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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23Q
管理番号 1188869
審判番号 不服2007-12187  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-26 
確定日 2008-12-04 
事件の表示 特願2004-142260「マシニングセンター」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-324261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成16年5月12日の出願であって、その請求項1乃至2に係る発明は、平成20年9月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
主軸を移動させるために設けられたコラムと、コラムを駆動するための第1駆動手段と、ワークを載置してワークを移動させるために設けられたテーブルと、テーブルを駆動するための第2駆動手段とを設け、第1駆動手段が第1ボールネジを有し、第2駆動手段が第2ボールネジを有し、第1ボールネジと第2ボールネジが平行に配置されているマシニングセンターにおいて、コラムが、第3ボールネジによってテーブルに対して移動して、第1ボールネジと第2ボールネジの間隔を変えることを特徴とするマシニングセンター。」

2.引用刊行物の記載内容および引用発明
これに対して、当審において平成20年8月12日付けで通知した拒絶の理由には、本願の出願日前に頒布された刊行物である以下の刊行物が引用されている。
[引用刊行物]
刊行物1:特開平5-277861号公報

上記刊行物1には、以下の技術的事項が記載されている。
ア.段落【0002】
「【従来の技術】マシニングセンタやフライス盤等の工作機械では、加工物と工具を相対的に移動させることにより加工が行われる。図10、図11は、従来のマシニングセンタにおける送り機構を示すものである。図において、1はベース、2はテーブル、3はサドル、4はコラム、5は主軸頭、6は主軸、18はX軸スライドベース、19はX軸送りボールネジ、20はX軸リニアガイドである。このマシニングセンタでは、加工物を取り付けるテーブル2がベース1に固定されており、工具を支持する主軸6が左右(X軸)、前後(Y軸)、上下(Z軸)の各方向にそれぞれ移動して加工が行われる。」

イ.段落【0007】-【0010】
「【作用】本発明においては、移動軸の加工物側および工具側の双方に送り機構を備えたことにより、加工物と工具の相対的な移動範囲が加算されて大きくなる。
【実施例】以下、図に沿って本発明の実施例を説明する。図1は本発明をマシニングセンタに適用した第1の実施例の正面図であり、図2はその側面図、図3は同じく平面図である。図において、1はベース、2は加工物を取り付けるテーブル、3はサドル、4はコラム、5は主軸頭、6は工具を支持する主軸、7は主軸6の中心、8はテーブルスライドカバー、9はX軸スライドカバー、10はY軸スライドカバー、11はZ軸スライドカバー、12は制御盤、13は工具交換アームである。
このマシニングセンタは、主軸6がX軸、Y軸、Z軸について移動する以外にテーブル2を主軸6のX軸方向と平行にU軸として移動可能にしたものである。これは、既存のマシニングセンタにユニット化したテーブル2の移動機構を増設したものであり、図示しないがサーボモータ、ボールネジ、リニアガイド等の周知の送り機構がテーブルスライドカバー8内に収納されている。増設されたU軸は、主軸6の3軸と同様に数値制御により移動が制御される。
すなわち、主軸6のX軸方向の移動と同期させてU軸を反対方向に移動させると、移動速度が相対的に2倍になり、位置合わせが短時間に行われる。また、主軸6がX軸のストロークエンドに達してからU軸を同方向へ移動開始させるようにすると、X軸方向の加工を連続して行うことが可能となり、従来の主軸6のX軸のみの加工に加えてU軸のストローク分、加工範囲が広くなる。」

ウ.段落【0013】-【0015】
「図4は同じく本発明をマシニングセンタに適用した第2の実施例の正面図であり、図5はその側面図、図6は図4の要部の拡大図、図7は図5の要部の拡大図である。この実施例は第1の実施例とほぼ同様に構成されており、増設したテーブル2の送り機構をより詳細に示したものである。そのため第1の実施例と共通する部分は同一番号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図において、17はベース1上に支持されたテーブルスライドベースであり、右端にサーボモータ27が取り付けられ、その回転がカップリング26を介して送りボールネジ24に伝えられる。送りボールネジ24は右端をベアリング25に支持されるとともに、ネジ部がテーブル2を軸方向に移動させる。このときテーブル2はテーブルリニアガイド21に支持されていることにより、テーブルスライドベース17上を高精度で移動する。テーブルリニアガイド21は、テーブルリニアガイドレール22とテーブルリニアガイドベアリング23とで構成されている。テーブル2のストロークエンドには、それぞれリミットスイッチ31が設置されて、テーブル2の異常な移動を検出する。
なお、図5中の18はX軸スライドベース、19はX軸送りボールネジ、20はX軸リニアガイドである。この実施例の場合も第1の実施例と同様に作用し同様な効果が得られるが、特に、テーブル2の送り機構として、サーボモータ27と送りボールネジ24を用いたため、主軸6のX軸の送りと同等の位置決め精度が得られる。また、X軸と平行なU軸として、テーブル2の送り機構をテーブルスライドベース17上にユニット化して形成したことにより、既存のマシニングセンタへの増設・改造が容易になる。」

エ.段落【0021】
「以上の各実施例は、主軸6側に送り機構を備えてX,Y,Zの3軸方向に移動するマシニングセンタについて本発明を適用したものであるが、他にテーブル2側にも始めから送り機構を備えたマシニングセンタについても同様に本発明を適用できる。また、X軸だけでなく他の軸についても同時に送り機構を二重化することが可能である。さらには、マシニングセンタ以外のフライス盤等の工作機械についても同様に本発明を適用することができる。」

ここで、上記ウ.の「19はX軸送りボールネジ」、「テーブル2の送り機構として、サーボモータ27と送りボールネジ24を用いた」、「X軸と平行なU軸として、テーブル2の送り機構をテーブルスライドベース17上にユニット化して形成した」との記載からみて、X軸送りボールネジ19と送りボールネジ24とが平行に配置されていることは明らかである。また、X軸送りボールネジ19がコラム4を駆動するための送り機構を構成していることは自明であり、テーブル2の送り機構がテーブル2を駆動するためのものであることも自明である。

よって、上記記載事項を技術常識を勘案しながら本件発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「主軸6を移動させるために設けられたコラム4と、コラム4を駆動するための送り機構と、加工物を載置して加工物を移動させるために設けられたテーブル2と、テーブル2を駆動するための送り機構とを設け、コラム4を駆動するための送り機構がX軸送りボールネジ19を有し、テーブル2を駆動するための送り機構が送りボールネジ24を有し、X軸送りボールネジ19と送りボールネジ24が平行に配置されているマシニングセンター」

3.対比
本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「コラム4を駆動するための送り機構」は本件発明における「第1駆動手段」に相当し、以下同様に、「テーブル2を駆動するための送り機構」は「第2駆動手段」に、「加工物」は「ワーク」に、「X軸送りボールネジ19」は「第1ボールネジ」に、「送りボールネジ24」は「第2ボールネジ」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点と相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「主軸を移動させるために設けられたコラムと、コラムを駆動するための第1駆動手段と、ワークを載置してワークを移動させるために設けられたテーブルと、テーブルを駆動するための第2駆動手段とを設け、第1駆動手段が第1ボールネジを有し、第2駆動手段が第2ボールネジを有し、第1ボールネジと第2ボールネジが平行に配置されているマシニングセンター」である点。
[相違点]
本件発明では、「コラムが、第3ボールネジによってテーブルに対して移動して、第1ボールネジと第2ボールネジの間隔を変える」とされているのに対し、引用発明では、そのようなものではない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
マシニングセンターにおいて、コラムをワークが載置されたテーブルに対して進退移動するものは従来周知(必要であれば、特開2002-337032号公報の図1?3などを参照。)であり、また、コラムを駆動するための駆動手段としてボールネジを有するものは、例えば刊行物1にも見られるように従来周知の構成であるから、引用発明のマシニングセンターにおいて、コラムをボールネジによってワークが載置されたテーブルに対して進退移動するよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。そして本件発明は、コラムを移動することにより、さらに第1ボールネジと第2ボールネジの間隔を変えているものであるが、第1ボールネジと第2ボールネジの間隔を変えることによる格別な作用ないし効果が何ら見当たらず、また、ボールネジを他のボールネジに対してどちらを下方位置に配置するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項であるから、コラムをテーブルに対して進退移動するためのボールネジを第3ボールネジとして第1ボールネジの下方位置に配置することは、当業者が適宜なし得たことであり、そのように構成されたマシニングセンターのコラムは、第3ボールネジによってワークを載置したテーブルに対して移動し、第1ボールネジと第2ボールネジの間隔を変えるものとなるものである。
してみると、引用発明に従来周知の事項を適用して、上記相違点に係る本件発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

また、本件発明の作用効果についてみても、引用発明及び従来周知の事項から当業者が十分予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本件発明は、引用発明及び従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本件出願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2008-09-24 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願2004-142260(P2004-142260)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大川 登志男筑波 茂樹  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 槻木澤 昌司
鈴木 孝幸
発明の名称 マシニングセンター  
代理人 田辺 徹  

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