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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C22C
管理番号 1188742
審判番号 不服2006-16012  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-26 
確定日 2008-12-05 
事件の表示 平成7年特許願第292067号「内燃機関用シリンダライナ」拒絶査定不服審判事件〔平成8年11月26日出願公開、特開平8-311599〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年10月13日の出願(優先日:1994年10月25日)であって、平成18年4月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月26日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願に係る発明は、平成18年7月26日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「球状グラファイト及び以下の解析極限値:
炭素 2.8?3.9重量%
ケイ素 1.5?3.0重量%
マンガン 0.05?1.0重量%
硫黄 0.02重量%以下
マグネシウム 0.025?0.07重量%
銅 0.1?2.0重量%
ホウ素 0.005?0.03重量%及び/又は
リン 0.1?0.4重量%
ニッケル 0.1?2.0重量%
モリブデン 0.1?1.0重量%
クロム 0.05?0.5重量%
チタン 0.01?0.05重量%
窒素 0.002?0.014重量%
錫 0.005?0.1重量%
バナジウム 0.05?0.4重量%
残り鉄
を有するパーライト鋳鉄から製造され、鋳鉄の組織が球状グラファイトの他に、3?8%の面積を占め、網状に局在して規則正しく配分されたセメンタイトおよびステッダイト成分を含んでいることを特徴とする内燃機関用シリンダライナ。」(以下、「本願発明」という。)

3.原査定の理由の概要
原査定の理由の一つの概要は、次のとおりのものである。
本願請求項1及び2に係る発明は、その出願前頒布された下記刊行物1?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平5-214482号公報
刊行物2:特開平6-49584号公報
刊行物3:特開平6-25795号公報
刊行物4:特開平6-207240号公報
刊行物5:特開平3-20439号公報
刊行物6:特開平6-73488号公報

4.引用刊行物とその記載事項
原査定の理由で引用された刊行物1(特開平5-214482号公報)には、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1:特開平5-214482号公報
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】3.2?3.9重量%の炭素、2.1?2.7重量%のケイ素、0.1?0.4重量%のマンガン、0.01以下重量%の硫黄、0.025?0.06重量%のマグネシウム、0.5?1.5重量%の銅、残り鉄の組成から成る基礎合金に、合金成分として、ホウ素0.01?0.03重量%、リン0.2?0.4重量%が添加された球状グラファイトを持つパーライト鋳鉄から成り、鋳鉄の組織が球状グラファイトのほかに明白に制限された網状に一様に分布され3?8%の面積を占めるセメンタイト/ステッダイト部分を有していることを特徴とする内燃機関特に大形デーゼルエンジンのシリンダライナ。
【請求項2】鋳鉄の組織が合金成分として01?03重量%のバナジウムの添加物を含んでいることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のシリンダライナ。」

(1b)「【0007】
【実施例】組織の特殊な特性は添加された合金成分によって得られた。即ち球状グラファイトの形成は公知のようにMgあるいはMg+Ceの添加によって実現した。グラファイト部分を使っての凝固した溶解物におけるセメンタイト/ステッダイトの分離の促進、明白に制限された網状の立体的な配列およびその面積の按分量は、3.2?3.9重量%の炭素、2.1?2.7重量%のケイ素、0.1?0.4重量%のマンガン、0.01以下重量%の硫黄、0.025?0.06重量%のマグネシウム、0.5?1.5重量%の銅、残り鉄の組成から成る基礎合金としての球状グラファイトを持つパーライト鋳鉄に、少量のホウ素および又はリンの添加、必要な場合にはバナジウムの添加によって達成され、詳しくは、ホウ素0.01?0.03重量%、リン0.2?0.4重量%、バナジウム0.1?0.3重量%の添加によって達成される。」

5.当審の判断
(1)引用発明
原査定で引用された刊行物1の上記(1a)には、
「【請求項1】3.2?3.9重量%の炭素、2.1?2.7重量%のケイ素、0.1?0.4重量%のマンガン、0.01以下重量%の硫黄、0.025?0.06重量%のマグネシウム、0.5?1.5重量%の銅、残り鉄の組成から成る基礎合金に、合金成分として、ホウ素0.01?0.03重量%、リン0.2?0.4重量%が添加された球状グラファイトを持つパーライト鋳鉄から成り、鋳鉄の組織が球状グラファイトのほかに明白に制限された網状に一様に分布され3?8%の面積を占めるセメンタイト/ステッダイト部分を有していることを特徴とする内燃機関特に大形デーゼルエンジンのシリンダライナ。
【請求項2】鋳鉄の組織が合金成分として01?03重量%のバナジウムの添加物を含んでいることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のシリンダライナ。」と記載されており、ここで、【請求項2】の「合金成分として01?03重量%のバナジウムの添加物を含んでいる」とは、(1b)の「必要な場合にはバナジウムの添加によって達成され、詳しくは、・・・バナジウム0.1?0.3重量%の添加によって達成される。」という記載によれば、バナジウム0.1?0.3重量%の添加の意味といえる。このことを踏まえて、【請求項2】を、独立形式で記載すると、「3.2?3.9重量%の炭素、2.1?2.7重量%のケイ素、0.1?0.4重量%のマンガン、0.01以下重量%の硫黄、0.025?0.06重量%のマグネシウム、0.5?1.5重量%の銅、残り鉄の組成から成る基礎合金に、合金成分として、ホウ素0.01?0.03重量%、リン0.2?0.4重量%、バナジウム0.1?0.3重量%が添加された球状グラファイトを持つパーライト鋳鉄から成り、鋳鉄の組織が球状グラファイトのほかに明白に制限された網状に一様に分布され3?8%の面積を占めるセメンタイト/ステッダイト部分を有していることを特徴とする内燃機関特に大形デーゼルエンジンのシリンダライナ。」といえる。
以上の記載及び認定事項を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、(1a)に記載の「明白に制限された網状に一様に分布され3?8%の面積を占めるセメンタイト/ステッダイト部分を有している」とは、3?8%の面積を占め、網状に局在して規則正しく配分されたセメンタイトおよびステッダイト成分を含んでいると言い換えることができるから、刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「球状グラファイト及び以下の解析極限値:
炭素 3.2?3.9重量%
ケイ素 2.1?2.7重量%
マンガン 0.1?0.4重量%
硫黄 0.01重量%以下
マグネシウム 0.025?0.06重量%
銅 0.5?1.5重量%
ホウ素 0.01?0.03重量%
リン 0.2?0.4重量%
バナジウム 0.1?0.3重量%
残り鉄
を有するパーライト鋳鉄から製造され、鋳鉄の組織が球状グラファイトの他に、3?8%の面積を占め、網状に局在して規則正しく配分されたセメンタイトおよびステッダイト成分を含んでいる内燃機関用、特に大形デーゼルエンジン用シリンダライナ。」

(2)本願発明と引用発明との対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「球状グラファイト及び以下の解析極限値:
炭素 3.2?3.9重量%
ケイ素 2.1?2.7重量%
マンガン 0.1?0.4重量%
硫黄 0.01重量%以下
マグネシウム 0.025?0.06重量%
銅 0.5?1.5重量%
ホウ素 0.01?0.03重量%
リン 0.2?0.4重量%
バナジウム 0.1?0.3重量%
残り鉄
を有するパーライト鋳鉄から製造され、鋳鉄の組織が球状グラファイトの他に、3?8%の面積を占め、網状に局在して規則正しく配分されたセメンタイトおよびステッダイト成分を含んでいることを特徴とする内燃機関用シリンダライナ。」という点で一致し、次の点で相違しているといえる。

相違点:
鋳鉄が、本願発明は、「ニッケル 0.1?2.0重量%」、「モリブデン 0.1?1.0重量%」、「クロム 0.05?0.5重量%」、「チタン 0.01?0.05重量%」、「窒素 0.002?0.014重量%」及び「錫 0.005?0.1重量%」を含有するのに対して、引用発明は、ニッケル、モリブデン、クロム、チタン、窒素及び錫を含有していない点

(3)相違点についての判断
次に、この相違点について検討する。
耐摩耗性、耐熱性等が求められる部材に用いられる鋳鉄の耐摩耗性、耐熱性等を向上させるために、ニッケル、モリブデン、クロム、チタン、窒素及び錫を本願発明と重複する範囲内で添加することは、刊行物2(ニッケル、クロム)、刊行物3(モリブデン、錫)、刊行物4(モリブデン、クロム)、刊行物5(クロム、チタン、錫)、刊行物6(窒素)等に記載されているように、本出願前当業者に周知の事項といえるから、同じく耐摩耗性、耐熱性等が求められる部材である内燃機関用シリンダライナに関する、引用発明における鋳鉄の合金成分として、ニッケル、モリブデン、クロム、チタン、窒素及び錫を本願発明と重複する範囲内で添加することは、当業者が容易に想到することといえる。
そして、本願発明において、ニッケル、モリブデン、クロム、チタン、窒素及び錫をそれぞれ所定の範囲で添加したことによって奏される「具体的な効果」も、格別顕著なものであるともいえない。

(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明及び本出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえる。

6.結び
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-04 
結審通知日 2008-07-10 
審決日 2008-07-23 
出願番号 特願平7-292067
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 武  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 近野 光知
平塚 義三
発明の名称 内燃機関用シリンダライナ  
代理人 山口 巖  

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