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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1188830 |
審判番号 | 不服2006-8427 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-27 |
確定日 | 2008-12-04 |
事件の表示 | 平成11年特許願第213215号「回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月16日出願公開、特開2001- 44577〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 出願 :平成11年 7月28日 拒絶理由通知 :平成17年 9月26日付け 意見書提出 :平成17年10月 7日付け 手続補正 :平成17年10月 7日付け 拒絶査定 :平成18年 4月10日付け 審判請求 :平成18年 4月27日 手続補正 :平成18年 4月27日付け 前置報告 :平成18年 6月14日付け 審尋 :平成20年 3月14日付け 回答書提出 :平成20年 3月26日付け [2]平成18年4月27日付け手続補正についての補正却下の決定 【補正却下の決定の結論】 平成18年4月27日付けの手続補正を却下する。 【理由】 1.手続補正の内容 本件手続補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、補正前後の特許請求の範囲は、次のとおりである。 <補正前の特許請求の範囲> 「【請求項1】 窒化アルミニウム基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が形成されてなるものであって、以下の条件を満たしてなることを特徴とする回路基板。 (1)窒化アルミニウム基板の厚みが1?5mmであること (2)金属回路及び金属放熱板の材質が、アルミニウム又はアルミニウム合金であること (3)金属回路及び金属放熱板が、金属板と窒化アルミニウム基板との接合体をエッチングして形成されたものであること (4)金属回路と金属放熱板との沿面距離の差が、いかなる部分においても1mm以下(0を含む)であること (5)金属回路及び金属放熱板の側面において、頂角が90度未満の鋭角を有するものであって、しかも高さが30μmをこえる凸部が全くないこと 【請求項2】 窒化アルミニウム基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が形成されてなるものであって、金属回路及び金属放熱板の材質が、アルミニウム又はアルミニウム合金であり、金属回路及び金属放熱板が、金属板と窒化アルミニウム基板との接合体をエッチングして形成されたものであり、しかも金属回路と金属放熱板との間における放電電荷が10pCをこえたときの部分放電開始電圧が6kV以上であることを特徴とする請求項1記載の回路基板。」 <補正後の特許請求の範囲> 「【請求項1】窒化アルミニウム基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が形成されてなるものであって、以下の条件を満たしてなることを特徴とする耐ヒートサイクル性及び部分放電特性の両方に優れた回路基板の製造方法。 (1)窒化アルミニウム基板の厚みが1?5mmであること (2)金属回路及び金属放熱板の材質が、アルミニウム又はアルミニウム合金であること (3)金属回路及び金属放熱板が、金属板と窒化アルミニウム基板との接合体をエッチングして形成されたものであること (4)金属回路と金属放熱板との沿面距離の差が、いかなる部分においても1mm以下(0を含む)であること (5)金属回路及び金属放熱板の側面において、頂角が90度未満の鋭角を有するものであって、しかも高さが30μmをこえる凸部が全くないこと (部分放電特性)部分放電開始電圧の測定は、JEC-0401に準じ、金属回路面と金属放熱面に電極を取り付けて1kV/分の昇圧速度で電圧を印可し、1kV毎に放電電荷量を測定し、それが10pCをこえたときの電圧を読みとることによって行う。金属回路と金属放熱板との間における放電電荷が10pCをこえたときの部分放電開始電圧が6kV以上であるとき、部分放電特性に優れるとする。 (耐ヒートサイクル性)回路基板の中央部に、13mmのSiチップを半田付けした後ヒートサイクル試験を行う。ヒートサイクル試験は、-40℃×30分→室温×10分→125℃×30分→室温×10分を1サイクルとして3000サイクル実施する。ヒートサイクル試験後、半田クラックやパターンの剥離等の外観チェックした結果異常が認められないとき、耐ヒートサイクル性に優れるとする。」 2.補正の適否についての判断 本件手続補正は、補正前の請求項2を削除し、補正前の請求項1に記載した発明特定事項の「回路基板」について、補正後の請求項1において、「耐ヒートサイクル性及び部分放電特性の両方に優れた」ものであることを限定するとともに、「耐ヒートサイクル性」と「部分放電特性」の具体的内容を限定し、さらに、発明のカテゴリーを、補正前の請求項1の「回路基板」から補正後の請求項1の「回路基板の製造方法」に変更するものである。 本件手続補正のうち、発明のカテゴリーを上述のように変更する補正事項は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除、同第2号に規定された特許請求の範囲の限定的減縮、同第3号に規定された誤記の訂正、同第4号に規定された明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当するとはいえない。 したがって、上記補正事項を含む本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [3]本願発明について 1.本願発明 平成18年4月27日付け手続補正は上記[2]のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成17年10月7日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は、次のとおりである。 「【請求項1】 窒化アルミニウム基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が形成されてなるものであって、以下の条件を満たしてなることを特徴とする回路基板。 (1)窒化アルミニウム基板の厚みが1?5mmであること (2)金属回路及び金属放熱板の材質が、アルミニウム又はアルミニウム合金であること (3)金属回路及び金属放熱板が、金属板と窒化アルミニウム基板との接合体をエッチングして形成されたものであること (4)金属回路と金属放熱板との沿面距離の差が、いかなる部分においても1mm以下(0を含む)であること (5)金属回路及び金属放熱板の側面において、頂角が90度未満の鋭角を有するものであって、しかも高さが30μmをこえる凸部が全くないこと」 2.引用刊行物とその主な記載事項 原査定の拒絶理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-200219号公報(以下、「刊行物1」という。)及び国際公開第98/54761号パンフレット(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)刊行物1:特開平10-200219号公報 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】セラミックス基板の片面に金属回路が、その反対面に金属放熱板が接合層を介して形成されてなる回路基板において、金属回路板の厚さと金属放熱板の厚さの比が1以上で5以下であって、更にセラミック基板の外周縁と金属回路の外周縁とのマージン幅、及び放熱板側のマージン幅が0.3mm以上、3mm以下であって、両マージン幅の差の絶対値が0.5mmより大きいことを特徴とする回路基板。 【請求項2】・・・ 【請求項3】セラミックス基板に窒化アルミニウム焼結体或いは窒化珪素焼結体基板を用いたことを特徴とする請求項1または2記載の回路基板。」 (1b)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、・・・回路基板の放熱性、絶縁耐圧を損なうことなく、クラック発生を低減させ、回路と放熱板の厚さが異なる場合であっても信頼性の高いパワーモジュール用回路基板を提供することを目的とする。」 (1c)「【0014】セラミックス基板に形成される金属回路と金属放熱板の材質は、銅、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の純金属もしくは合金を用いる事が出来る。」 (1d)「【0020】 【実施例】厚み0.635mm或いは厚み1.0mmの60×50mmの窒化アルミニウム焼結体の両面にAg-Cu系の活性金属含有ろう材ペーストをスクリーン印刷法により塗布し乾燥した後、Cu板(厚み:金属回路用Cu板0.3mm或いは0.36mm或いは0.6mm、金属放熱用Cu板0.15mm或いは0.3mm或いは0.375mm)を接触配置し、真空中830℃で30分間熱処理を行い窒化アルミニウム基板とCu板の接合体を得た。 【0021】この接合体のCu板上に紫外線硬化型エッチングレジストをスクリーン印刷法により回路パターンに印刷し硬化させた後、塩化第2鉄溶液でパターン外の不要なCuを除去した。次いで、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素を含む水溶液に入れ、Cu回路パターン間の不要ろう材を除去した後、レジストを除去した。更に、無電解NiメッキによりCu回路に選択的にNi保護膜を形成させた。 (1e)「【0022】以上のようにして、表1の実施例1?5、比較例1?5に示す窒化アルミニウム回路基板を完成させた。実施例6及び比較例6の試料については、セラミックス基板としてアルミナ焼結体を用いた以外は上記に示す方法で試料を得た。また、実施例7の試料については、セラミックス基板として窒化珪素焼結体を用いた以外は上記に示す方法で試料を得た。 【0023】これらの回路基板についてヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験は-40℃で30分間保持し、+125℃で30分間保持する加熱冷却操作を1サイクルとし、JIS-C-0025に示されている温度変化試験方法に準じて実施した。50回、100回、200回、300回のヒートサイクル後のクラック発生の有無を評価した結果を表1に示す。クラックは発生率で示した。クラックの評価は、ヒートサイクル終了後、回路間のクラックの有無を蛍光探傷検査により観察することで行った。 【0024】 【表1】 【0025】表1に示す結果から明らかなように、実施例1?5に示す回路基板は、ヒートサイクル試験100回後も窒化アルミニウム焼結体基板にクラックは発生しておらず、高い信頼性を有し、実用的である。」 (1f)表1には、実施例5について、セラミック基板の外周縁と金属回路の外周縁とのマージン幅(金属回路側マージン幅)が0.5mmであり、放熱板側マージン幅が1.5mmであり、両マージン幅の差が1.0mmであり、基板の厚さが1.000mmであり、回路の厚さが0.600mmであり、放熱板の厚さが0.150mmであり、回路の厚さと放熱板の厚さの比が4.0であることが記載されている。 (2)刊行物2:国際公開第98/54761号パンフレット (2a)「導体層の側面の断面形状は、外側または内側に凸状をなす曲線状であってもよい。また放電現象をさけるためには、側面および主面ともできる限り平滑であるのが望ましい。特にRmaxで20μmであるのが望ましい。また同じ理由で導体層の稜やコーナーにはバリ等の突起が無いのが望ましく、稜やコーナー部を小さい曲面状に形成するのが望ましい。」(30頁21行?31頁5行) 3.刊行物1記載の発明 上記摘示(1a)、(1d)、(1e)の記載を整理すると、刊行物1には、次の回路基板についての発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。 「窒化アルミニウム基板の片面に金属回路が、その反対面に金属放熱板が接合層を介して形成されてなり、金属回路板の厚さと金属放熱板の厚さの比が4.0であり、窒化アルミニウム基板の外周縁と金属回路の外周縁とのマージン幅(回路側マージン幅)が0.5mm、放熱板側のマージン幅が1.5mm、両マージン幅の差の絶対値が1.0mmの回路基板であって、厚み1.0mmの60×50mmの窒化アルミニウム焼結体の両面にAg-Cu系の活性金属含有ろう材ペーストをスクリーン印刷法により塗布し乾燥した後、金属回路用Cu板、金属放熱用Cu板を接触配置し、真空中830℃で30分間熱処理を行い窒化アルミニウム基板とCu板の接合体を得、この接合体のCu板上に紫外線硬化型エッチングレジストをスクリーン印刷法により回路パターンに印刷し硬化させた後、塩化第2鉄溶液でパターン外の不要なCuを除去し、次いで、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素を含む水溶液に入れ、Cu回路パターン間の不要ろう材を除去した後、レジストを除去し、更に、無電解NiメッキによりCu回路に選択的にNi保護膜を形成させて製造された回路基板。」 4.対比・判断 本願発明1と刊行物1発明を対比すると、 (ア)刊行物1発明における窒化アルミニウム基板(窒化アルミニウム焼結体)の厚みは1mmであるから、両者は、窒化アルミニウム基板の厚みが「1mm」である点で一致しているといえる。 (イ)刊行物1発明における「接合体のCu板上に紫外線硬化型エッチングレジストをスクリーン印刷法により回路パターンに印刷し硬化させた後、塩化第2鉄溶液でパターン外の不要なCuを除去」した旨からみて、刊行物1発明における金属回路及び金属放熱板は、「金属板と窒化アルミニウム基板との接合体をエッチングして形成された」といえる。 (ウ)本願明細書の「【0022】・・・本発明における沿面距離とは、窒化アルミニウム基板の端部と、最も外側にある金属回路又は金属放熱板の端部との距離をいう。」との記載、及び、刊行物1の図1、2や「窒化アルミニウム基板の外周縁と金属回路の外周縁とのマージン幅」等の記載から、刊行物1発明における「マージン幅」も同様の距離を指すことは明らかであり、刊行物1発明における「マージン幅」は、本願発明1における「沿面距離」に相当するといえるから、両者は、「金属回路と金属放熱板との沿面距離の差が、いかなる部分においても1mmである」点で一致しているといえる。 以上の(ア)?(ウ)の事項を考慮すると、両者は、 「窒化アルミニウム基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が形成されてなるものであって、以下の条件を満たしてなることを特徴とする回路基板。 (1)窒化アルミニウム基板の厚みが1mmであること (3)金属回路及び金属放熱板が、金属板と窒化アルミニウム基板との接合体をエッチングして形成されたものであること (4)金属回路と金属放熱板との沿面距離の差が、いかなる部分においても1mm以下(0を含む)であること」 である点で一致するが、次の点で相違する。 <相違点1> 金属回路及び金属放熱板の材質が、本願発明1では、「アルミニウム又はアルミニウム合金」であるのに対し、刊行物1発明では、「Cu」である点 <相違点2> 本願発明1では、「金属回路及び金属放熱板の側面において、頂角が90度未満の鋭角を有するものであって、しかも高さが30μmをこえる凸部が全くない」のに対し、刊行物1発明では、そのような事項が規定されていない点 以下、上記相違点1,2について検討する。 <相違点1について> 刊行物1の上記摘記(1c)には、金属回路と金属放熱板の材質として、銅と同様にアルミニウムやその合金を用いることが記載されているし、また、下記周知例1?3の記載にみられるように、窒化アルミニウム基板面の金属回路や金属放熱板の材質をアルミニウム乃至アルミニウム合金とした回路基板が良好な耐ヒートサイクル性を有することは、本願出願前において周知の事項でもあるから、刊行物1発明において、金属回路及び金属放熱板の材質を、Cu(銅)に代えてアルミニウムやアルミニウム合金とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 周知例1:特開平11-97807号公報 (周1a)「【0004】・・・従来、汎用されている回路基板は、アルミナ基板又は窒化アルミニウム基板に銅回路を形成させてなる構造のものであるが、更なる耐ヒートサイクル性に対する信頼性を向上させるため、最近では窒化アルミニウム基板にアルミニウム回路を形成させたものが開発されている。・・・」 周知例2:特開平3-125463号公報 (周2a)「特許請求の範囲 (1)絶縁板材が、平均層厚:0.2?20μmの表面酸化層を有する窒化アルミニウム系焼結板材の少なくとも両面に平均層厚:0.01?10μmの酸化けい素系被覆層を形成したものからなり、 かつ、上記絶縁板材の一方面にはAlまたはAl合金からなるヒートシンク板材が、また上記絶縁板材の他方面には同じくAlまたはAl合金からなる回路形成用薄板材が、それぞれAl-Si系合金またはAl-Ge系合金からなるろう材にて積層接合され、 さらに、上記回路形成用薄板材の表面の所定部分または全面にCuまたはNiメッキ層を形成した構造を有することを特徴とする半導体装置用軽量基板。」(1頁左下欄4行?右下欄1行) (周2b)「本発明基板1?22および従来基板について、一般に半導体装置用基板の評価試験として採用されている試験、すなわち温度:125℃に加熱後、-55℃に冷却を1サイクルとする繰り返し加熱試験を行ない、絶縁板材に割れが発生するに至るまでのサイクル数を20サイクル毎に観察して測定し、・・・これらの結果を第2表に示した。」(7頁左上5?16行) (周2c)第2表には、耐ヒートサイクル性の指標である割れ発生までのサイクル数について、実施例の基板は、「200サイクル後も割れなし」であった旨が記載されている。 周知例3:特開平4-12554号公報 (周3a)「特許請求の範囲 (1)平均層厚:0.2?20μmの表面酸化層を有する窒化アルミニウム系焼結体からなる絶縁板材、 上記絶縁板材の一方面に、Al-Si系合金またはAl-Ge系合金からなるろう材にて積層接合されたAlまたはAl合金からなるヒートシンク板材、 上記絶縁板材の他方面に、同じくAl-Si系合金またはAl-Ge系合金からなるろう材にて積層接合されたAlまたはAl合金からなる回路形成用薄板材、 さらに、上記回路形成用薄板材の表面の所定部分または全面に形成されたCuまたはNiメッキ層、 で構成されたことを特徴とする半導体装置用軽量基板。」(1頁左下欄4行?右下欄2行) (周3b)「本発明基板1?22および従来基板について、一般に半導体装置用基板の評価試験として採用されている試験、すなわち温度=125℃に加熱後、-55℃に冷却を1サイクルとする繰り返し加熱試験を行ない、絶縁板材に割れが発生するに至るまでのサイクル数を20サイクル毎に観察して測定し、・・・これらの結果を第1表に示した。」(5頁右上欄11行?左下欄2行) (周3c)第1表には、耐ヒートサイクル性の指標である割れ発生までのサイクル数について、実施例の基板は、「200サイクル後も割れなし」であった旨が記載されている。 <相違点2について> 回路基板において、放電現象をさけるために、導体層の側面及び主面ともできる限り平滑であるのが望ましいこと、特にRmaxで20μmであるのが望ましいこと、導体層の稜、コーナー等にバリ等の突起が無いのが望ましいことは、刊行物2の摘記(2a)の記載にみられるように、本願出願前において周知の事項であるし、また、鋭角的な突起が無い方が部分放電特性の点で望ましいことも、下記周知例4の記載にみられるように、本願出願前において周知の事項である。 周知例4:特開平6-204291号公報 (周4a)「【0007】・・・部分放電現象について検討を加えた。まず、従来の回路基板製造方法のエッチングによりパターン形成した回路基板での部分放電現象を測定した。その結果、例えば、1.0mmの窒化アルミニウム基板において、約5kVの低い電圧で部分放電が開始することが実験的に明らかになった。この原因を明らかにするために、電極パターン端部の断面形状を観察したところ、図20の断面図に示したように、電極パターン2端部のセラミック基板1に接する角部2aが極めて鋭角的な形状をしていた。窒化アルミニウム基板が1.0mmで、電極パターンの銅板の厚さが0.3mmの場合は、鋭角部2aの曲率半径は0.01mmと極めて小さかった。・・・鋭角部2aでの電解を数値計算により解析したところ、極めて高い電解となっていることが判明した。例えば、電極2に5kVの電圧が印可されているとき、角部2aでの最大電界は80kV/mmにも達していることが分かった。そして、この鋭角部2aでの電界強度が部分放電開始電圧を低くしていることが明らかとなった。すなわち、従来の回路基板では電極パターンのパターン端部での電界集中により部分放電開始電圧が低くなっていた。」 してみれば、刊行物1発明の回路基板において、放電特性や部分放電特性を改善することを課題とし、導体層である金属回路及び金属放熱板の側面をRmaxで20μm程度のできる限り平滑な面とし、鋭角的な突起をなくすようにして、前記相違点2で示される本願発明1の発明特定事項を構成することは、上記周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。 そして、前示の周知事項を勘案すると、本願発明1は、刊行物1発明に比べて格別に顕著な効果を奏するとも認められない。 したがって、本願発明1は、刊行物1発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-03 |
結審通知日 | 2008-10-07 |
審決日 | 2008-10-20 |
出願番号 | 特願平11-213215 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 千葉 成就 |
特許庁審判長 |
綿谷 晶廣 |
特許庁審判官 |
粟野 正明 川真田 秀男 |
発明の名称 | 回路基板 |