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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1189651
審判番号 不服2007-6321  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2008-12-11 
事件の表示 特願2005-373373「電子装置、制御装置及び処理制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月13日出願公開、特開2006- 99960〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成4年10月30日に出願した特願平4-292520号の一部を平成14年10月21日に新たな特許出願とした特願2002-306248号の一部をさらに平成17年12月26日に新たな特許出願としたものであって、平成18年10月23日付けの拒絶理由通知に対する応答期間内の同年12月28日付けで手続補正がなされたが、平成19年1月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年3月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年4月2日付けで手続補正がなされたものである。

そして、本願の請求項1乃至6に係る発明は、平成19年4月2日付けで手続補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項5】
同一形状であり、情報形式の異なる複数種の可搬型ディスクのための電子装置で実行される処理制御方法において、
可搬型ディスクは当該可搬型ディスクに格納されている情報を管理する領域を備え、該領域に格納されている情報の読み出す第一の手順と、
前記第一の手順により前記領域から読み出された情報に基づいて前記可搬型ディスクに格納されている情報の属性を識別する第二の手順と、
前記第二の手順の結果、前記可搬型ディスクが音楽情報を格納したものである場合は、音楽再生制御プログラムを起動する第三の手順と、
前記第二の手順の結果、前記可搬型ディスクがプログラムを格納したものである場合は、起動した実行プログラムによって前記プログラムを処理する第四の手順と、
前記第二の手順の結果、前記第一の手順により読み出された前記領域内の特定エリアに格納されている情報がデータベース認識用データである場合に前記データ検索プログラムを起動するよう制御すると共に、前記第一の手順により読み出された前記特定エリアに前記データベース認識用データが格納されていないときに前記領域内の他の特定エリアに格納されている情報で固定位置の識別データがデータベース用のデータが格納されていることを示す場合に前記データ検索プログラムを起動する第五の手順と、
を有する処理制御方法。」

2.引用例

これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-207051号公報(平成3年9月10日公開、以下「引用例1」という。)には、ディスク再生装置に関し、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は、当審で付与した。)

(1)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、日本語辞書情報、英和辞書情報、百科辞典情報等の文字情報データや画像情報データが記録されたディスクであるデータディスク及びオーディオ信号が記録されたディスクであるオーディオディスク等、記録フォーマットをそれぞれ異にするディスクを選択的に再生可能となすディスク再生装置に関し、さらに詳しくは、当該再生装置に装着されたディスクが、記録フォーマットを互いに異にするデータディスクかオーディオディスクかを判別し、装着されたディスクに応じてデータディスクの再生を行うデータ再生処理動作とオーディオディスクの再生を行うオーディオ信号再生処理動作とを自動的に切り換えるようにしたディスク再生装置に関する。」(1頁左下欄20行?右下欄13行)

(2)「以下、本発明に係るディスク再生装置の具体的な実施例を図面を参照して説明する。
このディスク再生装置は、日本語辞書情報、英和辞書情報、百科辞書情報等の文字データや画像情報データ等の情報データが記録されたデータディスク及びオーディオ信号が記録されたオーディオディスクを選択的に読出し再生可能となすように構成されたものである。
このディスク再生装置は、第1図に示すように構成されている。すなわち、上記ディスク再生装置は、光ディスク1に記録されているデータを再生する再生系2と、この読み出したデータの音声信号処理を主とする音声信号処理系3と、上記読み出したデータの検索処理を行って画像表示するためのデータ処理系4とから構成されている。そして、上記音声信号処理系3及びデータ処理系4の上記各系の制御は、後に詳しく説明する1個のCPU(中央演算ユニット)5で行われている。」(3頁左上欄20行?右上欄17行)

(3)「この第2図は、上述のようにパターンS_(0),S_(1)の同期信号を頭においた96バイトからなる1つのブロックを示しており、このうち、P_(1)?P_(96)とQ_(1)?Q_(96)がアクセスのために用いられている。上記Pチャンネルは、例えば記録するデータとデータとの間を“1”で示すだけで、大まかな頭だしのために設けられている。
Qチャンネルは、より細かな制御ができるようになっており、主として任意のトラックへのアクセスにはこちらが使われている。
第3図にQ_(1)?Q_(96)のフォーマットを示す。
この第3図において、“コントロール”の4ビットは、オーディオチャンネル数、エンファシス、デジタルデータ(CD-ROM)等の識別のために用いられており、
0000 プリエンファシスなしの2チャンネルオーディオ
1000 プリエンファシスなしの4チャンネルオーディオ
0001 プリエンファシスつきの2チャンネルオーディオ
1001 プリエンファシスつきの4チャンネルオーディオ
0100 データトラック
のように区別されている。なお、今のところ4チャンネルは使用されておらず、また、CD-ROMの場合、01*1(*は0でも1でもよい。)で記録されている。なお、上記CD-ROMは、日本語辞書情報、英和辞書情報、百科辞典情報等の文字データが記録されたデータディスクとしての光ディスクである。
このような形態で、ディスクの内周面の所定領域でリードインと呼ばれる領域に、いわゆるTOCデータとよばれるディレクトリが書き込まれている。」(4頁左上欄2行?右上欄11行)

(4)「一方、上記光ディスク1から再生されたTOCデータは、エラー検出・データ検出回路8を介して信号処理系3のCD信号処理回路15に供給される。以下に述べるROM22及びRAM23には、ソフトウェアのプログラム等が書き込まれており、このプログラムに応じて読み出されるデータに基づいてCPU5は、装着されたディスクの識別をし識別情報を上記CD信号処理回路15に供給する。CD信号処理回路15は、この供給された識別情報に応じて信号の処理系を切り換える。
すなわち、装着されたディスクがオーディオディスクであるとの識別情報が供給された場合、CD信号処理回路15は、供給される音声データ信号をD-A(デジタル-アナログ)変換器16に供給する。このD-A(デジタル-アナログ)変換器16は、供給された音声データ信号を、アナログ信号に変換しオーディオ再生回路17を介すことにより音声信号とし、出力端子18を介して出力する。
一方、上記装着されたディスクがデータディスク(CD-ROM)であるとの識別情報が供給された場合、上記CD信号処理回路15は供給されるキャラクタデータ信号等をCD-ROM信号処理回路19に供給する。CD-ROM信号処理回路19に供給されたキャラクタデータ信号は、一時記憶用のメモリであるRAM(ランダムアクセスメモリ)20を介して、上記CPU5から供給される信号に応じて読み出される。データバス21にはプログラム等が記録されているROM22及びRAM23が接続されている。上記読み出されたキャラクタデータ信号等は、このデータバス21を介して伝送される。そして、上記キャラクタデータ信号に応じて漢字ROM24から読み出された漢字パターン等により、ビデオRAM26内に表示画像が記録形成される。そして、上記CPU5からの信号に応じて、表示コントローラ25によりビデオRAM26内の表示画像が読み出され、例えばLCD(液晶表示板)等からなる表示部27に表示される。」(4頁右下欄9行?5頁右上欄5行)

(5)「具体的には、第10図に示すステップ101において、先ず、ディスク再生キーがオンされたか否かが判断され、Noの場合はディスク再生キーがオンされるまでこのステップ101を繰り返し、Yesの場合はステップ102に進む。
ステップ102では、上記ソフトウェアの上層レベルからのアクセス要求に応じて、上述のTOCデータの上記QチャンネルのA0,A1の各コントロールフィールド及び該A0の指し示すトラック情報の同コントロールフィールドを読み、この読み出したデータが上記00**であれば音楽専用のオーディオディスクと識別し(第5図参照)、また、1つでも、01*1であれば百科辞典や辞書等のようなデータディスクと識別し、この識別内容であるエラーコードをソフトウェアの上層レベルに返しステップ103へ進む。
ステップ103では上記上層レベルにおいて、動作不可能なディスクか否かが判別されYesの場合はステップ104に進み上記表示部27に、第11図に示すように、例えば「ディスクが入っていません」の如き表示をすると共に動作を停止し、Noの場合はステップ105に進む。
ステップ105では上記上層レベルにおいて、上記ステップ102で識別したディスクがデータディスクか否かが判別され、Yesの場合はステップ106に進み、例えば表示部27に第12図に示すようにカーソルで指標しながら「このディスクは広辞苑です。」等の装着されたディスクの名称を表示すると共に、上記CD信号処理回路15の信号処理系をデータディスクの系に切り換え、データディスクのデータ用のTOCに相当する内容(いわゆるVD)が書き込まれている番地である00 02 16へアクセスし、この番地のデータを読み込んだうえでデータ検索処理を開始しする。
上記ステップ105で、このディスク再生装置に装着されたディスクがデータディスクであることが判別されると、この判別出力に基づいて前述した第2の操作部が機能するようになる。
また、上記ステップ105でNoの場合は、ステップ107に進む。 ステップ107では上記上層レベルにおいて、オーディオディスクか否かが判別され、Noの場合はのステップ108に進み表示部27に、前記第11図に示すように、「ディスクが入っていません」等の表示をし、Yesの場合はステップ109に進み、表示部27に第13図に示すように「このディスクはオーディオディスクです」の他にトータル時間,曲数等を表示すると共に、上記CD信号処理回路15の信号処理系を音楽信号用の系に切り換えるオーディオ処理を行い終了する。
上記ステップ107で、このディスク再生装置に装着されたディスクがデータディスクであることが判別されると、この判別出力に基づいて前述した第1の操作部が機能するようになる。
以上の説明から明らかなように、TOCデータのQチャンネルのコントロールビットのA0,A1の各コントロールフィールド及び該A0の指し示すトラック情報の同コントロールフィールドを読み出すことにより、装着された光ディスクが音楽用のものか、データ用のものかを識別することができ、これに応じて自動的に信号処理系を切り換えることにより、ユーザが装着する光ディスクの種類を認識しないで装着しても該ディスクの種類に適した再生を行うことができる。」(7頁左上欄14行?右下欄17行)

引用例1には、「装置」について記載されているが、当該「装置」における動作のフローチャート(第10図)と併せて参照することで「方法」の発明として捉えることは自明の事項にすぎないことを踏まえて上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「記録フォーマットを異にするディスクを再生するディスク再生方法において、
ディスクの所定領域に書き込まれているTOCデータを読み込み、TOCデータのQチャンネルのコントロールフィールドを読み、この読み出したデータが00**であれば音楽専用のオーディオディスク(音楽用CD)と識別し、01*1であれば百科辞書や辞書等のデータディスク(CD-ROM)と識別するステップ102と、
上記ステップ102で識別したディスクがデータディスクか否かが判別され(ステップ105)、Yesの場合はデータ検索処理を開始するステップ110と、
上記ステップ105でNoの場合はオーディオディスクか否かが判別され(ステップ107)、Yesの場合はオーディオ処理を行うステップ109と、
を有するディスク再生方法。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-209545号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

(6)「〔産業上の利用分野〕
本発明はCD-ROM(コンパクトディスクリードオンリーメモリ)などの大容量記憶媒体にデータを記録する際のファイル構造及びこのファイル構造でデータを記録さた記憶媒体を処理するデータ処理装置に関するものである。
〔従来の技術〕
従来よりパーソナルコンピュータなどの外部記憶装置としては磁気ディスクが多く用いられている。この磁気ディスクはその記憶容量が高々数メガバイトであり、磁気ディスクに記録されるデータはそのディスクを使用するコンピュータシステムが処理可能なデータに限られていた。しかるに、最近パーソナルコンピュータなどの外部記憶装置としてCD-ROMが使用され始めている。このCD-ROMはその記憶容量が約540メガバイトと極めて大きいことが特長であり、更に日経バイト1987年8月号第84頁から第123頁に記載されているように、そのディレクトリあるいはファイル管理などの構造即ち論理フォーマットが標準化されつつあり、その標準論理フォーマットに従ったCD-ROMはどのコンピュータシステムあるいはオペレーティングシステム(以下OSと略す)からでもデータを読むことができるようになっている。」(1頁右下欄3行?2頁左上欄7行)

(7)「〔作用〕
表ファイルには、その表ファイルに対応するファイルの属性、例えばそのファイルをアクセスするコンピュータの機種、OSあるいは応用ソフトウェアなどの識別子あるいは実行に必要な環境に関するデータなどが記録されている。…(中略)…かかるファイル構造をとることにより、コンピュータがこの記憶媒体のデータを処理するに際してまず各ディレクトリ内の表ファイルをチェックしそのコンピュータが処理可能なファイルが存在することを確認してから処理を開始し以降はそのコンピュータが処理可能なファイルだけを対象としていけばよく、このようにして1つの記憶媒体を複数の異なるコンピュータシステムで使用可能とすることができる。」(2頁左下欄2行?右下欄3行)

3.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の各「ステップ」は、ディスク再生方法の処理乃至制御の手順を表すものであるから、引用発明の「ディスク再生方法」は、本願発明の「処理制御方法」に相当し、引用発明の「オーディオディスク(音楽用CD)」と「データディスク(CD-ROM)」は、本願発明の「同一形状であり、情報形式の異なる複数種の可搬型ディスク」に相当することは明かであるから、引用発明と本願発明は、「同一形状であり、情報形式の異なる複数種の可搬型ディスクのための電子装置で実行される処理制御方法」で共通する。

(2)引用発明の「TOCデータ」は、「ディスクの所定領域に書き込まれ」ており、また、当該「TOCデータ」がディスクに格納されている情報を管理するものであることは明らかである。そして、引用発明の「ステップ102」は、「ディスクの所定領域に書き込まれているTOCデータのQチャンネルのコントロールフィールドを読み出」すから、引用発明は、本願発明の「可搬型ディスクは当該可搬型ディスクに格納されている情報を管理する領域を備え、該領域に格納されている情報の読み出す第一の手順」に相当する構成を備えている。

(3)本願発明の「情報の属性」は、本願明細書の段落【0004】【0005】【0007】の記載を参照すると、「音楽情報」「(例えば、国語辞書、英和辞書等の)データベース」「システムプログラム」のことであり、「音楽情報」は引用発明の「オーディオディスク」のオーディオに、「データベース」は引用発明の「(百科辞典や辞書等の)データディスク」のデータ、すなわち、データベースに対応する関係にあるから、引用発明においても「情報の属性」を識別しているといえる。そして、引用発明の「ステップ102」は、さらに「読み出したデータが00**であれば音楽専用のオーディオディスクと識別」し、「01*1であれば百科辞書や辞書等のデータディスクと識別」するから、引用発明は、本願発明の「前記第一の手順により前記領域から読み出された情報に基づいて前記可搬型ディスクに格納されている情報の属性を識別する第二の手順」に相当する構成を備えている。

(4)引用発明の「ステップ109」は、ディスクが「オーディオディスクの場合はオーディオ処理を行」うから、引用発明は、本願発明の「前記第二の手順の結果、前記可搬型ディスクが音楽情報を格納したものである場合は、音楽再生」「する第三の手順」に相当する構成を備えている。

(5)引用発明の「Qチャンネルのコントロールフィールド」は、「TOCデータ」の特定のエリアであり、前記「Qチャンネルのコントロールフィールド」のデータが「01*1」であれば百科辞書や辞書等のデータディスク、すなわち、「データベース」ディスクと識別されるから、引用発明の「01*1」は、本願発明の「データベース認識用データ」に相当し、引用発明の「データディスク」はプログラム処理(上記2.(4))されるものである。そして、引用発明の「ステップ110」は、「データ検索処理を開始」するから、引用発明は、本願発明の「前記第二の手順の結果、前記第一の手順により読み出された前記領域内の特定エリアに格納されている情報がデータベース認識用データである場合に前記データ検索プログラムを制御する」「第五の手順」に相当する構成を備えている。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

「同一形状であり、情報形式の異なる複数種の可搬型ディスクのための電子装置で実行される処理制御方法において、
前記可搬型ディスクは当該可搬型ディスクに格納されている情報を管理する領域を備え、該領域に格納されている情報の読み出す第一の手順と、
前記第一の手順により前記領域から読み出された情報に基づいて前記可搬型ディスクに格納されている情報の属性を識別する第二の手順と、
前記第二の手順の結果、前記可搬型ディスクが音楽情報を格納したものである場合は、音楽再生する第三の手順と、
前記第二の手順の結果、前記第一の手順により読み出された前記領域内の特定エリアに格納されている情報がデータベース認識用データである場合に前記データ検索する第五の手順と、
を有する処理制御方法。」の点。

そして、次の点で相違する。

(a)「第三の手順」について、本願発明は、「音楽再生制御プログラムを起動」としているのに対し、引用発明では、単に「オーディオ処理を行」うとする点。

(b)本願発明は、「第二の手順の結果、可搬型ディスクがプログラムを格納したものである場合は、起動した実行プログラムによって前記プログラムを処理する第四の手順」を有するのに対し、引用発明は、この第四の手順を有していない点。

(c)「第五の手順」について、
(c-1)本願発明は、第二の手順の結果、第一の手順により読み出された前記領域内の特定エリアに格納されている情報がデータベース認識用データである場合に「データ検索プログラムを起動するよう制御」すると共に、
(c-2)「前記第一の手順により読み出された前記特定エリアに前記データベース認識用データが格納されていないときに前記領域内の他の特定エリアに格納されている情報で固定位置の識別データがデータベース用のデータが格納されていることを示す場合」に前記データ検索プログラムを起動するのに対し、引用発明は、(ステップ102で)識別したディスクがデータディスクである場合はデータ検索処理を開始する点。

4.判断

そこで、上記各相違点について検討する。

相違点(a)について
引用例1には、「上記音声処理系3及びデータ処理系4の上記各系の制御は、1個のCPU5で行われている。」(2.(2))、「装着されたディスクがオーディオディスクであるとの識別情報が供給された場合、CD信号処理回路15は、供給される音声データ信号をD-A変換器16に供給する。このD-A変換器16は、供給された音声データ信号を、アナログ信号に変換しオーディオ再生回路17を介することにより音声信号とし、出力端子18を介して出力する。…データバス21にはプログラム等が記録されているROM22及びRAM23が接続されている。」(2.(4))と記載されており、これらの記載から、引用例1記載のデータ再生装置において、第10図の動作フローチャートに示されたオーディオ処理はCPUにより制御されているといえる。すると、オーディオ処理をROM22及びRAM23に格納されているプログラムに従ってCPUが動作するように構成することは当業者が容易に想到できたものであり、プログラムに従ってCPUが動作するためには当該プログラムを起動することは当然のことである。なお、例えば特開平4-139660号公報、特開平4-229479号公報等で、「音楽再生を制御するプログラム」は周知の事項にすぎない。
したがって、引用発明において、オーディオ処理を、当該処理のために「音楽再生制御プログラムを起動」して行うことは、引用例1の記載から、または周知技術も参酌することにより当業者が容易に想到できたものである。

相違点(b)について
本願発明において、「起動した実行プログラムによって前記プログラムを処理する」ことは、明細書及び図面の記載を参照すると、図6に示された処理ルーチン614がその実施例であり、したがって、「可搬型ディスクがプログラムを格納したものである場合」は、判断ルーチン612で「YES」の場合に相当するから、少なくとも「ユーザデータエリアにIPLが格納されている場合」が含まれていることは明かである。
そして、媒体にIPLが格納されている場合には、そのIPLを識別し、媒体に格納されているプログラムを起動する方法は、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭59-188719号公報(以下「引用例3」という。)及び先行技術文献として提示された、特開昭57-161957号公報(以下「引用例4」という。)、特開昭58-114217号公報(以下「引用例5」という。)並びに特開平4-213743号公報(以下「引用例6」という。)等で周知の事項にすぎない。上記引用例3,4及び6には、媒体が可搬型ディスクである光ディスク又は磁気ディスクの例が記載されている。
引用例1には、「装着されたディスクがデータディスク(CD-ROM)であるとの識別情報が供給された場合、上記CD信号処理回路15は供給されるキャラクタデータ信号等をCD-ROM信号処理回路19に供給する。CD-ROM信号処理回路19に供給されたキャラクタデータ信号は、一時記憶用のメモリであるRAM20を介して、上記CPU5から供給される信号に応じて読み出される。データバス21にはプログラム等が記録されているROM22及びRAM23が接続されている。」(2.(4))と記載されており、このROM22及びRAM23に格納された実行プログラムに従ってCPU5が動作するのであるから当該実行プログラムを起動することは当然のことである。
そうすると、引用発明において、データディスクにプログラムを格納できるようにし、データディスクにプログラムが格納されている場合、当該プログラムの処理を自動的に開始するために、起動した実行プログラムによって前記プログラムを処理する手順を設けることは、引用例1の記載と前記周知事項を参酌することにより、当業者が容易に想到できたものである。

相違点(c)について
上記相違点(b)でも検討したように、プログラムに従ってCPUが動作するためには当該プログラムを起動することは当然のことであるから、引用発明において、データ検索する際、相違点(c-1)のように「データ検索プログラムを起動するように制御」することは、当業者が適宜なし得る程度のものである。

引用例1には、装着されたディスクを識別する識別情報をディスクのリードイン領域にTOCデータとして書き込む(2.(3)(4))ものが記載されている。
一方、引用例2には、ファイルの属性、例えば応用ソフトウェアなどの識別子に関するデータをディレクトリ内の表ファイルに記録(2.(6))するものが記載されている。
要するに引用例1と引用例2では識別情報(識別子)の格納領域と識別方式を異にしているものである。
ところで、ディスク再生の技術分野において、ファイル管理の構造、即ち論理フォーマットは一義的に決まるものではなく、種々考えられ標準化されていくのが一般的である。
そうすると、引用発明において、識別方式が異なるデータディスクのデータ検索処理を開始するようにし、その際、相違点(c-2)のように、「前記第一の手順により読み出された前記特定エリアに前記データベース認識用データが格納されていないときに前記領域内の他の特定エリアに格納されている識別データがデータベース用のデータが格納されていることを示す場合に前記データ検索プログラムを起動」することは、引用例1,2の記載と上記一般的事項により、当業者が容易に想到できたものである。
そして、識別データを格納するエリアを「固定位置」とするかはファイル管理の形態等を考慮して当業者が適宜に決定すべき事項にすぎないものである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例1乃至2に記載された発明、及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび

以上のとおり、本願の請求項5に係る発明は、引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易にに発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-10 
結審通知日 2008-10-14 
審決日 2008-10-28 
出願番号 特願2005-373373(P2005-373373)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸島 弘詩松平 英  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 山田 洋一
吉川 康男
発明の名称 電子装置、制御装置及び処理制御方法  
代理人 高田 大輔  
代理人 平川 明  
代理人 遠山 勉  
代理人 松倉 秀実  

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