「【0099】次に、装着ヘッド(15)がターンテーブル(13)の回動により装着ステーションに達するが、この間欠回動の間にCPU(170)の計算装置は最下端位置の基板・ノズル間距離「l2」、余裕距離「D」及び部品厚「T1」より下降すべきストローク「l2-T1+D」を算出し吸着ステーションの場合と同様にして、ストロークモータ(115)を回動させ移動体(56)の位置を該ストロークに合わせたものとする。こうして吸着ステーションの場合と同様にして装着ヘッド(15)が距離「l2-T1+D」だけ下降して、X軸モータ(2)及びY軸モータ(4)の回動により認識装置(16)の認識結果を補正して移動したXYテーブル(3)の上に載置されたプリント基板(6)の(X1,Y1)の座標位置にθ角度「θ1」で吸着ノズル(14)に吸着された部品(5)を装着する。」
そして、図31には、部品種毎に部品厚が格納されているパーツデータが示されている。

5.当審の判断
(1)引用発明
刊行物1は、(1a)によれば、「部品を吸着する吸着ノズルを有する装着ヘッドを部品厚に応じたストロークで昇降させるヘッド昇降装置」が記載されているところ、該ヘッド昇降装置は、部品を装着するものであるから、部品を装着する装置といえ、さらに、(1b)によれば、部品は「チップ状電子部品」であるといえるから、刊行物1には、「チップ状電子部品を装着する装置」が記載されているといえる。
また、(1c)によれば、「RAM(172)」にはNCデータ及びパーツデータ等が格納され、NCデータには、部品を装着する順番毎に、X座標データ、Y座標データ、θ角度データ及び装着されるべき部品種のデータが格納され、さらに、図31によれば、パーツデータには、部品種毎に部品厚が格納されているといえる。ここで、(1e)の「X軸モータ(2)及びY軸モータ(4)の回動により認識装置(16)の認識結果を補正して移動したXYテーブル(3)の上に載置されたプリント基板(6)の(X1,Y1)の座標位置にθ角度「θ1」で吸着ノズル(14)に吸着された部品(5)を装着する。」との記載によれば、(1c)のX座標データ、Y座標データは、チップ状電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報といえるから、刊行物1には、「装着順序毎にチップ状電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、及びチップ状電子部品の部品厚の情報を格納するRAM」が記載されているといえる。
そして、(1b)の「XY方向に移動するXYテーブル」及び(1d)の「カム(119)」等の吸着ノズルを上下動させる機構は、吸着ノズルとプリント基板の相対位置を変更させる相対位置変更手段であることは明らかであるから、刊行物1には、「吸着ノズルとプリント基板の相対位置を変更させる相対位置変更手段」が記載されているといえる。
さらに、(1e)の「CPU(170)の計算装置」等は、チップ状電子部品をプリント基板に装着させるよう制御する制御手段であることは、明らかであるし、チップ状電子部品をプリント基板に装着させる際、RAMに格納された情報に基づき、吸着ノズルとプリント基板との水平方向及び高さ方向の相対的位置を変更させているといえるから、刊行物1には、「RAMに格納されたチップ状電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、及びチップ状電子部品の部品厚の情報に基づき吸着ノズルとプリント基板との水平方向及び高さ方向の相対的位置を変更させチップ状電子部品をプリント基板に装着させるよう制御する制御手段」が記載されているといえる。
上記記載及び認定事項を、本願発明の記載ぶりに従って整理すると、刊行物1には次の発明が記載されているといえる。
「吸着ノズルで所望のチップ状電子部品を所定の順序で部品供給装置より取り出しプリント基板に装着するチップ状電子部品を装着する装置において、
装着順序毎に前記チップ状電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、及び前記チップ状電子部品の部品厚の情報を格納するRAMと、
吸着ノズルとプリント基板の相対位置を変更させる相対位置変更手段と、
前記RAMに格納された前記チップ状電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、及び前記チップ状電子部品の部品厚の情報に基づき吸着ノズルとプリント基板との水平方向及び高さ方向の相対的位置を変更させ前記チップ状電子部品をプリント基板に装着させるよう制御する制御手段と
を設けたことを特徴とするチップ状電子部品を装着する装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願発明と引用発明との対比
以下に、本願発明と刊行物1発明とを対比する。
引用発明の「吸着ノズル」「チップ状電子部品」「部品供給装置」「チップ状電子部品を装着する装置」「格納する」「RAM」は、それぞれ本願発明の「取出ノズル」「電子部品」「部品供給部」「電子部品自動装着装置」「記憶する」「記憶手段」に相当する。

したがって、両者は、
「取出ノズルで所望の電子部品を所定の順序で部品供給部より取り出しプリント基板に装着する電子部品自動装着装置において、
装着順序毎に前記電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、及び前記電子部品の部品厚の情報を記憶する記憶手段と、
取り出しノズルとプリント基板の相対位置を変更させる相対位置変更手段と、
前記記憶手段に記憶された前記電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、及び前記電子部品の部品厚の情報に基づき取出ノズルとプリント基板との水平方向及び高さ方向の相対的位置を変更させ前記部品をプリント基板に装着させるよう制御する制御手段と
を設けたことを特徴とする電子部品自動装着装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点;本願発明では、記憶手段が、装着順序毎に電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、プリント基板に形成されて電子部品が装着される凹部或いは他の部分より高い凸部の装着面の高さ位置の情報及び電子部品の部品厚の情報を記憶し、制御手段が、前記記憶手段に記憶された情報に基づき取出ノズルとプリント基板との水平方向及び高さ方向の相対的位置を変更させ部品をプリント基板に装着させるよう制御するのに対し、引用発明では、記憶手段が、装着順序毎に電子部品が装着されるプリント基板上の水平位置情報、及び電子部品の部品厚の情報を記憶し、制御手段が、前記記憶手段に記憶された情報に基づき取出ノズルとプリント基板との水平方向及び高さ方向の相対的位置を変更させ部品をプリント基板に装着させるよう制御するものの、前記記憶手段が、装着順序毎に電子部品が装着されるプリント基板に形成されて電子部品が装着される凹部或いは他の部分より高い凸部の装着面の高さ位置の情報を記憶するものか不明である点。

(3)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
本願出願前に日本国内で頒布されたことが明らかな刊行物2には、電子部品取付装置の発明に関して「あらかじめプログラムされた部品の基板取付位置のソリ量ΔLを測定する。・・・上記センサ11により測定した情報を側長ユニット14(「測長ユニット14」の誤記と認める。)でNCデータとして変換しメモリ16に記録する。」(第4頁右下欄第3?10行)、「このマウントに際して、上記基板Kのソリ量測定で測定されたソリ量ΔLとあらかじめプログラムされた取付部品高さとを演算することによって・・・基板表面の所定高さ位置に部品底面が位置するようになす。」(第5頁左上欄第11?17行)と記載されており、電子部品自動装着装置において、電子部品が装着されるプリント基板が、ソリがある基板であるため、電子部品毎に装着面の高さが異なっていても、電子部品を確実に装着するために、記憶手段が、電子部品毎の装着面の高さ位置の情報を記憶することは、周知の事項であるといえる。
また、記憶手段が、装着順序毎に複数のデータを一括して記憶することは、刊行物1の(1c)に記載されるように、慣用されていることである。
一方、プリント基板に形成されている凹部或いは他の部分より高い凸部の装着面に、電子部品を装着することは周知である(例えば、特開平2-278893号公報(特に、第1図及びその関連箇所)、特開平3-101188号公報(特に、第1図及びその関連箇所)、特開平5-29747号公報(特に、図1、図5及びその関連箇所)、参照)。
してみれば、引用発明を用いて、プリント基板に形成されている凹部或いは他の部分より高い凸部の装着面に、電子部品を装着する場合、電子部品毎に装着面の高さが異なることは明らかであるから、電子部品を確実に装着するため、上記の周知慣用技術を適用し、記憶手段が、装着順序毎に電子部品が装着されるプリント基板に形成されて電子部品が装着される凹部或いは他の部分より高い凸部の装着面の高さ位置の情報を記憶する構成とすることは、当業者が容易に想到することができたことといえる。
そして、その効果についても予測できない格別のものとはいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきでものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-02 
結審通知日 2008-10-08 
審決日 2008-10-21 
出願番号 特願2003-371868(P2003-371868)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 一正  
特許庁審判長 長者 義久
特許庁審判官 坂本 薫昭
山本 一正
発明の名称 電子部品自動装着装置  
代理人 相澤 清隆  

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