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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1188865
審判番号 不服2007-7426  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-12 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2003-333447「通信装置及び通信装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月14日出願公開、特開2005-101936〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成15年9月25日の出願であって、平成19年2月5日に拒絶査定がされ、これに対して平成19年3月12日に拒絶査定不服審判が請求され、同年4月11日付で手続補正書が提出されたものである。

本願の発明は、平成19年4月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
電子メールデータを送信する送信手段を有する通信装置であって、
電子メールデータを生成する電子メールデータ生成手段と、
前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータを送信する際にメールサーバを経由させるか否かを設定する設定手段と、
前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが予め定めたサイズを超えている場合に、前記電子メールデータを分割する分割手段と、
前記設定手段で前記メールサーバを経由するよう設定されている場合、前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが前記予め定めたサイズを超えていれば前記分割手段で分割して前記送信手段で送信させ、前記設定手段で前記メールサーバを経由させないよう設定されている場合、前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが前記予め定めたサイズを超えていても前記分割手段による分割を行わずに前記送信手段で送信させるよう制御する制御手段と、
を有することを特徴とする通信装置。」

2 引用例
原審の拒絶の理由に引用された特開2003-233558号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図面とともに開示されている。(引用箇所は、段落番号で表示)
ア 「【0004】
【発明が解決しようとしている課題】このようなインターネットFAXにおいては、通常、送信機から送信された画像データが受信機に到達するまでの間に、複数の電子メールサーバを経由することになるため、即時性の保障は無い。またメールサーバの中には処理負荷の軽減等を目的として、添付ファイルのデータサイズを制限しているものも存在し、このようなメールサーバが通信経路に存在した場合、添付ファイルのデータサイズによっては正常に送信されないおそれがある。
【0005】一方、電子メールの宛先が、同一ネットワーク上等、ローカル環境に存在する場合には、メールサーバを経由して送信する必要はない。
【0006】本発明の目的は、電子メールの添付ファイルとして画像データを送信する通信装置において、送信宛先に応じて電子メールサーバを経由するか否かを容易に切り替え、メールサーバの負荷を軽減することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨は、送信先に関する情報を登録する送信先情報登録手段を有する通信装置であって、画像データを添付ファイルとした電子メールデータを生成する電子メールデータ生成手段と、電子メールデータを予め指定された送信先に送信する送信手段とを有し、送信先情報登録手段が、送信先毎に設定された送信経由情報を有し、送信手段が、送信する電子メールデータの送信先に対応する送信経路情報に基づいて、電子メールデータを直接送信先へ送信するか、予め定められたメールサーバへ送信することを特徴とする通信装置に存する。」

イ 「【0068】図10はアドレス帳の編集画面例を示す図である。図示しないユーザモードで呼び出されるほか、アドレス帳表示画面における詳細表示ボタン355の押下によっても呼び出される。
【0069】宛先指定領域400は電子メールアドレスを入力する部分であり、例えばこのエリアをタッチするとソフトウェアキーボード画面が表示され、このソフトウェアキーボードを用いてメールアドレスを入力することができる。
【0070】401はモード切替ボタンであり、送信時に送達確認を行わないSimple Modeで送信するか、送達確認を伴うFull Modeで送信するか選択することができる。このボタンを押下するたびに設定されるモードが切り替わる。
【0071】402は経路選択ボタンであり、送信時にMailサーバ12のような電子メールサーバを経由してデータを送信するか、電子メールサーバを経由せず直接データを送るのかを選択するボタンである。このボタンを押下するたびに設定される経路が切り替わる。どちらの経路を選択するかは例えばネットワークの構造を考慮してユーザが決定可能である。」

ウ 「【0156】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る通信装置によれば、宛先毎にメールサーバを経由して送信するか、しないかを選択可能とするとともに、メールサーバを経由せずに直接相手先へ送信する構成を備えた備えたことにより、メールサーバを介さずに送信可能な宛先に対してはメールサーバを経由しないで送信できるため、メールサーバに負荷をかけることなく大きなデータを送信できるようになった。またメールサーバを経由しないで送信動作を行うと、相手先の機械はすぐに受信状態となり通信の即時性が保障されるようになる。」

前掲アないしウの記載によると引用例1には、
「送信先に関する情報を登録する送信先情報登録手段を有する通信装置であって、画像データを添付ファイルとした電子メールデータを生成する電子メールデータ生成手段と、電子メールデータを予め指定された送信先に送信する送信手段とを有し、送信先情報登録手段が、送信先毎に設定された送信経由情報を有し、送信手段が、送信する電子メールデータの送信先に対応する送信経路情報に基づいて、電子メールデータを直接送信先へ送信するか、予め定められたメールサーバへ送信する通信装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明と本願発明はともに「電子メールデータを送信する送信手段」及び「電子メールデータを生成する電子メールデータ生成手段」を有する「通信装置」である点で共通する。
また、引用発明は、「送信先情報登録手段」に「送信経由(経路)情報」を登録し、この情報に基づいて、電子メールデータを直接送信先へ送信するか、予め定められたメールサーバへ送信する(メールサーバを経由させる)かを制御するものであるから、引用発明の「送信先情報登録手段」は、本願発明の「電子メールデータ生成手段で生成した電子メールデータを送信する際にメールサーバを経由させるか否かを設定する設定手段」に相当するといえる。

以上を踏まえると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

【一致点】
「電子メールデータを送信する送信手段を有する通信装置であって、
電子メールデータを生成する電子メールデータ生成手段と、
前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータを送信する際にメールサーバを経由させるか否かを設定する設定手段と、
を有する通信装置。」

【相違点】
本願発明は、「前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが予め定めたサイズを超えている場合に、前記電子メールデータを分割する分割手段」及び「前記設定手段で前記メールサーバを経由するよう設定されている場合、前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが前記予め定めたサイズを超えていれば前記分割手段で分割して前記送信手段で送信させ、前記設定手段で前記メールサーバを経由させないよう設定されている場合、前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが前記予め定めたサイズを超えていても前記分割手段による分割を行わずに前記送信手段で送信させるよう制御する制御手段」を有するのに対して、引用発明は、そのような構成を有しない点。

4 当審の判断
相違点について
引用例1には、前掲「2 ア」に「…メールサーバの中には処理負荷の軽減等を目的として、添付ファイルのデータサイズを制限しているものも存在し、このようなメールサーバが通信経路に存在した場合、添付ファイルのデータサイズによっては正常に送信されないおそれがある。…」と記載されるように、メールサーバを経由した通信には、電子メールデータのデータサイズが制限されるという課題が示唆されている。
そして、処理する電子メールデータのデータサイズが制限されるメールサーバを経由する通信を行う場合、その制限内に収まるように、電子メールデータを分割する「分割手段」を設けることは、原審の拒絶の理由に引用された特開平2002-24111号公報や、特開2002-324035号公報等にも開示されているように、電子メール通信の技術分野において、周知の技術である。
したがって、引用発明においても、前掲のメールサーバが扱う電子メールデータのサイズ制限に関する課題を解決するために、上記周知技術を用い、「前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが予め定めたサイズを超えている場合に、前記電子メールデータを分割する分割手段」を設け、「前記設定手段で前記メールサーバを経由するよう設定されている場合、前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが前記予め定めたサイズを超えていれば前記分割手段で分割して前記送信手段で送信させ」るよう制御する制御手段を設けることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。

また、「前記設定手段で前記メールサーバを経由させないよう設定されている場合」について、引用例1には、前掲「2 ウ」に「…メールサーバを介さずに送信可能な宛先に対してはメールサーバを経由しないで送信できるため、メールサーバに負荷をかけることなく大きなデータを送信できるようになった。…」と記載されるように、メールサーバを経由しない通信の場合には、大きいサイズの電子メールデータを送信可能である(つまり、データサイズが制限されない)旨の示唆がある。
つまり、「前記設定手段で前記メールサーバを経由させないよう設定されている場合」は、電子メールデータのサイズ制限がないのであるから、「前記電子メールデータ生成手段で生成した前記電子メールデータが前記予め定めたサイズを超えていても前記分割手段による分割を行わずに前記送信手段で送信させるよう」に制御手段を構成することは、自明の発想にすぎない。

また、本願発明の奏する効果は、引用例1に記載された発明及び周知技術から想定できる程度のものにすぎず、格別なものとはいえない。

5 結論
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-07 
結審通知日 2008-10-10 
審決日 2008-10-21 
出願番号 特願2003-333447(P2003-333447)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 輝久  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 伊藤 隆夫
原 光明
発明の名称 通信装置及び通信装置の制御方法  
代理人 大塚 康弘  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  

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