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審判番号(事件番号) データベース 権利
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無効2010800100 審決 特許
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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1189278
審判番号 無効2006-80250  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-11-30 
確定日 2008-10-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2115161号発明「サブミクロン油滴乳剤を含んで成るアジュバント製剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2115161号の請求項に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2115161号に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)についての特許は,平成2年5月24日に特願平2-509214号として出願され,平成8年12月6日にその発明について,特許の設定の登録がなされたものである。
これに対して,請求人は,本件特許を無効とする,との審決を求めた。被請求人は,平成19年11月26日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。
なお,被請求人が,平成19年3月19日にした訂正の請求は特許法第134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなす。

II.訂正の請求について
1.訂正の内容
平成19年11月26日にした訂正の請求の内容は,本件特許の設定登録時の明細書を,訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち特許請求の範囲を下記のとおり訂正することを求めるものである。
「【請求項1】(1)代謝可能な油,および
(2)乳化剤,を含んで成るアジュバント組成物であって,
該油および該乳化剤が水中油乳剤の形で存在し,該乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満であり,そして該組成物がポリオキシプロピレンーポリオキシエチレンプロックコポリマーを含まない,アジュバント組成物。
【請求項2】前記油が動物油である,請求項1に記載の組成物。
【請求項3】前記油が不飽和炭化水素である,請求項2に記載の組成物。
【請求項4】前記油がテルペノイドである,請求項1に記載の組成物。
【請求項5】前記油が植物油である,請求項1に記載の組成物。
【請求項6】前記組成物が,水性媒体中に 0.5?20 容量%の前記油を含んで成る,請求項1に記載の組成物。
【請求項7】前記乳化剤が非イオン性洗剤を含んで成る,請求項1に記載の組成物。
【請求項8】前記乳化剤がポリオキシエチレンソルビタンモノ-,ジ-,もしくはトリエステルまたはソルビタンモノ-,ジ-,もしくはトリエステルである,請求項1に記載の組成物。
【請求項9】前記乳化剤がポリオキシエチレンソルビタンモノ-,ジ-,もしくはトリエステルおよびソルビタンモノ-,ジ-,もしくはトリエステルである,請求項1に記載の組成物。
【請求項10】前記組成物が 0.02?2.5 重量%の前記乳化剤を含んで成る,請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】前記組成物が免疫刺激剤を含んで成る,請求項10 に記載の組成物。
【請求項12】前記免疫刺激剤が細菌細胞壁成分を含んで成る,請求項11に記載の組成物。
【請求項13】前記組成物が 0.0001?1.0 重量%の前記免疫刺激剤を含んで成る,請求項12 に記載の組成物。
【請求項14】前記免疫刺激剤がムラミルベプチドを含んで成る,請求項11に記載の組成物。
【請求項15】前記乳化剤がさらに免疫刺激剤として機能する,請求項1に記載の組成物。
【請求項16】前記組成物が 0.01?0.5重量%の前記免疫刺激剤を含んで成る,請求項15 に記載の組成物。
【請求項17】前記免疫刺激剤が親脂性ムラミルペプチドを含んで成る,請求項 15に記載の組成物。
【請求項18】前記ペプチドがムラミルジペプチドまたはムラミルトリペプチドを含む,請求項17に記載の組成物。
【請求項19】前記ムラミルジベブチドまたはムラミルトリペプチドがさらにリン脂質部分を含んで成る,請求項18に記載の組成物。
【請求項20】前記リン脂質部分がホスホグリセリドを含んで成る,請求項19 に記載の組成物。
【請求項21】前記ペプチドが次の式:
式・記号の説明省略
で表わされる化合物である,請求項14に記載の組成物。
【請求項22】R4がメチルであり,Xがアラニルであり,そしてYがイソグルタミニルである,請求項21に記載の組成物。
【請求項23】nが1であり,Zがアラニルであり,Rがアセチルであり,そしてR^(1),R^(2),およびR^(3)がすべてHである,請求項21に記載の組成物。
【請求項24】Lがリン脂質成分を含んで成る,請求項23に記載の組成物。
【請求項25】前記リン脂質成分がジアシルホスホグリセリドである,請求項24に記載の組成物。
【請求項26】前記ペプチドがN-アセチルムラミルーL-アラニルーD-イソグルタミニルーL-アラニン-2-[1,2-ジパルミトイルーsn-グリセロー3-(ヒドロキシホスホリルオキシ)]エチルアミドである,請求項21に記載の組成物。
【請求項27】R^(I)およびR^(2)の少なくとも一方が1?22個の炭素原子を含有するアシル基を表わす,請求項21に記載の組成物。
【請求項28】R^(1),R^(2),およびR^(3)の少なくとも1つが炭素原子数14?22個を含有するアシル基を表わす,請求項21に記載の組成物。
【請求項29】ワクチン接種のためのワクチン組成物を製造する方法であって,抗原物質を請求項1から 28 のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と混合する工程を含む,方法。
【請求項30】(1)免疫刺激量の抗原物質,および
(2)免疫刺激量の請求項1から28のいずれか1項に記載のアジュバント,を含んで成るワクチン組成物。
【請求項31】前記抗原物質がさらに,マラリア,ヒト免疫不全ウイルス,単純ヘルペスウイルス,サイトメガロウイルス,またはC型肝炎ウイルス抗原である,請求項30に記載のワクチン組成物。
【請求項32】ワクチン接種に用いるための,請求項31に記載のワクチン組成物。」

「【請求項1】(1)スクアレン,および(2)0.02?2.5重量%のポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤,を含んで成るアジュバント組成物であって,該スクアレンおよび該乳化剤が水中油 乳剤の形で存在し,該乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満であり,そして該組成物がポリオキシプロピレンーポリオキシエチレンプロツクコポリマーを含まない,アジュバント組成物。
【請求項2】前記組成物が,水性媒体中に0.5?20容量%の前記スクアレンを含んで成る,請求項1に記載の組成物。
【請求項3】前記組成物が免疫刺激剤を含んで成る,請求項1に記載の組成物。
【請求項4】前記免疫刺激剤が細菌細胞壁成分を含んで成る,請求項3に記載の組成物。
【請求項5】前記組成物が0.0001?1.0重量%の前記免疫刺激剤を含んで成る,請求項4に記載の組成物。
【請求項6】前記免疫刺激剤がムラミルペプチドを含んで成る,請求項3に記載の組成物。
【請求項7】前記乳化剤がさらに免疫刺激剤として機能する,請求項1に記載の組成物。
【請求項8】前記免疫刺激剤が親脂性ムラミルペプチドを含んで成る,請求項7に記載の組成物。
【請求項9】前記ペプチドがムラミルジペブチドまたはムラミルトリペプチドを含む,請求項8に記載の組成物。
【請求項10】前記ムラミルジペプチドまたはムラミルトリペプチドがさらにリン脂質部分を含んで成る,請求項9に記載の組成物。
【請求項11】前記リン脂質部分がホスホグリセリドを含んでなる,請求項10に記載の組成物。
【請求項12】前記ペプチドが次の式:
式・記号の説明省略
で表わされる化合物である,請求項6に記載の組成物。
【請求項13】R^(4)がメチルであり,Xがアラニルであり,そしてYがイソグルタミニルである,請求項12に記載の組成物。
【請求項14】nが1であり,Zがアラニルであり,Rがアセチルであり,そしてR^(1),R^(2),およびR^(3)がすべてHである,請求項12に記載の組成物。
【請求項15】Lがリン脂質成分を含んで成る,請求項14に記載の組成物。
【請求項16】前組リン脂質成分がジアシルホスホグリセリドである,請求項15に記載の組成物。
【請求項17】前記ペプチドがN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン- 2-[1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-(ヒドロキシホスホリルオキシ)]エチルアミドである,請求項12に記載の組成物。
【請求項18】R^(1)およびR^(2)の少なくとも一方が1?22個の炭素原子を含有するアシル基を表わす,請求項12に記載の組成物。
【請求項19】R^(1),R^(2),およびR^(3)の少なくとも1つが炭素原子数14?22個を含有するアシル基を表わす,請求項16に記載の組成物。
【請求項20】ワクチン接種のためのワクチン組成物を製造する方法であって,抗原物質を請求項1?19のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と混合する工程を含む,方法。
【請求項21】(1)免疫刺激量の抗原物質,および
(2)免疫刺激量の請求項1?19のいずれか1項に記載のアジュバント,を含んで成るワクチン組成物。
【請求項22】前記抗原物質がさらに,マラリア,ヒト免疫不全ウイルス,単純ヘルペスウイルス,サイトメガロウイルス,またはC型肝炎ウイルス抗原である,請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項23】ワクチン接種に用いるための,請求項22に記載のワクチン組成物。」と訂正する。

2.訂正の適否
上記訂正は,請求項1において,「代謝可能な油」を「スクアレン」に,「乳化剤」を「0.02?2.5重量%のポリオキシエチレシソルビタンモノエステル乳化剤に限定し,請求項2?5,7?10および16を削除し,これに伴い,それ以降の項番号を繰り上げることを求めるものである。
そして,「代謝可能な油」としての「スクアレン」,「乳化剤」としての「0.02?2.5重量%のポリオキシエチレシソルビタンモノエステル乳化剤」は出願当初の本願明細書に記載された事項である(特許公報9欄12?19行,14欄10?22行,30?33行,実施例参照)。
したがって,上記訂正は,特許請求の範囲の減縮及びそれに伴ない生じた明りょうでない記載の釈明を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。

3.むすび
以上のとおり,平成19年11月26日付けの訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし,同条第5項の規定によって準用する特許法第126第3項及び第4項の規定に適合するので,当該訂正を認める。

III.当事者の主張
請求人は,「特許第2115161号を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めた。
請求人は,本件特許は,特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してなされたものであり,平成2年改正前特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,無効とすべきであると主張した。
そして,証拠方法として以下の甲第1号証?甲第12号証を提出した。

甲第1号証:本件特許の公告公報(特公平8‐32638号公報)
甲第2号証:L.F.Woodard and R.L.Jasman,vaccine,Vol.3,June 1985,
137‐144
甲第3号証:M.Singh et al.“Parentera1Emulsions AS Drug Carrier
Systems,published in J.ParenteraI Science
Technology,vol.40,No.1,1986,pages 34-41
甲第4号証:C.Washington et al.,”The production ofparenteral
feeding emulsions by Microfluidizer”,published
in Int.J.Pharmaceutics,44,1988,pages 169 ‐176
甲第5号証:欧州特許出願公開315153公報
甲第6号証:L.F.Woodard,”Adiuvant Activity of Water‐1nsoluble
Surfactants”,published in Laboratory Anima1 Science,
vol.39,No.3,May l989,pages 222‐225
甲第7号証:パトリシア・モミン博士の宣誓供述書
甲第8号証:アンソニー・アリソン博士の宣誓供述書
甲第9号証:平成7年8月 2 5 日に本件特許権者が提出した意見書
甲第10号証:本件特許に対応する欧州特許を無効とする欧州特許庁審決
(2000年8月17 日審決,事件番号: T 1071/97‐3.3.2)
甲第11号証:Infect Immun.1980 Jun;881‐6
甲第12号証:甲6の受入日が1989年5月23日であることを示す米国国立
医学図書館のスタンプ付きのページ

一方,被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め,請求人の主張する無効の理由及び証拠方法によっては,本件特許を無効にすることができないと主張している。
特に,本件特許発明は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,本件特許は無効とすべきであるとの請求人の主張に対して,当該主張は誤りであり本件特許発明は進歩性を有するものであるとして,以下の主張をしている。

(本件訂正明細書の請求項1に係る発明について)
(1)甲第5号証の第3頁8-9行において,「該油状粒子の実質的にすべては,POP-POEブロックポリマーが存在する場合に約800nmの直径を有する」と記載され,同頁37-39行には「テトラポリオールがPOP-POEブロックポリマーのエマルジョン形成量に代えられ,そして実質的にすべての油状粒子が,約800nm未満の直径を有し,好ましくは,300nm未満の直径である。」と記載されている。そして,第13頁に記載の,油滴サイズが1μm以下であることが確認されたのは,処方4(Formulation 4)だけであり,POP-POEブロックコポリマーがスクアランとともに使用されている。
このことから,甲第5号証の記載からは,当業者は,「乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満」を達成することができるのは,POP-POEブロックポリマーを用いるFormulation 4のみであると明確に理解するのである。むしろ,当業者は,上記第13頁の記載を見れば,テトラポリオールでは「乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満」とすることができないと理解するはずである。
(2)甲第5号証において,スクアランが実施例において記載されていることは,スクアレンに関する本件特許発明とは関係がなく,また,スクアレンとスクアランがいずれも代替性油として周知であることは,証拠の提示すらなく,認められるものではない。
(3)本件特許明細書には,スクアレンを用いて,大型動物における顕著なアジュバント効果が示されている(たとえば,62頁以下にあるインフルエンザワクチンに関する実験)から,本件特許発明は,スクアレンを用いたことによる顕著な効果を奏するものである。
(4)請求人の提出した甲第11号証によれば,スクアレンとスクアランとは顕著に医薬としての効果に相違があることが示されている。すなわち,甲第11号証には,スクアレンを「アジュバント組成物」における代謝可能な油として使用し得ないと明記されているのである。したがって,他の文献との組み合わせにおいても考慮されるべきではなく,むしろ,本件特許発明に対しては,反対の教示をしているともいえ,阻害要因を構成しうるともいえる。

(本件訂正明細書の請求項2?23に係る発明について)
本件訂正明細書の請求項1に係る発明が進歩性を有している以上,本件訂正明細書の請求項2?23に係る発明もまた進歩性を有することは明白である。

そして,証拠方法として以下の乙第1号証?乙第16号証を提出した。
乙第1号証:特許実用審査基準,新規性進歩性 特許庁編,2003年
乙第2号証:甲第2号証(L.F.Woodard and R.L.Jasman,vaccine,Vol.3,
June 1985,137‐144)の本体部分の全文訳
乙第3号証:平成15年12月26日東京高等裁判所判決(平成(行ケ)104)
乙第4号証:平成15年改正法における無効審判における当事者の手続の
解説書
乙第5号証:Dr.Lynn F.Woodward(甲2の著者)の宣誓供述書
乙第6号証:Gary A.Van,Gary Ott,Gail L.Barchfeldによる宣誓書
(本件特許の発明者ら(Van Nest,Ott,Barchfeld)が
米国での審査過程で提出した宣誓書)
乙第7号証:M. Singh et al.,Vaccine 24 (2006),pp.1680‐1686
乙第8号証:R.T.Kenney et al.,Adjuvants for the future,M. M,
Kevine編,New Generat1on Vaccines,2004,213-223頁
乙第9号証:特願昭63-278546号に対する,平成8年12月13日付け
拒絶理由通知書
乙第10号証:特願昭63-278546号,平成9年4月21日付け意見書
乙第11号証:特願昭63-278546号,平成9年4月21日付け補正書
乙第12号証:特願平9-103566明細書
乙第13号証:甲第5号証の出願当初明細書
乙第14号証:甲第5号証の基礎出願明細書
乙第15号証:特願昭63-278546号明細書
乙第16号証:米国特許5376369号明細書

IV.本件特許発明
本件特許発明は,訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1?23に記載された以下のとおりのものである。(以下,それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明23」という。)
「【請求項1】(1)スクアレン,および(2)0.02?2.5重量%のポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤,を含んで成るアジュバント組成物であって,該スクアレンおよび該乳化剤が水中油 乳剤の形で存在し,該乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満であり,そして該組成物がポリオキシプロピレンーポリオキシエチレンプロツクコポリマーを含まない,アジュバント組成物。
【請求項2】前記組成物が,水性媒体中に0.5?20容量%の前記スクアレンを含んで成る,請求項1に記載の組成物。
【請求項3】前記組成物が免疫刺激剤を含んで成る,請求項1に記載の組成物。
【請求項4】前記免疫刺激剤が細菌細胞壁成分を含んで成る,請求項3に記載の組成物。
【請求項5】前記組成物が0.0001?1.0重量%の前記免疫刺激剤を含んで成る,請求項4に記載の組成物。
【請求項6】前記免疫刺激剤がムラミルペプチドを含んで成る,請求項3に記載の組成物。
【請求項7】前記乳化剤がさらに免疫刺激剤として機能する,請求項1に記載の組成物。
【請求項8】前記免疫刺激剤が親脂性ムラミルペプチドを含んで成る,請求項7に記載の組成物。
【請求項9】前記ペプチドがムラミルジペブチドまたはムラミルトリペプチドを含む,請求項8に記載の組成物。
【請求項10】前記ムラミルジペプチドまたはムラミルトリペプチドがさらにリン脂質部分を含んで成る,請求項9に記載の組成物。
【請求項11】前記リン脂質部分がホスホグリセリドを含んでなる,請求項10に記載の組成物。
【請求項12】前記ペプチドが次の式:
式・記号の説明省略
で表わされる化合物である,請求項6に記載の組成物。
【請求項13】R^(4)がメチルであり,Xがアラニルであり,そしてYがイソグルタミニルである,請求項12に記載の組成物。
【請求項14】nが1であり,Zがアラニルであり,Rがアセチルであり,そしてR^(1),R^(2),およびR^(3)がすべてHである,請求項12に記載の組成物。
【請求項15】Lがリン脂質成分を含んで成る,請求項14に記載の組成物。
【請求項16】前組リン脂質成分がジアシルホスホグリセリドである,請求項15に記載の組成物。
【請求項17】前記ペプチドがN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン- 2-[1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-(ヒドロキシホスホリルオキシ)]エチルアミドである,請求項12に記載の組成物。
【請求項18】R^(1)およびR^(2)の少なくとも一方が1?22個の炭素原子を含有するアシル基を表わす,請求項12に記載の組成物。
【請求項19】R^(1),R^(2),およびR^(3)の少なくとも1つが炭素原子数14?22個を含有するアシル基を表わす,請求項16に記載の組成物。
【請求項20】ワクチン接種のためのワクチン組成物を製造する方法であって,抗原物質を請求項1?19のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と混合する工程を含む,方法。
【請求項21】(1)免疫刺激量の抗原物質,および
(2)免疫刺激量の請求項1?19のいずれか1項に記載のアジュバント,を含んで成るワクチン組成物。
【請求項22】前記抗原物質がさらに,マラリア,ヒト免疫不全ウイルス,単純ヘルペスウイルス,サイトメガロウイルス,またはC型肝炎ウイルス抗原である,請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項23】ワクチン接種に用いるための,請求項22に記載のワクチン組成物。」

V.当審の判断
本件特許発明1?23は,甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとの請求人の主張について,検討する。

1.甲第5号証の記載事項の概要
本件出願の優先日前に頒布された刊行物である,甲第5号証の欧州特許出願公開315153公報には,以下の事項が記載されている。
(a-1) 「本発明は,改良されたワクチンアジュバント製剤,該アジュバント製剤調製の改良方法,及びその改良製剤の使用方法に関する。」(2頁2?3行)
(a-2) 「本発明の他の態様は,連続水相中に分散された油粒子を有するエマルジョン型の,抗原の免疫原性を増強するためのアジュバントであって,このアジュバントは,非毒性のテトラポリオールのエマルジョン形成量;任意に非毒性の代謝可能な油のエマルジョン形成量;任意にグリコールエーテルをベースにした界面活性剤のエマルジョン安定量;水又は水溶液,及びムラミルジペプチド,好ましくは式Iの誘導体及びその医薬として許容される塩の免疫増強量を含む。 式I・記号の説明は省略 」(4頁6?34行)
(a-3) 「好ましい種類の発明は,非毒性の代謝可能な油,特に前記油がスクアレン又はスクアランの場合である。好ましい,下位に分類される種類の発明は,前記グリコールエーテルをベースにした界面活性剤が TweenR 80であるアジュバントであり,特に前記水又は水性溶液が等張性の緩衝生理食塩水を含む場合であり,特に油粒子が約800nm未満,好ましくは約300nm未満の直径を有する場合である。別の好ましい下位概念の種類は,前記テトラーポリオールが TetronicR1501 であり,前記式Iのムラミルジペプチドがムラブチド(murabutide)であるアジュバントである。(審決注:登録商標を表す○にRの記号は表示できないのでRと記す。以下,同様である。)
本発明の他の態様は,連続水相中に分散された油粒子を有する水中油型エマルジョンの形にある抗原の免疫原性を増強するためのアジュバントであって,このアジュバントは,非毒性のテトラポリオール 0.2?49%;非毒性の代謝可能な油 0?15%,グリコールエーテルをベースにした界面活性剤 0.05?5%,水又は水溶性溶液;及び式Iのムラミルジペプチド誘導体 0.0001?10%を含む(ムラミルジペプチドが重量/容量であることを除き,%は容量/容量)。」(4頁34?46行)
(a-4) 「現在好ましい実施態様は,連続水相中に分散した油粒子を有する,抗原の免疫原性を増強させるための水中油型エマルジョンの形にあるアジュバントであり,そのアジユバントは P1uronicR L121 1?10%,スクアラン又はスクアレン 1?10%,TweenR80 約 0.2%,等張緩衝生理食塩水及び N‐アセチルムラミル‐L-スレオニル‐D‐イソグルタミン 0.000l?l0%を含み,ここで実質的に全ての該油粒子は約 800nm 未満,好ましくは約300nm未満の直径を有する。」(5頁20?25行)
(a-5) 「本発明の他の態様は,免疫誘導量の抗原と組み合わせた本発明のアジュバントを含むワクチンである。好適には,これは連続相中に分散された油粒子を有する,動物を免疫化するための水中油型エマルジョンの形にあるワクチンであり,このワクチンは,免疫誘導量の抗原;エマルジョン形成量の非毒性テトラポリオール又は非毒性POP‐POE ブロックポリマー;任意に,エマルジョン形成量の非毒性の代謝可能な油;任意に,エマルジョン安定量のグリコールエーテルをベースにした界面活性剤;水又は水性溶液;及び免疫増強量のムラミルジペプチド,好ましくは式 Iの誘導体を含む。」(5頁26?33行)
(a-6) 「本発明の他の態様は,本発明のアジュバントの調製方法であって,該方法は,非毒性テトラポリオール又は非毒性POP‐POEブロックポリマー;状況に応じて非毒性の代謝可能な油;状況に応じてグリコールエーテルをベースにした界面活性剤;及び水又は水性溶液を含む最初の混合物を調製し;該最初の混合物を乳化して,連続水相中に分散した油粒子を有し,実質的に全ての該油粒子が約800nm未満,好ましくは約300nm 未満の直径を有する水中油型エマルジョンを製造し;そして該エマルジョンを式Iのムラミルジペプチド誘導体と混ぜ合わせることを含む。好ましい態様は,該最初の混合物をマイクロフルイダイザーR(又は他の適当な乳化技術)を用いて乳化して,実質的に全ての該油粒子が約 800nm未満,好ましくは約300nm未満の直径を有するエマルジョンを得る方法である。好ましい下位態様は,式I の該ムラミルジペプチ権秀導体を水性溶液又は懸濁液の形にあるエマルジョンと混ぜ合わせる方法である。」(5頁53行?6頁5行)
(a-7) 「本発明の他の態様は,免疫系を有する動物において免疫応答を誘導するための方法であって,該方法はP1uronicRL21又はTetronicR1501 1?10%,スクアラン又はスクアレン 1?l0%,状況に応じて TweenR80 約 0.2%,等張緩衝生理食塩水,N‐アセチルムラミル‐L‐スレオニル‐D‐イソグルタミン 0.0001?10%及び免疫誘導量の抗原を含むワクチンを投与することを含む。」(6頁44?48行)
(a-8) 「一般的に,グリコペプチドは,0.001?2%量で存在させるのが好ましい。さらに好ましい量は0.005?1%である。
「非毒性の代謝可能な油」なる用語は,炭素原子 6?30 の油を表し,アルカン,アルケン,アルキン,並びにこれらに対応する酸及びアルコール,それらのエーテル及びエステル,及びそれらの混合物を含むがこれらに限定されるものではない。油は,植物油,魚油,動物油,合成油であり得る。この油はアジュバントが投与された被験体の体内で代謝され得るが,この油は生物体に対して有毒ではない。膿瘍,肉芽腫又は癌腫が生じることを避けるために油が投与された動物又は鳥によって油が代謝されることが必須である。」(8頁6?13行)
(a-9) 「スクアレン及びスクアランを含む魚油は商業的供給源から容易に調達できるし,また公知の方法で入手してもよい。」(8頁18?19行)
(a-10) 「好ましくは,アジュバントエマルジョンは,テトラポリオールを用いた場合もPOP‐POE ブロックポリマーを用いた場合も,抗原の添加前に「微小流動化」される。これは,マイクロフルイダイザーR((Microfluidics Corp.,Newton,MAから商業的に調達できる。)などの極めて高せん断のミキサーを使用して達成できる。マイクロフルイダイザーRでは,通常 100?500mlのエマルジョンのバッチが調製される。エマルジョンは,エマルジョン粒子サイズが所望のレベル,好ましくは直径800nm未満,さらに好ましくは約300nm未満,特に好ましくは約200nm未満に達するまで約2?l0回,マイクロフルイダイザーRを循環させる。マイクロフルイダイザーRは剪断力,乱流及びキャビテーション力を兼ね備えており,二つの流動化流が相互作用チャンバー内で高速度で相互作用することにより,均一に小さいエマルジョン粒子を作り出す。マイクロフルイダイザーR以外の装置でも満足のいくエマルジョンを生成可能であり,十分な安定性と十分に小さい粒径のエマルジョンを生成可能な装置の使用は本発明の方法の範囲に包含されることが理解されるべきである。通常,MDPはエマルジョン形成ステップ後に添加される。MDP 及び抗原の添加前にエマルジョンを保存する場合は,保存は冷蔵及び/又は窒素下で行われる。」(10 頁39?51行)
(a-11) 「生物学的活性は,標準実験室的方法,例えば,試験アジュバント製剤を使用し,標準抗原(例えば,BSA又はDNP‐BSA)を用いて標準実験動物(例えば,モルモット)にワクチン接種することによりアッセイできる。追加免疫の期間及び免疫化が起こる時間の経過後,動物を標準抗原でチャレンジして,その結果を測定した。応答は,免疫応答の測定に当該分野で受け入れられている任意の測定法,例えば,標準抗原に対する血清抗体力価(体液性免疫に対する)又は皮膚試験反応(細胞性免疫に対する)によって定量化できる。」(11頁2?7行)
(a-12) 「一般に,最初のワクチン接種は,所望の抗原及び本発明の製剤を使用して行った。数週間後(通常2?6週間,例えば4?6週間後)MDP成分の存在又は存在なしに(好ましくは存在下)本発明のワクチンを使用して追加のワクチン接種を行う。一般に,本発明の実施においては,1?2mlのワクチン(以下の実施例に示すように)をヒト被験体に投与する。」(11頁20?24行)
(a-13) 「製剤4(本発明の微小流動化したPOP‐POEアジュバント):5.0% P1uronicRL121,10%スクアラン,0.4% TweenR80,定量のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4);各成分を試験管に加え,ミルク状のエマルジョンが得られるまで,ボルテックスミキサーで混合した。このエマルジョンを次いでマイクロフルイダイザーに 4 回通した。この製剤を製剤2と共に冷蔵した。
次いで,各製剤に固体の N‐アセチルムラミル‐L-スレオニル‐D‐イソグルタミン(Thr-MDP)を500μg/mlまで添加し,完全なアジュバント“濃縮物”を形成させた。この濃縮物を次いで,2X 濃度の抗原の溶液(生理食塩水中オバルブミン,lmg/ml)と混合し,試験ワクチンを形成させた。」(11頁51?58行)
(a-14) 「実施例5肝炎ウイルスワクチン
微小流動化したアジュバント(実施例1の処方4について調製したものであって冷蔵していないもの)中又はアラムに吸着させた(市販されている肝炎ワクチン)B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)0.5μg又は0.1μgからなるワクチンを各群8匹の雌ハートレーモルモットに皮下注射した。」(15頁46?57行)
(a-15)「実施例9 他のワクチン」(ヒト免疫不全ウイルス,HBsAg等の抗原物質の例が記載されている)」(17頁40?18頁15行)。
(a-16)「連続水相中に分散された油粒子を有するエマルジョン型の,抗原の免疫原性を増強するためのアジュバントであって,非毒性のテトラポリオールまたはPOP-POEブロックポリマーのエマルジョン形成量,及びグリコペプチドの免疫増強量からなり,POP-POEブロックポリマーが存在する場合には油粒子の実質的に全てが約800nm未満の直径を有するアジュバント」(19頁クレーム1)

2.引用発明
甲第5号証には,「連続水相中に分散された油粒子を有するエマルジョン型の,抗原の免疫原性を増強するためのアジュバントであって,非毒性のテトラポリオールまたはPOP-POEブロックコポリマーのエマルジョン形成量,及びグリコペプチドの免疫増強量からなり,POP-POEブロックコポリマーが存在する場合には油粒子の実質的に全てが約800nm未満の直径を有するアジュバント」の発明について記載されている(上記(a-16))。
該アジュバントの発明は,非毒性のテトラポリオールまたはPOP-POEブロックポリマーのエマルジョン形成量を配合するものであり,POP-POEブロックポリマーが存在する場合には,油粒子の実質的に全てが約800nm未満の直径を有するとの限定が付されているが,テトラポリオールを配合する場合については油粒子の直径についてはなんら限定が付されていない。
そして,該アジュバントの発明について,甲第5号証の第4頁第6?46行に説明が記載されている。第4頁第6?34行には,「連続水相中に分散された油粒子を有するエマルジョン型の,抗原の免疫原性を増強するためのアジュバントであって,このアジュバントは,非毒性のテトラポリオールのエマルジョン形成量;任意に非毒性の代謝可能な油のエマルジョン形成量;任意にグリコールエーテルをベースにした界面活性剤のエマルジョン安定量;水又は水溶液,及びムラミルジペプチド,好ましくは式Iの誘導体及びその医薬として許容される塩の免疫増強量を含む」アジュバント,すなわち,非毒性のテトラポリオールのエマルジョン形成量を含むアジュバント組成物について記載されている(上記(a-2))。そして,引き続く,第4頁第34?46行には,好ましい態様(同じ段落の中であり,好ましい態様とは第4頁第6?34行に記載のアジュバント組成物の好ましい態様であることは明らかである。)として,非毒性の代謝可能な油がスクアレン又はスクアランであること,前記グリコールエーテルをベースにした界面活性剤が TweenR 80であること,前記水又は水性溶液が等張性の緩衝生理食塩水を含むものであること,油粒子が約800nm未満,好ましくは約300nm未満の直径を有すること,前記テトラーポリオールが TetronicR1501であり,ムラミルジペプチドが式Iのムラミルジペプチド誘導体,特に,ムラブチド(murabutide)であること,各成分の好ましい配合割合は,非毒性のテトラポリオール0.2?49%,非毒性の代謝可能な油 0?15%,グリコールエーテルをベースにした界面活性剤 0.05?5%,水又は水溶性溶液,及び式Iのムラミルジペプチド誘導体 0.0001?10%を含む(ムラミルジペプチドが重量/容量であることを除き,%は容量/容量)であることが記載されている(上記(a-3))。
そうすると,甲第5号証には,「連続水相中に分散された油粒子を有するエマルジョン型の,抗原の免疫原性を増強するためのアジュバントであって,このアジュバントは,非毒性のテトラポリオールとしてTetronicR1501を0.2?49%,非毒性の代謝可能な油としてスクアレン又はスクアランを0?15%,グリコールエーテルをベースにした界面活性剤として TweenR 80を0.05?5%,水溶液として等張性の緩衝生理食塩水を含む水溶液,及びムラミルジペプチドとしてムラブチド(murabutide)を0.0001?10%を含む(ムラミルジペプチドが重量/容量であることを除き,%は容量/容量)アジュバント組成物」(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


3.対比・判断
(3-1)本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明を対比する。
本件特許発明1は,「(1)スクアレン,および(2)0.02?2.5重量%のポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤,を含んで成るアジュバント組成物であって,該スクアレンおよび該乳化剤が水中油 乳剤の形で存在し,該乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満であり,そして該組成物がポリオキシプロピレンーポリオキシエチレンプロツクコポリマーを含まない,アジュバント組成物。」であり,ポリオキシプロピレンーポリオキシエチレンプロツクコポリマー以外の任意の成分を含み得る組成物である。
そして,引用発明のTweenR 80は,本件特許発明1のポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤に含まれる。本件訂正明細書でも,ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤のもっとも好ましいものとしてTweenR 80が挙げられ,実施例においても使用されている(本件訂正明細書第19頁11?16行,実施例1?3)。
そして,例えば,甲第5号証にも,非毒性テトラポリオールと非毒性POP‐POE ブロックポリマー(ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンプロツクポリマー)が並立する概念として記載されているように(上記(a-5)?(a-7),(a-10)),テトラポリオールはポリオキシプロピレンーポリオキシエチレンプロツクコポリマーではなく(平成20年2月26日第1回口頭審理調書参照),引用発明のアジュバント組成物は,「該組成物がポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンプロツクコポリマーを含まない,アジュバント組成物」である。
なお,本件補正明細書でいう「ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンプロックコポリマー」と甲第5号証でいう「POP‐POE ブロックポリマー」又は「ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンプロックポリマー」とは表記が異なるが,いずれも同じ化合物であることは明らかである。

そうすると,両者は,
(一致点)
「(1)代謝可能な油,および
(2)ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤,を含んで成るアジュバント組成物であって,
該油および該乳化剤が水中油乳剤の形で存在し,そして該組成物がポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンプロックコポリマーを含まない,アジュバント組成物」である点で一致し,

(相違点1)
(1)代謝可能な油が,前者では,スクアレンであるが,後者では,スクアレンまたはスクアランである点。
(相違点2)
(2)ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤の含有量が,前者では,0.02?2.5重量%であるのに対して,後者は,0.05?5容量/容量%である点。
(相違点3)
(3)該乳剤の油滴の直径が,前者では,実質上すべてが直径1μm未滴であるのに対して,後者では,そのような特定がなされていない点。
で,相違する。

そこで,上記相違点について検討する。
(相違点1について)
甲第5号証には,好ましい代謝可能な油として,スクアレンとスクアランの2つの油が記載されており(上記(a-3)),スクアレン及びスクアランを含む魚油は商業的供給源から容易に調達できるし,また公知の方法で入手してもよいことも記載されている(上記(a-9))。
そうすると,実施例としてはスクアランを使用した例のみが記載されているとしても(実施例3に関する記載として,甲第5号証の第14頁30行には,スクアレンと記載されているが,前後の記載からみて,これは誤記であり,正しくはスクアランであることは明らかである。),好ましい代謝可能な油の選択肢は唯2つであり,その入手方法も知られているのであるから,スクアレンを使用することは当業者が適宜なし得ることである。

この点に対して,被請求人は,以下のように主張している。
ア)甲第5号証において,スクアランが実施例において記載されていることは,スクアレンに関する本件特許発明とは関係がなく,また,スクアレンとスクアランがいずれも代替性油として周知であることは,証拠の提示すらなく,認められるものではない。
イ)請求人の提出した甲第11号証によれば,スクアレンとスクアランとは顕著に医薬としての効果に相違があることが示されている。すなわち,甲第11号証には,スクアレンを「アジュバント組成物」における代謝可能な油として使用し得ないと明記されているのである。したがって,他の文献との組み合わせにおいても考慮されるべきではなく,むしろ,本件特許発明に対しては,反対の教示をしているともいえ,阻害要因を構成しうるともいえる。

そこで,これらの主張について検討する。
ア)スクアレンを使用したアジュバント組成物が実施例として記載されていなくとも,また,スクアレンとスクアランが引用発明の代謝可能な油として代替性があることが周知であるかどうかにかかわらず,上記のとおり,甲第5号証の記載に基づいて,非毒性の代謝可能な油としてスクアレンを使用することは当業者が適宜なし得ることであるから,被請求人の主張は採用できない。
イ)被請求人は甲第11号証は「他の文献との組み合わせにおいても考慮されるべきではない」と主張しているが,当審の判断は,甲第11号証を組み合わせることなく,甲第5号証の記載のみに基づいて代謝可能な油としてスクアレンを使用することは当業者が容易になし得るというものである。
次に,甲第11号証の記載が,当業者が引用発明において,好ましい代謝可能な油としてスクアレンを使用するうえで阻害要因となるものであるか否かについて検討する。
甲第11号証の第883頁右欄3-9行には,「スクアレン(SQE)又はヘキサデカン(HD)中で乳化した細胞壁(CW)および5%Tweenは,それらが超音波処理又は粉砕によって調製されたか否かにかかわらず,免疫治療学的に不活性であった。」と,同じく885頁左欄15-18行には,「スクアレン(SQE)またはヘキサデカン(HD)中で乳化された細胞壁(CW)は,Tween濃度が0.2%以上でなく,0.002%以下であるとき,抗腫瘍活性を有する。」と記載されている。
ところで,甲第11号証に記載されているエマルジョンは,テトラポリオール又はPOP‐POEブロックポリマーが配合されておらず,また,エマルジョンの作成前に抗原を油に添加するものであるのに対し,甲第5号証に記載されたエマルジョンは,テトラポリオール又はPOP‐POEブロックポリマーが存在し,エマルジョン作成後に抗原を添加するものであり,両者はエマルジョンの配合成分,抗原の添加時点において異なるものである。
してみると,甲第11号証の,スクアレン(SQE)中で乳化した細胞壁(CW)および5% Tweenは,免疫治療学的に不活性である,あるいは,スクアレン(SQE)中で乳化された細胞壁(CW)は,Tween濃度が0.2%以上でなく,0.002%以下であるときに抗腫瘍活性を有するとの記載に接した当業者は,スクアレンの使用に際し,Tween濃度とワクチン活性との間に関係があると想定されるので,テトラポリオール又はPOP‐POEブロックポリマーが存在し,エマルジョンの作成後に抗原を油に添加する点で甲第11号証に記載されているエマルジョンと異なる引用発明においても,種々のTween濃度において,スクアレンの使用を試み,有意なワクチン活性が得られる好適なTween濃度を選択しようと考えるのが自然である。
したがって,甲第11号証が,代謝可能な油としてスクアレン又はスクアランを使用する引用発明において,スクアレンの使用を妨げるものであるとは認められず,上記被請求人の主張は採用できない。

(相違点2について)
ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤の含有量の表示方法が,本件特許発明1では,重量%であるのに対して,引用発明では,容量%であり異なる。しかしながら,組成物全体の比重と乳化剤の比重が大きくは異ならないことから,本件特許発明1における0.02?2.5重量%という範囲と,引用発明における0.05?5容量/容量%という範囲は,実質的に重複する部分を有するものであり,引用発明において,ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤の含有量を0.02?2.5重量%とすることは,当業者が適宜なし得ることである。

(相違点3について)
甲第5号証の第4頁6?46行(上記(a-2),(a-3))には,アジュバントがテトラポリオールを用いた場合に,好ましい態様として、油粒子の直径が約800nm未満,好ましくは約300nm未満であることが記載されている。同第10頁第39?51行(上記(a-10))には,好ましくは,アジュバントエマルジョンは,テトラポリオールを用いた場合もPOP‐POEブロックポリマーを用いた場合と同様に,抗原の添加前に,マイクロフルイダイザーR((Microfluidics Corp.,Newton,MAから商業的に調達できる。)などの極めて高せん断のミキサーを使用した「微小流動化」を約2?10回,繰り返すことにより,油粒子の直径を約800nm未満,好ましくは約300nm未満にできることが記載されている。そして、「均一に小さいエマルジョン粒子を作り出す」と記載されているから、上記のエマルジョンの油粒子の直径を約800nm未満,好ましくは約300nm未満とする方法とは,エマルジョンの油粒子の直径を実質的に全てが約800nm未満,好ましくは約300nm未満とする方法である。
そうすると,甲第5号証には,テトラポリオールを用いた場合も「微小流動化」を約2?10回,繰り返すことにより,油粒子の直径を実質的に全てが約800nm未満,好ましくは約300nm未満することが好ましいと記載されており、「微小流動化」の方法も具体的に記載されている。
したがって、当業者が引用発明において、テトラポリオールを用いた場合も,該乳剤の油滴の直径を,実質上すべてが直径1μm未滴とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

ところで,被請求人は,甲第5号証に記載された発明について,次のとおり主張している。
「甲第5号証の第3頁8-9行において,「該油状粒子の実質的にすべては,POP-POEブロックポリマーが存在する場合に約800nmの直径を有する」と記載され,同頁37-39行には「テトラポリオールがPOP-POEブロックポリマーのエマルジョン形成量に代えられ,そして実質的にすべての油状粒子が,約800nm未満の直径を有し,好ましくは,300nm未満の直径である。」と記載されている。そして,第13頁に記載の,油滴サイズが1μm以下であることが確認されたのは,処方4(Formulation 4)だけであり,POP-POEブロックポリマーがスクアランとともに使用されている。
このことから,甲第5号証の記載からは,当業者は,「乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満」を達成することができるのは,POP-POEブロックポリマーを用いるFormulation 4のみであると明確に理解するのである。むしろ,当業者は,上記13頁の記載を見れば,テトラポリオールでは「乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満」とすることができないと理解するはずである。」
しかしながら,上記のとおり,当業者は,甲第5号証に,テトラポリオールを配合したアジュバント組成物について,油粒子の直径を実質的に全てが約800nm未満としたアジュバント組成物を製造する方法が記載されていると理解するので,被請求人の上記主張は採用できない。
さらに,被請求人は,上記被請求人の主張の正当性は,甲第5号証の対応日本国出願(特願昭63-278546号の審査経過からも明らかであるともいうが,そもそも,対応日本出願の審査経過に,本合議体の甲第5号証に記載された発明の認定は拘束されるものではないし,被請求人の引用する 「(請求項1?13)には,非毒性テトラポリオールを含有するもの及びPOP-POEブロックポリマーを含有するものが記載されているが,POP-POEブロックポリマーを含有するもののみその粒子の大きさも発明の構成要件とすることから,まとまりのある一の技術的思想がとらえられる1つの発明が記載されているものと認めることはできない。(乙第9号証,3頁8?12行)」との記載は,POP-POEブロックポリマーが存在する場合には,油粒子の実質的に全てが約800nm未満の直径を有するとの限定が付されているが,テトラポリオールを配合する場合については油粒子の直径についてはなんら限定が付されていないことを指摘するだけである。

そして,本件訂正明細書に記載された本件特許発明1の奏する効果は,当業者が予測できる範囲を超えるものではない。

この点に対して,被請求人は,本件特許明細書には,スクアレンを用いて,大型動物における顕著なアジュバント効果が示されている(たとえば,第62頁以下にあるインフルエンザワクチンに関する実験)から,スクアレンを用いたことによる顕著な効果を奏するものである旨主張している。
そこで,この主張について検討する。
甲第5号証には,テトラポリオール又はPOP‐POEブロックポリマーを配合した連続水相中に分散された油粒子を有するエマルジョン型のアジュバント組成物の発明が記載されており,実験動物として,モルモットを使用してアジュバントとしての効果を試験している。このワクチンが,ヒトを対象としたワクチンであることは明らかである(上記(a-12))。実施例5では,処方4(Formulation 4)(POP‐POEブロックポリマー,スクアラン)の微小流動化アジュバント中のB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAq)からなるワクチンと,アラム(alum)に吸着させたB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAq)からなるワクチン(市販されている肝炎ワクチン)をモルモットに皮下摂取した免疫試験において,処方4のアジュバントを用いたワクチンの方がはるかに優れていることが記載されている。
また,実施例10では,代謝可能な油としてスクアランを使用し,テトラポリオールを配合した微小流動化アジュバントを用いたオバルブミンワクチンの抗体力価と遅延型過敏症を試験した結果が記載されており(実施例10は,冷蔵しない点を除いて実施例1の処方4(Formulation 4)と同様にして製造したものであることは明白である。冷蔵する工程を有する実施例1の処方4と同様にして,冷蔵する工程を有しないワクチンを製造するという実施例10の記載は信憑性のないものであるという被請求人の主張は認められない。),実施例11として,これらの試験結果から,重大な副作用は認められなかったと記載されている。
通常,医薬の開発においては,モルモット等のモデル実験を経て進められるものであるから,これらの記載に接した当業者は,甲第5号証に記載されたテトラポリオール又はPOP‐POEブロックポリマーを配合した連続水相中に分散された油粒子を有するエマルジョン型のアジュバント組成物は,モルモットに限らず,ヒトをはじめとする大型哺乳類でも効果があることを期待し,効果を確認する試験を行うことは当然に試みることである。 そして,代謝可能な油としてスクアレンを使用することは上記のとおり当業者が適宜なし得ることである。
したがって,スクアレンを用いた上記アジュバントが,大型動物におけるアジュバント効果を奏することは,当業者が予測できる範囲を超えるものではなく,上記の被請求人の主張は採用できない。

以上のとおり,本件特許発明1は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-2)本件特許発明2?19について
本件特許発明2?19は,本件特許発明1を直接あるいは間接的に,さらに限定したものである。
それぞれの限定事項について検討する。
(本件特許発明2について)
請求項2に記載されたスクアレンの含有量「0.5?20 容量%」は,甲第5号証の代謝可能な油の含有量 0?15容量/容量%と重複している(上記(a-3))。さらに,甲第5号証では,好ましい実施態様としてスクアレンの含有量が1?10%であるとの記載がある(上記(a-4),(a-7))。
(本件特許発明3について)
請求項3は,請求項1の組成物が免疫刺激剤を含むと特定している。甲第5号証には,免疫刺激剤を含むことが記載されている(上記(a-2),(a-4),(a-5),(a-6)(a-13))。
(本件特許発明4について)
請求項4は,免疫刺激剤を細菌細胞壁成分含んでなるものに限定している。甲第5号証に免疫刺激剤として記載されているムラミルジペプチドは細菌細胞壁成分であることは周知である。
(本件特許発明5について)
請求項5に記載された免疫刺激剤の含有量「0.000l?1.0重量%」は,甲第5号証の免疫刺激剤であるムラミルジペプチドの含有量0.0001?10重量/容量%と重複している(上記(a-3),(a-7))。
(本件特許発明6について)
請求項6は,免疫刺激剤を「ムラミルジペプチド」に限定している。甲第5号証には,免疫刺激剤としてムラミルベブチドが記載されている(上記(a-2),(a-4),(a-5),(a-6)(a-13))。
(本件特許発明7について)
請求項7は,乳化剤がさらに免疫刺激剤として機能することが記載されている。免疫刺激活性を有する乳化剤は周知である。
(本件特許発明8?19について)
免疫刺激剤を限定する。請求項8?19に記載された免疫刺激剤はいずれも周知である。

上記(3-1)に述べたとおり,本件特許発明1は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。そして,本件特許発明2?19の各限定事項は上記のとおり甲第5号証に記載された事項あるいは当業者に周知の事項である。
したがって,本件特許発明2?19は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-3)本件特許発明20について
「ワクチン接種のためのワクチン組成物を製造する方法であって,抗原物質を請求項1?19のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と混合する工程を含む,方法。」であるが,ワクチン組成物の製造方法として,アジュバントに抗原を混合することは周知の工程であるし,甲第5号証には,ワクチンの製造方法として,抗原物質を連続水相中に分散した油粒子を有するアジュバント組成物に混合する方法が記載されている(上記(a-13))。
そして,上記(3-1),(3-2)に述べたとおり,本件特許発明1?19は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本件特許発明20は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-4)本件特許発明21?23について
本件特許発明21は,「(1)免疫刺激量の抗原物質,および
(2)免疫刺激量の請求項1?19のいずれか1項に記載のアジュバント,を含んで成るワクチン組成物。」であるが,免疫刺激量の抗原物質,および免疫刺激量のアジュバント,を含んで成るワクチン組成物は周知である。
そして,本件特許発明22は,抗原物質を,マラリア,ヒト免疫不全ウイルス,単純ヘルペスウイルス,サイトメガロウイルス,またはC型肝炎ウイルス抗原に限定するものであるが,これらは抗原物質として周知のものであり,甲第5号証にも,ヒト免疫不全ウイルス,HBsAg 等の抗原物質の例が記載されている(上記(a-14),(a-15))。
また,本件特許発明23は,ワクチン組成物をワクチン接種に用いるものであるが,例えば甲第5号証に記載されている(上記(a-11),(a-12))とおり,ワクチン組成物をワクチン接種に用いることは周知の用法である。 そして,上記(3-1),(3-2)に述べたとおり,本件特許発明1?19は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本件特許発明21?23は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおりであるから,本件特許発明1?23は,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,その他の無効理由について検討するまでもなく,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
サブミクロン油滴乳剤を含んで成るアジュバント製剤
【発明の詳細な説明】
導 入
技術分野
本発明は、一般に、ワクチンの効率を高めるために使用する免疫アジュバント(adjuvants)に関し、特に、水中油エマルジョンよりなるアジュバントに関する。
背景技術
組換えDNA技術によって作出された新規サブユニットワクチンの出現は安全で有効なアジュバントへの要求を強めた。伝統的な生抗ウィルスワクチンはアジュバントを必要としない。死滅ウィルスワクチンは、一般に、サブユニットワクチンよりはるかに免疫原性があり、アジュバントなしで有効であるか、または限られた免疫応答刺激能しか有さないアジュバントとの共存下で有効である。新しい組換DNA由来サブユニットワクチンは、安全性や生産コストの面で伝統的なワクチンより著しい利点を有するが、一般に、完全なウィルスに比べて制限された免疫原性しか有さない、分離された蛋白質または蛋白質混合物を表す。かかる物質は、それらを、ワクチンで以前から用いられてきた完全な生物(organism)(及びそれらの部分)と区別するために、本明細書では、一般に、分子抗原(molecular antigens)と呼ぶ。これらのワクチンは、病気を予防するのに十分な能力に到るために、著しい免疫促進能を有するアジュバントを必要とする。
現在、米国でヒトへの使用に対して認可されている唯一のアジュバントはアルミニウム塩(アルム)である。これらのアジュバントはB型肝炎、ジフテリア、ポリオ、狂犬病、インフルエンザを初めとするいくつかのワクチンに対して有用であったが、他のワクチン、特に保護のために細胞性免疫(cell-mediated immunity)の刺激が必要とされる場合のワクチンに対しては有用でない。報告によるとアルムは百日咳及び腸チフスワクチンの有効性を改善せず、アテツウィルスワクチンについてほんのわずかな効果を示した。アルミニウム塩に関する問題として注射部位での肉芽腫の誘導及びアルム製剤のロット毎のばらつきが挙げられる。
完全フロインドアジュバント(CFA)は実験段階で多くの抗原について成功裏に使用されてきた強力な免疫刺激剤である。CFAは3つの成分、すなわち、鉱油、アーラセルA(Arlacel A)等の乳化剤及びミコバクテリウム・チュバキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)等の死滅ミコバクテリアよりなる。抗原水溶液をこれらの成分と混合して油中水エマルジョンを作る。しかしながら、CFAは痛み、膿瘍形成及び発熱をはじめとする重篤な副作用を引き起こし、ヒトまたは獣医用のワクチンに使用できない。副作用は、主として、CFAのミコバクテリア成分に対する宿主の反応による。不完全フロインドアジュバント(IFA)は細菌成分を除いたCFAに類似している。米国では使用が認可されていないが、他の国ではIFAはいくつかの型のワクチンに対し有用であった。IFAはヒトにおいてはインフルエンザ及びポリオワクチンについて、及び狂犬病、イヌジステンパー及び口蹄疫をはじめとするいくつかの動物ワクチンについて成功裏に使用された。実験によると、IFAで使用する油及び乳化剤の両方がマウスに腫瘍を起こす場合があることが判明した。このことはヒトへの使用については別のアジュバントを用いる方がよいことを示している。
ムラミルジペプチド(muramyl dipeptide)(MDP)はCFAで観察されるアジュバント活性を生じさせる。ミコバクテリア細胞壁複合体(complex)の最小単位である。エロウズ(Ellouz)ら、(1974)Biochem.Biophys.Res.Comm.,59,1317参照。広範囲のアジュバント能力及び副作用を示す多くのMDP類縁体が合成された。チェディッド(Chedid)ら、(1978)Prog.Allergy,25,63。ワクチンのアジュバントとして特に有用であるかも知れない3つのアナログはMDPのトレオニル誘導体〔ビアーズ(Byars)ら、(1987)Vaccine,5,223〕、MDPのn-ブチル誘導体〔チェディッドら(1982)Infect.and Immun.,35,417〕及びムラミルトリペプチドの親油性誘導体〔ギスラー(Gisler)ら、(1981)、Y.ヤマムラ及びS.コタニ編、Immunomodulations of Microbiol Products and Related Synthetic Compounds(微生物生産物及びその関連合成化合物の免疫修飾)、Excerpta Medica,アムステルダム,167頁〕である。これらの化合物は体液性及び細胞性の免疫を刺激し、低レベルの毒性を示す。
MDPの1つの将来有望な親油性誘導体はN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-〔1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-3(ヒドロキシホスホリルオキシ)〕エチルアミド(MTP-PE)である。このムラミルトリペプチドは、該分子の疎水部と脂肪環境との会合(association)を可能にするリン脂質の尾を有し、他方、ムラミルペプチド部は水性環境と会合する(associates)。このように、MTP-PE自身が乳化剤として働いて安定な水中油エマルジョンを生成し得る。
MTP-PEについての本発明者らの実験室での独創的なマウス実験によると、このアジュバントは単純ヘルペスウィルスgD抗原に対する抗HSVgD抗体力価を刺激するのに有効であり、またその有効性はMTP-PE及びgDを水溶液よりむしろ油(IFA)で供給した場合にはるかに改善されることが判明した。IFAはヒトの使用に認可されていないので、MTP-PE及び抗原用の他の油供給系が調査研究された。0.008%ツィーン80を含有する4%スクアレンとHSVgDとのエマルジョンがモルモットに非常に良好な免疫を与えた。この製剤、MTP-PE-LO(低油)は皮下針を通して乳化されるが、非常に不安定であった。けれども、この製剤はモルモットで高い抗体力価を与え、また免疫化したモルモットへのHSVチャレンジにおいて良好な保護を与えた。この製剤はフットパッド(footpad)に供給した際にもっとも有効であったが、筋肉内に供給した場合にもほどよい抗体力価を与えた。これらのデータは2つの刊行物に示された〔サンチェズ-ペスカドール(Sanchez-Pescador)ら、J.Immunology 141,1720-1727,1988及びラスキー(Laskey)ら編、Technological Advances in Vaccine Development(ワクチン開発における技術進歩)、アラン R.Liss(Alan R.Liss)社、445-469,1988〕。MTP-PE-LO製剤は酵母生産HIVエンベロープ蛋白質に対するモルモット中での免疫応答を刺激するのにも有効であった。MTP-PE製剤によって、エライサ(ELISA)抗体力価及びウィルス中和抗体力価の両方が高レベルにまで刺激された。しかしながら、同じ製剤をヤギ、ヒヒ等の大型動物で試験したところ、該組成物は有効でなかった。このように、ヒトや他の大型動物中で分子抗原と共に使用するための別のアジュバント製剤が求められていることは明らかである。
発明の概要
かくの如く、本発明の1つの目的は大型動物中での分子抗原に対する免疫応答を刺激するのに適したアジュバント製剤を提供することである。
驚くべきことに、満足すべきアジュバント製剤が、代謝し得る油と乳化剤よりなる組成物であって、油及び乳化剤が、実質上すべてが直径で1ミクロンより小さな油小滴を有する水中油エマルジョンの形態で存在し、該組成物がポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーの不存在下に存在する組成物によって提供されることが見出された。従来、かかるブロックコポリマーはサブミクロン(ミクロンより小さい)水中油エマルジョンの製造に必須であると考えられていた。本組成物は免疫刺激剤(免疫賦活剤)(immunostimulating agent)(このものは、両親媒性免疫刺激剤を選択する場合には、乳化剤と同じであることができる)を含んでいてもよい。
具体的態様の記述
本発明は代謝性油(metabolizable oil)と乳化剤よりなるアジュバント組成物であって、該油と乳化剤が、実質上すべてが直径1ミクロンより小さな油小滴を有する水中油エマルジョンの形態で存在するアジュバント組成物を提供する。後述の実施例で詳細に報告する本発明者らの実験室での研究によると、本発明によって提供される組成物は、油及び乳化剤を含有し、油小滴がずっとより大きなアジュバント組成物に比べ驚くべき優位性を示す。
本発明のアジュバント組成物の個々の成分は既知であるが、かかる組成物は、かつて、同様な方法で結合されておらず、かかる小直径の小滴サイズで供給されていなかった。従って、以下に一般的に及び好ましい態様についてある程度詳細に記述するけれども、個々の成分は当分野で周知であり、本発明で用いる、代謝性油、乳化剤、免疫刺激剤(immunostimulating agent)、ムラミルペプチド、親油性ムラミルペプチド等の用語は、これらの化合物を、さらに説明することなく、当業者に対し記述できるほど十分に周知である。
これらの製剤の1つの成分は、それらに限定される訳ではないが、アルカン、アルケン、アルキン及びそれらの対応する酸及びアルコール、それらのエーテル及びエステル、及びそれらの混合物をはじめとする、代謝され得る、非毒性の油、好ましくは炭素数6-30のかかる油である。この油はアジュバントを投与する対象の体によって代謝されることができ、対象に対し非毒性である、植物油、魚油、動物油または合成製造した油であることができる。対象は動物、代表的には哺乳類、好ましくはヒトである。鉱油及び同様な有毒な油留出油は本発明から本質的に除外される。
本発明の油成分は長鎖のアルカン、アルケンまたはアルキン、またはそれらの酸またはアルコール誘導体、例えば遊離酸、その塩またはモノ、ジもしくはトリエステル(例えばトリグリセリド及び1,2-プロパンジオールや類似のポリヒドロキシアルコールのエステル)であることができる。アルコールは、モノまたは多官能酸、例えば酢酸、プロパン酸、クエン酸等を用いてアシル化できる。長鎖アルコールから導かれるエーテルであって、油であり、かつここに記述する他の基準にマッチするエーテルも用い得る。
個々のアルカン、アルケンまたはアルキン部分(moiety)及びその酸またはアルコール誘導体は6-30の炭素数を有する。該部分は直鎖または分枝鎖構造を有し得る。それは完全に飽和されていてもよいし、1以上の二重または三重結合を有していてもよい。モノまたはポリエステルまたはエーテルベースの油を用いる場合、炭素数6-30の制限は、全炭素計数でなく、個々の脂肪酸または脂肪アルコール部分に適用される。
本発明ではいずれの代謝性油、特に動物、魚または植物源からの油も用いることができる。油が投与される宿主によって代謝されることは必須である。そうでないと、油成分は膿瘍、肉芽腫または癌すら引き起こしかねず、また(獣医による実行において用いられる場合には)、代謝されなかった油が消費者に与える有害な作用により、ワクチン化した鳥や動物の肉をヒトの消費に受け入れられないものとする。
植物油源は木の実、種子及び穀類を包含する。木の実油の例としては、もっとも通常に入手し得る。落花生油、大豆油、やし油及びオリーブ油が挙げられる。種子油(seed oil)としてはサフラワー油、綿実油、ひまわり油、ごま油等が挙げられる。穀類群では、とうもろこし油がもっとも容易に利用できるが、他の穀類、例えば小麦、オート麦、ライ麦、米、テフ(teff)、ライコムギ等の油も用い得る。
植物油を得る技術は良く開発されており、周知である。これらの及び他の類似の油の組成は、例えばメルクインデックス、及び食品についての(source)材料、栄養及び食品技術に見出すことができる。
種子油中に天然には存在しない、グリセロールや1,2-プロパンジオールの6-10炭素脂肪酸エステルは木の実や種子油からの適当な出発物質の加水分解、分離及びエステル化によって製造できる。これらの製品はPVOインターナショナル社化学専門部(PVO International Inc.,Chemical Specialties Division)、416ディヴィジョンストリート(Division Street)、ブーンゴン(Boongon)、NJからネオ

入手し得る。
本発明のアジュバント及びワクチンには動物源からの油も用い得る。動物油脂は、それらがトリグリセライドとして存在し、魚や植物からの油より高い飽和度を有していることにより、通常、生理的温度で固体である。しかしながら、脂肪酸は、動物脂肪から遊離脂肪酸を生成する部分的なもしくは完全なトリグリセライドケン化によって得ることができる。哺乳動物の乳からの油脂は代謝され得るので、本発明の実施に用い得る。動物源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、ケン化及びその他の手段のための操作は当分野で周知である。
たいていの魚は容易に回収し得る、代謝性油を含んでいる。

得る魚油のいくつかを例示する。いくつかの分枝鎖油から炭素イソプレン単位を用いて生化学的に合成され、これらは一般にテルペノイドと称せられる。鮫肝油はスクアレン、2,6,10,15,19-23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサヘキサエンとして知られる分枝した不飽和テルペノイドを含有しているが、このものは本発明では特に好ましい。スクアレンの飽和類縁体であるスクアランも特に好ましい油である。スクアレンやスクアランをはじめとする魚油は商業源(commercial sources)から容易に入手することができるか当分野で既知の方法によって得ることができる。
これらのアジュバント及びワクチン製剤の油成分は、容量で、0.5-20%、好ましくは15%未満、特に1-12%の量存在させる。1-4%の油を用いるのがもっとも好ましい。
これらのアジュバント組成物の水部分(aqueous portion)は緩衝化した塩水(buffered saline)であるか、または好ましい態様では、まぜ物で品質を落していない(unadulterated)水である。これらの組成物は非経口投与を意図しているので、組成物と生理的流体の間の差異を示すイオン濃度による、投与後膨張や組成物の急速な吸収を防止するため、ワクチンとして用いられる最終的な緩衝化溶液を張度、すなわち浸透度(osmolality)が正常の生理的流体と本質的に同じであるように仕上げることが好ましい。正常の生理的条件と適合するpHを維持するため、塩水を緩衝化することも好ましい。また、ある場合には、組成物中のある成分、例えばグリコペプチドの安定性を確保するため、pHを特定レベルに維持することも必要となり得る。
いずれの、生理的に許容される緩衝剤も本発明で用いることができるが、リン酸塩緩衝剤が好ましい。他の許容される緩衝剤、例えば酢酸塩、トリス、重炭酸塩、炭酸塩等をリン酸塩緩衝剤の代替物として使用し得る。水性成分のpHは好ましくは6.0-8.0である。
しかしながら、アジュバントを最初に製造する際には、まぜ物をしていない水がエマルジョンの水性成分として好ましい。塩濃度を増すにつれて目的とする小滴サイズを達成することが困難になる。アジュバントから最終ワクチン製剤を製造する際、適切な浸透度の緩衝液中の抗原物質を加えて目的とするワクチン組成物を製造する。
これらの組成物中で用いる水性成分の量は組成物の値(value)を単一(unity)に導くのに必要な量である。すなわち、組成物を容量(volume)に導くために、100%にするに十分な水性成分の量を上記した他成分と混合する。
医薬科学では、一般に、実質数の乳化剤及び懸濁液を用いる。これらは天然由来物質、例えば木からのガム、植物蛋白質、糖ベース重合体(アルギネート、セルロース等)等を包含する。ある種のオキシ重合体または炭素主軸上にヒドロキシドもしくは他の親水性置換基を有する重合体、例えばポビドン(povidone)、ポリビニルアルコール、及びグリコールエーテルベースモノ及びポリ官能性化合物は界面活性を有する。長鎖脂肪酸由来化合物は本発明で用い得る乳化剤及び懸濁剤の第三の実質的群を形成する。上記界面活性剤は、非毒性である限り、いずれも有用である。
本発明で用いることができる適用な乳化剤(界面活性剤または洗剤とも称せられる)の具体的な例は以下の通りである:
1.水溶性石けん、例えば高級脂肪酸(C_(10)-C_(22))のナトリウム、カリウム、アンモニウム及びアルカノール-アンモニウム塩、特にタロー及びココナツナトリウム及びカリウム石けん
2.分子構造中に約8-20の炭素原子とスルホン酸基及び硫酸エステル基よりなる群から選ばれる基を有する有機硫酸反応産物の水溶性塩によって表し得るアニオン系合成非石けん洗剤。これらの例は、タローまたはやし油から導かれたアルキル硫酸ナトリウムもしくはカリウム;アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはカリウム;アルキルグリセリルエーテルスルホン酸ナトリウム;やし油脂肪酸モノグリセライドスルホン酸及び硫酸ナトリウム;高級脂肪アルコール1モルとエチレンオキサイド約1-6モルとの反応産物の硫酸エステルのナトリウムもしくはカリウム塩;アルキルフェノールエチレンオキサイドエーテルスルホン酸ナトリウムもしくはカリウム(エチレンオキサイドを1分子あたり1-10単位有し、またアルキル基は8-12の炭素原子を有する);脂肪酸をイソチオン酸でエステル化し、ついで水酸化ナトリウムで中和して得られる反応産物;メチルタウリド(methyl tauride)の脂肪酸アミドのナトリウムもしくはカリウム塩;SO_(3)でスルホン化したC_(10)-C_(24)α-オレフィンのナトリウム及びカリウム塩である。
3.アルキレンオキサイドグループと有機疎水性化合物との縮合によって製造される非イオン系合成洗剤。代表的な疎水性グループはプロピレンオキサイドとプロピレングリコールの縮合産物、アルキルフェノール、プロピレンオキサイドとエチレンジアミンの縮合産物、炭素数8-22の脂肪族アルコール及び脂肪酸アミドを包含する。
4.半極性を有する、アミンオキサイド、ホスフィンオキサイド、スルホキシド等の非イオン系洗剤。長鎖三級アミンオキサイドの具体例はジメチルドデシルアミンオキサイド、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ドデシルアミンを包含する。ホスフィンオキサイドの具体例は1967年2月14日に発行された米国特許3304263中に見い出され、ジメチルドデシルホスフィンオキサイド及びジメチル-(2-ヒドロキシドデシル)ホスフィンオキサイドを包含する。
5.式R^(1)-SO_(2)-R^(2)(式中、R^(1)及びR^(2)は置換または非置換アルキル基であり、前者は約10-約28の炭素原子を有し、R^(2)は1-3の炭素原子を有する)に相当するものをはじめとする長鎖スルホキシド。これらのスルホキシドの具体例はドデシルメチルスルホキシド及び3-ヒドロキシトリデシルメチルスルホキシドを包含する。
6.両性合成洗剤、例えば3-ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム及び3-ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム。
7.双性イオン(zwitterionic)合成洗剤、例えば3-(N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート及び3-(N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアンモニオ)-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホネート。
さらに、以下のタイプの乳化剤はいずれも本発明の組成物に用いることができる。(a)脂肪酸、ロジン(rosin)酸及びトール油の石けん(すなわち、アルカリ塩)、(b)アレーン(arene)スルホン酸アルキル、(c)分枝鎖及び直鎖の疎水性基の両方並びに一級及び二級サルフェート基を有する界面活性剤をはじめとするアルキルサルフェート、(d)疎水性基と親水性基の間の中間結合を含有するサルフェート及びスルホネート、例えば脂肪アシル化メチルタウリド(fattyaylated methyl taurides)及び硫酸化した脂肪酸モノグリセリド、(e)ポリエチレングリコールの長鎖酸エステル、特にトール油エステル、(f)アルキルフェノールのポリエチレングリコールエーテル、(g)長鎖のアルコール及びメルカプタンのポリエチレングリコールエーテル、及び(h)脂肪アシル(fatty acyl)ジエタノールアミド。界面活性剤は1より多くの方法で分類できるので、このパラグラフに掲げたいくつかのクラスの界面活性剤は前記した界面活性剤のクラスと重複する。
生物学的状況のために特にデザインされ、かつその状況下で通常用いられるいくつかの乳化剤がある。例えば、いくつかの生物学的洗剤(界面活性剤)がそのようなものとしてシグマ化学会社(Sigma Chemical Company)によってその生化学及び有機化合物の1987年カタログ(its 1987 Catalog of Biochemical and Organic Compounds)の310-316頁にリストされている。かかる界面活性剤は4つの基本タイプ、すなわち、アニオン系、カチオン系、双性イオン系、及び非イオン系に分けられる。アニオン系洗剤の例はアルギン酸、カプリル酸、コール酸、1ーデカンスルホン酸、デオキシコール酸、1ードデカンスルホン酸、N-ラウロイルサルコシン及びタウロコール酸を包含する。カチオン系洗剤はドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンザルコニウムクロライド、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、メチルベンゼトニウムクロライド及び4-ピコリンドデシルサルフェートを包含する。双性イオン系洗剤は3-〔(3-クロラミドプロピル)-ジメチルアンモニオ〕-1-プロパンスルホネート(通常CHAPSと略称される)、3-〔(クロラミドプロピル)-ジメチルアンモニオ〕-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(一般にCHAPSOと称せられる)、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート及びリソ(lyso)-α-ホスファチジルコリンを包含する。非イオン系洗剤の例はデカノイル-N-メチルグルカミド、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド、脂肪アルコールのエチレンオキサイド縮合物(例えば商品名ルブロール(Lubrol)の下に販売されている)、脂肪酸(特にC_(12)-C_(20)の脂肪酸)のポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンメルビタン脂肪酸エーテル(例えば商品名ツィーン(Tween)の下に販売されている)及びソルビタン脂肪酸エーテル(例えば商品名スパン(Span)の下に販売されている)を包含する。
特に有用な界面活性剤群はソルビタンベース非イオン系界面活性剤である。これらの界面活性剤はソルビトールを脱水して1,4-ソルビタンを得、ついでこれを1当量以上の脂肪酸と反応させることによって製造する。脂肪酸置換部分はさらにエチレンオキサイドと反応させて第二の界面活性剤群を得ることができる。
脂肪酸置換ソルビタン界面活性剤は、1,4-ソルビタンと脂肪酸、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸もしくは類似の長鎖脂肪酸とを反応させて1,4-ソルビタンモノエステル、1,4-ソルビタンセスキエステルまたは1,4-ソルビタントリエステルを生成させることによって製造する。これらの界面活性剤の通常なものの例として、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート及びソルビタントリオ

ノ、ジ及びトリエステル置換ソルビタンを識別する文字もしくは数字の名称を有している)の名の下に商業上入手し得る。
スパン及びアーラセル界面活性剤は親水性で一般に油に可溶であるか分散し得る。これらはまたたいていの有機溶媒に可溶である。それらは水には一般に不溶であるが、分散し得る。一般に、これらの界面活性剤は1.8-8.6の間の親水性-親油性バランス(HLB)を有している。かかる界面活性剤は当分野で既知手段によって容易に製造できるか、または例えばICIアメリカ会社(ICI America’s Inc.)、ウ

なる登録商標の下に市販されている。
関連する界面活性剤群はポリオキシエチレンソルビタンモノエステル及びポリオキシエチレンソルビタントリエステルを包含する。これらの物質は1,4-ソルビタンモノエステルもしくはトリエステルにエチレンオキサイドを付加することによって製造される。ポリオキシエチレンの付加により、親油性のソルビタンモノもしくはトリエステル界面活性剤は、一般に、水に可溶であるか分散できて、かつ有機液体に変化した程度で可溶である親水性界面活性剤に変化する。

物質は、水中油エマルジョン及び分散液を製造するために、または油を可溶化し、無水軟膏(anhydrous ointments)を水溶性にするか水で洗えるようにするために有用である。ツィーン界面活性剤は、エマルジョンの安定性を高めるため、関連したソルビタンモノエステルもしくはトリエステル界面活性剤と組み合わせてもよい。ツィーン界面活性剤は、一般に、9.6-16.7のHLB値を有する。ツィーン界面活性剤はいくつかの製造業者、例えばICIアメリカ会社、ウィル

活性剤の下に市販されている。
単独で、もしくはスパン、アーラセル及びツィーン界面活性剤と共に使用し得る非イオン界面活性剤の第3の群はエチレンオキサイドと長鎖脂肪酸との反応によって製造されるポリオキシエチレン脂肪酸である。このタイプでもっとも普通

されている、ステアリン酸のポリオキシエチレン誘導体である。ミルジ界面活性剤は、ツィーン界面活性剤と同様、親水性で水に可溶もしくは分散性である。ミルジ界面活性剤は、エマルジョン形成における使用に際し、ツィーン界面活性剤とまたはツィーン/スパンもしくはアーラセル界面活性剤混合物とブレンドすることができる。ミルジ界面活性剤は当分野で既知の方法によって製造できるか、またはICIアメリカ会社から市販されている。
ポリオキシエチレンベースの非イオン界面活性剤の第4の群はラウリル、アセチル、ステアリル及びオレインアルコールから導かれるポリオキシエチレン脂肪酸エーテルである。これらの物質は、上記と同様にして、脂肪アルコールへのエチレンオキサイドの付加によって製造される。これらの界面

剤はそのポリオキシエチレン部分のサイズによって親水性^(TM)または親油であり得る。これらの化合物の製造は当分野で既知の方法により行えるが、これらはまたICIアメリカ会社等の商業源から容易に入手できる。
本発明の実施に用いられる可能性がある他の非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシプロピレン脂肪エーテル、ポリオキシエチレン含有蜜ろう、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪グリセリド、グリセロール脂肪酸エステルまたは他のポリオキシエチレン酸アルコールまたは炭素数12-22の長鎖脂肪酸のエーテル誘導体が挙げられる。
本発明のアジュバント及びワクチン製剤は多相系であるように意図されているので、約7-16の範囲のHLB値を有する非イオン界面活性剤を選ぶことが好ましい。この値はツィーン界面活性剤等の単一の非イオン系界面活性剤の使用によって得ることができ、またソルビタンモノ、ジもしくはトリエステルベース界面活性剤;ソルビタンエステルポリオキシエチレン脂肪酸;ポリオキシエチレンラノリン由来界面活性剤と組み合わせたソルビタンエステル;高HLBポリオキシエチレン脂肪エーテル界面活性剤;またはポリエチレン脂肪エーテル界面活性剤もしくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸を用いるが如き界面活性剤ブレンドを使用することによっても達成できる。
本発明の実施におけるエマルジョン安定化非イオン界面活性剤として、非イオン界面活性剤、特にツィーン界面活性剤を単独で用いるのがより好ましい。上記界面活性剤の中で、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエートについて、ツィーン80として命名された。もしくはポリソルベート80として知られる界面活性剤がもっとも好ましい。
小滴サイズの十分な減少は、通常、界面活性剤を重量(w/w)で0.02-2.5%の量で存在させることによって行う。0.05-1%の量が好ましく、0.01-0.5%が特に好ましい。
本発明にいう小滴サイズに到達する経緯は本発明の実施にとって重要でない。サブミクロン油小滴を得ることができる1つの方法は市販の乳化機、例えばミクロフルーイディクス(Microfluidics)社、ニュートン、MAから入手し得るモデルNo.110Yを使用することである。他の市販乳化機はゴウリン(Gaulin)モデル30CD〔ゴウリン社、エバーレット(Everett),MA〕及びレイニー・ミニラブ(Rainnie Minilab)タイプ8.30H〔ミロアトマイザーフード・アンド・ダイアリイ社(Mino Atomizer Food and Dairy Inc.,ハドソン,WI〕を包含する。これらの乳化機は、高圧下で小さな開口を通して流体を強制的に流すことによって生じさせた高剪断力の原理によって働く。モデル110Yを5,000-30,000psi(約340-約2042気圧)で運転する場合、100-750nmの直径を有する油小滴が得られる。
油小滴のサイズは、油に対する洗剤の比(比を上げると小滴サイズは減少する)、操作圧(操作圧を上げると小滴サイズは減少する)、温度(温度を上げると小滴サイズは減少する)を変化させることによって、及び両親媒性免疫刺激剤の添加(かかる剤の添加によって小滴サイズは減少する)によって、変えることができる。実際の小滴サイズは、特定の洗剤、油及び(用いる場合の)免疫刺激剤によって、及び選んだ特定の操作条件によって変化する。小滴サイズはサイズを測る装置、例えば市販のコールター社(Coulter Corporation)製サブミクロン粒子分析機(Sub-Micron Particle Analyzer)(モデルN4MD)の使用によって確かめることができ、またパラメーターは、実質上すべての小滴が直径で1ミクロンより小さく、好ましくは0.8ミクロンより小さく、もっとも好ましくは0.5ミクロンより小さくなるまで、上記ガイドラインに沿って変えることができる。実質上すべてとは、(数で)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、及びもっとも好ましくは少なくとも98%を意味する。粒径分布は代表的にはガウス分布であり、その場合、平均直径は記述された限界より小さくなる。
本発明は満足な免疫原性のためのサブミクロンエマルジョンに関して使用するよう、従来先行技術で教示されてきた他の成分、すなわち、例えば米国特許4,772,466及び4,770,874及びヨーロッパ特許出願0315153A2においてアジュバントに関して使用するよう記述されたが如きポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック重合体の不存在下に油エマルジョンを製造することによって実施する。
本発明のアジュバント組成物は代謝し得る水中油とPOP-POE共重合体以外の乳化剤より本質的になる。乳化剤は特異的免疫刺激活性を有する必要はない。この理由は、油小滴がサブミクロン範囲にある場合には、油組成物自体がアジュバントとして機能し得るからである。しかしながら、いずれかの既知の免疫刺激剤を組成物中に含ましめることによって高められた免疫刺激活性を得ることができる。これらの免疫刺激剤は乳化剤や油とは別個のものであってもよく、または免疫刺激剤と乳化剤が1つの同じ分子であってもよい。前者の場合の例は死滅したミコバクテリア、例えばミコバクテリウム・チュバキュロシス及びそれらの亜細胞成分と混合した代謝性油を包含する。付加的な免疫刺激物質はかかる細菌の細胞壁の成分であるムラミル(muramyl)ペプチドを包含する。いくつかの好ましいムラミルペプチドを下に示す。乳化/免疫刺激共用剤の例は上に引用したサンチェズ・ペスカドールらの2つの刊行物中に記載された親油性ムラミルペプチドである。これらの物質は免疫刺激基として働く基本の(basic)N-アセチルムラミルペプチド(親水性部分)を含有すると共に、化合物に界面活性性を与える親油性部分も包含する。かかる化合物、及び他のタイプの両親媒性免疫刺激物質は免疫刺激剤としても乳化剤としても作用し、本発明の実施に好ましい。さらに、両親媒性免疫刺激物質を、両親媒性でない第2の免疫刺激物質と組み合わせて使用して本発明を実施することも可能である。1つの例は本質的に非置換の(すなわち、本質的に親水性の)ムラミルジペプチドと組み合わせて親油性ムラミルペプチドを用いることである。
本発明の好ましい免疫応答刺激ムラミルペプチド(またはより正確にはグリコペプチド)は、エロウズ(Ellouz)ら、(1974)Biochem.& Biophys.Res.Comm.,59(4),1317によって、フロインド完全アジュバントのM.チュバキュロシスのミコバクテア成分中の免疫アジュバント活性を有する最小有効単位であることが決定されたN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミンに関連し、かつ一般にこれから導かれる1群の化合物である。結果として、いくつかのジペプチド及びポリペプチド置換ムラミン酸誘導体が開発され、免疫刺激活性を有することが見出された。
これらのグリコペプチドは種々の化合物群であるが、一般に下記式Iによって表すことができる:

式中、ピラン環酸素は水素、アルキルまたはアシル等によって置換されているか、または、特に6位酸素は、窒素ベース置換基によって置き代えることができ、2-アミノ基はアシル基またはいずれかの他のアミドであり、ラクチル側鎖は修飾され、例えばエチルもしくは別の2位(two-position)アルキル部分であり、及びペプチド官能基は、さらに誘導体化され(derivatized)でいてもよい、ジペプチドまたはポリペプチドである。ピラノシル化合物のフラノシル類縁体も免疫賦活活性(immunopotentiating activity)を有し、本発明で有用である。
本発明のグリコペプチド中には米国特許4235771及び4186194に記述されたような、メソ-α,ε-ジアミノピメリン酸が結合した二糖類及び三糖類が含まれる。
本発明の実施に使用し得る免疫応答刺激性グリコペプチドは米国特許4094971,4101536,4153684,4235771,4323559,4327085,4185089,4082736,4369178,4314998及び4082735及び4186194に記載されている。これらの特許に開示されたグリコペプチドをここに参考に加入し、これらはここに十分に記載されたように本発明の一部とされる。日本特許出願JP40792227,4079228及び41206696も本発明の実施に有用である。
これらの化合物を製造する方法はすでに開示されており、当分野で周知である。製造プロセスの例示は米国特許4082736及び4082735に見い出し得る。付言すれば、類似の製造プロセスは先行パラグラフで掲げた米国特許にも見い出される。
好ましいグリコペプチドは式II

〔式中、
Rは炭素数1-22の非置換または置換アルキル基、または炭素数6-10の非置換または置換アリール基であり、
R^(1)及びR^(2)は同一であるかもしくは異なり、水素または炭素数1-22のアシル基であり、
R^(3)は水素、炭素数1-22のアルキルまたは炭素数7-10のアリールであり、
Rは水素またはアルキルであり、
nは0または1であり、
X及びZは独立してアラニル、バリル、ロイシル、イソロイシル、α-アミノブチリル、トレオニル、メチオニル、システイニル、グルタミル、グルタミニル、イソグルタミル、イソグルタミニル、アスパルチル、フェニルアラニル、チロシル、リジル、オルニチニル、アルギニル、ヒスチジル、アスパラギニル、プロリル、ヒドロキシプロリル、セリルまたはグリシルであり、
R^(5)は末端アミノ酸のエステル化もしくはアミド化されていてもよいカルボキシル基であり、及び
Yは-NHCHR^(6)CH_(2)CH_(2)CO-(式中、R^(6)はエステル化もしくはアミド化されていてもよいカルボキシル基である)である〕を有するグリコペプチドである。
アルキルは、他に注記のない場合、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチルまたはそれらの異性体によって例示される、炭素数1-7の直鎖または分枝鎖基である。低級アルキルは炭素数1-4の基である。
任意にエステル化またはアミド化されたカルボキシル基は、カルボキシル基自体、もしくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど、低級アルカノールでエステル化されたカルボキシル基、またはカルバモイル基である。このカルバモイル基は、その窒素原子のところで、未置換のもの、またはアルキル基(特には、低級アルキル基)、アリール基(特には、フェニル基)もしくはアリールアルキル基(特には、ベンジル基)で一置換もしくは二置換されたものである。カルバモイル基は、ブチリデンまたはペンチリデン基といったアルキリデン基で置換されていてもよい。さらに、カルバモイル基R^(5)は、その窒素原子のところで、カルバモイルメチル基で窒素されていてもよい。
特に好ましい化合物は、式IIで示されるものであって、式中、RおよびR^(1)は、同一または異なることもあるが、水素、または炭素数1?22のアシル基であり、R^(2)はメチル基であり、R^(3)は水素であり、XはL-アラニル基であり、YはD-イソグルタミニル基であって、nは0である。
グリコペプチド類のまた別の好ましい基は、RおよびR^(1)が水素または炭素数1?22のアシル基であり、R^(2)がメチル基であり、R^(2)が水素であり、R^(4)がメチル基もしくはブチル基であって、XがL-バリル、L-セリル、L-アラニル、L-スレオニルもしくはL-α-アミノブチリル基となっている、式IIで示される化合物である。
特に例えば、以下のような化合物が挙げられる。
・N-アセチルムラミル-L-α-アミノブチリル-D-イソグルタミン、
・6-O-ステアロイル-N-アセチルムラミル-L-α-アミノブチリル-D-イソグルタミン、
・N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン、
・N-アセチルムラミル-L-バリル-D-イソグルタミン、
・N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-グルタミンn-ブチルエステル、
・N-アセチル-デスメチル-D-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、
・N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-グルタミン、
・N-アセチルムラミル-L-セリル-D-イソグルタミン、
・N-アセチル(ブチルムラミル)-L-α-アミノブチリル-D-イソグルタミン、および
・N-アセチル(ブチルムラミル)-L-アラニル-D-イソグルタミン。
免疫刺激グリコペプチドの有効量は、このグリコペプチドが併用投与されなかった際に認められる力価レベルを超えて、抗原と併用投与した場合の抗体価レベルに増加をもたらす量である(一般に、全組成物の0.0001?10%の範囲)。周知のことではあるが、各グリコペプチドには、他のグリコペプチドとは異なる有効投与量があり得る。したがって、単独用量の範囲では、この発明の範囲中で可能な各グリコペプチドに適確に処方することはできない。しかし、一般には、このグリコペプチドを0.001?5重量%の量でワクチン中に含ませることが好ましいであろう。より好ましい量は、0.01?3重量%である。
上記の免疫刺激グリコペプチドは、基本的には親水性化合物である。したがって、これらを別個の乳化剤(これは、上記のとおり免疫刺激剤ともなり得る)とともに使用することが考えられる。上記の化合物が親油性を有することもある。例えば、糖部分に脂肪酸の置換基および/またはアリール置換基を含む化合物、特に炭素数14?12からなる1つ以上のアシル基を含む化合物、特にこういったアシル基を2つ以上含む化合物が挙げられる。しかし、カルボキシレート基またはペプチド部分の側鎖を介して脂質部分を付与することによって、ムラミルペプチドに親油性を与えることも可能である。特に末端カルボキシレート基を介してペプチド部分に結合した脂質の基によって、好ましい化合物群が生じる。この結合は、例えば、末端カルボキシレート基と炭素数14?22の脂肪酸アルコールとの間でエステル結合を直接形成することによって、またはエステルまたはアミド結合を介して脂質にカルボキシレートを結合させる、エタノールアミンなどの二機能性連結基を用いることによって、容易に可能となる。ホスフェート基が容易に結合可能な機能性基を提供するので、ホスホリピド類は、この発明のこの実施態様で特に好ましいものである。ジアシルホスホグリセリド類は、そういった1つの容易に結合し得るホスホリピドを提供する。ホスファチジルエタノールアミンは、容易に入手できて天然に存在する化合物であるが、アミド結合を介してペプチド部分の末端カルボキシレートに容易に結合し得る。末端カルボキシル基に対する他の脂質には、アクリツグリセロール類、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、およびスフィンゴミエリンが挙げられる。
多数の好ましい両性免疫刺激ペプチドは、以下の式IIIを有するものである。

式中、R,R^(1),R^(2),R^(3),R^(4),X,Y,Zおよびnは、前記の通りである。Lは、上記の脂質部分のような脂質部分を示す。
すなわち、この分子のムラミン酸部分とペプチド部分が一緒になって、親水性部分が生じる。この部分中には親油性部分も存在し、この親油性は、長鎖の炭化水素基によって与えられ、一般には、脂肪酸の形で存在している。この脂肪酸または他の炭化水素含有基は、糖の水酸基に結合し得るか、分子のペプチド部分に結合し得る。後者の場合、脂肪酸をペプチド部分に存在するアミノ基と反応させるなどして直接結合を起こすか、アミド結合形成によるペプチドのカルボン酸基とホスフェート基などの脂質中の官能基との間の連結を形成するヒドロキシアルキルアミンのような連結基を介して結合し得る。リン脂質部分は、親油性のムラミルペプチドを形成する上で特に好ましい。好ましい化合物群には、ヒドロキシアルキルアミン部分を介してリン脂質部分に結合した、ムラミルジペプチド類およびトリペプチド類が含まれる。1例であって、特に好ましい化合物は、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミル-L-アラニン-2-〔1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-(ヒドロキシホスホリルオキシ)〕エチルアミド(略称:MTP-PE)がある。
このアジュバント組成物は、一般に、ワクチン中で使用予定の抗原とアジュバントを組み合わせる前に、上記の成分から調製される。この抗原とは、タンパクまたはタンパク-多糖、タンパク-リホ多糖、多糖、リホ多糖、ウイルスサブユニット、完全なウイルスまたは完全な細菌を含むいかなる物質をもさす。これらウイルスや細菌は、ある動物の血流中で異物である場合、こういった動物の組織に接近すると同時に、特異的抗体の形成を刺激し、生体内または生体外で均質な抗体と特異的に反応する。さらに、その抗原は、これに対する受容体を有するT細胞の増殖を刺激し、リンパ球と反応が可能であって、細胞性免疫と呼ばれる一連の応答を開始させる。
ハプテンは、この定義中にあり、免疫的特異性を決定する抗原性分子または抗原複合体の一部である。通常、ハプテンは、天然に存在する抗原中にあるペプチドまたは多糖である。人工抗原では、それは、アルサニル酸誘導体のような低分子量物質であることもある。ハプテンは、生体内または生体外で抗体またはT細胞と特異的に反応するであう。さらに別の決定因子は、抗原決定基、抗原構造群およびハプテン群である。
この発明のワクチンの製造には、有効量の抗原が使用されるであろう。すなわち、それには、アジュバントと組み合わせて、被験者に特異的で十分な免疫学的応答を起こさせ、その結果、被験者を、ウイルス、細菌、真菌、マイコプラズマ、または寄生虫への暴露から防ぎ、それらに対する免疫力を与える抗原の量が含まれているであろう。
抗原は、当該分野で既知の方法によって調製されても、市販品として購入することもできる。例えば、米国特許第4,434,157号、第4,406,885号、第4,264,587号、第4,117,112号および第3,996,907号は、ここに参照のために組み込まれたものであって、これらには、ネコの白血病ウイルスのワクチンを製造する方法が記載されている。この発明の範囲に入る抗原としては、不活性ウイルス粒子全体、単離されたウイルスタンパクおよびタンパクのサブユニット、完全な細胞および細菌、細胞膜、細胞壁タンパクなどが挙げられる。この発明のワクチンは、コレラ、ジフテリア、破傷風、百日咳、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふくかぜ、ペスト、ポリオ、狂犬病、ロッキー山熱、風疹、痘瘡、腸チフス、発疹チフス、ネコ白血病ウイルスおよび黄熱病など、あらゆる疾病および感染症に対して、鳥および動物を免疫するために使われてもよい。
この発明で使用されることがあるどの抗原に対しても、特定な指針を提示するような単一の命名法はとり得ない。抗原の有効量は、その固有の活性および純度の関数である。この発明のアジュバント組成物が、完全な細胞またはウイルスのワクチンとともに使用されることもあり、組換えDNA技術または合成法によって調製された精製抗原またはタンパクサブユニットもしくはペプチドのワクチンとともに使用される場合もあることが考慮される。
この発明のアジュバント組成物は安定であるために、抗原およびエマルションを簡単な震盪によって混合することができる。このアジュバントと、抗原の溶液または懸濁液との混合物を小さな穴(皮下注射の針など)に迅速に通過させるなど、その他の方法によって、有益なワクチン組成物が得られる。
この発明は、ここで一般的に記載したものであって、同様のことは、以下の詳細な実施例を参照により容易に理解されよう。ただし、これらの実施例は、例示のために提供したものであって、特記のない限りこの発明を限定する意図はない。
実 施 例 1
一般的手法
特記のない限り、以下の一般的手法を以降の実施例で使用した。
材 料
MTP-PEは、チバガイキー社(スイス,バーゼル州)から供与された。スクアレンおよびTween 80は、シグマ社(ミズリー州セントルイス)から得られた。CFAおよびIFAは、ギフコ社(ニューヨーク州グランドアイランド)から得られた。水酸化アルミニウム(Rehsorptar)は、レーイス社(ニュージャージー州バークレイハイツ)から得られた。
エマルションの調製
方法1:注射針法。リン酸緩衝液(PBS)に溶けた、4%スクアレン、0.008%Tween 80、250μg/mlMTP-PEおよび抗原の混合物を23番ゲージ針に6回通した。このエマルションは、10ミクロン次元の油滴サイズからなり、MTP-PE-LOと称する。
方法2:カークランドエマルシファイヤー法。上記の混合物をカークランド乳濁機に5回通した。このエマルションは、主に1?2ミクロンの油滴からなり、MTP-PE-LO-KEと称する。このカークランド乳濁機(カークランドプロヅクツ社、カリフォルニア州ウォールナットクリーク)は、作動室で約1000psiを生じる、市販の刃つきホモジェナイザー(例えば、Gaulin Model 30CDおよびRainnie Minilab Type 8.30H)の小型機である。
方法3:マイクロフルイダイザー(microfluidizer)法。Tween 80の有無にかかわらず、0.3-18%のスクアレンおよび0.2-1.0mg/mlのMTP-PEを含む混合物を、5000?30000PSIでマイクロフルイダイザー(モデルNo.110Y、ミクロフルイディクス・ニュートン社、マサセッツ州)を通した。一般に、マイクロフルイダイザー中でエマルション50mlは5分間で、同100mlは10分間で混合された。得られたエマルションは、100?750nmの油滴からなり、スクアレン、MTP-PE、ならびに界面活性剤濃度およびマイクロフルイダイザーの作動圧および温度に依存していた。このエマルションをMTP-PE-LO-MFと称する。
抗原を調製後、上記のアジュバント配合物に添加した。この抗原およびエマルションを、震盪によって混合した。CFAおよびIFAを使用した場合、PBS中の抗原を等量のCFAまたはIFAと混合させた。濃厚なエマルションが得られるまで、この混合物を皮下注射針に通過させた。
抗 原
単純ヘルペスウイルス(HSV)rgD2は、遺伝子工学的に処理したチャイニースハムスター卵巣細胞によって作られた組換体タンパクである。このタンパクは、切り出された通常のアンカー領域を有しているため、組織培養液中に分泌されるグリコシル化タンパクとなる。このgD2を純度90%以上にまでCHO培地中で精製した。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)env 2-3は、遺伝子工学的に処理した酵母菌(Saccharomyces cerevisae)によって作られたHIVエンベロープタンパクの組換体である。このタンパクは、HIVgp120の全タンパク領域を表すが、その酵母から精製されるので非グリコシル化されず、未変成である。HIVgp120は、完全にグリコシル化されたタンパクであって、上記のgD2と同様の方法でCHO細胞中で産生されたgp120の分泌型である。
動物の免疫化
マウスに、腹腔内、筋肉内または皮下の経路で、さまざまなアジュバント/抗原配合物を注射した。テンジクネズミを、その足の裏または筋肉内から免疫化した。ウサギ、ヤギおよびヒヒを、それらの筋肉内から免疫した。
免疫応答の解析
免疫化抗原に対する抗体の力価を、酵素結合免疫吸収法(ELISA)によって測定した。
実 施 例 2
大型動物におけるMTP-PE-LO製剤
(比 較 例)
大型動物で免疫能を刺激するためにMTP-PE-LO配合物を用いて、最初にHIVenv 2-3抗原で、後からHSVgDタンパクで、多数の実験を行った。これらの実験を以下に概説する。
1.HIVenv 2-3
a.テンジクネズミ。テンジクネズミを、その足の裏または筋肉内から50μg/用量のenv 2-3で1ヵ月毎に免疫化した。ワクチンは、MTP-PE-LO配合物(4%スクアレン、0.008%Tween 80,50μg/用量のMTP-PE)とともに投与するか、アルム(0.7%水酸化アルミニウム)に吸収させた。血清を、各免疫化の1週間後に集め、その抗env 2-3抗体をELISAによって解析した。結果を表1に示す。このMTP-PE-LO配合物は、筋肉内と足の裏の両方に投与した場合、高い抗env 2-3力価を示した。対照的に、アルムは、両方の経路によっても非常に低い力価を示した。この実験によって、テンジクネズミにおけるMTP-PE-LO配合物の有効性が説明される。


b.ヤギ。一対のヤギに、0ないし500μgのさまざまな量のMTP-PEを含むMTP-PE-LO配合物とともに、初期の免疫化では1μgのenv 2-3を、第2の免疫化では500μgのenv 2-3を投与した。陽性の対照動物には、CFAとともに初期の免疫化およびIFAとともに第2の免疫化を行った。また、1群には、MTP-PE100μgを含むMTP-PE-LO配合物とともに、初期の免疫化で100μgのenv 2-3を、次の免疫化で50μgのenv 2-3を投与した。表2に示すように、フロインドアジュバントを投与された両方のヤギは、2700から62800の高い抗体価を示した。対照的に、MTP-PE-LO配合物を投与されたヤギのほとんどは、抗env 2-3抗体に関して陰性であった。応答のなかった動物だけが、100?600の範囲の力価を示した。これらの結果は、上記のテンジクネズミとは全く対照的である。

^(a):STは、低い油形成;4%スクアレン、0.008% Tween 80。
^(b):<<100は、希釈率1/100でバックグラウンドを越えなかったenv 2-3のELISA力価を示す。
^(c):<100は、この検定法でバックグラウンドを越えないが最大シグナルの半分未満であった、希釈率1/100でのenv 2-3のELISA力価を示す。
c.イヌ。ビーグル犬に、MTP-PE-LO(MTP-PE100μg)中の250μgのenv 2-3、またはMTP-PE-LO配合物のみを3週間隔で免疫化した。各免疫化の10日後、動物を放血させ、ELISAによって抗env 2-3抗体価を測定した。表3から分かることではあるが、env 2-3およびアジュバントを投与された2匹のイヌでは抗env 2-3抗体の力価が上がらず、これらの力価はテンジクネズミの場合にみられたレベル(2匹の免疫化動物で最大力価1700および6300)まで達しなかった。さらに、これらの動物は、ホモ(SF2)またはヘテロ(BRUまたはZr6)HIV株に対する、ウイルスの中和抗体を生じなかった。

^(a):21日毎にビオシンアジュバント(100μgMTP-PE)中に溶けた250μgのenv 2-3を筋注されたイヌ。血液試料を各注射の10日目に採取した。
^(b):1/100の血清希釈率でシグナルが全く検出されない場合、<<100のELISA力価を掲示する。
^(c):<20の中和力価は、最も濃縮された試験血清(1/20で中和が全く認められないことを示す。
d.ブタ。ブタに、MTP-PE-LO(MTP-PE100μg)とともに1mgのenv 2-3を免疫化した。対照の動物にはアジュバントのみを投与した。それぞれの免疫化の10日後に、動物を放血し、ELISAによって抗env 2-3抗体価を測定した。表4の結果から分かることではあるが、2匹の免疫化動物は、低い抗env-2力価(それぞれ、140および100)のみを生じ、ホモ(SF2)またはヘテロ(BRUまたはZr6)に対する、ウイルスの中和力価は検出されなかった。

^(a):ブタには、ビオシンアジュバント(MTP-PE100μg)中の1mgのenv 2-3を21日毎に投与した。血清は、各免疫化の10日後に採取した。
^(b):<<50の力価を有する際、1/50の血清希釈率ではシグナルを示さないものは掲示しない。
^(c):1/50の血清希釈率において低いが検出可能なシグナル。
^(d):1/20の血清希釈率では中和は見られず、ほとんど濃縮された希釈物を試験した。
e.サル。アカゲザルに、MTP-PE-LO(MTP-PE100μg)とともに250μgのenv 2-3を免疫化した。対照の動物には、アジュバント配合物のみを投与した。各免疫化の1週間後、動物を放血させ、ELISAによって抗env 2-3抗体の力価を測定した。表5から分かることではあるが、イヌと同様に、あらゆる動物にenv 2-3に対する抗体価が生じたが、これらの力価は300?3100の範囲であって、先のテンジクネズミで見られたものよりかなり低かった。

2.HsV gD
a.ヤギ。一連のアジュバント組成物をヤギでgD2を用いた試験した。動物を、さまざまなアジュバントとともに100μgのgD2で21日毎に免疫した。2回目および3回目の免疫から10日後、動物を放血し、抗gD2の力価をELISAによって測定した。以下のアジュバント組成物を使用した。CFA(1°)、次いで、IFA(2°および3°)、100μgのMTP-PEを含むIFA、0.8mg/mlの水酸化アルミニウム(アルム)、MTP-PE-LO(100μgのMTP-PE)、MTP-PE-LO-KE(100μgのMTP-PE)およびMTP-PE-LO-KE(12%スクアレン、5.0mgのMTP-PE)。ELISAの結果を表6に示す。1匹のCFA/IFA動物、MTP-PE/IFAの両動物、および1匹のMTP-PE-LO-KE(5mgMTP-PE)動物は、高い抗体価を示した(2187-13、172)。1匹のCFA/IFA動物、およびアルムの両動物、および1匹のMTP-PE-LO-KE(5μgMTP-PE)は、中程度の抗体価を示した(5691489)。MTP-PE-LOの動物、およびMTP-PE-LO-KEの動物は、低い抗gD2力価を示した(46-323)、このように、上記でenv-2を使用したときのように、MTP-PE-LO配合物は、ヤギで高い抗体価を引き出せない。このエマルションをカークランド乳濁装置を使って修飾しても(1?2ミクロンの油滴サイズ)、アジュバントの性能は向上しなかった。MTP-PEを大量(5.0mgまで)投与すれば、アジュバントの性能の向上が認められた。

b.ヒヒ。幼若なヒヒを、アルム、MTP-PE-LO-KE,MTP/IFAおよびIFA単独とともに配合したgD2で免疫した。さらに、アルムおよびMTP-PE-LO-KEと配合したgD2に関する用量依存性試験を実施した。2?3才のヒヒ(3.4?12kg)を、3週間間隔で筋注によって免疫した。最初の2回の免疫化から3週間後、およびELISAによるgD特異的抗体の定量のため最後のワクチン投与から2週間後、血清を集めた。全血細胞分析(CBC)のために3回の時点のそれぞれで、全血を採取した。アルムに結合した100μgのgD2で免疫したヒヒは、3349±550の抗gD2平均抗体価を生じた。試験した3種類の抗体用量(10,25,100μgのタンパク)での力価に有意差は認められなかった。250μgのMTP-PE-L

2、または50μgもしくは1000μgのMTP-PE-LO-KEとともに乳化した25μgのgD2を投与した4群の動物における抗体応答は、25μgのgD2および250μgのMTP-PE-LO-KEでワクチン処理したgD2/アルム(平均範囲、1300?3900)で免疫した群の値に類似していた。IFAで乳化したMTP-PEを、この試験における正の対照群として使用した。アルムで免疫した動物は、MTP/IFAワクチンの力価の約1%である力価を示し、MTP-PE-LO-KEで免疫した動物の力価は、MTP/IFAの0.5?1.3の範囲であった。これらの結果を表7に総括する。

ワクチンに対する副作用はどの動物においても認められず、CBCプロフィルは正常であった。
実施例3
大型動物で免疫を刺激した際に有効なMTP-PE-LO配合物
実施例2で示したように、MTP-PE-LO配合物は注射器および注射針(?10ミクロン滴下のサイズ)を用いて調製されるが、カークランド乳化機(1?2ミクロンの滴下サイズ)を用いたのでは大型動物およびヒトでワクチンの抗原に対するよい免疫刺激は得られなかった(データは示さない)。マイクロフルイダイザー110Y型を用いて小滴で安定なエマルションを調製した。この装置は、高圧(5000?30000PSI)で水中に沈められるジェットタイプの乳化機である。一連のエマルションは、スクアレン、Tween 80およびMTP-PE、ならびに温度および操作圧といった物理的パラメーターパラメーに基づいて、サイズおよび安定性を変えることによって調製される。このマイクロフルイダイザーを使ったつくられた数々のエマルションの例を表8に示す。物理的パラメータおよびエマルション濃度を変えて、1ミクロンから0.2ミクロンまでの油滴サイズを変えることができる。表8に示すように、エマルションの滴サイズを低下させるパラメータは、スクアレンに対する界面活性剤濃度の増加、MTP-PE濃度の増加、操作圧の増大、および操作温度の増大である。これらの小滴サイズのエマルションは、次いで、ヤギおよびヒヒでワクチン抗原のためのアジュバントとして試験にかけられた。

1.ヤギで使用したHSVgD2
gD2抗原を用いて使用した最初のマイクロフルイダイザーでは、Tween 80を含まない4%スクアレン、100μg/mlMTP-PEエマルション(MTP-PE-LO-MF#13;MTP-PE-LO-MF配合物の番号づけは任意であって、参照番号として使っただけである)を使用した。この物質は、そのマイクロフルイダイザー中で低圧下で作られたものであって、約0.8ミクロンの油滴サイズを有していた。この配合物中の100μgのgD2を用いて21日間隔で3回筋肉内から免疫した。最初にCFA中に、2回目にIFA中に溶けた100μgのgD2で免疫したヤギは、対照とした。2回目および3回目の免疫化の10日後に、この動物を放血させ、抗gD2抗体の力価をELISAによって測定した。結果を表9に示す。MTP-PE-LO-MFと投与された両動物は、有意な抗gD2力価を示した。これらの力価1661?2966は、2匹のCFA/IFA対照ヤギ(140-24,269)の力価に比べて中間の値であった。MTP-PE-LO-MF動物は、注射器および注射針、またはカークランド乳化機で調製したMTP-PE-LOを投与されたヤギより有意に高い力価を示した(表6参照)。ヤギでの第2の実験では、100μgのgD2をMTP-PE-LO-MF#16とともに21日毎に投与した。この配合物は4%のスクアレン、500μg/mlのMTP-PEおよびOTween 80からなるものである。このエマルションの油滴サイズは0.5?0.6ミクロンであった。表10に見られるように、この配合物は、従来の配合物より高い抗体価をもつようであった。こうして、油滴サイズの減少、および/またはMTP-PEの増加によって、このエマルションのアジュバント性能が改善される。

^(a):4%スクアレン、100μg/mlMTP-PE、OTween 80、水、約0.8ミクロンの油滴サイズ
^(b):N.T.=試験せず。免疫化とは無関係の原因で死亡した動物。

(a)MTP-PE-LO-MF#16-4%スクアレン、500μg/mlMTP-PE、OTween 80、H_(2)O。油滴サイズ0.5?0.6ミクロン。
2.ヤギにおけるHIVenv 2-3及びgp120
HIV抗原env 2-3及びgp120を用いて、マイクロフルイダイザー(microlluidizer)調製物をアジュバントとしてのCFA/IFA及びMTP-PE-LO-KEと比較した。動物を21日間隔で3回、CFA(1°)/IFA(2°&3°)、MTP-PE-LO-MF#14(4%スクアレン、500μg/ml、MTP-PE、OTween、リン酸緩衝液)、MTP-PE-LO-KE(4%スクアレン、100ミクロンMTP-PE、0.008%Tween 80、Kirkland乳化剤中に乳化されたリン酸緩衝液)及びMTP-PE-LO-MF#15(4%スクアレン、100μgMTP-PE、0.008%Tween 80、リン酸緩衝液)中gp120抗原100μgにより免疫感作した。動物をまたCFA/IFA中又はMTP-PE-LO-MF#14中100μgのHIV抗原env 2-3により免疫感作した。第2及び第3免疫の20日後に動物の採血を行い、そして抗-env 2-3抗体力価をELISAにより決定した。結果を表11に示す。env 2-3について、MTP-PE-LO-MF#14製剤により免疫感作された動物は2回の免疫後のCFA/IFA動物と同等の力価を示し、そして3回の免疫の後のCFA/IFA動物より高い力価を示した。gp120については、結果は完全には明瞭ではなかった。MTP-PE-LO-MF#14動物はCFA/IFA動物より非常に大きな多様性を示す。従って、マイクロフルイダイザー群の平均力価はCFA群より低いが、MTP-PE-LO-MF#14を投与された個々の動物はCFA/IFA群の動物と同様に高い力価を示した。2つの異る方法(Kirkland乳化剤対マイクロフルイダイザー)により乳化されたgp120の同じアジュバント成分(4%スクアレン、100μg/mlMTP-PE、0.008%Tween 80、リン酸緩衝液)の直接比較は乳剤における小滴サイズの重要性を示す。Kirkland乳化剤群はこれらの免疫感作の後632の平均力価を示し、他方マイクロフルイダイザー群は3277の平均力価を示した。

3.ヒヒにおけるHIVenv 2-3及びgp120
ヒヒにおいてHIV抗原env 2-3及びgp120を用いてアジュバントとしてMTP-PE-LO-MF#1(2%スクアレン、500μg/mlMTP-PE、OTween 80、H_(2)O、油滴サイズ?0.17ミクロン)を試験した。対照としてIFA中MTP-PE及びアルムを使用した。動物を1ヶ月間隔で免疫感作した。第2回免疫感作から2週間後、動物から採血し、そして抗-env 2-3抗体ウイルス中和力価を決定した。結果を表12に示す。gp120に対する抗体力価はMTP-PE-IFAを用いるよりもMTP-PE-LO-MF#1を用いる場合に高かった。抗-env 2-3力価はMTP-PE-IFA及びMTP-PE-LO-MF#1群において類似していた。アルムを用いて達成される抗-gp120力価はMTP-PE-LO-MF#1を用いた場合と同じ範囲にあったが、アルムを用いて達成される抗-env 2-3力価はMTP-PEアジュバントを用いる場合より低いようであった。

例5. 追加のアジュバント/抗原製剤
前記の詳細な例に加えて、本発明のアジュバント組成物を含有するワクチン製剤として多数の他の抗原が調製された。これらは、インフルエンザ及びマラリアの病原体からの抗原、並びに前の例において記載したもの以外のHIV及びHSVに関連する抗原を包含する。サイトメガロウイルス(CMV)及び肝炎Cウイルス(HCV)からの抗原も、他の示された抗原について記載したのと同じアジュバント製剤中で使用することができるので、これらも記載される。
抗 原
ワクチン製剤において使用するために適当なインフルエンザ抗原は商業的に入手可能である。次の例において使用される抗原はParke-Davisにより製造されるフルオゲン(Fluogen)(商標)、Duphar B.V.により製造されるドゥファール(Duphar)、及びインスティトゥト・ワクチノゲノ・ポチー(Instituto Vaccinogeno Pazzi)により製造されるインフルエンザワクチンバッチA41である。
ワクチン製剤中で使用するために適当なマラリア抗原は、1989年4月11日に出願された米国特許出願No.336,288、及び1989年5月2日発行の米国特許No.4,826,957に記載されている。
ワクチン製剤において使用するために適当な追加のHIV抗原に1990年3月9日に出願された米国特許出願No.490,858に記載されている。さらに、追加のHIV抗原については公開されたヨーロッパ出願No.181150(1986年5月14日)を参照のこと。
ワクチン製剤において使用するのに適当な追加のHSV抗原は1985年10月24日に公開されたPCT WO85/04587、及び1988年4月21日に公開されたPCT WO88/02634に記載されている。アンカー領域を欠く端が切除された表面抗原であるgB及びgD抗原の混合物が特に好ましい。
ワクチン製剤中に使用するのに適当なサイトメガロウイルス抗原は1987年8月25日発行の米国特許No.4,689,225、及び国際公開No.WO89/07143として1989年8月10日に公開されたPCT出願PCT/US89/00323中に記載されている。
ウクチン製剤中に使用するのに適する肝炎C抗原はPCT/US88/04125、公開されたヨーロッパ出願No.318216(1989年5月31日)、特開平No.1-500565(1988年11月18日出願)、及びカナダ出願No.583,561に記載されている。異るセットのHCV抗原が1990年3月16日に出願されたヨーロッパ特許出願90/302866.0に記載されている。さらに、1989年12月21日出願の米国特許出願No.456,637、及びPCT/US90/01348を参照のこと。
なお、上記の種々の公開された出願番号の公表物はインデックスサービス、例えばワールド・パテント・インデックス(World Patent Index)及び他の国における対応出願のリストから得ることができる。
アジュバント製剤及び調製法
次の要約は、アジュバント製剤及びそれらをいかにして製造するか、並びにアジュバント及び種々の抗原物質を用いて調製されたワクチン組成物を記載する。幾つかの場合、上記の例のように詳細にではなくワクチン投与研究要約が記載されるが、これはすでに記載されたワクチン投与研究がワクチン組成物の使用のために十分な手引きを与えるからである。
インフルエンザ
一連の実験において、インスティトゥト・ワクチノゲノ・ポチーからの市販のインフルエンザワクチンによりハムスターを免疫した。このワクチンは2個のA株(A/Leningrad/360/86及びA/Singapore/6/86)及び1個のB株(B/Ann Arbor/1/86)からの精製されたHAから成る。このワクチンを単独で、Kirkland乳化剤(Fluoromad Pharmaceutical,Inc.,La Mesa,CA)を用いて作られたMTP-PE/LO乳剤と共に、及びマイクロフルイダイザー(モデル110Y、Microfluidics,Newton,MA)中で作られたMTP-PE/MF乳剤と共に試験した。最初の2つは比較組成物であり、他方「MF」組成物は本発明の組成物である。MTP-PE/MFは「MTP-PEマイクロフルイダイザー」乳剤と称され、そしてマイクロフルイダイザーにより乳化された4%スクアレン及び1.0mg/mlMTP-PEを含有する。MTP-PE Kirkland乳剤は4%スクアレン、0.5mg/mlMTP-PE、及び0.008%Tween 80(Kirkland乳化剤により乳化)を含んでいた。動物は8.3μgの各HA抗原を含む3回の免疫を受けた。。MTP-PEは両方の製剤中で投与当り50μgで使用された。ELISA力価を各免疫後に免疫抗原に対して決定し、そしてHAI力価を第二免疫後に決定した。ELISA力価は、試験した広アジュバント製剤により実質的に増加した。
他の実験においては、市販のParke-Davis Fluogenワクチン(HA A/Shanghai/11/87,A/Taiwan/1/86及びB/Yamagata/16/88)又は市販のDupharインフルエンザワクチン(HA A/Sechuan/2/87,A/Singapore/6/86及びB/Baijing/1/87)を単独で、又はMF69アジュバント製剤(MF69は5%スクアレン、0.2%Tween 80、0.8%Span 85及び400μg/mlMTP-PE、マイクロフルイダイザー中で乳化)と共に用いて免疫感作した。同体積のワクチンをMF69アジュバントと混合した。動物は11.25μgのParke-Davisワクチン又は7.5μgのDupharワクチンによる3回の免疫感作を3週間の間隔で受けた。MF69アジュバントを投与された動物に50μgのMTP-PEを受けた。Duphar及びMF69を投与された動物は、1又は2回の免疫の後Duphar単独よりも有意に高い抗-MA力価を示した(ワクチン単独よりも、1回の免疫の後平均力価は80倍高く、そして2回の免疫の後170倍高い)。MF69アジュバントはParke-Davisワクチンに対する抗体応答の良好な刺激を示し、1回、2回又は3回の免疫の後2951,14,927及び12878の平均力価を生じさせた。これは、それぞれ1回、2回又は3回の免疫の後ワクチンのみに比べて82倍、29倍及び10倍高い。両ワクチンについて、ピーク抗体価はMF69による2回の免疫の後に見られた。
更なる実験において、2種類の市販のインフルエンザワクチンParke-Davis Floogen及びDupharサブユニットインフルエンザの免疫原性をヤギにおいて、アジュバント無し及び幾つかのMTP-PE含有アジュバント製剤を用いて比較した。0.5mlのPBS又は0.5mlのMTP-PEアジュバント製剤と混合された0.5mlの各ワクチンにより動物を筋肉内免疫した。3種類のアジュバント製剤、すなわちPBSに溶解したMTP-PE200μg、並びにGaulin1/4及びMF40/4乳剤と称する2種類の異るマイクロフルイダイザー乳剤中MTP-PE200μgを比較した。Gaulin1/4はGaulinホモジナイザー(APV Gaulin,Everett,MA)中で乳化された1.6%スクアレン及び400μg/mlMTP-PEから成る。MTP-PE/MF-40/4は、マイクロフルイダイザー(Model 110Y,Microfluidics,Newton,MA)中で乳化された1.6%スクアレン、400μg/mlMTP-PE、0.154%Tween 85及び0.166%Span 85から成る。1.0mlの注射体積が生ずるように0.5mlのPBS又は0.5mlの示されるアジュバント製剤と混合された0.5mlのワクチンを動物に投与した。ハムスターの場合のように、アジュバント乳剤と組合わされたインフルエンザワクチンを投与されたヤギはワクチンのみを投与されたヤギよりも非常に高い抗体価を示した。これは特に、免疫スケジュールの早い時期に顕著である。1回の免疫の後、Gaulin1/4乳剤はParke-Davisワクチン単独に比べて30倍以上高い抗-HA力価を生じさせた。MTP-PE/MF-40乳剤は、Parke-Davisワクチン単独よりも130倍高く、そしてDupharワクチン単独よりも60倍高い抗-HA力価を生じさせた。PBS中のMTP-PEは1回の免疫の後抗体価の刺激を示さなかった。2回の免疫の後、乳剤を用いて抗体価の類似の上昇が見られた。インフルエンザワクチンは一般に成人に1回投与ワクチンとしてそして小児には2回投与ワクチンとして投与されるので、アジュバント乳剤を用いて見られる抗-HA力価の早期刺激は特に有意義である。従って、ハムスターにおけると同様に、MTP-PE-乳剤はインフルエンザワクチンへの免疫応答の大きな増加を示す。
他の実験において、Dupharワクチンを単独で及びアジュバント製剤MF69を用いて比較した。Parke-Davisワクチンを単独で、並びにMF101,MF69,MF-86+MTP-PE、及びGualenホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)中で作られたRibiアジュバント系を用いて比較した。MF-101はマイクロフルイダイザー中で乳化された1.6%スクアレン及び400μg/mlMTP-PEから成る。MF-68はマイクロフルイダイザー中で乳化された5%スクアレン、0.8%Span 85及び0.2%Tween 80から成る。MF-68+MTPは、400μg/mlのMTP-PEが乳化後に添加されたMF-68から成る。リビーMFはGaulinホモジナイザー中で乳化された2%スクアレン、0.4%Tween 20,250μg/mlモノホスホリルリピドA、250μg/mlトレハロースジミコレート及び250μg/ml細胞壁骨格(Ribi Immunochem,Hamilton Montana)から成る。すべてのアジュバントは同体積のワクチン(抗原)と共に0.5ml/注射の投与量で使用された。MF69はDupharワクチンへのELISA力価を有意に上昇させた。また、試験したアジュバントのすべてが、ELISA力価及びヘマグルチネーション力価により測定したParke-Davisワクチンの免疫原性を上昇させた。
更なる実験において、MF69及びMF59製剤(Tween 80:Span 85の比率においてのみ異る;前記参照のこと)をアジュバントとして、ヤギにおけるParke-Davisインフルエンザワクチンを用いて比較した。アジュバント製剤と組合わせた半分のヒトワクチン投与量(7.5μgずつの3種類のHA成分)により動物を一回免疫した。製剤中100μgの量でMTP-PEを用いた。予想通り、この2種類の製剤はMF69と非常に類似した力価を示した。すなわち、MF69は平均力価926を示し、そしてMF59は821と平均力価を示した。
マラリア
ワクチン投与研究がアジュバントとしてMF59(前記)を用いて開始された。この病気の胞子小体、分裂小体及び赤血球段階からの商業的に入手可能な抗原の混合物を用いた:Falc.2.3胞子小体周囲抗原、HP195分裂小体抗原、及びSERA1赤血段階抗原。ワクチン組成物を上記の様にして、すなわち、同体積のあらかじめ調製したMF59アジュバント及び抗原組成物を混合して調製する。
HIV
多数の異るgp120抗原による中和抗体の生産を比較するため免疫実験を行った。抗原の調製の詳細は1990年3月9日出願の米国特許出願No.490,858に記載されている。1つの抗原は酵母において生産されたgp120類似体(env 2-3)であって変更され且つグリコシル化されていないものであった。他の抗原は、その天然コンフィグレーションを維持しているグリコシル化gp120であった。両gp120材料は同じ遺伝子源であるHIV-1SF-2単離体に由来した。抗体生産をヒヒにおいて測定した。1ミクロンより大きい粒子サイズを有する油含有アジュバントは常用のミョウバンアジュバントにより生成する力価より低い力価を生成した。しかしながら、サブミクロン粒子のアジュバントを用いての後の研究は、ミョウバンを用いるよりも少なくとも10倍高い抗体価を生成した。最初のサブミクロン組成物は水中に2%スクアレン及び0.500mg/mlMTP-PEを含有し、そして平均直径約0.15ミクロンの油滴を有していた。MF59(前記)又はMF58(MF59、しかし外部から添加されたMTP-PEを含む)を用いるワクチン組成物は、ヒヒにおけるアジュバントとして、使用される最初のサブミクロン組成物より、抗体生産の刺激において一層有効であることが証明された。MF59は、0.100mgMTP-PEの率で1:2の希釈で使用された。
単純ヘルペスウイルス
前記のgD2実験に加えて、MF59及び種々の量のMTP-PE及び抗原を用いて追加の実験が行われた。モルモット(筋肉内投与)において0.003?0.250mgのgD2をMF59アジュバント及び0.050mgのMTP-PEと共に用いて、あるいは0.010?0.100mgのgD2をMF59及び0.100mgのMTP-PEと共に用いて、満足すべき抗体価が得られた。
サイトメガロウイルス
0.5mlの生理的食塩水中0.001?0.250mgのCMVと、0.050mgのMTP-PEを含むMF59アジュバント0.5mlとを混合することによりワクチン製剤を得ることができる。同様にしてMF69、MF101及び他のサブクローン粒子アジュバントを用いることができる。
肝炎Cウイルス
0.5mlの生理的食塩水中0.001?0.250mgのHCV抗原と、0.050mgのMTP-PEを含有するMF59アジュバント0.5mlとを混合することによりワクチン製剤を調製することができる。同様にして、MF69,MF101及び他のサブミクロン粒子アジュバントを使用することかできる。
前記の発明を、明瞭な理解の目的で説明及び例により幾分詳細に記載したが、添付された請求の範囲の本質及び範囲を逸脱することなくある種の変化及び変更を行うことができることは、本発明の教示に照らして当業者に明らかであろう。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(1)スクアレン、および(2)0.02?2.5重量%のポリオキシエチレンソルビタンモノエステル乳化剤、を含んで成るアジュバント組成物であって、該スクアレンおよび該乳化剤が水中油乳剤の形で存在し、該乳剤の油滴の実質上すべてが直径1μm未満であり、そして該組成物がポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンプロックコポリマーを含まない、アジュバント組成物。
【請求項2】前記組成物が、水性媒体中に0.5?20容量%の前記スクアレンを含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】前記組成物が免疫刺激剤を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】前記免疫刺激剤が細菌細胞壁成分を含んで成る、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】前記組成物が0.0001?1.0重量%の前記免疫刺激剤を含んで成る、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】前記免疫刺激剤がムラミルペプチドを含んで成る、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】前記乳化剤がさらに免疫刺激剤として機能する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】前記免疫刺激剤が親脂性ムラミルペプチドを含んで成る、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】前記ペプチドがムラミルジペプチドまたはムラミルトリペプチドを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】前記ムラミルジペプチドまたはムラミルトリペプチドがさらにリン脂質部分を含んで成る、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】前記リン脂質部分がホスホグリセリドを含んで成る、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】前記ペプチドが次の式:

〔式中、RはHまたはCOCH_(3)であり;
R^(1)、R^(2)、およびR^(3)は独立にHまたは脂質成分を表わし;
R^(4)は水素またはアルキルであり;
X およびZは独立にアラニル、バリル、ロイシル、イソロイシル、α-アミノブチリル、スレオニル、メチオニル、システイニル、グルタミル、イソグルタミル、グルタミニル、イソグルタミニル、アスパルチル、フェニルアラニル、チロシル、トリプトファニル、リジル、オルニチル、アルギニル、ヒスチジル、アスパラ ギニル、プロリル、ヒドロキシプロリル、セリル、およびグリシルから成る群から選択されたアミノアシル成分を示し;
nは0または1であり;
Yは-NHCHR^(5)CH_(2)CH_(2)CO-であり、ここでR^(5)は場合によってはエステル化またはアミド化されているカルボキシル基であり;そしてLはOH、NR^(6)R^(7)(式中、R^(6)およびR^(7)は独立にHまたは低級アルキル基を示す)、または脂質成分である〕
で表わされる化合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】R^(4)がメチルであり、Xがアラニルであり、そしてYがイソグルタミニルである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】nが1であり、Zがアラニルであり、Rがアセチルであり、そしてR^(1)、R^(2)、およびR^(3)がすべてHである、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】Lがリン脂質成分を含んで成る、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】前組リン脂質成分がジアシルホスホグリセリドである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】前記ペプチドがN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-[1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-(ヒドロキシホスホリルオキシ)]エチルアミドである、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】R^(1)およびR^(2)の少なくとも一方が1?22個の炭素原子を含有するアシル基を表わす、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】R^(1)、R^(2)、およびR^(3)の少なくとも1つが炭素原子数14?22個を含有するアシル基を表わす、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】ワクチン接種のためのワクチン組成物を製造する方法であって、抗原物質を請求項1?19のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と混合する工程を含む、方法。
【請求項21】(1)免疫刺激量の抗原物質、および(2)免疫刺激量の請求項1?19のいずれか1項に記載のアジュバント、を含んで成るワクチン組成物。
【請求項22】前記抗原物質がさらに、マラリア、ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、またはC型肝炎ウイルス抗原である、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項23】ワクチン接種に用いるための、請求項22に記載のワクチン組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-05-27 
結審通知日 2008-05-29 
審決日 2008-06-17 
出願番号 特願平2-509214
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 正人瀬下 浩一弘實 謙二  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 穴吹 智子
谷口 博
登録日 1996-12-06 
登録番号 特許第2115161号(P2115161)
発明の名称 サブミクロン油滴乳剤を含んで成るアジュバント製剤  
代理人 石井 貞次  
代理人 安村 高明  
復代理人 駒谷 剛志  
代理人 大屋 憲一  
代理人 駒谷 剛志  
代理人 山本 秀策  
代理人 平木 祐輔  
代理人 藤田 節  
代理人 長谷川 真久  
代理人 森下 夏樹  
代理人 松任谷 優子  
復代理人 長谷部 真久  
代理人 安村 高明  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 遠藤 真治  
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