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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1188782
審判番号 不服2007-16819  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-15 
確定日 2008-12-01 
事件の表示 特願2003-167440「自動車エンジン用ピストンリング及びこれに用いる潤滑油組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月 6日出願公開、特開2005- 2888〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成15年6月12日の出願であって、平成19年1月15日付けで拒絶理由が通知され、平成19年3月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成19年5月14日付けで拒絶査定がされ、平成19年6月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1ないし12に係る発明は、平成19年3月16日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】 脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤、脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤、ポリブテニルコハク酸イミド及びポリブテニルコハク酸イミドの誘導体から成る群より選ばれた少なくとも1種の成分を含有する潤滑油の存在下で摺動する摺動部を有する自動車エンジン用ピストンリングにおいて、上記摺動部の摺動面に、25原子%以下の水素原子を含む硬質炭素薄膜を被覆して成ることを特徴とする自動車エンジン用ピストンリング。」

2.引用文献記載の発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である特開2003-14122号公報(平成15年1月15日出願公開、以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次の事項が記載されている。

ア.「【0002】
【従来の技術】近年、内燃機関の軽量化と高出力化に伴い、ピストンリングにも耐摩耗性や耐スカッフ性等のさらなる向上が要求されている。
【0003】こうした中、ピストンリングの外周摺動面や上下面には、従来よりCrめっき皮膜や窒化処理層等が形成され、耐摩耗性の向上や耐スカッフ性の改善が図られている。また、近年においては、PVD(物理的蒸着)法で作製されたCrN(窒化クロム)やTiN(窒化チタン)等の硬質皮膜を採用することにより、上記の要求に対応している。
【0004】上述したCrめっき皮膜、窒化層またはPVD法で作製された硬質皮膜がピストンリングの上下面に形成されている場合においては、特にピストンリングの上下面がAl合金製からなるピストンリング溝の側面を攻撃する傾向があり、その結果、A1凝着現象を起こしてピストンリング溝内の摩耗を増大させるおそれがあった。
【0005】こうした問題に対しては、特開平11-166625号公報および特開平12-120869号公報に開示されているように、硬質炭素皮膜(ダイヤモンドライクカーボン皮膜ともいわれることがある。以下同じ。)をピストンリングの上下面に形成してAl凝着現象を抑制することが検討されている。」

イ.「【0010】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のピストンリングにおいて、前記第2硬質炭素皮膜が、ピストンリングの外周摺動面に更に連続して形成されていることに特徴を有する。また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のピストンリングにおいて、前記第2硬質炭素皮膜が、ピストンリングの外周摺動面および内周面に更に連続して形成されていることに特徴を有する。
【0011】請求項2に記載の発明によれば、耐摩耗性に優れた第2硬質炭素皮膜がピストンリングの外周摺動面に更に連続して形成されているので、シリンダライナの内周面に摺動接触する外周摺動面の耐摩耗性を向上させることができる。また、請求項3に記載の発明によれば、ピストンリングの全ての面に耐摩耗性に優れた第2硬質炭素皮膜が連続して形成されているので、使用中における第2硬質炭素皮膜のクラック及び/又は欠けを発生させる起点が少なく、第2硬質炭素皮膜の耐剥離性を向上させて長期間優れた耐摩耗性をピストンリングの全周で維持することができる。」

ウ.「【0020】本発明のピストンリング10は、図1?図3に示すように、少なくとも上面8および下面9に硬質炭素積層皮膜2が形成されている。そして、本発明の特徴とするところは、その硬質炭素積層皮膜2が、上面8および下面9の表面に形成された少なくともSiを含有する第1硬質炭素皮膜11と、その第1硬質炭素皮膜11下に形成された少なくともWまたはW、Niを含有する第2硬質炭素皮膜12とからなることにある。こうした構成からなる本発明のピストンリングは、第1硬質炭素皮膜11により耐スカッフ性の向上を図ることができ、第2硬質炭素皮膜12により耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0021】本発明のピストンリング10は、ピストンに形成されたピストンリング溝に装着され、ピストンの上下運動(往復運動に同じ。)によってシリンダライナの内周面を摺動接触しながら、さらにピストンリング溝内の側面に叩かれながら、上下運動する摺動部材である。本発明のピストンリング10は、トップリング、セカンドリング、オイルリングの何れかであってもまたはそれらの全てであってもよい。」

エ.「【0073】(摩耗試験)摩耗試験は、アムスラー型摩耗試験機を使用し、試験片のほぼ半分を油に浸漬し、相手材を接触させ、荷重を負荷して行った。試験片としては、アムスラー試験片を用いた。このアムスラー試験片は、実施例1?8および比較例1のピストンリングと同様の処理を施したものを使用した。各試験片を用いて摩耗試験を行い、耐摩耗性の評価を行った。試験条件は、潤滑油:クリセフH8(1号スピンドル油相当品)、油温:80℃、周速:1m/秒(478rpm)、荷重:150kgf、試験時間:7時間の条件下で、ボロン鋳鉄を相手材として行った。このボロン鋳鉄からなる相手材は、所定に形状に研削加工した後、研削砥石の細かさを変えて順次表面研削を行い、最終的に2μmRzとなるように調整した。摩耗量の測定は、粗さ計による段差プロファイルで摩耗量(μm)を測定して評価した。
【0074】耐摩耗性は、比較例1に対応する試験片の摩耗量と実施例1?8に対応する各試験片の摩耗量とをそれらの相対比として比較し、比較例1に対応する試験片の結果に対する摩耗指数として評価した。従って、各試験片の摩耗指数が100より小さいほど摩耗量が少ないことを表す。実施例1?8に対応する各試験片は、比較例1に対応する試験片よりも僅かに摩耗指数が悪いが、比較例1に対応する試験片の結果とほぼ同等であり、大きな問題が発生することはない。結果を表2に示した。
【0075】(スカッフ試験)スカッフ試験は、アムスラー型摩耗試験機を使用し、試験片に潤滑油を付着させ、スカッフ発生まで荷重を負荷させて行った。試験片としては、アムスラー試験片を用いた。このアムスラー試験片は、実施例1?4、6および比較例1のピストンリングと同様の処理を施したものを使用した。各試験片を用いてスカッフ試験を行い、耐スカッフ性の評価を行った。試験条件は、潤滑油:クリセフH8(1号スピンドル油相当品)、周速:1m/秒(478rpm)の条件下で、ボロン鋳鉄を相手材として行った。このボロン鋳鉄も上述の方法により最終的に2μmRzとなるように調整した。
【0076】耐スカッフ性は、比較例1に対応する試験片のスカッフ発生荷重を100とし、実施例1?4、6に対応する各試験片のスカッフ発生荷重を比較例1に対応する試験片の結果に対する耐スカッフ指数として比較した。従って、実施例1?4、6に対応する各試験片の耐スカッフ指数が100より大きいほど、スカッフ発生荷重が大きくなり、比較例1に対応する試験片よりも耐スカッフ性に優れることとなる。外周摺動面に硬質炭素積層皮膜を有する実施例1?4に対応する各試験片の耐スカッフ指数は、220であり、比較例1に対応する試験片よりも著しく耐スカッフ性に優れていた。結果を表2に示した。」

オ.「【0083】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のピストンリングによれば、少なくともSiを含有する耐スカッフ性に優れた第1硬質炭素皮膜と、その第1硬質炭素皮膜下に形成された少なくともWまたはW、Niを含有する耐摩耗性に優れた第2硬質炭素皮膜とからなる硬質炭素積層皮膜が、ピストンリングの上下面に少なくとも形成されているので、第1硬質炭素皮膜により耐スカッフ性の向上を図ることができ、第2硬質炭素皮膜により耐摩耗性の向上を図ることができる。本発明のピストンリングは、作用の異なる2つの硬質炭素皮膜を積層したので、従来の単一層からなる硬質炭素皮膜に比べて、積層する各硬質炭素皮膜の個々の特性を最適なものに調整し易いという利点があり、Al凝着現象の抑制効果に加え、摺動時の初期なじみ性、耐スカッフ性および耐摩耗性をより一層向上させることができる。
【0084】こうした本発明のピストンリングは、今後開発が予想される高出力、高温高負荷のエンジンにも十分に使用することができ、その効果は甚大である。」

(2)引用文献1記載の発明
ここで、上記ア.?オ.の記載及び図面を参酌すると、引用文献1には以下の点が記載されていることが分かる。
内燃機関のピストンリング10は、シリンダライナの内周面と摺動接触する摺動部材であって、そのピストンリング10の外周摺動面6には硬質炭素皮膜2を被覆しており、潤滑油の存在下で摺動する摺動部材を有していることは明らかである。
よって、引用文献1には以下の発明が記載されているといえる(以下、「引用文献1記載の発明」という。)。
「潤滑油の存在下で摺動する摺動部材を有する内燃機関のピストンリング10において、上記摺動部材の外周摺動面6に、硬質炭素積層被膜2を被覆して成る内燃機関のピストンリング。」

(3)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である特開2003-73685号公報(平成15年3月12日出願公開、以下、「引用文献2」という。)には、例えば、次の事項が記載されている。
ア.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、排気ガス浄化触媒のリンなどによる被毒が殆どなく、またDPFへの灰分堆積量も減少させることができ、かつ優れた摩耗防止性及び高温清浄性を有する内燃機関用潤滑油組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ZnDTPや上記のような金属系清浄剤の使用量を低減しても、あるいは全く使用しなくても優れた摩耗防止性及び高温清浄性が得られる潤滑油を求めて研究を重ねた結果、特定のコハク酸イミド及び無灰系摩擦調整剤を特定量配合することで目的の内燃機関用潤滑油組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、潤滑油基油に、(A)ホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比(B/N)が0.15以上のホウ素含有コハク酸イミドを組成物全量基準でホウ素含有量として100質量ppm以上、及び(B)無灰系摩擦調整剤を0.1?2質量%含有してなる内燃機関用潤滑油組成物にある。
【0006】本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、前記(A)成分、(B)成分に加え、さらに(C)分散型及び/または非分散型粘度指数向上剤が組成物全量基準で0.1?10質量%含有してなる。本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、前記(B)成分が炭素数6?30の直鎖状若しくは分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステルであることが好ましい。本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、前記(B)成分が炭素数6?30の直鎖状若しくは分枝状炭化水素基を有する脂肪酸アミドであることが好ましい。」

イ.「【0015】(A)成分におけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nの質量比(B/N比)は0.15以上であり、0.16以上であることが好ましい。B/N比が0.15未満の場合、(B)成分を併用した場合に優れた摩耗防止性能が得られないため好ましくない。また、B/N比の上限は特に制限はないが、安定性を確保するために好ましくは2以下、更に好ましくは1以下、特に好ましくは0.9以下である。本発明においては、B/N比が0.15以上、好ましくは0.16?0.9でポリブテニル基の数平均分子量が1500?2500のビスタイプのホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドを用いることが特に好ましい。
【0016】本発明の内燃機関用潤滑油組成物において、(A)成分は、組成物全量基準でホウ素含有量としてその下限値は100質量ppmであり、好ましくは120質量ppm以上である。一方、その上限値は、特に制限はないが、組成物全量基準でホウ素含有量として2000質量ppm以下であることが好ましく、1000質量ppm以下であることが更に好ましく、400質量ppm以下であることが特に好ましい。(A)成分のホウ素含有量が100質量ppmに満たない場合は充分な高温清浄性を得ることができず、また(B)成分を添加しても良好な摩耗防止性が得られず、一方、(A)成分のホウ素含有量が2000質量ppmを超える場合、組成物の貯蔵安定性が低下しやすくなる。
【0017】本発明の内燃機関用潤滑油組成物における(B)成分の摩擦調整剤の例としては、炭素数6?30、好ましくは、炭素数8?24、特に好ましくは炭素数10?20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、アミン化合物及びこれらの任意混合物を挙げることができる。炭素数6?30の直鎖状若しくは分枝状炭化水素基としては、具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である);等が例示できる。
【0018】上記脂肪酸エステルとしては、上記炭素数6?30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステル等が例示でき、具体的には、グリセリンモノオレートやソルビタンモノオレート等が好ましい例として挙げられる。上記脂肪酸アミドとしては、上記炭素数6?30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとのアミド等が例示でき、具体的にはオレイルアミド等が好ましい例として挙げられる。上記アミン化合物としては、上記炭素数6?30の炭化水素基を有する脂肪族モノアミン、脂肪族ポリアミン、又はこれらの脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物等が例示できる。
【0019】本発明における(B)成分の含有量の下限値は、組成物全量基準で、0.1質量%であり、好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量以上であり、一方その上限値は、2.0質量%であり、好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。(B)成分の含有量が0.1質量%未満である場合は、十分な摩耗防止効果が得られず、また、その含有量が2.0質量%を超える場合は貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生することから、それぞれ望ましくない。」

(4)引用文献2記載の技術的事項
上記2.(3)ア.及びイ.の点から、引用文献2には次の事項が記載されているといえる(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)。
「内燃機関用潤滑油組成物における成分として、脂肪酸エステル系、脂肪族アミン系を含む無灰系摩擦調整剤を用いること及びポリブテニルコハク酸イミドを用いること」という技術的事項。

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「摺動部材」は本願発明における「摺動部」に相当し、同様に引用文献1記載の発明における「外周摺動面6」及び「硬質炭素積層被膜2」は、本願発明における「摺動部の摺動面」及び「硬質炭素薄膜」に各々相当する、そして、引用文献1記載の発明における「内燃機関のピストンリング」は「自動車用ピストンリング」に用いられことは明らかであるから、本願発明と引用文献1記載の発明とは、
「潤滑油の存在下で摺動する摺動部を有する自動車エンジン用ピストンリングにおいて、上記摺動部の摺動面に、硬質炭素薄膜を被覆して成る自動車エンジン用ピストンリング。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
(1)本願発明においては、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤、脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤、ポリブテニルコハク酸イミド及びポリブテニルコハク酸イミドの誘導体から成る群より選ばれた少なくとも1種の成分を含有する潤滑油であるのに対して、引用文献1記載の発明がその点が特定されていない点(以下、「相違点1」という。)

(2)本願発明においては、硬質炭素薄膜に含まれる水素原子の量が25原子%以下であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、その点は特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
相違点1について
引用文献2記載の技術的事項によれば、引用文献2にも内燃機関の潤滑油の無灰系摩擦調整剤として脂肪酸エステル系、脂肪族アミン系を用いること及びポリブテニルコハク酸イミドを用いるが開示されているといえることから、相違点1に係る本願発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

相違点2について
自動車のエンジン等の摺動面に設けた硬質炭素膜の水素含有率を5at%以下、より好ましくは1at%以下に設けることは周知(例えば、特開2001-192864号公報、以下、「周知技術」という。なお、at%は、原子%を表していることは明白である。)であること、及び本願明細書段落【0012】において「水素含有量が原子比で25%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは水素含有量が原子比で0.5%以下」と記載されていること、さらには、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である特開平11-175960号公報における水素含有量を勘案すると、相違点2に係る本願発明のように水素原子の量が25原子%以下とすることは、当業者が適宜なし得るものである。
また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術的事項及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-06 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願2003-167440(P2003-167440)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 荘司 英史
金澤 俊郎
発明の名称 自動車エンジン用ピストンリング及びこれに用いる潤滑油組成物  
代理人 的場 基憲  

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