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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B08B
管理番号 1189462
審判番号 不服2006-9379  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-10 
確定日 2008-12-11 
事件の表示 平成11年特許願第268722号「基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年4月3日出願公開、特開2001-87722〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成11年9月22日の特許出願であって、平成18年4月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年4月11日)、これに対し、同年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年5月10日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月10日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「基板を収納して基板に所定の処理を行う処理部と、
前記処理部内に設けられ、第1の方向から基板に処理液を供給する第1処理液供給手段と、
前記処理部内に設けられ、前記第1の方向とは異なる第2の方向から基板に処理液を供給する第2処理液供給手段と、
前記第1処理液供給手段に処理液を供給するように前記第1処理液供給手段と連通し、かつ前記第2処理液供給手段に処理液を供給するように前記第2処理液供給手段と連通しているとともに、第1薬液供給源、第2薬液供給源、及び純水供給源と連通し、第1薬液、第2薬液及び純水のうちのいずれかによって処理液を生成するように構成するとともに、前記第1処理液供給手段への処理液の供給及びその停止を切り換える第1出力側切り換え手段と、前記第2処理液供給手段への処理液の供給及びその停止を切り換える第2出力側切り換え手段と、前記第1薬液供給源からの第1薬液の供給及びその停止を切り換える第1導入側切り換え手段と、前記第2薬液供給源からの第2薬液の供給及びその停止を切り換える第2導入側切り換え手段と、前記第1出力側切り換え手段、前記第2出力側切り換え手段、前記第1導入側切り換え手段および前記第2導入側切り換え手段が一体的に設けられた集合管と、前記第1導入側切り換え手段と前記第2導入側切り換え手段よりも下流側であって前記第1出力側切り換え手段と前記第2出力側切り換え手段よりも上流側の位置に前記集合管の管路途中に設けられ、第1薬液、第2薬液及び純水のうちのいずれかによって生成された混合処理液の濃度を検知する濃度検知手段とを有する処理液生成部と、
前記濃度検知手段で検知された混合処理液の濃度を監視する制御部と
を有することを特徴とする基板処理装置。」(以下、「本件補正発明」という。)と補正された。

本件補正は、「処理液生成部」について、「前記第1薬液供給源からの第1薬液の供給及びその停止を切り換える第1導入側切り換え手段」と、「前記第2薬液供給源からの第2薬液の供給及びその停止を切り換える第2導入側切り換え手段」と、「前記第1出力側切り換え手段、前記第2出力側切り換え手段、前記第1導入側切り換え手段および前記第2導入側切り換え手段が一体的に設けられた集合管」とを有するとの発明特定事項を付加するとともに、「濃度検知手段」の設けられる位置について、本件補正前の「各液の導入部よりも下流側」を、「前記第1導入側切り換え手段と前記第2導入側切り換え手段よりも下流側」と限定し、さらに「前記集合管の管路途中」に設けられていると限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に適合するか)否かについて、以下検討する。

(2)刊行物
(2-1) 原査定の拒絶の理由(平成17年1月12日付け拒絶理由通知書)に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-232270号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【発明が解決しようとする課題】このように、従来は予め純水に薬液を所定の割合で混合した洗浄液を用いていたので、その混合作業に手間が掛かったり、混合度合が一定しないなどのことがあり、さらには予め混合された洗浄液を所定量確保するためには、その洗浄液を収容するタンクの容積を大きくしなければならないから、設置場所が確保しにくいなどのことがあった。
この発明は上記事情に基づきなされたもので、その目的とするところは、混合作業を要することなく、純水に対して薬液が所定の割合で混合された洗浄液を供給できるようにした洗浄処理装置を提供することにある。」(段落【0009】、【0010】)

イ.「以下、この発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図2に示すこの発明の実施形態の洗浄処理装置は処理容器1を備えている。この処理容器1は上面が開放し、周壁は上部が上端にゆくにつれて径方向内方に向かって傾斜している。」(段落【0017】)

ウ.「上記支持軸5には、上端に支持軸5よりも大径で、円錐状をなした頭部5aが設けられている。この支持軸5には、先端を上記頭部5a上面に開口させたN2などの不活性ガスのガス供給路31と、先端を同じく上記頭部5aの上面にノズル体としてのノズル孔32aを介して開口させた、洗浄液の洗浄液供給路32とが軸方向に沿って形成されている。上記ガス供給路31は図示しないガス供給源に連通している。
上記ガス供給路31に供給された不活性ガスは上記チャックピン19に保持された半導体ウエハ22に向かって噴出され、上記洗浄液供給路32に供給された洗浄液Lは上記ノズル孔32aから上記半導体ウエハ22の下面に向かって噴出されるようになっている。
上記回転チャック11に保持される半導体ウエハ22の上方には、この半導体ウエハ22の上面に洗浄液Lを噴射するノズル体としての上部ノズル37が配設されている。
この上部ノズル37と、上記洗浄液供給路32、つまりノズル孔32aとは図1に示す洗浄液Lの供給装置51に接続されている。この供給装置51は基端が純水を所定の圧力で供給する図示しない供給源に接続された純水供給管52を有する。この純水供給管52の先端は上記ノズル孔32aおよび上部ノズル37に接続されていて、中途部には上記ノズル孔32aおよび上部ノズル37に流れる純水の圧力を調整する第1の圧力調整弁53が設けられている。
上記第1の圧力調整弁53と上記ノズル孔32aおよび上部ノズル37との間には第1の開閉弁54と第1の逆止弁55とが順次設けられている。この第1の逆止弁55は純水供給管52を流れる純水が逆流するのを防止する方向に設けられている。」(段落【0022】乃至【0026】)

エ.「上記薬液供給管56の中途部には第2の開閉弁58、流量調整弁59、流量計60および第3逆止弁61が上記薬液タンク57側から順次設けられている。上記流量調整弁59は薬液供給管56に流れる薬液の流量を調整できるもので、流量計60はその流量を計測表示できるようになっている。」(段落【0029】)

オ.「それによって、上記純水供給管52を第1の圧力調整弁51(53の誤記と認める。)によって圧力調整(流量制御)されて流れる純水に混合し、洗浄液Lとなる。そのため、純水供給管52を流れる純水と、薬液供給管56を流れる薬液Pとを所定の圧力に設定することで、純水と薬液Pとが所定の割合で混合された洗浄液Lを混合作業を伴うことなく、ノズル孔32aや上部ノズル37へ供給することができる。」(段落【0034】)

カ.図1、2には、洗浄処理装置が、処理容器1に半導体ウエハ22を収納して洗浄処理を行う部位を有すること、薬液タンク57に接続した薬液供給管56の中途部に第2の開閉弁58を設けたこと、が示されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物1には、次の発明が記載されている。

「半導体ウエハ22を収納して半導体ウエハ22に洗浄処理を行う部位と、
洗浄処理を行う部位内に設けられ、半導体ウエハ22の下面に向かって洗浄液Lを噴出するノズル孔32aと、
洗浄処理を行う部位内に設けられ、半導体ウエハ22の上面に向かって洗浄液Lを噴出する上部ノズル37と、
ノズル孔32aに洗浄液Lを供給するように接続し、かつ、上部ノズル37に洗浄液Lを供給するように接続しているとともに、薬液タンク57及び純水を供給する供給源とに接続し、純水と薬液Pとを混合して洗浄液Lを供給するように構成するとともに、薬液タンク57からの薬液の供給及びその停止を切り換える第2の開閉弁58を有する洗浄液Lの供給装置51と、
を有する洗浄処理装置。」

(2-2)同じく、特開平7-297120号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「この基板処理装置は、大きく分けて、内部に塗布処理空間を形成する開閉自在の外囲容器10と、外囲容器10内に設けられ、角型基板Wを保持した状態で回転する昇降自在の基板回転保持機構20と、角型基板Wの昇降を許容する退避位置と塗布液供給位置とにわたって変位可能に構成され、塗布液供給位置で角型基板W上に塗布液を供給する塗布液供給機構30と、角型基板Wの上昇位置にあたる水平面内で進退移動可能に構成され、後述する角型基板Wの作用位置において前記基板Wの端縁に溶剤を吐出して不要薄膜を溶解する溶剤吐出機構40とから構成されている。以下、各部の構成を詳しく説明する。」(段落【0014】)

イ.「図4中、符号60は、溶剤を供給するための加圧容器である。加圧容器60から導出された配管62はフィルタ63を介して配管64に接続されている。配管64は2方向に分岐され、一方はエアー弁V1を介して配管65に接続されている。配管65は流量計66と流量調整用のニードル弁V2を介して配管67の一端に接続している。この配管67はさらに2方向に分岐され、各他端が継手部材67aを介して上部ノズル47aの溶剤供給流路51の両端に連通接続している。配管64の他方の分岐管は、エアー弁V3を介して配管68に接続されている。配管68は流量計66と流量調整用のニードル弁V4を介して配管69の一端に接続している。この配管69はさらに2方向に分岐され、各他端が継手部材69aを介して下部ノズル47bの溶剤供給流路51の両端に連通接続している。」(段落【0022】)

ウ.「上記の構成により、基板端縁を洗浄する場合、まずシーケンシャルダンパV5を開状態にし、排気ブロア71を作動させて配管72,73を介して溶剤排出流路52から吸引する。そして、エアー弁V1、V3を開状態にし、加圧容器60に窒素ガス等の加圧気体を導入する。これにより、加圧容器60内に設けられた貯溜器61内の溶剤が、配管62を介して各配管67,69に流通し、上部ノズル47aおよび下部ノズル47bの各溶剤供給流路51に供給され、上下の溶剤吐出口50から溶剤が噴出される。噴出され溶剤は基板端縁の不要薄膜を溶解しつつ溶剤排出流路52内へ吸引されて配管73,72を介して排出される。なお、エアー弁V1,V3、及びシーケンシャルダンパV5の開閉の制御は後述する制御部80によって行われている。」(段落【0024】)

エ.【図4】には、加圧容器60から導出された配管62は、その先で2方向に分岐され、一方はエアー弁V1を介して配管65に接続され、その先に上部ノズル47aが連通接続され、他方の分岐管は、エアー弁V3を介して配管68に接続され、その先に下部ノズル47bに接続されたことが示されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物2には、次の発明が記載されている。

「下部ノズル47bへの溶媒の供給及びその停止を切り換えるエアー弁V3と、
上部ノズル47aへの溶媒の供給及びその停止を切り換えるエアー弁V1とを備える
基板端縁洗浄装置。」

(2-3)同じく、特開平10-154683号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【発明が解決しようとする課題】このような基板処理装置においては、薬液導入弁の流量特性が変化することにより、純水中に混合される薬液の量が変化し、その結果処理液の濃度が変化してしまうという問題がある。すなわち、薬液の圧力や熱膨張の影響を受けて薬液導入弁が変形した場合等においては、薬液の供給経路において薬液が受ける圧力損失が変化し、窒素ガスにより加圧された薬液の圧力が一定値となるように制御した場合においても、純水中への薬液の供給量は正確には一定とはならない。このため、処理槽に供給される処理液の濃度が不均一となる。」(段落【0003】)

イ.「この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、処理液の濃度を速やかに目標濃度に一致させることにより、基板を精度よく処理することのできる基板処理装置を提供することを目的とする。」(段落【0007】)

ウ.「この基板処理装置は、基板Wを処理するための基板処理部としての処理槽1と、薬液を貯留する薬液タンク2と、複数の薬液導入弁9a、9b、9c、9dおよび純水供給弁10を有する薬液混合部3と、薬液混合部3に純水を供給するための純水供給部4と、処理槽1と薬液混合部3とを接続する供給路16a中に配設された濃度センサ5と、濃度フィードバックコントローラ6および圧力フィードバックコントローラ7とから成る制御部8とを備える。」(段落【0011】)

エ.「濃度センサ5は、供給路16bを通過する処理液の濃度を検出するためのものである。すなわち、供給路16bを通過する処理液は純水中に薬液を混合することにより生成されたものであるが、濃度センサ5は、そこを通過する処理液における純水に対する薬液の割合(重量パーセント)を検出するものである。この濃度センサ5としては、例えば、処理液の導電率から処理液の濃度を検出するものや処理液の光の透過率から処理液の濃度を検出するものを使用することができる。
薬液混合部3は、図2に示すように、本体44の内部に直線状の流体通路45を有する。そして、この流体通路45は、純水供給源19から薬液混合部3に至る供給路16aと、薬液混合部3から処理槽1に至る供給路16bとに接続されている。供給路16aから供給される純水は、純水供給ポート47を通って流体通路45内に進入する。また、純水供給ポート47の下流側には、排液管49に接続する排液ポート48が配設されている。これらの純水供給ポート47および排液ポート48は、各々純水供給弁10および排液弁50により開閉制御される。なお、図1においては、排液管49および排液弁50は、図示を省略している。
流体通路45の内壁には、4個の薬液導入弁9a、9b、9c、9dの二次側流路が開口している。また、本体44の側面には薬液導入口46a、46b、46c、46d(図3においては46dのみ図示している)が形成されている。これらの薬液導入口46a、46b、46c、46dのうち、薬液導入口46aは、前述した薬液タンク2と接続されており、薬液タンク2内の薬液は薬液導入口46aを介して流体通路45中の純水に混合される。また、他の薬液導入口46b、46c、46dは、各々、図示を省略した他の薬液タンク等より成る薬液供給部と接続されており、薬液タンク2内の薬液とは異なる薬液の供給を受け、その薬液を流体通路45中の純水に混合する。」(段落【0019】乃至【0021】)

オ.「濃度フィードバックコントローラ6は、濃度センサ5の検出信号を受け、圧力フィードバックコントローラ7を制御する制御信号としての圧力補正信号を出力するためのものである。また、圧力フィードバックコントローラ7は、薬液タンク2から薬液混合部3に供給される薬液の圧力を検出する圧力トランスデューサ25からの検出信号と濃度フィードバックコントローラ6からの圧力補正信号とを受け、純水中に混合される薬液の量を制御するためのものである。すなわち、圧力フィードバックコントローラ7は、電空レギュレータ28に印加する電圧を制御することにより、電空レギュレータ28および耐食レギュレータ27を介して薬液タンク2から薬液混合部3に供給される薬液の流量を制御し、これにより薬液混合部3において純水中に混合される薬液の量を制御する。」(段落【0024】)

カ.「また、上述した実施の形態においては、一つの薬液タンク2から単一の処理槽1に薬液を供給する場合について説明したが、一つの薬液タンク2から複数の処理槽に処理液を供給するようにしてもよい。この場合においては、薬液タンク2、耐食レギュレータ22およびレギュレータ23等を複数の処理槽で共有することができることから、基板処理装置を小型化し、また、装置自体のコストを低減することが可能となる。
さらに、上述した実施の形態においては、基板Wとして略円形の半導体ウエハを使用し、この基板Wを処理槽1に貯留された処理液中に浸漬してその処理を行う基板処理装置にこの発明を適用した場合について説明したが、処理液を基板Wに塗布または噴出して処理する方式の基板処理装置にこの発明を適用してもよく、また、液晶表示パネル用ガラス基板あるいは半導体製造装置用マスク基板等の基板を処理する基板処理装置にこの発明を適用してもよい。」(段落【0050】、【0051】)

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物3には、次の発明が記載されている。

「複数の薬液供給部と、
複数の薬液供給部に接続された複数の薬液導入弁(9a、9b、9c、9d)の二次側流路を内壁に開口させた流体通路45を有する本体44と、
処理槽1と薬液混合部3とを接続する供給路16a中に配設され、生成された混合処理液の濃度を検出する濃度センサ5と、
濃度フィードバックコントローラ6を具備する制御部8と
を有する基板処理装置。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「半導体ウエハ22」は、本件補正発明の「基板」に相当し、同様に、「洗浄処理」は「所定の処理」に、「洗浄処理を行う部位」は「処理部」に、「洗浄液L」は「処理液」に、「半導体ウエハ22の下面に向かって洗浄液Lを噴出するノズル孔32a」は「第1の方向から基板に処理液を供給する第1処理液供給手段」に、「半導体ウエハ22の上面に向かって洗浄液Lを噴出するノズル37」は「前記第1の方向とは異なる第2の方向から基板に処理液を供給する第2処理液供給手段」に、「接続」は「連通」に、「薬液タンク57」は「薬液供給源」に、「純水を供給する供給源」は「純水供給源」に、「混合して洗浄液Lを供給」は「処理液を生成」に、「第2の開閉弁58」は「導入側切り換え手段」に、「洗浄液Lの供給装置51」は「処理液生成部」に、「洗浄処理装置」は「基板処理装置」に、それぞれ相当する。

したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「基板を収納して基板に所定の処理を行う処理部と、
処理部内に設けられ、第1の方向から基板に処理液を供給する第1処理液供給手段と、
処理部内に設けられ、第1の方向とは異なる第2の方向から基板に処理液を供給する第2処理液供給手段と、
第1処理液供給手段に処理液を供給するように第1処理液供給手段と連通し、かつ第2処理液供給手段に処理液を供給するように第2処理液供給手段と連通しているとともに、
薬液供給源及び純水供給源と連通し、処理液を生成するように構成するとともに、薬液供給源からの薬液の供給及びその停止を切り換える導入側切り換え手段と
を有する処理液生成部と、
を有する基板処理装置。」

[相違点1]
処理液生成部について、本件補正発明では、第1処理液供給手段への処理液の供給及びその停止を切り換える第1出力側切り換え手段と、第2処理液供給手段への処理液の供給及びその停止を切り換える第2出力側切り換え手段とを備えるのに対して、刊行物1に記載された発明では、この発明特定事項を備えない点。

[相違点2]
「薬液供給源」として、本件補正発明では「第1薬液供給源」及び「第2薬液供給源」の2つを有しており、このため、「薬液供給源からの薬液の供給及びその停止を切り換える導入側切り換え手段」も、本件補正発明では「第1薬液供給源からの第1薬液の供給及びその停止を切り換える第1導入側切り換え手段」及び「第2薬液供給源からの第2薬液の供給及びその停止を切り換える第2導入側切り換え手段」の2つを有するのに対し、刊行物1に記載された発明では、「薬液供給源」及び「薬液供給源からの薬液の供給及びその停止を切り換える導入側切り換え手段」を1つずつしか有していない点。

[相違点3]
本件補正発明の「処理液生成部」が、「前記第1出力側切り換え手段、前記第2出力側切り換え手段、前記第1導入側切り換え手段および前記第2導入側切り換え手段が一体的に設けられた集合管」と、「前記第1導入側切り換え手段と前記第2導入側切り換え手段よりも下流側であって前記第1出力側切り換え手段と前記第2出力側切り換え手段よりも上流側の位置に前記集合管の管路途中に設けられ」た「混合処理液の濃度を検知する濃度検知手段」とを有し、さらに、本件補正発明が、「濃度検知手段で検知された混合処理液の濃度を監視する制御部」を有するのに対し、刊行物1に記載された発明は、そのような構成を有していない点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
まず、上記相違点1について検討する。
刊行物2に記載された発明と本件補正発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「下部ノズル47b」は、本件補正発明の「第1処理液供給手段」に相当し、同様に「溶剤」は「処理液」に、「エアー弁V3」は「処理液の供給及びその停止を切り換える第1出力側切り換え手段」に、「上部ノズル47a」は「第2処理液供給手段」に、「エアー弁V1」は「処理液の供給及びその停止を切り換える第2出力側切り換え手段」に、「基板端縁洗浄装置」は「基板処理装置」に、それぞれ相当する。

したがって、刊行物2に記載された発明は、
「第1処理液供給手段への処理液の供給及びその停止を切り換える第1出力側切り換え手段と、第2処理液供給手段への処理液の供給及びその停止を切り換える第2出力側切り換え手段とを備える基板処理装置。」
と言い換えることができる。

そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、共に、基板処理装置という同一の技術分野に属する発明であるから、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を適用することは、当業者が容易になし得たものである。

次に、上記相違点2、3について検討する。
刊行物3に記載された発明と本件補正発明とを対比する。
刊行物3に記載された発明の「複数の薬液供給部」は、本件補正発明の「第1薬液供給源、第2薬液供給源」に相当し、
同様に、
「複数の薬液導入弁9a、9b」は「第1導入側切り換え手段、第2導入側切り換え手段」に、
「複数の薬液供給部と接続された複数の薬液導入弁9a、9bの二次側流路を内壁に開口させた流体通路45を有する本体44」は「第1導入側切り換え手段および第2導入側切り換え手段が一体的に設けられた集合管」に、
「処理槽1と薬液混合部3とを接続する供給路16a中」は「第1導入側切り換え手段と前記第2導入側切り換え手段よりも下流側」に、
「生成された混合処理液の濃度を検出する濃度センサ5」は「混合処理液の濃度を検知する濃度検知手段」に、
「濃度フィードバックコントローラ6を具備する制御部8」は「濃度検知手段で検知された混合処理液の濃度を監視する制御部」に、
それぞれ相当する。

したがって、刊行物3に記載された発明は、
「第1薬液供給源、第2薬液供給源、及び純水供給源と連通し、
第1薬液供給源からの第1薬液の供給及びその停止を切り換える第1導入側切り換え手段と、第2薬液供給源からの第2薬液の供給及びその停止を切り換える第2導入側切り換え手段と、
第1導入側切り換え手段および第2導入側切り換え手段が一体的に設けられた集合管と、
第1導入側切り換え手段と第2導入側切り換え手段よりも下流側に設けられ、第1薬液、第2薬液及び純水のうちのいずれかによって生成された混合処理液の濃度を検知する濃度検知手段とを有する処理液生成部と、
濃度検知手段で検知された混合処理液の濃度を監視する制御部と
を有する基板処理装置。」
と言い換えることができる。

そして、刊行物1に記載された発明と刊行物3に記載された発明とは、共に、基板処理装置という同一の技術分野に属する発明であるから、刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載された発明を適用し、「薬液供給源」及び「薬液供給源からの薬液の供給及びその停止を切り換える導入側切り換え手段」を、それぞれ、第1、第2の2つずつを有するものとして、上記相違点2に記載の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

一方、相違点1についての検討において指摘したように、刊行物2に記載された発明は、「処理液生成部」に「第1出力切り換え手段」及び「第2出力切り換え手段」を備えさせた基板処理装置であるから、刊行物1に記載された発明に、刊行物3に記載された「集合管」を適用する際に、上記刊行物2に記載の発明に鑑みて、第1・第2出力切り換え手段も集合管に一体的に設けることは、当業者であれば当然に為し得る程度の設計的事項である。
また、液体の濃度制御を行う装置において、濃度検知手段を、薬液と純水等の合流点の直後に設けることは、本願出願前広く行われている技術事項である(例えば、特開平11-7324号公報、特開平2-4700号公報参照のこと。)。
したがって、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明の第1・第2出力切り換え手段、及び、刊行物3に記載された発明の集合管を適用するに際して、上記周知の技術事項に倣って、濃度検知手段を薬液と純水の合流点の直後、すなわち集合管の管路途中であって、第1・第2出力切り換え手段の上流側に設け、相違点3に記載の構成とすることは、当業者が適宜成し得たものである。

そして、本件補正発明の奏する効果についてみても、刊行物1乃至3に記載された発明及び周知の技術事項により奏される効果の範囲内のものである。

したがって、本件補正発明は、刊行物1乃至3に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易になし得たものである。

よって、本件補正発明は、刊行物1乃至3に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年5月10日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年3月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「基板を収納して基板に所定の処理を行う処理部と、
前記処理部内に設けられ、第1の方向から基板に処理液を供給する第1処理液供給手段と、
前記処理部内に設けられ、前記第1の方向とは異なる第2の方向から基板に処理液を供給する第2処理液供給手段と、
前記第1処理液供給手段に処理液を供給するように前記第1処理液供給手段と連通し、かつ前記第2処理液供給手段に処理液を供給するように前記第2処理液供給手段と連通しているとともに、第1薬液供給源、第2薬液供給源、及び純水供給源と連通し、第1薬液、第2薬液及び純水のうちのいずれかによって処理液を生成するように構成するとともに、前記第1処理液供給手段への処理液の供給及びその停止を切り換える第1出力側切り換え手段と、前記第2処理液供給手段への処理液の供給及びその停止を切り換える第2出力側切り換え手段と、各液の導入部よりも下流側であって前記第1出力側切り換え手段と前記第2出力側切り換え手段よりも上流側の位置に設けられ、第1薬液、第2薬液及び純水のうちのいずれかによって生成された混合処理液の濃度を検知する濃度検知手段とを有する処理液生成部と、
前記濃度検知手段で検知された混合処理液の濃度を監視する制御部と
を有することを特徴とする基板処理装置。」

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1乃至3、刊行物1乃至3の記載事項、及び、刊行物1乃至3に記載された発明は、前記「2.[理由](2)刊行物」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。

本願発明は、前記「2.[理由]」で検討した本件補正発明において、「処理液生成部」が「前記第1薬液供給源からの第1薬液の供給及びその停止を切り換える第1導入側切り換え手段」と、「前記第2薬液供給源からの第2薬液の供給及びその停止を切り換える第2導入側切り換え手段」と、「前記第1出力側切り換え手段、前記第2出力側切り換え手段、前記第1導入側切り換え手段および前記第2導入側切り換え手段が一体的に設けられた集合管」とを有しているとの発明特定事項を削除するとともに、「濃度検知手段」の設けられる位置について、「前記第1導入側切り換え手段と前記第2導入側切り換え手段よりも下流側」であって「集合管の管路途中」に設けられているとの限定を省くものである。

そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「2.[理由2](4)当審の判断」に示したとおり、刊行物1乃至3に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も刊行物1乃至3に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1乃至3に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-10 
結審通知日 2008-10-14 
審決日 2008-10-27 
出願番号 特願平11-268722
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B08B)
P 1 8・ 121- Z (B08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
渋谷 知子
発明の名称 基板処理装置  
代理人 振角 正一  
代理人 梁瀬 右司  

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