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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1189339 |
審判番号 | 不服2007-1512 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-16 |
確定日 | 2008-12-18 |
事件の表示 | 平成11年特許願第120440号「太陽電池モジュール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月 7日出願公開、特開2000-312018〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年4月27日に特許出願したものであって、平成18年2月27日に手続補正がなされ、同年11月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月16日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに同年2月14日に手続補正がなされたものである。 II.平成19年2月14日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年2月14日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成19年2月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1を、以下のように補正することを含むものである。 「【請求項1】 透光性且つ絶縁性を有する基板の一主面上に、透光性且つ導電性を有する材料からなる第1電極と非晶質半導体からなり光電変換機能を有する半導体膜と金属膜からなる第2電極とをこの順に備える光電変換部を備え、該光電変換部の前記第2電極上に接着層によって導電性を有する裏面材が接着されてなる太陽電池モジュールであって、 前記基板は、前記光電変換部が形成される発電領域を囲繞するように前記基板の表面を露出して設けられた非発電領域を有し、 前記接着層は、絶縁性の材料からなると共に前記光電変換部の表面及び周側面を被覆して前記非発電領域上に至るまで形成されており、 前記接着層の前記光電変換部の周側面を被覆して前記非発電領域上に形成された部分における前記基板の一主面に平行な方向の厚みが2mm以上であることを特徴とする太陽電池モジュール。」 2.独立特許要件 本件補正は、補正前の請求項1の「接着層」について、「前記接着層の前記光電変換部の周側面を被覆して前記非発電領域上に形成された部分における前記基板の一主面に平行な方向の厚みが2mm以上である」との限定を付加するものであって、平成14年改正前特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物記載の発明 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開昭60-32352号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「2、特許請求の範囲 (1)基板上に形成した太陽電池素子と、上記太陽電池素子を保護する対面保護膜と、上記太陽電池素子と対面保護膜との間に充填される樹脂層とより成る太陽電池モジュールにおいて、上記太陽電池素子が上記基板の周辺に余白を残して形成され、上記基板の余白部と上記対面保護膜とを上記樹脂層で接着させた構造を持つ太陽電池モジュール。」(第1頁左下欄第4?11行) イ 「第2図は本願発明の実施例の要部断面図、第3図は同要部平面図である。太陽電池素子1は基板6の上に余白20を残して直接形成されており、対面保護膜7は樹脂層10により、基板6上の余白20および太陽電池素子1に接着されている。 太陽電池素子1は、ここでは、基板6として用いた30cm角の無アルカリのほうけい酸ガラス上に6.5mm幅の余白20を残してCdS膜、ついでAg-In電極部を除いたCdS膜上にCdTe膜、さらにその上にC膜、そしてAg電極が形成されたものである。またCdTe膜等のない部分にAg-In電極が形成されたものである。樹脂層10には厚さ0.38mmのPVBを用い、対面保護膜7としては表面を樹脂コートしたAlはくを用いた。こうして製作したモジュールでは対面保護膜7は素子および余白20の部分のガラスによく接着した。」(第2頁右下欄第1?16行) ウ 余白20は、無アルカリのほうけい酸ガラス基板6側から見て、太陽電池素子1を囲繞するように設けられること、が第2図及び第3図から見て取れる。 したがって、上記記載事項を総合すると、引用刊行物1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている、と認められる。 「無アルカリのほうけい酸ガラス基板側から見て、太陽電池素子を囲繞するように設けられた6.5mm幅の余白を残して、前記無アルカリのほうけい酸ガラス基板上に太陽電池素子を直接形成するとともに、表面を樹脂コートしたAlはくからなる対面保護膜を、PVB(ポリビニルブチラール樹脂)からなる樹脂層により前記無アルカリのほうけい酸ガラス基板上の余白および前記太陽電池素子に接着して構成した太陽電池モジュール。」 同じく、本願の出願前に頒布され、同じく原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平8-242012号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 エ 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、家屋の屋根等に配置されて太陽光発電を行う建材用太陽電池モジュールに関する。」 オ 「【0006】従来の建材用太陽電池モジュールは、図5に示すように、ガラスからなる表面透明基板5と、塗装鋼板、ステンレス板などからなる裏面金属基板1の間に、直列または並列に半田や銅箔等の接続リード21により電気的に接続された多結晶シリコン、非晶質シリコン等で構成された太陽電池セル2を挿入し、これらの間に接着剤6を介在させて積層形成されている。 【0007】上記建材用太陽電池モジュールは、低コスト、量産性の観点から、裏面金属基板1の上にエチレンビニールアセテート樹脂(以下、EVAという。)からなるシートを配置し、この上に太陽電池セル2、EVAシート及び表面透明基板5を順次載置し、減圧下で熱プレスすることにより、一体成形されている。」 したがって、上記記載事項を総合すると、引用刊行物2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている、と認められる。 「ガラスからなる表面透明基板と、塗装鋼板、ステンレス板などからなる裏面金属基板の間に、非晶質シリコン等で構成された太陽電池セルを挿入し、これらの間に接着剤を介在させて積層形成した、建材用太陽電池モジュール。」 (2)対比 本願補正発明と引用発明1を対比する。 ア 引用発明1の「無アルカリのほうけい酸ガラス基板」、「PVB(ポリビニルブチラール樹脂)からなる樹脂層」及び「太陽電池モジュール」は、それぞれ本願補正発明の「透光性且つ絶縁性を有する基板」、「(絶縁性の材料からなる)接着層」及び「太陽電池モジュール」に相当する。 イ 引用発明1の「太陽電池素子」は、本願補正発明の「透光性且つ導電性を有する材料からなる第1電極と非晶質半導体からなり光電変換機能を有する半導体膜と金属膜からなる第2電極とをこの順に備える光電変換部」と、「光電変換部」である点で一致する。 ウ 引用発明1の「無アルカリのほうけい酸ガラス基板上に太陽電池素子を直接形成する」なる事項は、本願補正発明の「透光性且つ絶縁性を有する基板の一主面上に、」「光電変換部を備え」なる事項に相当する。 エ 引用発明1の「表面を樹脂コートしたAlはくからなる対面保護膜」は、本願補正発明の「導電性を有する裏面材」と、「裏面材」である点で一致する。 オ 引用発明1の「表面を樹脂コートしたAlはくからなる対面保護膜を、PVB(ポリビニルブチラール樹脂)からなる樹脂層により前記無アルカリのほうけい酸ガラス基板上の余白および前記太陽電池素子に接着して構成」するなる事項は、本願補正発明の「光電変換部の前記第2電極上に接着層によって導電性を有する裏面材が接着されてなる」事項と、「光電変換部上に接着層によって裏面材が接着されてなる」点で一致する。 カ 引用発明1は、「無アルカリのほうけい酸ガラス基板側から見て、太陽電池素子を囲繞するように設けられた・・・余白を残して、前記無アルカリのほうけい酸ガラス基板上に太陽電池素子を直接形成する」から、本願補正発明の「前記基板は、前記光電変換部が形成される発電領域を囲繞するように前記基板の表面を露出して設けられた非発電領域を有し」なる事項を備える。 キ 引用発明1は、「表面を樹脂コートしたAlはくからなる対面保護膜をPVB(ポリビニルブチラール樹脂)からなる樹脂層により前記無アルカリのほうけい酸ガラス基板上の余白および前記太陽電池素子に接着して構成」するから、本願補正発明の「前記接着層は、」「前記光電変換部の表面及び周側面を被覆して前記非発電領域上に至るまで形成されており」なる事項を備える。 ク 引用発明1は、太陽電池素子を囲繞するように設けられた余白が6.5mm幅であるから、本願補正発明の「前記接着層の前記光電変換部の周側面を被覆して前記非発電領域上に形成された部分における前記基板の一主面に平行な方向の厚みが2mm以上である」なる事項を満たす。 したがって、両者は、 「透光性且つ絶縁性を有する基板の一主面上に、光電変換部を備え、該光電変換部上に接着層によって裏面材が接着されてなる太陽電池モジュールであって、 前記基板は、前記光電変換部が形成される発電領域を囲繞するように前記基板の表面を露出して設けられた非発電領域を有し、 前記接着層は、絶縁性の材料からなると共に前記光電変換部の表面及び周側面を被覆して前記非発電領域上に至るまで形成されており、 前記接着層の前記光電変換部の周側面を被覆して前記非発電領域上に形成された部分における前記基板の一主面に平行な方向の厚みが2mm以上である太陽電池モジュール。」 である点で一致し、以下の各点において相違する。 相違点 〔相違点1〕:本願補正発明は、光電変換部が透光性且つ導電性を有する材料からなる第1電極と非晶質半導体からなり光電変換機能を有する半導体膜と金属膜からなる第2電極とをこの順に備え、該光電変換部の前記第2電極上に接着層によって裏面材が接着されてなるのに対し、引用発明1は、光電変換部がそのようなものであるのかどうか不明な点。 〔相違点2〕:裏面材が、本願補正発明は、導電性を有するものであるのに対し、引用発明1は、表面を樹脂コートしたAlはくからなる点。 (3)判断 上記相違点につき検討する。 〔相違点1〕について ガラス基板上に透明電極、非晶質シリコン層及び背面電極を積層し、その上に接着剤で外装材を接着して太陽電池を構成するものは本願出願前に周知であり(例えば、実願昭60-144835号(実開昭62-52609号)のマイクロフィルム(第5頁第4?11行、第3図)、実願昭60-144836号(実開昭62-52610号)のマイクロフィルム(第2頁第12?20行、第5図)参照。)、この周知技術を引用発明1に適用し、光電変換部の第2電極上に接着層によって裏面材が接着されてなるようにして上記〔相違点1〕に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。 〔相違点2〕について 「ガラスからなる表面透明基板と、塗装鋼板、ステンレス板などからなる裏面金属基板の間に、非晶質シリコン等で構成された太陽電池セルを挿入し、これらの間に接着剤を介在させて積層形成した、建材用太陽電池モジュール」の発明(引用発明2)は引用刊行物2に記載されており、この引用発明2を引用発明1に適用し、その裏面材を導電性を有する裏面金属基板に置き換えて上記〔相違点2〕に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願補正発明によってもたされる効果は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 平成19年2月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成18年2月27日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載されたものであるところ、その請求項は次の事項によって特定されるものである。 「【請求項1】 透光性且つ絶縁性を有する基板の一主面上に、透光性且つ導電性を有する材料からなる第1電極と非晶質半導体からなり光電変換機能を有する半導体膜と金属膜からなる第2電極とをこの順に備える光電変換部を備え、該光電変換部の前記第2電極上に接着層によって導電性を有する裏面材が接着されてなる太陽電池モジュールであって、 前記基板は、前記光電変換部が形成される発電領域を囲繞するように前記基板の表面を露出して設けられた非発電領域を有し、 前記接着層は、絶縁性の材料からなると共に前記光電変換部の表面及び周側面を被覆して前記非発電領域上に至るまで形成されていることを特徴とする太陽電池モジュール。」(以下「本願発明」という。) 2.刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用刊行物1、2及び引用発明1、2は、前記II.2.(1)において記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記II.で検討した本願補正発明において、「前記接着層の前記光電変換部の周側面を被覆して前記非発電領域上に形成された部分における前記基板の一主面に平行な方向の厚みが2mm以上である」との限定を省いたものである。そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記II.2.で検討したとおり、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-15 |
結審通知日 | 2008-10-21 |
審決日 | 2008-11-05 |
出願番号 | 特願平11-120440 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 近藤 幸浩 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
三橋 健二 服部 秀男 |
発明の名称 | 太陽電池モジュール及びその製造方法 |
代理人 | ▲角▼谷 浩 |