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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200416091 | 審決 | 特許 |
不服200421179 | 審決 | 特許 |
不服20056282 | 審決 | 特許 |
不服200420207 | 審決 | 特許 |
不服200517013 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1189827 |
審判番号 | 不服2004-18426 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-06 |
確定日 | 2008-12-24 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第525365号「神経学的疾患の治療方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年11月24日国際公開、WO94/26250、平成 9年 4月15日国内公表、特表平 9-503743〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成5年5月14日を国際出願日とする国際出願であって、その請求項1に係る発明は、平成20年5月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「生分解性のリン脂質含有合成膜小胞分散系の1つ以上の空間に封入させた抗腫瘍薬を含み、かつ、細胞増殖性疾患を軽減するうえで十分な時間、抗腫瘍薬が脳室腔内に存在しつづけることが可能であることを特徴とする、ヒトの脳脊髄液に投与するための医薬組成物。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用例の記載の概要 これに対して、当審の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された次の刊行物には以下の事項が記載されている。 ・CANCER RESEARCH, 1993 Apr.1, Vol.53, No.7, pp.1596-1598(以下、「引用例1」という。) (A)「脳脊髄液中の治療薬濃度の延長された維持は、細胞周期特異性代謝拮抗剤での軟髄膜白血病や癌腫症の最適の治療に要求される。DepoFoamにカプセル化された1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(Ara-C)(Depo/Ara-C)の薬物動態は、脊髄嚢へのくも膜下腔内注入の後に6匹のアカゲザルで研究された。2mgの1回服用に続いて、Depo/Ara-C濃度は、それぞれ14.6および156hである初期および最終の半減期で両指数関数的に減少した。遊離の薬の濃度は、672h以上(28日)の間報告された最小の細胞毒性レベルである0.1μg/ml(0.4μM)より多く残った。対照的に、単一の動物中のカプセル化されていない薬の脊髄内ボーラス投与後のAra-Cの半減期は、0.74hであった。Depo/Ara-Cの単一のくも膜下腔注入は、非常に長期間脳脊髄液中で治療薬濃度を維持することができる。」(第1596ページ左欄、Abstract) (B)「くも膜下腔の化学療法に最もよく使用される2つの薬、ara-Cとメトトレキセートは、いずれも細胞周期特異性代謝拮抗剤である。」(第1596ページ左欄第17?19行) (C)「DepoFoam、すなわち、多小胞性リポソームは、複数の水空間を封入している二層脂質膜からなる微小球から構成される。」(第1596ページ左欄第30?32行) (D)「Depo/Ara-Cの合成。Depo/Ara-C(DepoTechCorp.)の調製された各バッチに対して、1mlの20mg/mlのara-C水溶液(1N塩酸で1.1にpH調製)が、9.3μmolのジオレイルレシチン、2.1μmolのジパルミトイルフォスファチジルグリセロール、15μmolのコレステロール、1.8μmolのトリオレイン、および1mlのクロロホルムを含む1-ドラムバイアルに加えられた。そのバイアルはボルテックスミキサーのヘッドに装着され、最高速度で6分間振とうされた。生じた「油中水」エマルジョンの各半分を個別に、それぞれが2.5mlの水、グルコース(3.2g/100ml)、および塩基を含まないリジン(40mM)を含む1-ドラムバイアルに先細パスツールピペットを通して迅速に噴出させ、そしてクロロホルム小球を形成するためセッティング5で3秒間ボルテックスミキサーで振とうされた。2つのバイアルのクロロホルム小球懸濁液は、5mlの水、グルコース(3.2g/100ml)、および塩基を含まないリジン(40mM)を含む250-mlErlenmeyer フラスコ の底に移された。7リットル/分の窒素ガス流が、フラスコを通して、37℃で10?15分間でクロロホルムを蒸発するために吹き込まれた。そしてDepo/Ara-C粒子が5分間600×gの遠心分離により単離され、0.9%Nacl溶液で3回洗浄された。Depo/Ara-C調製に無菌処置が用いられた。容積調節されたDepoFoam粒子の平均の大きさは19μmであり、使用した全脂質の捕獲率は59%であり、捕獲容積は36μl/mgであった。」(第1596ページ右欄第15?33行) (E)「徐放性薬剤の使用はCSFにおける延長された治療薬濃度の維持を可能にする。これは、癌への薬暴露を最適化し、かつ、頻繁に脊髄穿刺する必要を避ける。さらなる研究がDepoFoamにカプセル化された薬のCSFにおける分布を調査するために計画されている。ヒトにおけるくも膜下腔内Depo/Ara-Cの効果と毒性が第I相臨床試験で扱われるだろう。」(第1598ページ左欄第29?35行) 3.当審の判断 (1)対比 引用例1には、DepoFoamにカプセル化された1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(Ara-C)(Depo/Ara-C)が、アカゲザルの脊髄嚢へのくも膜下腔内注射により、脳脊髄液中で治療薬濃度が非常に長期間維持されることが、記載されていることから(摘記事項(A))、「DepoFoamにカプセル化されたAra-Cを含み、非常に長期間、Ara-Cが脳髄液で治療薬濃度が維持される、くも膜下腔内注射のための医薬。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 そこで、本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「DepoFoam」は、複数の水空間を封入している二層脂質膜からなる微小球から構成される多小胞性リポソームであり(摘記事項(C))、ジオレイルレシチン等のリン脂質を含み(摘記事項(D))、リン脂質から構成されるリポソームは生分解性のものであるから、本願発明の「生分解性のリン脂質含有合成膜小胞分散系」に相当し、引用発明の「Ara-C」は細胞周期特異性代謝拮抗剤であり(摘記事項(B))、ここで細胞周期特異性代謝拮抗剤は抗腫瘍剤として使用されている(摘記事項(A))から、引用発明の「DepoFoamにカプセル化されたAra-C」は、本願発明の「生分解性のリン脂質含有合成膜小胞分散系の空間に封入させた抗腫瘍薬」に相当する。 引用発明の「Ara-Cが脳髄液で治療薬濃度が維持される」は、本願発明の「抗腫瘍薬が脳室腔内に存在しつづけることが可能である」に相当する。 本願明細書(第6ページ第4?14行)に「粒子は脳室から投与することもできるが、鞘内に投与する方が好ましい。」と記載されているように、本願発明の「脳脊髄液に投与する」は、「鞘内に投与する」を含む。ここで「鞘内に」は、国際出願の明細書における「intrathecally」の訳語であり、「くも膜下腔内」のことであるから、本願発明の「脳脊髄液に投与する」は、引用発明の「くも膜下腔内注射」を含む。 そうすると、両発明は、「生分解性のリン脂質含有合成膜小胞分散系の空間に封入させた抗腫瘍薬を含み、かつ、抗腫瘍薬が脳室腔内に存在しつづけることが可能である脳脊髄液に投与するための医薬組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1 本願発明は、抗腫瘍薬が脳室腔内に存在しつづける時間が「細胞増殖性疾患を軽減するうえで十分な時間」であるのに対し、引用発明は「非常に長期間」である点。 ・相違点2 本願発明はヒトに投与するためのものであるのに対し、引用発明はヒトに投与するためのものであるという特定がない点。 (2)相違点についての判断 ・相違点1について 引用発明のDepoFoamにカプセル化されたAra-Cは、672h以上(28日)という非常に長期間、脳髄液中で最小の細胞毒性レベル以上の治療薬濃度でAra-Cが維持しつづけることを可能にするものであり(摘記事項(A))、脳髄液中で延長された治療薬濃度の維持を可能にしている。そして、これによって癌への薬暴露が最適化できるものである(摘記事項(E))。 そうすると、癌への薬暴露を最適化して、癌を治療する際に、抗腫瘍薬が脳室腔内に存在しつづける時間を「細胞増殖性疾患を軽減するうえで十分な時間」とすることは、当業者が容易になし得ることである。 ・相違点2について 引用例1に、引用発明のDepoFoamにカプセル化されたAra-Cがヒトにおけるくも膜下腔内Depo/Ara-Cの効果と毒性が第I相臨床試験で扱われると記載されている(摘記事項(E))ことから、引用発明のDepoFoamにカプセル化されたAra-Cをヒトに投与するためのものとすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。 そして、本願発明の効果についても、引用例1の記載から、当業者であれば、容易に予測し得る範囲内のものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-24 |
結審通知日 | 2008-07-29 |
審決日 | 2008-08-11 |
出願番号 | 特願平6-525365 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田村 聖子、大久保 元浩 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
瀬下 浩一 弘實 謙二 |
発明の名称 | 神経学的疾患の治療方法 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 早川 康 |
代理人 | 石井 貞次 |