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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1189615 |
審判番号 | 不服2006-14570 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-06 |
確定日 | 2009-01-06 |
事件の表示 | 平成10年特許願第258521号「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月31日出願公開、特開2000- 89963、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年9月11日の出願であって、平成18年3月13日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月16日付けで手続補正がなされたが、同年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月6日に審判請求がなされるとともに、同年8月7日付けで手続補正がなされ、同年10月23日付けで審査官から前置報告がなされ、平成20年9月9日付けで当審より審尋がなされ、同年11月10日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成18年8月7日付け手続補正について 平成18年8月7日付け手続補正は、以下の(2-1)?(2-4)を行うものである。 (2-1)補正前の請求項1の「前記画像処理手段が実行すべき動作を変更する場合に」という記載を、「前記画像処理手段に入力される画像データの入力元又は前記画像処理手段により画像処理された画像データの出力先の少なくともいずれかを異ならせるのに伴って、前記画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせを変更する場合に」と書き換える補正。 (2-2)補正前の請求項1の「複数の画像処理」、「割り当てられている画像処理を登録する」、「実行すべき画像処理」という記載を、それぞれ「複数種類の画像処理」、「割り当てられている画像処理の種類を登録する」、「実行すべき画像処理の種類」と書き換える補正。 (2-3)補正前の請求項2?4の「実行すべき動作は・・・出力する動作である」という記載を、「実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせは・・・出力するための組み合わせである」と書き換える補正。 (2-4)補正前の請求項5の「複数の画像処理」という記載を、「複数種類の画像処理」と書き換える補正。 ここで願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「出願当初の明細書及び図面」という。)を参照すると、画像処理手段が実行すべき動作とは、図8に図示されている「複写処理」、「プリンタ処理」、「ファクス送信処理」、「ファクス受信処理」という4つの処理であり、それら4つの処理は、入力される画像データの入力元(図8のCCD709、I/F660、ファクス部670)又は処理された画像データの出力先(図6のプリンタ部650、ファクス部670)の少なくともいずれかが異なっていることが、出願当初の明細書及び図面には記載されている。したがって、実行すべき動作である「複写処理」、「プリンタ処理」、「ファクス送信処理」、「ファクス受信処理」を変更することが、すなわち入力される画像データの入力元又は処理された画像データの出力先を異ならせることになることは、出願当初の明細書及び図面の記載から当業者にとって自明である。 また、出願当初の明細書及び図面に記載されている前記「複写処理」、「プリンタ処理」、「ファクス送信処理」、「ファクス受信処理」という4つの処理は、図8、図9に端的に示されているように、それぞれ複数種類の画像処理から構成されていること、すなわち、前記「複写処理」は「シェーディング」、「解像度変換(1)」、「エッジ強調」、「2値化処理(1)」という複数種類の画像処理から構成され、前記「プリンタ処理」は、「PDL展開」、「エッジ強調」、「2値化処理(1)」という複数種類の画像処理から構成され、前記「ファクス送信処理」は、「シェーディング」、「解像度変換(1)」、「エッジ強調」、「2値化処理(2)」、「符号化」という複数種類の画像処理から構成され、前記「ファクス受信処理」は「復号化」、「解像度変換(2)」、「エッジ強調」、「2値化処理(1)」という複数種類の画像処理から構成されていることが、出願当初の明細書及び図面には記載されている。したがって、実行すべき動作である「複写処理」、「プリンタ処理」、「ファクス送信処理」、「ファクス受信処理」を変更することが、すなわち画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせを変更することになることは、出願当初の明細書及び図面の記載から、当業者にとって自明である。 よって、上記(2-1)?(2-4)の補正はいずれも、出願当初の明細書及び図面に記載した事項の範囲内で行われたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反していない。 そして、上記(2-1)?(2-4)の補正はいずれも、補正前の請求項1?5に記載されていた発明特定事項を限定するものであって、補正前後で発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、特許法第17条の2第4項第2号を目的とする補正である。 3.本願請求項1?5に係る発明 本願の請求項1?5に係る発明は、上記平成18年8月7日付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 複数種類の画像処理に対応する複数のコンフィギュレーション情報を記憶する記憶手段と、 入力された画像データを複数の画像処理部にて順次画像処理して出力する画像処理手段であって、前記記憶手段に記憶されたコンフィギュレーション情報に基づいて前記複数の画像処理部を前記複数種類の画像処理のいずれかを実行可能な状態とする画像処理手段と、 前記複数の画像処理部に割り当てられている画像処理の種類を登録する登録手段と、 前記画像処理手段に入力される画像データの入力元又は前記画像処理手段により画像処理された画像データの出力先の少なくともいずれかを異ならせるのに伴って、前記画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせを変更する場合に、前記複数の画像処理部のうち実行すべき画像処理の種類の変更が必要な画像処理部を前記登録手段に登録された内容に基づいて特定するとともに、該特定された画像処理部が実行すべき画像処理の種類を前記コンフィギュレーション情報に基づいて変更させるよう前記画像処理手段を制御する制御手段と、 を有することを特徴とする画像処理装置。 【請求項2】 原稿を読み取って画像データを入力する読取手段と、 画像データに基づいて用紙上に画像を出力する出力手段とを有し、 前記画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせは、前記読取手段により入力された画像データを前記出力手段へ出力するための組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。 【請求項3】 外部装置から送信される画像データを入力する入力手段と、 画像データに基づいて用紙上に画像を出力する出力手段とを有し、 前記画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせは、前記入力手段により入力された画像データを前記出力手段へ出力するための組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。 【請求項4】 原稿を読み取って画像データを入力する読取手段と、 外部装置へ画像データを送信する送信手段とを有し、 前記画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせは、前記読取手段により入力された画像データを前記送信手段へ出力するための組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。 【請求項5】 前記画像処理手段は、前記コンフィギュレーション情報を一時的に記憶するためのコンフィギュレーション情報記憶手段を有し、前記コンフィギュレーション情報記憶手段に記憶されたコンフィギュレーション情報に基づいて前記複数の画像処理部を前記複数種類の画像処理のいずれかを実行可能な状態とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。」 4.原査定の拒絶理由 原査定の拒絶理由の要旨は、本願請求項1?5に係る発明が、特開平8-76974号公報(以下「引用文献」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというもの(以下「理由1」という。)と、本願請求項1?5に係る発明は、特願平10-29669号の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、発明者や出願人は同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない(以下「理由2」という。)というものである。 5.理由1についての判断 上記引用文献には、 「【0031】以下、図1を参照しながら、図2?図4を用いて、本発明のデータ処理装置の構成と動作を説明する。本発明のデータ処理装置は、図1に示されているように、中央処理装置(CPU)1が、システム・メモリ 2に展開されている各種のアプリケーションプログラムを実行することにより、所定のデータ処理を実行する。このとき、FPGA53内のコンフィグレーション用メモリ (RAM)530へダウンロードされるコンフィグレーション・データをダイナミックに変更 (ダウンロード) することにより、各種のデータ処理をダイナミックに切り替えて処理することができるようになる。」、 「【0036】該ダウンロード制御部51は、依頼されたコンフィグレーション・データ<<1>>をFPGA53のコンフィグレーション・データ用メモリ(RAM)530へダウンロードしFPGA個別機能部を所定の機能に設定する。FPGA53にダウンロードする際、現在のFPGA53のダウンロード状態をFPGAダウンロード状態判定部52にて判定し、同一機能の再ローディンングを行わない様に制御する。{FPGAのダウンロード状態の判定処理手段<<4>>に対応} 図4に基づいて、上記の処理を、更に、詳細に説明する。即ち、CPU1からダウンロードの要求があったとき、フラグレジスタ54に格納されているコンフィグレーション・データ<<1>>と、今要求のあったコンフィグレーション・データ<<1>>との番号を比較し、一致した場合には、該FPGA53に、既に、おなじ番号のコンフィグレーション・データ<<1>>がダウンロードされているものとして、該ダウンロード動作を抑止する。{図4の処理ステップ200参照} 該比較において、コンフィグレーション・データ<<1>>の一致がみられなかった場合には、RAM→FPAGへのダウンロード動作に移る。先ず、マイクロプロセッサ(MPU)50において、RAMアドレスを出力すると共に、インタフェース部を介してFPGA53にダウンロード起動要求(REQ) を送出し、該FPGA53から、レディー信号(RDY) を受信すると、該FPGA53は、RAM6からダウンロードデータ1語を読み込んだと認識し、アドレスを更新して、次の1語の読み込み動作に入ることを、該ダウンロードの終了を認識する迄繰り返す。{図3(b)の処理ステップ201?205参照} 該ダウンロード動作が終了すると、前述のフラグレジスタ54に対して、今ダウンロードしたコンフィグレーション・データ<<1>>の番号を登録する。{図4の処理ステップ206参照} 上記処理ステップ201?206迄の処理が、前述のRAM→FPEAへのダウンロード処理<<3>>が対応する。」 という記載が存在する(なお、引用文献においては、○の中に数字の1、3、4が書かれた記号が使用されているが、それらの記号はここでは<<1>>、<<3>>、<<4>>という表記によって代用する。)。 引用文献に記載されている発明は、コンフィグレーションデータをコンフィグレーション用メモリ (RAM)530 へダウンロードするものではあるが、前記コンフィグレーションデータは複数種類の画像処理に対応するものではなく、本願請求項1?5のように、複数の画像処理部に割り当てられている画像処理の種類を登録する登録手段を設け、制御手段が、画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせを変更する場合に、複数の画像処理部のうち実行すべき画像処理の種類の変更が必要な画像処理部を前記登録手段に登録された内容に基づいて特定するとともに、該特定された画像処理部が実行すべき画像処理の種類を前記コンフィギュレーション情報に基づいて変更させるという構成(以下「構成A」という。)を開示も示唆もするものではないから、本願請求項1?5が有する前記「構成A」が、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとは言えない。 したがって、前記理由1のように本願請求項1?5に係る発明が、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることはできない。 6.理由2についての判断 上記特願平10-29669号の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、それぞれ「引用明細書」、「引用図面」という。)は、特開平11-232081号公報に掲載されているが、当該引用明細書には、 「【0191】[第2の実施の形態]次に、この発明による情報処理システムの第2の実施の形態の構成を図22に示す。 【0192】この第2の実施の形態においては、ハードウエアモジュール取得手段300が取得して、プログラマブル論理回路400に構成したハードウエアモジュールHMの識別符号は、識別符号記録手段800に記録される点が、第1の実施の形態と異なる。他の構成要素は、第1の実施の形態と同様である。 【0193】この実施の形態の場合、識別符号記録手段800には、ハードウエアモジュール取得手段300により、情報処理システム内の記憶装置あるいはネットワーク20上の記憶装置21から取得されて、プログラマブル論理回路400に再構成されたハードウエアモジュールHMの識別符号IDが、その再構成順に記録される。したがって、この識別符号記録装置800には、ハードウエアモジュールHMの使用履歴が記録されることになる。 【0194】この第2の実施の形態のハードウエア構成は、識別符号記録手段800を、次に説明するように構成することにより、図3に示した第1の実施の形態を実現する情報処理システム10と同じハードウエア構成で実現できる。 【0195】すなわち、ハードウエアモジュールHMのコンフィギュレーションが終了し、図8のステップS43に示すように、コンフィギュレーションの終了がOSに通知されたとき、コンフィギュレーションが終了したハードウエアモジュールHMの識別符号を、システム10内の記憶装置、例えば、図3のハードディスクドライブ18によりハードディスクやメインメモリ13に記録することにより、識別符号記録手段800を実現する。 【0196】[処理の具体例の実施例(第3の実施例)]次に、この第2の実施の形態における第1の実施例(以下、第3の実施例という)を、図23のフローチャートを用いて説明する。 【0197】この第3の実施例は、紙文書をスキャナで読み込んで、電子文書に変換する処理の例である。紙文書は、文字で記述された文字部分と、図や写真の画像部分で構成される。 【0198】図23に示すように、まず、最初に、スキャナを使って、画像部の読み取りに必要な解像度と階調数で紙文書を読み取り、画像データとして蓄積する(ステップS61)。次に、読み取った画像データを、既知の文字画像分離処理技術を用いて、文字部と画像部に分離する(ステップS62)。 【0199】分離した文字部の画像データは、第1のアプリケーションによって、Laplacianフィルタによりエッジ強調の前処理を行い(ステップS63)、既知の文字認識技術を用いて認識し(ステップS64)、文字コードによって表される文字データに変換する(ステップS65)。 【0200】また、画像部の画像データは、第2のアプリケーションによって、前述の第2の実施例で述べた線形変換処理によりコントラストを整え(ステップS66)、第2の実施例で述べたGaussianフィルタによりノイズを除去し(ステップS67)、さらに、第2の実施例で述べたLaplacianフィルタにより、エッジを強調して(ステップS68)、ディスプレイ表示に適した画像データに変換する(ステップS69)。 【0201】最後に、例えば市販の電子文書編集ソフトウエアを用いて、文字部の文字データと画像部の画像データを、所望のレイアウトに編集して(ステップS70)、電子文書が完成する。 【0202】第1のアプリケーションと第2のアプリケーションは、ともに前記第2の実施例で示したアプリケーションと同じように、アプリケーションを構成するソフトウエアモジュールSMと同じ処理をするハードウエアモジュールHMの識別符号IDをアプリケーションのヘッダ部HEDに持つ。 【0203】すなわち、第1のアプリケーションは、Laplacianフィルタのハードウエアモジュールの識別符号HmXYZ001を、そのヘッダ部HEDに持ち、また、第2のアプリケーションは、Gaussianフィルタのハードウエアモジュールの識別符号HmABC001と、線型変換のハードウエアモジュールの識別符号HmPQR001とを、そのヘッダ部HEDに持つ。 【0204】この第2の実施の形態のハードウエアモジュール取得手段300は、第1の実施の形態で述べた手順と同様の手順で、第1のアプリケーションと第2のアプリケーションからハードウエアモジュールHMの識別符号IDを読み込むことで、コンフィギュレーションするハードウエアモジュールHMを認識する。 【0205】例えば、第1のアプリケーション、第2のアプリケーションの順序で実行する場合、第1のアプリケーションが実行されるときに、ハードウエアモジュールHmXYZ001が、プログラマブル論理回路400に構成され、識別符号HmXYZ001が識別符号記録手段800に記録される。 【0206】そして、第2のアプリケーションが実行されるときには、ハードウエアモジュール取得手段300は、3種のハードウエアモジュールHmPQR001,HmABC001,HmXYZ001を取得して、コンフィギュレーションする必要があるが、ハードウエアモジュール取得手段300が、識別符号記録手段800を参照することにより、ハードウエアモジュールHmXYZ001は、既にプログラマブル論理回路上に構成されていることが分かる。 【0207】そこで、ハードウエアモジュール取得手段300は、第2のアプリケーションを実行するときには、ハードウエアモジュールHmXYZ001は、重ねてコンフィギュレーションすることはしない。しかし、ハードウエアモジュールHmXYZ001は、既にプログラマブル論理回路400上に構成されているので、前述した第1の実施例と第2の実施例で示したハードウエアモジュールの構成手順を経ること無く、LaplacianフィルタのソフトウエアモジュールHmXYZ001をハードウエアモジュールに置き換えて処理することができる。 【0208】[処理の具体例の実施例(第4の実施例)]次に、この発明の第2の実施の形態における他の実施例(以下、第4の実施例という)を説明する。 【0209】前述の第3の実施例で示した、画像データからの文字認識を行う第1のアプリケーションと、画像データをディスプレイ表示に適した画像に変換する第2のアプリケーションは、それぞれが独立した処理であるから、それぞれが異なった画像データを処理することもできる。この第4の実施例は、それぞれ第1および第2のアプリケーションが異なった画像データを処理する場合である。 【0210】この第4の実施例において、第1のアプリケーションと第2のアプリケーションを続けて実行する場合は、識別符号記録手段800を参照することにより、共通に用いられるハードウエアモジュールHmXYZ001が、一方のアプリケーションを実行した後には既にプログラマブル論理回路上に構成されていることが分かる。したがって、他方のアプリケーションを実行するときに、第1、第2の実施例で示したハードウエアモジュールのコンフィギュレーションを行うこと無く、Laplacianフィルタのソフトウエアモジュールを、ハードウエアモジュールHmXYZ001に置き換えて処理するようにする。 【0211】また、第4の実施例においては、一方のアプリケーションを実行した後に、情報処理システムの運転を停止し、後にシステムの運転を再開して他方のアプリケーションを実行するときには、次のようにすることにより、ハードウエアモジュールのコンフィギュレーションを効率的に行うことができる。 【0212】すなわち、システムを再開したときに、他方のアプリケーションの処理開始前に、識別符号記録手段800を参照して、記録されている識別符号に対応するハードウエアモジュールHMを、プログラマブル論理回路16上に構成する。 【0213】これにより、他方のアプリケーションの処理を開始したときには、既に、前に処理を行ったアプリケーションと共通に用いるハードウエアモジュールHmXYZ001は、プログラマブル論理回路400上に構成されている。 【0214】したがって、第1、第2の実施例で示したハードウエアモジュールの構成手順を経ること無く、Laplacianフィルタのソフトウエアモジュールを、共通に用いるハードウエアモジュールHmXYZ001に置き換えて処理することができる。」という記載が存在する。 引用明細書では、「第1のアプリケーション」と「第2のアプリケーション」によってそれぞれ画像データを処理することが、段落[0209]等に記載され、前記「第1のアプリケーション」が引用図面の図23のS63の「エッジ強調処理」という画像処理を行い、前記「第2のアプリケーション」が引用図面の図23のS66、S67、S68の「コントラスト調整処理」、「ノイズ除去処理」、「エッジ強調処理」という複数種類の画像処理の組み合わせから成り、前記「第1のアプリケーション」と前記「第2のアプリケーション」とでは前記「エッジ強調処理」という画像処理が共通しているので、前記「第1のアプリケーション」を実行した後に前記「第2のアプリケーション」を実行する場合(引用明細書段落[0205]の「第1のアプリケーション、第2のアプリケーションの順序で実行する場合」、同段落[0210]の「第1のアプリケーションと第2のアプリケーションを続けて実行する場合」)には、共通する「エッジ強調処理」を実行するためのハードウェアモジュールのコンフィギュレーションは省略するようになっている(同段落[0207]の「重ねてコンフィギュレーションすることはしない」、同段落[0210]の「共通に用いられるハードウェアモジュール・・・コンフィギュレーションを行うこと無く」)から、この点において引用明細書記載の発明は、本願請求項1?5の「前記複数の画像処理部のうち実行すべき画像処理の種類の変更が必要な画像処理部を前記登録手段に登録された内容に基づいて特定するとともに、該特定された画像処理部が実行すべき画像処理の種類を前記コンフィギュレーション情報に基づいて変更させるよう前記画像処理手段を制御する」という制御(以下「制御B」という。)と同等の制御を行っている。 しかしながら、当該制御Bは、本願請求項1?5においては、「前記画像処理手段に入力される画像データの入力元又は前記画像処理手段により画像処理された画像データの出力先の少なくともいずれかを異ならせるのに伴って、前記画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせを変更する場合」に行われるものであるのに対し、引用明細書には、画像データの入力元に関する記載としては、段落[0198]に「スキャナ」という記載が存在するのみであり、その他の画像データの入力元については、引用明細書にも引用図面にも記載されておらず、また、画像処理された画像データの出力先に関する記載は、引用明細書や引用図面には一切存在していない。また、引用明細書では、前記「第1のアプリケーション」を実行した後に前記「第2のアプリケーション」を実行することは記載されているものの、そのような「第1のアプリケーション」から「第2のアプリケーション」への切り換えを「前記画像処理手段に入力される画像データの入力元又は前記画像処理手段により画像処理された画像データの出力先の少なくともいずれかを異ならせるのに伴って、前記画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせを変更する場合」に行うことは、引用明細書にも引用図面にも記載されていない。 したがって、前記制御Bが「前記画像処理手段に入力される画像データの入力元又は前記画像処理手段により画像処理された画像データの出力先の少なくともいずれかを異ならせるのに伴って、前記画像処理手段が実行すべき複数種類の画像処理の組み合わせを変更する場合」に行われるものであるか否かという点において、本願請求項1?5に係る発明と、引用明細書又は引用図面に記載されている発明とは相違するので、両者発明は同一ではない。 また、当該相違は、本願請求項1?5では、画像データの入力元や出力先の特性に合わせて画像処理の内容を変更する必要があるという事情に基づいて発生しているものであるから、そのような事情を有さない引用明細書又は引用図面に記載されている発明において、前記「第1のアプリケーション」と前記「第2のアプリケーション」の切り替えを、画像データの入力元又は出力先の変更に対応して行うようにすることは、周知技術や慣用技術の単なる付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏さないものであるなどということもできないから、両者発明は実質同一でもない。 したがって、前記理由2のように、本願請求項1?5に係る発明は、特願平10-29669号の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるとすることはできない。 7.まとめ 以上のとおり、本願請求項1?5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定及び特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとした原査定の判断は妥当ではない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2008-12-16 |
出願番号 | 特願平10-258521 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 161- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 漆原 孝治 |
特許庁審判長 |
赤川 誠一 |
特許庁審判官 |
久保 光宏 鈴木 匡明 |
発明の名称 | 画像処理装置 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 高柳 司郎 |