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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200511006 審決 特許
不服200626455 審決 特許
不服20052730 審決 特許
不服200516973 審決 特許
無効200135092 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1189539
審判番号 不服2005-19597  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-11 
確定日 2008-12-16 
事件の表示 平成10年特許願第500710号「皮膚症状処置用のオキサ酸および関連化合物」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月11日国際公開、WO97/46231、平成12年 9月12日国内公表、特表2000-511900〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年6月2日(優先権主張1996年6月4日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年10月11日に審判請求がなされるとともに、同年11月10日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年11月10日付けの手続補正に対する補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりのものとされた。
「適当な皮膚表面に適用するためのビークルおよび式(I)で示される化合物
【化1】(構造式省略)
(式中、R_(4)は(CR_(5)R_(6)-CR_(7)R_(8)-X_(1))n-CR_(9)R_(10)R_(11)であり、nは1乃至18の整数であり、R_(1)は水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)は独立にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデカニル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキセニル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、シクロブチルまたはシクロヘキサニルであり、X、Y、ZはOであり、X_(1)は独立にO、NHまたはSである)からなる皮膚表面に適用するための組成物。」

上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の構成要件である、式(I)で示される化合物を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)本願明細書の発明の詳細な説明の記載について

補正発明は、式(I)で示される化合物を有効成分とする、皮膚表面に適用するための組成物である。
そして、式(I)の化合物は、本願明細書(第1頁第5?7行)に「本発明は、皮膚症状の局所処置用の活性主成分として使用する新規な部類の化合物、これら化合物を含む組成物、これら化合物および組成物を使う皮膚症状の処置法に関する。」と記載されているように、それを皮膚に適用するという使い道は従来は知られていないものである。
ところで、このような化合物の特定の性質を利用した用途発明においては、通常、有効成分の化学構造だけからその有用性を予測することは困難であり、明細書に有効量、投与方法、製剤化のための事項等、適用するための一定程度の説明が記載されているとしても、そのことだけでは、当業者が、当該化合物が実際にその用途において有用であるか否かを確認することはできない。したがって、明細書には、その用途における有用性が実際に確認されたことを示す実施例、又はそれと同視することができる程度の記載をしてその用途における有用性を裏付ける必要がある。

そこで、この点について検討するに、本願明細書の発明の詳細な説明には組成物の有用性や用途、実施例に関し以下の記載がある。

(2-1)「“局所応用”は、皮膚表面に広げる、かまたは直接置くことを指す。・・・“有効量”とは、異常な落屑に起因し、あるいはそれに伴い、またそれにより悪化するような、処置しようとする皮膚症状に改善の変化(たとえば落屑の正常化)を誘起するのに十分な化合物または組成物の量を意味する。“薬理学的に受容可能なビークル”または“適当な局所用ビークル”とは、不適当な毒性なしでヒトの組織と直接接触使用に適する薬、化粧品、薬剤、または不活性成分を指す。%は全て、局所用組成物の全重量基準の重量%である。
本発明によれば、オキサ化合物は、異常な落屑に起因し、あるいはそれに伴い、またはそれにより悪化する種々の皮膚症状の処置のため、局所応用における活性主成分として使われる。上記症状は、乾燥皮膚、魚鱗癬、手掌および足底の角化症、ふけ、慢性単純苔癬、ダリエルス病、角化症、ほくろ、老齢斑点、黒皮症、斑点皮膚、アクネ、乾蘇、湿疹、かゆみ、炎症性皮膚症、皮膚線条(例えば、妊娠線)、いぼ、たこを含むが、これらに限定されない。
本化合物は、目の周りの細かいしわまたは“目尻のしわ”または口の周りの細かいしわといったような皮膚のしわ、不規則色素沈着、青白み、皮膚の弾力および弾性の喪失を含め、光老化および本質的老化双方の皮膚科学的老化の徴候を治療するのに使用する局所用製剤中の活性剤として有用なことが、予想外にまた驚くべきことに見いだされた。
オキサ化合物およびこれを含む局所用組成物は、内方成長髪、毛包炎、偽毛包炎ひげのような髪、爪、表皮に関連した障害の治療にも有用である。本化合物は、髪をやわらげ、髪の内方成長の除去を促進もし、式(I)の化合物をひげ剃り組成物として有用なものとしている。」(第6頁第15行?第7頁第11行)

(2-2)「薬理学的に受容可能なビークルと組み合わせて使用し、局所用組成物を形成する場合は、オキサ化合物の有効量は約0.1%乃至約95%の範囲で可能である。有効量および使用頻度の双方は、処置を要する特定の皮膚の症状、処置される個人の年齢と身体状態、症状の酷さ、処置の期間、同時処置の性質、使う特定の化合物または組成物、化合物または組成物の放出に利用される特定のビークル、当業者の知識と経験内の他の類似因子に基づき、この範囲内で変化する。
皮膚症状の処置におけるオキサ酸化合物の有効性は、組成物のpHにより影響を受けることが分かった。そこで、組成物のpHを、7.0未満、好ましくは5.0未満、最も好ましくは3.5乃至4.0のpH範囲に保つことが望ましいと考えられる。」(第7頁第16?下から第2行)

(2-3)「本発明の組成物は、優れた穏和性を含め、α-ヒドロキシ酸処方物よりも明らかな利点をもつ。グリコール酸、乳酸のようなα-ヒドロキシ酸を含む処方物は、顔に塗るとき、ある人には実質的不快を招き、他の人には酷い皮膚刺激の症状を招く可能性がある。グリコール酸処方物よりも皮膚に対し著しく穏和でありながら、本発明のオキサ酸組成物は、上部角質層の落屑の正常化に非常に有効である。上記正常化は、上で挙げた皮膚症状の軽減に必要である。」(第8頁第4?9行)

(2-4)「本発明はまた、前記皮膚症状を取り扱うにあたって、これらの化合物を使用可能な方法をも含む。上記方法は、通常1日に1、2回、冒された皮膚領域に、有効量の式(I)に示される1種またはそれ以上の化合物を局所的に塗ることを含む。上記方法はまた、通常1日に1、2回、冒された皮膚領域に、薬理学的に許容されるビークル中の有効量の式(I)に示される1種またはそれ以上の化合物を含む組成物を、局所的に塗ることを含む。本発明の方法は、上記化合物が常温で液体(たとえば3,6,9-トリオキサウンデカン二酸)であるとき、および、たとえば皮膚を剥がしたり髪を柔らかくするために使うときには、100%までの濃度で、式(I)に示される化合物を局所的に適用することを含む。」(第19頁第7?15行)

(2-4)「実施例1・・・
角質層の落屑の微視的正常化または表皮の巨視的剥脱は、本オキサ酸化合物および組成物がねらいとしている皮膚症状の軽減において欠くことのできない活性である。次の実施例は、とりわけ、本オキサ酸組成物により提供される優れた角質層落屑活性を示す。
実施例2
色素過剰斑点用クリーム
この実施例は、手の皮膚上の色素過剰斑点外観を軽減するために調製され、使用可能なクリームを示す。
・・・
実施例3
乾燥皮膚、魚鱗癬角化症用クリーム
この実施例は、本発明に従い、乾燥皮膚、魚鱗蘚、角化症の治療のために、調製され使用可能なシリコーンクリームを示す。
・・・
実施例4
シリコーンゲル
この実施例は、シリコーン中水型ゲル組成物を示す。
・・・
実施例5
アクネ、皮膚斑点、老齢斑点用クリーム
この実施例は、アクネ、皮膚斑点、老齢斑点の治療のため、使用可能な顔用クリームを示す。
・・・」(第21頁第5行?第24頁第4行)

上記(2-1)では、オキサ化合物(式(I)の化合物)の有用性として、 i)異常な落屑に起因し、あるいはそれに伴い、またはそれにより悪化する種々の皮膚症状、該皮膚症状の例、乾燥皮膚、魚鱗癬、手掌および足底の角化症、ふけ、慢性単純苔癬、ダリエルス病、角化症、ほくろ、老齢斑点、黒皮症、斑点皮膚、アクネ、乾蘇、湿疹、かゆみ、炎症性皮膚症、皮膚線条(例えば、妊娠線)、いぼ、たこ。
ii)目の周りの細かいしわまたは“目尻のしわ”または口の周りの細かいしわといったような皮膚のしわ、不規則色素沈着、青白み、皮膚の弾力および弾性の喪失を含め、光老化および本質的老化双方の皮膚科学的老化の徴候
iii)内方成長髪、毛包炎、偽毛包炎ひげのような髪、爪、表皮に関連した障害
の治療が挙げられ、(2-2)、(2-4)には、化合物の有効量、組成物のpH、1日当たりの使用回数が示されている。しかしながら、i)?iii)の症状が具体的にどのように改善されるのか、用量用法がどのような根拠に基づいて設定されたものかは明らかではない。
また、(2-3)(2-4)には本発明のオキサ酸組成物は、上部角質層の落屑の正常化に非常に有効であると記載され、実施例1?5に各種の皮膚疾患用の処方が示されているが、それらの処方物を皮膚表面に適用して得られる作用については、実施例2?5の記載に先立ち「次の実施例は、とりわけ、本オキサ酸組成物により提供される優れた角質層落屑活性を示す。」としたうえ、実施例2のクリームは、「手の皮膚上の色素過剰斑点外観を軽減するために調製され、使用可能」、実施例3のクリームは、「乾燥皮膚、魚鱗癬、角化症の治療のために調製され使用可能」、実施例5のクリームは、「アクネ、皮膚斑点、老齢斑点の治療のため、使用可能」と記載されているだけであって、これらの活性や治療効果を裏付けるに足りる具体的試験データは何ら提示されておらず、それと同視すべき程度の説明も一切なされていない。

そして、上記摘記部分を含む明細書の全記載及び本願出願当時の技術常識を合わせ考慮してみても、式(I)で示される化合物の上記i)?iii)に記載した皮膚症状を軽減ないし治療する作用を当業者が客観的に理解可能とすることはできない。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明には、補正発明の組成物を皮膚表面に適用した場合の薬理効果を含む所期の作用効果が達成されることの裏付けがなく、発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているものではないから、当業者が補正発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。
よって、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.本願発明について
平成17年11月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年5月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「適当な皮膚表面に適用するためのビークルおよび式(I)で示される化合物
【化1】(構造式省略)
(式中、R_(4)は(CR_(5)R_(6)-CR_(7)R_(8)-X_(1))n-CR_(9)R_(10)R_(11)であり、nは1乃至18の整数であり、R_(1)は水素であり、R_(2)、R_(3)、R_(5)、R_(6)、R_(7)、R_(8)、R_(9)、R_(10)、R_(11)は独立に水素またはアルキル、アルケニル、オキサアルキル、アラルキル、アリールからなる群から選ばれる非水素置換基であり、X、X_(1)、Y、Zは独立にO、NHまたはSである)からなる皮膚表面に適用するための組成物。」

前記2.(1)?(3)に示したとおり、 本願発明の式(I)で示される化合物をさらに限定した発明である補正発明は、本願明細書に、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものではない。
そうすると、補正発明を包含する本願発明にしても上記と同様の理由により、本願明細書には、本願発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものとは認められない。
したがって、本願は、明細書の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-16 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-05 
出願番号 特願平10-500710
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 536- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 美穂  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 弘實 謙二
谷口 博
発明の名称 皮膚症状処置用のオキサ酸および関連化合物  
代理人 高梨 憲通  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 藤野 育男  
代理人 本宮 照久  
代理人 臼井 伸一  
代理人 岡部 正夫  
代理人 越智 隆夫  

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