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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F |
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管理番号 | 1188843 |
審判番号 | 不服2006-19439 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-01 |
確定日 | 2008-12-04 |
事件の表示 | 特願2001-545631「洗濯機のための洗濯容器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月21日国際公開、WO01/44556、平成15年 5月20日国内公表、特表2003-516836〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願の発明 本願は、2000年12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年12月15日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成18年6月5日付けで拒絶査定がなされ(同年6月8日発送)、同年9月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年11月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「射出成形されたプラスチックから成る後壁(3)と少なくともほぼ水平に支承された洗濯ドラム(2)とを備えた洗濯機のための洗濯容器(1)であって、前記洗濯ドラムが、前記後壁(3)に支承されていてかつ駆動装置(13)によって駆動される軸(5)と相対回動不能に結合されている形式のものにおいて、 駆動装置(13)の固定子支持部(17,31,40,47)が、洗濯容器(2)の後壁(3)に配置されていて、かつプラスチックの射出成形によって前記後壁と回転不能に結合されていることを特徴とする、洗濯機のための洗濯容器。」 2.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件の優先日前(平成11年2月2日)に頒布された刊行物である特開平11-28298号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次のような記載がある。 a.「【請求項1】 外箱の内部に弾性支持して配設された水槽と、この水槽の内部に横軸回転可能に配設された回転槽と、この回転槽を取付けた回転槽軸とを具備するものにおいて、前記回転槽の回転駆動源としてアウターロータ形モータを具え、このアウターロータ形モータのステータを前記水槽側に取付け、ロータを前記回転槽軸の反回転槽側端部に取付けて成ることを特徴とするドラム式洗濯機。」(特許請求の範囲請求項1) b.「そして、水槽26の内部には回転槽33を配設している。この回転槽33は水槽26より径小なドラム状を成すもので、洗濯槽として機能すると共に、脱水槽として機能し、更に乾燥用のドラムとしても機能するものであり、水槽26の内部には水槽26と同じくその軸方向が前後となる横軸状にて、横軸回転可能に配設している。又、この回転槽33の胴部には、通水用であり且つ通気用でもある孔34をほゞ全域に形成している。」(段落【0013】) c.「さて、上述のように軸受ハウジング41を取付け、回転槽軸43を支承した水槽26側から回転槽軸43にかけては、モータ52を取付けている。このモータ52は、ロータ53がステータ54の外側に位置して回転するアウターロータ形のブラシレスモータであり、そのステータ54は、図3にも示すように、積層鉄心55と、これにボビン56を介して装設した巻線57とを有して成るものである。このステータ54、中でも積層鉄心55を複数個(一個のみ図示)のボルト58によって軸受ハウジング41の前記取付部41aに取付けている。」(段落【0019】) d.「図6は本発明の第3実施例を示すもので、これも、以下、第1実施例と相違する点のみを述べる。このものの場合、水槽26の例えばプラスチック製の後壁81に多数の補強リブ82と共に複数(1個のみ図示)のボス83を形成して、そのボス83に軸受ハウジング41をボルト42により取付けることによって、軸受ハウジング41を水槽26の後壁81に直に取付けている。このようにすることによって、水槽26に補強板35を取付けることを不要ならしめ得、組立ての一層の容易化を達成することができる。」(段落【0035】) e.また、図6には、軸受ハウジング41には、その一部にステータ54がボルト58により固定支持されること、すなわち、ステータ54の支持部を有することが記載されている。 そして、回転槽33が回転槽軸43と相対回動不能に結合されていること、及び、軸受ハウジング41が後壁81と、回転不能に結合されていることは明らかである。 そうすると、上記摘示事項及び図面の記載からみて、引用文献1には、次の発明が記載されている。 「プラスチック製の後壁81と横軸回転可能に配設した回転槽33とを備えたドラム式洗濯機のための水槽26であって、前記回転槽33が、前記後壁81に支承されていてかつ回転駆動源のモータ52によって駆動される回転槽軸43と相対回動不能に結合されている形式のものにおいて、 回転駆動源のモータ52のステータ54の支持部を有する軸受けハウジング41が、水槽26のプラスチック製の後壁81にボルト42により取付けられていて、かつ前記後壁と回転不能に結合されていることを特徴とする、ドラム式洗濯機のための水槽。」 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-103596号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次のような記載がある。 f.「図を参照すると、洗濯機1は外箱2と、洗濯される衣類に水を含ませ用いる内部容器3が備えられている。内部容器3は、望ましくは、強化リブ(rib)4および5をもつ、プラスチックの射出成形のものがよい。リブ4aおよび5は、軸承筒(bearing tube)6を支持するものであり、軸受筒の中には、好ましくは、内部容器3が射出成形されるとき、その筒の中で成形される金属例えばアルミ合金押出しライナ(liner)8がある。ライナ8は、モータ取付ねじ65が延びている上から見て4つの翼をもった形をしている。」(段落【0006】) そして、内部容器3と金属ライナー8が回転不能に結合することはその機能からみて明らかである。 そうすると、上記摘示事項及び図面の記載からみて、引用文献2には、次の発明が記載されている。 「洗濯機1の内部容器3がプラスチックの射出成形されるとき、金属ライナ8を一体化し回転不能に結合すること。」 (3)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の優先日前(1999年7月21日)に頒布された刊行物である英国特許出願公開第2333300号明細書(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次のような記載がある。 g.「Referring to Figures 3 and 4, a plastic tub 10 for a domestic clothes washing machine according to the invention comprises, besides a font disc (not shown) provided with a central opening for the introduction and unloading of the laundry, a cylindrical peripheral casing portion 11 and a rear disc 12 which are produced in one piece by means of injection moulding. 」(3頁22?26行) h.「As is well known, the tub 10 serves to enclose a rotary drum (not shown) which is actuated by an electric motor by means of a shaft (also not shown), the axis X-X of which is substantially horizontal. 」(3頁30?32行) i.「The seats 21 and 22 for the bearings for supporting the shaft are part of a metal hub 20 which is disposed in the interior of the end disc 12 and which involves the same axis X-X. There are many different ways of fixing the hub 20 to the end disc 12 - see for example EP-A-0043429,EP-A-0219115, US-A-5329791 and EP-A-0736117 which belong to the present applicants. In the embodiment shown herein the hub 20 comprises a bell-shaped projection 23 terminating with an annular rim 24 which extends in a plane substantially perpendicular to the axis X-X and remains incorporated in the mass of plastics material of the end disc 12 by means of a process of being injection-moulded therearound, as shown in Figure 4.」(4頁1?9行) なお、以下の訳文は合議体による仮訳である。 g′「図3および4を参照すると、この発明の家庭用洗濯機のプラスチック槽10は、前側のディスク(図示せず)のそばに洗濯物を入れたり出したりする中央の開口を備える円筒状の周囲ケース部分11と後部ディスク12が射出成形により一体的に形成されている。」 h′「よく知られているように、槽10は本質的に水平の軸線X-X(図示せず)の軸で電動機により駆動される回転式のドラム(図示せず)を囲む役目をする。」 i′「軸を支承するためのベアリング用の座21および22は、端末ディスク12の内部に配置され、同じ軸線X-Xを含んでいる金属ハブ20の一部である。端末ディスク12にハブ20を固定する様々な方法がある。例えば、本件の出願人が所有しているEP-A-0043429、EP-A-0219115、US-A-5329791、EP-A-0736117を参照。 ここに示された実施態様では、図4に示されるように、ハブ20は、軸線X-Xに本質的に垂直な平面で伸びて、その周囲に射出成形される過程による端末ディスク12のプラスチック材料の中に包含される、環状の縁24で終了する鐘形の突出部23を形成している。」 そして、プラスチック槽10と金属ハブ20が回転不能に結合することはその機能からみて明らかである。 そうすると、上記摘示事項及び図面の記載からみて、引用文献3には、次の発明が記載されている。 「家庭用洗濯機の回転式ドラムを囲むプラスチック槽10が射出成形されるとき、槽の後部ディスク12のプラスチックと金属ハブ20が一体化され回転不能に結合すること。」 3. 対比判断 本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明における「プラスチック製の後壁81」は本願発明の「プラスチックから成る後壁」に相当し、以下同様に、「横軸回転可能に配設した回転槽33」は「少なくともほぼ水平に支承された洗濯ドラム」に、「ドラム式洗濯機」は「洗濯機」に、「水槽26」は「洗濯容器」に、「回転駆動源のモータ52」は「駆動装置」に、「回転槽軸43」は「軸」に、それぞれ相当している。 また、引用文献1に記載された発明の「ステータ54の支持部を有する軸受けハウジング41」は軸受けハウジングであるが、ステータ54の支持部を有するものであり、一方本願発明の「固定子支持部」も実施例に固定子支持部の一部を軸受けスリーブとしているものが記載されていることから、共に軸受け部材と駆動装置の固定子支持部材を共通の部材から構成しているので、引用文献1に記載された発明の「ステータ54の支持部を有する軸受けハウジング41」は本願発明の「固定子支持部」に相当する。 したがって、両発明は、 「プラスチックから成る後壁と少なくともほぼ水平に支承された洗濯ドラムとを備えた洗濯機のための洗濯容器であって、前記洗濯ドラムが、前記後壁に支承されていてかつ駆動装置によって駆動される軸と相対回動不能に結合されている形式のものにおいて、 駆動装置の固定子支持部が、洗濯容器の後壁に配置されていて、かつ前記後壁と回転不能に結合されていることを特徴とする、洗濯機のための洗濯容器。」 の発明である点で一致し、次の点で両発明は、相違するものと認められる。 〔相違点〕 本願発明は、プラスチックから成る後壁が射出成形されたものであり、固定子支持部がプラスチックの射出成形によって、後壁と回転不能に結合されているのに対して、引用文献1に記載された発明は、プラスチックから成る後壁が射出成形されたものかどうかは不明であり、固定子支持部がボルトによって、後壁と回転不能に結合されている点。 以下、上記相違点について検討する。 本願発明と引用文献2に記載された発明とを対比すると、引用文献2に記載された発明の「内部容器3」は本願発明の「洗濯容器」に相当する。 また、本願発明と引用文献3に記載された発明とを対比すると、引用文献3に記載された発明の「プラスチック槽10」は本願発明の「洗濯容器」に相当する。 してみると、引用文献2及び引用文献3には「洗濯機の洗濯容器がプラスチックで射出成形されるとき、金属ライナや金属ハブ等の金属からなる部材と一体化され回転不能に結合する」発明が記載されているといえる。 したがって、引用文献1に記載されている発明において、洗濯容器の後壁と、軸受スリーブであり、かつ、駆動装置の固定子支持部である部材との結合に際して、その結合手段として、ボルト結合に代えて、引用文献2、3に記載されているような射出成形による一体化手段を採用し、本願発明のように、プラスチックから成る後壁が射出成形されたものとし、固定子支持部がプラスチックの射出成形によって、後壁と回転不能に結合することは、引用文献1?3に記載された発明は何れも洗濯機のプラスチックス槽という共通の技術分野に関するものであるから、当業者であれば容易になし得たことである。 そして、本願発明の効果は、引用文献1ないし3に記載された発明から当業者が予測できる以上の格別のものとは認められない。 したがって、本願発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-27 |
結審通知日 | 2008-07-09 |
審決日 | 2008-07-23 |
出願番号 | 特願2001-545631(P2001-545631) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(D06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 武井 健浩 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
佐野 遵 長浜 義憲 |
発明の名称 | 洗濯機のための洗濯容器 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | ラインハルト・アインゼル |
代理人 | 矢野 敏雄 |