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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B22F |
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管理番号 | 1189469 |
審判番号 | 不服2006-12937 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-22 |
確定日 | 2008-12-10 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 71679号「プライマリドリブンギヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月 5日出願公開、特開平11-269507〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年3月20日の出願であって、平成18年5月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年6月22日付けで審判が請求された後、同年7月20日付けで手続補正がされたが、当審において、同年6月16日付けで上記手続補正が却下されると共に、同日付けで拒絶理由が通知され、その後、同年8月12日付けで手続補正がされたものである。 2.本願発明 本願発明は、平成20年8月12日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「 上下の内側成形型による圧縮ののちに遅れて上下の外側成形型による圧縮がなされて圧粉成形が行われたのち焼結処理されて外周に形成される歯およびその近傍の外周部とその内側に形成される内周部とからなる焼結製のプライマリドリブンギヤであり、 前記外側成形型と前記内側成形型との型割りによって生じる前記外周部と前記内周部の境目の段部が歯近傍に形成され、 前記内側成形型により成形される前記内周部にはロッドの貫通により中心軸および大円孔と小円孔が形成され、 クラッチアウタの円板部から突出したボス部が前記大円孔に嵌装される緩衝ゴムを貫通して該クラッチアウタが浮動状態で係止され、前記ボス部の端部に添着されたクラッチサイドプレートと前記クラッチアウタの円板部とが前記内周部の両側に位置するとともに前記小円孔に嵌装された弾性ゴムにより前記内周部に前記クラッチアウタの円板部を当接して前記クラッチサイドプレートと前記内周部との間に所定の間隙を維持することを特徴とするプライマリドリブンギヤ。」(以下、「本願発明1」という。) 3.当審拒絶理由の概要 平成20年6月16日付けで通知した当審の拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。 「本願の請求項1?6に係る発明は、その出願前頒布された下記刊行物1?2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1:特開平9-143504号公報 刊行物2:実願昭61-137328号(実開昭63-42951号)のマイクロフィルム」 4.引用刊行物とその記載事項 上記刊行物1である特開平9-143504号公報には、次の事項が記載されている。 (1a)「【請求項4】 原料粉末をダイスとパンチで圧縮成形して圧粉成形体を製造する製造装置において、前記パンチを、インナーパンチとアウターパンチに分割する一方、前記ダイスを、インナーダイスとアウターダイスに分割し、前記インナーパンチとインナーダイスによる製品形状の内部の加圧のタイミングと、前記アウターパンチとアウターダイスによる製品形状の周縁部の加圧のタイミングを異ならせることを特徴とする圧粉成形体の製造方法。 【請求項5】 請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の圧粉成形体の製造装置において、前記製品は外周歯又は内周歯を有するギヤ部品であり、且つ前記圧縮成形は、当初製品形状の歯のない内部又は周縁部の加圧が開始され、その後製品形状の歯のある周縁部又は内部の加圧が開始されることで製品形状部の歯のある周縁部又は内部の粉体密度が高まるようにされたことを特徴とする圧粉成形体の製造装置。」 (1b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば金属粉末を圧粉成形し焼結することでギヤ部品を製造するような際、歯部の強度を高めるための技術に関する。」 (1c)「【0021】また、このはすば歯車には、中心軸とその周囲に複数の貫通孔を形成するようにしており、このため、アンダープレート1には複数のロッド24、…を固定し、これらロッド24、…の上端部をインナーダイス10aを貫通させて、内歯ダイス10cの上面とほぼ同じ高さ位置まで臨ませている。そして、前記インナーパンチ5aの下面には、下降時にこれらロッド24、…の上端と干渉しないよう複数の逃げ孔e、…を形成しており、前記連結ロッド11、…はこの逃げ孔e、…の一部を利用して取り付けている。」 5.当審の判断 (1)引用発明 刊行物1には、(1b)の「本発明は、例えば金属粉末を圧粉成形し焼結することでギヤ部品を製造するような際、歯部の強度を高めるための技術に関する。」という記載によると、圧粉成形されたのち焼結される焼結製ギヤ部品が記載されているといえる。 ここで、(1a)の「前記製品は外周歯又は内周歯を有するギヤ部品であり、且つ前記圧縮成形は、当初製品形状の歯のない内部又は周縁部の加圧が開始され、その後製品形状の歯のある周縁部又は内部の加圧が開始されることで製品形状部の歯のある周縁部又は内部の粉体密度が高まるようにされたことを特徴とする圧粉成形体の製造装置」という記載によると、上記焼結製ギヤ部品は、外周歯を有するギヤ部品であって、歯のない内部と歯のある周縁部とからなるといえるし、上記圧粉成形は、歯のない内部の加圧が開始され、その後歯のある周縁部の加圧が開始されるものであるといえる。 そして、同じく(1a)の「前記インナーパンチとインナーダイスによる製品形状の内部の加圧のタイミングと、前記アウターパンチとアウターダイスによる製品形状の周縁部の加圧のタイミングを異ならせる」という記載によると、上記内部及び周縁部は、それぞれ、インナーパンチとインナーダイスによる加圧及びアウターパンチとアウターダイスによる加圧がなされて成形されるといえる。 また、上記焼結製ギヤ部品は、(1c)の「このはすば歯車には、中心軸とその周囲に複数の貫通孔を形成するようにしており、このため、アンダープレート1には複数のロッド24、…を固定し、これらロッド24、…の上端部をインナーダイス10aを貫通させて」という記載によると、インナーダイスに複数のロッドを貫通させて、中心軸とその周囲に複数の貫通孔を形成されるものであるから、インナーパンチとインナーダイスにより成形される上記内部には複数のロッドの貫通により中心軸とその周囲に複数の貫通孔が形成されるといえる。 上記記載及び認定事項を本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次のとおりの発明が記載されているといえる。 「インナーパンチとインナーダイスによる加圧が開始され、その後アウターパンチとアウターダイスによる加圧がなされて圧粉成形が行われたのち焼結される、外周歯のある周縁部と歯のない内部とからなる焼結製ギヤ部品であり、前記インナーパンチとインナーダイスにより成形される前記内部には複数のロッドの貫通により中心軸およびその周囲に複数の貫通孔が形成されたギヤ部品。」(以下、「引用発明」という。) (2)本願発明1と引用発明との対比 まず、引用発明の「インナーパンチとインナーダイス」、「加圧」、「アウターパンチとアウターダイス」及び「焼結」は、それぞれ、本願発明1の「上下の内側成形型」、「圧縮」、「上下の外側成形型」及び「焼結処理」に相当する。また、引用発明の「外周歯のある周縁部」は、焼結製ギヤ部品の外周に形成される歯およびその近傍からなることは明らかであるから、本願発明1の「外周に形成される歯およびその近傍の外周部」に相当するといえるし、引用発明の「歯のない内部」は、上記周縁部の内側に形成されることは明らかであるから、本願発明1の「その内側に形成される内周部」に相当するといえる。 そして、引用発明では、パンチとダイスが、歯のない内部を成形するインナーパンチとインナーダイス及び外周歯のある周縁部を成形するアウターパンチとアウターダイスとに型割りされていることから、上記内部と周縁部との境目に段部が形成され、また、その段部が上記外周歯の近傍に形成されることは明らかである。 また、本願発明1の「大円孔と小円孔」は複数の貫通孔であるといえるから、引用発明の「複数の貫通孔」と本願発明1の「大円孔と小円孔」は、内周部にロッドの貫通により形成された複数の貫通孔であるといえる。 さらに、引用発明の「ギヤ部品」はギヤを意味することは明らかである。 そうすると、本願発明1と引用発明は、「上下の内側成形型による圧縮ののちに遅れて上下の外側成形型による圧縮がなされて圧粉成形が行われたのち焼結処理されて外周に形成される歯およびその近傍の外周部とその内側に形成される内周部とからなる焼結製のギヤであり、 前記外側成形型と前記内側成形型との型割りによって生じる前記外周部と前記内周部の境目の段部が歯近傍に形成され、 前記内側成形型により成形される前記内周部にはロッドの貫通により中心軸および複数の貫通孔が形成されたギヤ。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点:本願発明1は、内周部に「大円孔と小円孔が形成され」、「クラッチアウタの円板部から突出したボス部が前記大円孔に嵌装される緩衝ゴムを貫通して該クラッチアウタが浮動状態で係止され、前記ボス部の端部に添着されたクラッチサイドプレートと前記クラッチアウタの円板部とが前記内周部の両側に位置するとともに前記小円孔に嵌装された弾性ゴムにより前記内周部に前記クラッチアウタの円板部を当接して前記クラッチサイドプレートと前記内周部との間に所定の間隙を維持する」プライマリドリブンギヤであるのに対して、引用発明は、そのような構造を有するプライマリドリブンギヤであるのか否かが不明である点。 (3)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 まず、内周部に大円孔と小円孔が形成され、クラッチアウタの円板部から突出したボス部が該大円孔に嵌装される緩衝ゴムを貫通して、該クラッチアウタが浮動状態で係止され、前記ボス部の端部に添着されたクラッチサイドプレートと前記クラッチアウタの円板部とが前記内周部の両側に位置するとともに、前記小円孔に弾性ゴムが嵌装されたプライマリドリブンギヤは、特開平9-25943号公報(以下、「周知例1」という。)の【0020】、【0024】?【0031】、【0037】及び図3?図4、実公平4-53474号公報(以下、「周知例2」という。)の第2頁右欄6?11行、同27?31行及び第2?3図に記載されるように、本願出願前に周知の事項である。 そして、前記弾性ゴムは、周知例1の「軸線方向の力を緩衝するためにスラスト緩衝ゴム19が適宜設けられている」(【0037】)という記載及び周知例2の「被動歯車2には複数の段穴22があつて、ここに軸方向の緩衝ゴム23が挿入され」(第2頁右欄27?28行)という記載、並びに、周知例1の図3及び周知例2の第3図から上記弾性ゴムがクラッチサイドプレートに面していることが窺えることを考慮すれば、上記弾性ゴムにより、クラッチサイドプレートとプライマリドリブンギヤの内周部との間に所定の間隙を維持して上記「軸線方向の力」を緩衝すると解するのが自然であるといえる。そして、その結果として、クラッチサイドプレートと添着一体化したクラッチアウタの円板部が、プライマリドリブンギヤの内周部に当接していると解される。 すると、内周部に「大円孔と小円孔が形成され」、「クラッチアウタの円板部から突出したボス部が前記大円孔に嵌装される緩衝ゴムを貫通して該クラッチアウタが浮動状態で係止され、前記ボス部の端部に添着されたクラッチサイドプレートと前記クラッチアウタの円板部とが前記内周部の両側に位置するとともに前記小円孔に嵌装された弾性ゴムにより前記内周部に前記クラッチアウタの円板部を当接して前記クラッチサイドプレートと前記内周部との間に所定の間隙を維持する」プライマリドリブンギヤは、本願出願前に周知の事項であるといえる。 してみれば、内周部に複数の貫通孔を形成したギヤであることが明らかな引用発明を、上記周知の事項であるプライマリドリブンギヤとして用いることは当業者が容易に想到し得たことである。 (4)小括 したがって、上記相違点は当業者が容易に想到し得たことであるから、本願発明1は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-30 |
結審通知日 | 2008-10-07 |
審決日 | 2008-10-20 |
出願番号 | 特願平10-71679 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B22F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 米田 健志 |
特許庁審判長 |
山田 靖 |
特許庁審判官 |
近野 光知 平塚 義三 |
発明の名称 | プライマリドリブンギヤ |
代理人 | 小田 光春 |
代理人 | 中村 訓 |
代理人 | 江原 望 |