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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1189642
審判番号 不服2007-3227  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-30 
確定日 2008-12-11 
事件の表示 平成 9年特許願第258638号「ノイズ吸収装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月 9日出願公開、特開平11- 97875〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年9月24日の出願であって、平成18年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年10月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月27日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として平成19年1月30日付けで請求されたもので、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成19年1月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定
【補正の却下の決定の結論】
平成19年1月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

【決定の理由】
[1]本件補正の内容
本件補正のうち、特許請求の範囲に係る補正の内容の一つは、請求項1に係る発明について、「面取り部」が設けられる箇所を、「分割面の内径側に沿う内縁部にのみ」と補正するものである。

[2]本件補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に係る発明について、「各分割コアの分割面の内径側に沿う内縁部に面取り部が設けられている」とあるのを、補正後は、「各分割コアの分割面を囲む縁部のうち、当該分割面の内径側に沿う内縁部にのみ面取り部が設けられている」とするものであり、「面取り部」が設けられる箇所を特定するものであるから、発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、また、本件補正後の請求項1に記載された発明は、本件補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

〈独立特許要件について〉
[2-1]本願補正発明
本件補正後の発明は、補正後の明細書の特許請求の範囲に記載されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は次のとおりのものである。

「半円筒状に形成された一対のフェライト製分割コアと、これらの分割コアをそれぞれ内装して開閉可能な一対のカバーを有し、前記カバーを閉じた時に前記各分割コアはそれぞれの分割面が互いに密接されてケーブルを包囲する筒状に構成されるノイズ吸収装置において、前記各分割コアの分割面を囲む縁部のうち、当該分割面の内径側に沿う内縁部にのみ面取り部が設けられていることを特徴とするノイズ吸収装置。」

[2-2]引用例及び引用例の主な記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願平1-18284号(実開平2-110398号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

(1a)「上記フェライト7は、中央に貫通孔のある八角形の筒をその軸方向に裁断した形状をしており、その両端部には固定突起15と嵌合する固定凹部22が形成されている。このフェライト7は、ケース部5,6の一対の電線保持部材12の間に、矢印A方向に押し込まれることにより、固定突起15と固定凹部22とが嵌め合って固定される。
そして、この雑音吸収具1は、第8図及び第9図に示す様に、電子機器の電線10の外周部に外嵌されて、フェライト7及びケース部5,6の間に電線10を通した状態で電線10に装着される。」(第7頁第3?13行)
(1b)「この様にケース部5,6が閉じられて装着されるときには、上記挟持部13の凸部14は円形に配置されることになり、それによって電線10が通される挟持孔23(第8図)が形成され、また半円状の開口部11が合わさって挟持孔23より径の大きな円孔が形成される。従って、電線10は、電線保持部材12の挟持部13に設けられた凸部14によって、両側からしっかりと挟まれてクランプされた状態となり、それとともに、電線10は保持ケース2の開口部11で緩やかに保持される。
また、このとき、係止爪18はケース部6の係止フック17に係止され、その閉鎖状態は確実に保持される。更に閉鎖時には、ケース部5,6の底部の付勢爪8が両方のフェライト7を合わせる方向に付勢することになるので、フェライト7は相互に当接してその雑音吸収の能力が向上し、またガタつくことなく安定した状態に保持される。」(第7頁第14行?第8頁11行)
(1c)「上述した構成によって、本実施例の雑音吸収具1は、下記の効果を奏する。
フェライト7を収納した雑音吸収具1の適数個を電線10に外嵌固定して、電線10の周囲を磁性体であるフェライト7により包囲することにより、外部から電線10を通して流れこむ雑音電流や、電線10がアンテナとなって拾う雑音電流は、フェライト7に吸収されて低減する。」(第8頁第12?19行)

[2-3]当審の判断
(1)引用例に記載された発明
引用例の(1a)の「上記フェライト7は、中央に貫通孔のある八角形の筒をその軸方向に裁断した形状をしており」という記載によれば、引用例には、筒を軸方向に裁断した形状のフェライトとが記載されているといえる。
また、(1a)には「このフェライト7は、ケース部5,6の一対の電線保持部材12の間に、矢印A方向に押し込まれることにより、固定突起15と固定凹部22とが嵌め合って固定される。」と記載されており、一方、(1b)には「この様にケース部5,6が閉じられて装着される」と記載されているから、引用例には、フェライトを押し込み閉じられる一つのケース部が記載されているといえる。
さらに、(1b)の「この様にケース部5,6が閉じられて装着されるときには・・・フェライト7は相互に当接して」という記載、及び、(1c)の「フェライト7を収納した雑音吸収具1の適数個を電線10に外嵌固定して、電線10の周囲を磁性体であるフェライト7により包囲する」という記載によれば、引用例には、ケースが閉じられるとフェライトは相互に当接して電線を包囲することが記載されているといえるし、フェライトは相互に当接するのであるから、筒状に構成されるといえる。

以上の記載及び認定事項を、本願補正発明の記載ぶりに則り整理すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

『筒を軸方向に裁断した形状のフェライトと、フェライトを押し込み閉じられる一つのケース部を有し、ケースが閉じられるとフェライトは相互に当接して電線を包囲する筒状に構成される雑音吸収具。』

(2)本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の『筒を軸方向に裁断した形状』、『フェライト』、『押し込み』、『閉じられる』、『ケース部』、『相互に当接』、『電線』及び『雑音吸収具』は、それぞれ本願補正発明の「半円筒状」、「フェライト製分割コア」、「内装」、「開閉可能」、「カバー」、「互に密接」、「ケーブル」及び「ノイズ吸収装置」に相当する。
してみると、両者は、「半円筒状に形成された一対のフェライト製分割コアと、これらの分割コアをそれぞれ内装して開閉可能な一対のカバーを有し、前記カバーを閉じた時に前記各分割コアはそれぞれの分割面が互いに密接されてケーブルを包囲する筒状に構成されるノイズ吸収装置」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:本願補正発明では、各分割コアの分割面を囲む縁部のうち、当該分割面の内径側に沿う内縁部にのみ面取り部が設けられているのに対して、引用発明では、どのように面取り部が設けられているのかが不明である点

(3)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
ノイズ吸収装置の技術分野においては、例えば、特開平6-215952号公報(特に、【0004】)、実願平3-16322号(実開平4-113418号)のマイクロフィルム(特に、【0004】)にも記載されているように、ノイズ吸収装置としての分割フェライトに電線が挟み込まれ、ケーブルの損傷等が生じることは、周知の課題ということができる。
一方、一般的に、機械部品の角や隅において、面取りは普通に設けられているものであるから(例えば、技能士の友編集部 「機械要素のハンドブック」 初版 (昭52-5-20) 株式会社大河出版 p.156-157、参照)、引用発明においても、分割面に面取り部が形成されているといえるし、また、例えば、同心撚線製造用装置の分割ダイス等において、ダイスの打撃面部分に面取りされたアール状の逃げ面を設け、撚線の損傷を防止することは、周知技術と認められる(例えば、特開平9-237533号公報(特に、【0032】)、参照)。
してみると、引用発明において、前記周知の課題である電線の挟み込みを防止するために、分割コアの分割面の電線と接触する縁部、すなわち、分割面の内径側に沿う内縁部において、挟み込みを防止する程度の面取り部を設けることは、当業者が容易に為し得ることである。

(4)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[2-4]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明についての審決
[1]本願発明
平成19年1月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成18年10月5日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「半円筒状に形成された一対のフェライト製分割コアと、これらの分割コアをそれぞれ内装して開閉可能な一対のカバーを有し、前記カバーを閉じた時に前記各分割コアはそれぞれの分割面が互いに密接されてケーブルを包囲する筒状に構成されるノイズ吸収装置において、前記各分割コアの分割面の内径側に沿う内縁部に面取り部が設けられていることを特徴とするノイズ吸収装置。」

[2]原査定の理由の概要
原審の拒絶査定の理由の概要は、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記1-4の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.実願平1-18284号(実開平2-110398号)
のマイクロフィルム
2-3は、省略。
4.技能士の友編集部 「機械要素のハンドブック」 初版 (昭52-5-20) 株式会社大河出版 p.156-157

[3]引用例及び引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願平1-18284号(実開平2-110398号)のマイクロフィルムの主な記載事項は、上記2.[2-2]に記載したとおりである。

[4]当審の判断
上記2.[2-1]の本願補正発明は、本願発明の「面取り部」が設けられる箇所の要件として、「分割面の内径側に沿う内縁部に」とあるのを、「分割面の内径側に沿う内縁部にのみ」とすることにより、発明を特定するために必要な事項をより狭い範囲に限定したものである。
このように発明を特定するために必要な事項をより狭い範囲に限定した本願補正発明が、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められる以上、本願発明も、上記2.[2-3]に記載したものと同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[5]むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできず、原査定の拒絶理由は、相当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-01 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-10-21 
出願番号 特願平9-258638
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之鏡 宣宏遠藤 邦喜  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 坂本 薫昭
平塚 義三
発明の名称 ノイズ吸収装置  
代理人 鈴木 章夫  

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