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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23Q
管理番号 1188864
審判番号 不服2007-6262  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2002-254910「クランプ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 90163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年8月30日の出願であって、平成19年1月22日付で拒絶査定され、同年3月1日に拒絶査定を不服とする審判が請求されたものであって、平成20年7月9日付の当審の拒絶理由通知に対し、同年9月9日に意見書と手続補正書が提出されたものである。
本願の請求項1に係る発明は、平成20年9月9日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認められる。

「シリンダの直線運動をトグル機構により回動運動に変換してアームによりワークをクランプするクランプ装置において、
シリンダ本体の端部には、該シリンダ本体に一端部を支点として回動自在に支持され、その回動作用下に前記アームをアンクランプするリリース手段を包被可能な金属製のカバー部材を備え、
前記カバー部材は、孔部と、該孔部と平行に設けられ内側に指向した突起部をそれぞれ有し、平行に配設される第1及び第2の板体と、
前記第1の板体と第2の板体との間に橋架され、隅角部が湾曲した第3の板体と、
前記第3の板体の終端する部位から延在し、前記第1の板体と第2の板体の終端部位から前記シリンダ本体側に向かって突出した舌片を有する第4の板体と、
から構成され、
前記シリンダ本体の端部には、前記リリース手段が突出する部位に取付部材が装着され、前記取付部材の一端部に、前記孔部を介して前記カバー部材が回動自在に支持されると共に、前記取付部材の他端部に形成された長穴に前記突起部が係合され、該カバー部材の回動動作が規制されたロック状態となることを特徴とするクランプ装置。」(以下、「本件発明」という。)

2.当審の拒絶理由
一方、当審において、平成20年7月9日付で通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1ないし3に係る発明が、本願の出願前に頒布された刊行物である、以下の文献に記載された発明(事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

刊行物1: 特開2001-1274号公報
刊行物2: 特開2000-61771号公報

3.刊行物1記載の発明
a.(特許請求の範囲、請求項1)
「ボデイと、
前記ボデイの内部に設けられたロッド部材を該ボデイの軸線方向に沿って変位させる駆動手段と、
前記ロッド部材に連結されるリンク部材を含み、前記ロッド部材の直線運動を回転運動に変換するトグルリンク機構と、
前記トグルリンク機構に連結され、前記駆動手段の駆動作用下に所定角度回動するアームと、
を備え、
前記トグルリンク機構は、前記ロッド部材と一体的に変位することにより前記ボデイに形成された孔部から突出するリリース用突起部を有し、該ボデイには前記孔部を閉塞するとともに前記リリース用突起部を被覆するシール手段が設けられることを特徴とするクランプ装置。」
b.(特許請求の範囲、請求項5)
「請求項1または2記載の装置において、
前記シール手段は、ボデイの頂部に形成された平面部を被覆するキャップからなることを特徴とするクランプ装置。」
c.(段落【0042】)
「【0042】前記ピストン30の直線運動は、ピストンロッド32およびナックルジョイント62を介してトグルリンク機構64に伝達され、前記トグルリンク機構64を構成する支持レバー74の回動作用下にアーム20の回転運動に変換される。」
d.(段落【0056】)
「【0056】また、このクランプ装置110では、ボデイ12の頂部に平面部114を形成し、前記平面部114に形成された矩形状の孔部116a、116bを介して前記一組のリリース用突起部112a、112bの一端部が突出するように設け、しかも、前記ボデイ12の平面部114全体を被覆するような幅広なキャップ118を装着している点に特徴がある。前記キャップ118の上面は断面円弧状に形成され、該キャップ118の下面には、ボデイ12の孔部等に係止される爪部120が設けられている。なお、前記キャップ118は、合成樹脂製またはゴム製の伸縮自在な材料に形成されている。」

上記摘記事項を技術常識に照らし、本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「ピストンの直線運動をトグルリンク機構により回動運動に変換してアームによりワークをクランプするクランプ装置において、
ボデイの頂部には、前記アームをアンクランプするリリース用突起部を被覆可能なキャップを備えるクランプ装置。」
(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

4.対比
そこで、本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「トグルリンク機構」、「リリース用突起部」、「ボデイの頂部」、「被覆」、「キャップ」が、前者の「トグル機構」、「リリース手段」、「シリンダ本体の端部」、「包被」、「カバー部材」にそれぞれ相当することは明白である。また、後者の「ピストンの直線運動」は、ピストンがシリンダ内で運動するものであることから、「シリンダの直線運動」と言い換えることができる。
そうすると、本件発明と刊行物1記載の発明とは、次の各点において一致及び相違するものということができる。
【一致点】
「シリンダの直線運動をトグル機構により回動運動に変換してアームによりワークをクランプするクランプ装置において、
シリンダ本体の端部には、前記アームをアンクランプするリリース手段を包被可能なカバー部材を備えるクランプ装置。」である点。
【相違点】
カバー部材は、前者では、シリンダ本体に一端部を支点として回動自在に支持され、その回動作用下にリリース手段を包被可能であり、金属製であり、孔部と、該孔部と平行に設けられ内側に指向した突起部をそれぞれ有し、平行に配設される第1及び第2の板体と、前記第1の板体と第2の板体との間に橋架され、隅角部が湾曲した第3の板体と、前記第3の板体の終端する部位から延在し、前記第1の板体と第2の板体の終端部位から前記シリンダ本体側に向かって突出した舌片を有する第4の板体とから構成され、シリンダ本体の端部の前記リリース手段が突出する部位に装着された取付部材の一端部に、前記孔部を介して回動自在に支持されると共に、前記取付部材の他端部に形成された長穴に前記突起部が係合され、回動動作が規制されたロック状態となるのに対し、後者ではこのようなものでない点。

5.当審の判断
以下に上記相違点について検討する。

一般に、機械装置において異物等の侵入を防ぐ目的で内部機器を包被しつつ、内部機器の操作を可能とするために、機械本体に一端部を支点として回動自在に支持されたカバー部材を設けることは従来周知の技術であり、回動自在なカバー部材が、突起部をそれぞれ有し平行に配設される第1及び第2の板体と、第1の板体と第2の板体との間に橋架され隅角部が湾曲した第3の板体と、第3の板体の終端する部位から延在し、第1の板体と第2の板体の終端部位から機械本体側に向かって突出した舌片とを有する第4の板体とから構成され、機械本体に前記突起部が係合されてロック状態となるものも従来周知である。(例として、特開2001-332874号公報、特開平9-237982号公報、特開平8-241753号公報を参照。)
第1及び第2の板体に孔部を設けること、突起部を該孔部と平行に内側に指向させること、及び、機械本体に取付部材を設け、取付部材にカバー部材を第1及び第2の板体の孔部を介して回動自在に支持すると共に取付部材の他端部に形成された穴に突起部を係合させることには格別の技術的意義を認めることはできず、いずれも当業者が適宜選択し得る設計上の事項に過ぎないというべきである。位置誤差を吸収するために穴を長穴とすることは、上記特開平8-241753号公報にも示されるように、従来周知の技術である。
そして、このようなカバー部材をクランプ装置に適用することを妨げる要因は見当たらない。
また、カバー部材が侵入を防ごうとする異物が溶接時のスパッタのように高温のものである場合に、カバー部材を金属製とすることは当業者が容易になし得る材質の選定に過ぎない。
したがって、刊行物1記載の発明におけるカバー部材を上記周知技術のカバー部材に置き換えて【相違点】に係る発明特定事項を本件発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るものというべきである。

本件発明の作用効果には、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から普通に予測される範囲を超える格別のものを見出すこともできないから、本件発明は刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

6.むすび
以上のとおり、本件発明すなわち本願の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-06 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願2002-254910(P2002-254910)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 謙一松原 陽介  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 豊原 邦雄
尾家 英樹
発明の名称 クランプ装置  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 田久保 泰夫  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 鹿島 直樹  

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