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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1189904 |
審判番号 | 不服2006-5582 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-27 |
確定日 | 2008-12-26 |
事件の表示 | 特願2001-313551「遊技機及びプログラム及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月22日出願公開、特開2003-117074〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願の経緯概要は下記のとおりである。 特許出願 平成13年10月11日 審査請求 平成14年10月18日 拒絶理由 平成17年5月23日 手続補正 平成17年7月13日 拒絶理由 平成17年10月12日 手続補正 平成17年12月7日 補正却下及び拒絶査定 平成18年3月2日 拒絶査定不服審判請求及び手続補正 平成18年3月27日 第2 平成18年3月27日付の手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成18年3月27日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正前及び補正後の本願発明 平成18年3月27日付の補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「実行された遊技の当選役を電子抽選により決定する当選役決定手段と、この当選役決定手段で決定された当選役とリールの停止操作タイミングに基づいて回転中のリールの停止制御を行うリール停止制御手段と、前記電子抽選による少なくとも一部の当選役の抽選確率を変更するために入力された設定値を記憶する第1記憶手段とを有する主基板と、 抽選確率を変更するために第1記憶手段に入力された設定値を記憶する第2記憶手段と、前記主基板からの出力信号を受けることにより、前記第2記憶手段に記憶された設定値に基づいて、当選役の報知を行うか否かの抽選を実行する演出制御手段と、を有する副基板と、を備えた遊技機であって、 前記副基板は、前記リール停止手段の操作による遊技の終了から遊技開始手段の操作による次の遊技の開始までの間に前記主基板から出力される設定値と前記第2記憶手段に記憶された設定値とを比較する比較手段と、該比較手段による比較の結果、前記第2記憶手段に記憶された設定値と前記主基板から出力された設定値とが異なると判定された場合に、前記第2記憶手段に記憶された設定値を、前記主基板から送信された設定値に変更する変更手段とを備えたことを特徴とする遊技機。」 と補正された。 ところで、平成17年12月7日付の手続補正は、平成18年3月2日付で却下されており、その前の平成17年7月13日付の手続補正における請求項1は以下のとおりである。 「実行された遊技の当選役を電子抽選により決定する当選役決定手段と、この当選役決定手段で決定された当選役とリールの停止操作タイミングに基づいて回転中のリールの停止制御を行うリール停止制御手段と、前記電子抽選による少なくとも一部の当選役の抽選確率を変更するために入力された設定値を記憶する第1記憶手段とを有する主基板と、 抽選確率を変更するために第1記憶手段に入力された設定値を記憶する第2記憶手段と、前記主基板からの出力信号を受けることにより、前記第2記憶手段に記憶された設定値に基づいて、当選役の報知を行うか否かの抽選を実行する演出制御手段と、を有する副基板と、を備えた遊技機であって、 前記副基板は、前記主基板から所定のタイミングで出力される設定値と前記第2記憶手段に記憶された設定値とを比較する比較手段と、前記第2記憶手段に記憶された設定値と、前記送信手段から送信された設定値が異なる場合に、前記第2記憶手段に記憶された設定値を、前記主基板から送信された設定値に変更する変更手段とを備えたことを特徴とする遊技機。」 2.平成18年3月27日付の手続補正の内容についての検討 ここで、平成18年3月27日付の手続補正が、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定を満たしているか、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)に基づき検討する。 平成18年3月27日付の手続補正は、平成17年7月13日付の手続補正における請求項1(以下「旧請求項1」という。)に記載した発明を特定するために必要な事項である「設定値」について、「所定のタイミング」に代えて「前記リール停止手段の操作による遊技の終了から遊技開始手段の操作による次の遊技の開始までの間に」として限定を付加したものである。 また同様に、「変更手段」に関して、「異なる場合に…変更する」に代えて、「該比較手段による比較の結果…異なると判定された場合に…変更する」として限定を付加したものである。 よって、上記の補正は特許請求の範囲の減縮に該当する。 さらに、平成18年3月27日付の手続補正は、旧請求項1の「前記送信手段から送信された」という記載に代えて、「前記主基板から出力された」と変更している。これは、審判請求書によれば、旧請求項1においては「前記送信手段」と記載されていたものの、旧請求項1にはそれより前に「送信手段」という記載はなかったため、平成18年3月27日付の手続補正によって旧請求項1の「前記送信手段から送信」を「前記主基板から出力」と変更したものである。 この補正について適否を検討する。旧請求項1の記載において「前記送信手段」が何を指しているか検討すると、旧請求項1には「主基板からの出力信号」という記載があり、そして何らかの「送信手段」に該当し得ると想定できるものは、この信号の出力を行う「主基板」しか旧請求項1には記載されていないのであるから、当該「前記送信手段」は「主基板」を指していると判断するのが相当である。とすれば、「前記送信手段から送信された」という記載に代えて、「前記主基板から出力された」と変更する平成18年3月27日付の手続補正は、誤記の訂正に相当すると判断できる。 よって、平成18年3月27日付の手続補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものではない。 そこで、本願補正発明が独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-58022号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。 【0008】 請求項1の発明においては、スロットマシンの制御基板は、別体のメイン制御基板とサブ制御基板とを備えており、それぞれに搭載されたメインCPUとサブCPUとによって、スロットマシンが制御される。 メイン制御基板には、遊技に関する所定の動作に用いられる遊技用周辺機器が接続される。メイン制御基板には、入力用の遊技用周辺機器からの入力を検知する遊技用周辺機器入力検知手段と、出力用の遊技用周辺機器の出力を制御する遊技用周辺機器出力制御手段とが設けられており、これらによって遊技用周辺機器の入出力が制御される。さらに、メイン制御基板にはエラー検出手段が設けられ、特定の遊技用周辺機器にエラーが発生したことや、その遊技用周辺機器のエラーが解除されたことが検出される。 また、サブ制御基板には、遊技中の演出を行う演出用周辺機器が接続される。サブ制御基板には、演出用周辺機器出力制御手段が設けられ、これによって演出用周辺機器の出力が制御される。 【0009】 さらに、メイン制御基板とサブ制御基板とは、メイン制御基板からサブ制御基板側に情報を一方向で送信可能なように接続されている。そして、メイン制御基板に設けられた出力情報送信手段は、サブ制御基板に対し、演出用周辺機器の出力に関する情報を送信する。この送信される情報には、エラー検出手段が遊技用周辺機器のエラーの発生又はそのエラーの解除を検出したときのエラーに関する情報が含まれる。 サブ制御基板に設けられた出力情報受信手段は、この情報を受信し、上記の演出用周辺機器出力制御手段は、この受信した情報に基づいて演出用周辺機器の出力を制御する。 【0041】 清算ボタンは、ホッパー55の起動又は解除を行うときに使用するボタンである。 設定キーは、スロットマシン10の出玉率の段階設定を行うためのスイッチである。 設定ボタンは、打ち止め解除(通常ゲームからBBゲームに移行した場合においてBBゲームの終了時に打ち止めがある場合)、メダル払出しエラー、メダル投入エラーの解除や、段階設定、RAM初期化等の処理を行うためのボタンである。この設定ボタンは、設定キーの操作後に有効になるものである。 リセットスイッチは、遊技状態を初期状態に戻すときに使用するスイッチである。 【0048】 (メイン制御基板) メイン制御基板70は、図5に示すように、メイン制御基板70の制御をつかさどるメインCPU71を搭載している。また、プログラムROM73は、遊技に必要なプログラムを記憶しておく記憶手段である。なお、記憶手段を予め備えるメインCPU71であれば、プログラムROM73は不要である。 I/Oポート72は、メイン制御基板70と上記遊技用周辺機器等との間で情報の授受を行うための出入口となる部分である。プログラムROM73と、遊技用周辺機器のうち入力用のスイッチ類及びセンサ類は、I/Oポート72の入力側に接続されている。また、遊技用周辺機器のうち出力用であるモータ類、ランプ類(LEDを含む)は、I/Oポート72の出力側に接続されている。メインCPU71は、I/Oポート72の入力側及び出力側に接続されている。 【0049】 (サブ制御基板) サブ制御基板80は、サブ制御基板80の制御をつかさどるサブCPU81を搭載している。プログラムROM83及び制御用RAM84は、演出用のプログラム等を記憶しておく記憶手段である。 I/Oポート82は、サブ制御基板80と上記演出用周辺機器等との間で情報の授受を行うための出入口となる部分である。プログラムROM83は、I/Oポート82の入力側に接続されており、サブCPU81及び制御用RAM84は、I/Oポート82の入力側及び出力側に接続されている。 さらにI/Oポート82の入力側には、メイン制御基板70が接続されている。ここで、I/Oポート82の出力側には、メイン制御基板70は接続されていない。これにより、メイン制御基板70とサブ制御基板80とは、電気的に接続されているが、メイン制御基板70からサブ制御基板80に対して所定の情報を一方向で送信するように構成されている。なお、この場合の信号線の本数としては、8?32本程度である。 【0054】 (メインCPU) メインCPU71は、ゲーム全体を統括制御するものであり、以下に示すゲーム制御手段71a等を有している。 (ゲーム制御手段) ゲーム制御手段71aは、ゲーム全体の進行を制御するものであり、図6に示すように、役抽選手段、リール停止位置決定手段、払出し枚数算出手段等を備える。なお、ゲーム制御手段71aは、これらの手段に限定されるものではない。 【0055】 (役抽選手段) 役抽選手段は、役(BBやRB等の特別役、小役又はリプレイ)の抽選を行うものである。役抽選手段は、例えば、役抽選用の乱数発生手段と、この乱数発生手段が発生する乱数を抽出する乱数抽出手段と、乱数抽出手段が抽出した乱数値を、抽選テーブルと照合し、前記乱数値が属する領域に基づいて、役の当選の有無及び当選役を判定する判定手段とを備えている。 【0057】 (リール停止位置決定手段) リール停止位置決定手段は、遊技者によりストップスイッチ42がオンされることにより発せられるリール停止信号を検知したときのリール31の位置、遊技状態、役抽選手段の抽選結果、及び既に停止している他のリール31がある場合には当該他のリール31の停止位置等を参照して、リール31の停止位置を決定するものである。ここで、リール31の位置はセンサ35によって検知されるとともに、リール31の位置に対する有効ライン22上の図柄は、メインCPU71に予め記憶されている。したがって、リール31の停止位置に対応する有効ライン22上の図柄を判別可能となっている。 【0074】 (出力情報送信手段) 出力情報送信手段71gは、サブ制御基板80のサブCPU81に対して、演出用周辺機器の出力に関する情報を一方向でサブ制御基板80に送信するものである。この演出に関する情報は、出力情報作成手段71fで作成した情報、すなわち上述のイベント命令等の遊技中の演出に係る情報を含み、さらに、エラー検出手段71eがエラーの発生又はエラーの解除を検出したときは、そのエラーに関する情報を含む。 【0075】 具体的には、以下のような情報である。 (1)メダルの投入可/不可状態の情報、ベットボタンの受付可/不可の情報、ホッパー55の作動可/不可状態の情報、ゲーム開始可/不可の情報、当該ゲームのメダル投入枚数の情報、当該ゲームの払出し枚数の情報、払出し中の情報、ホッパー55の駆動中の情報、リプレイ作動中の情報、入賞時の入賞した有効ライン22の情報、ストップボタン42の操作可/不可状態の情報、打ち止め中及び打ち止め解除の情報、メダルの清算中の情報、特別役の入賞期待が高まったとき(例えば、2つのリール31の停止時に特別役を構成する図柄が有効ライン22上に揃って停止し、最後のリール31が回転中のとき)の情報、ウェイト中の情報、リール31の回転中の情報、各種ボタンの操作受付時の情報、各種エラー情報、設定変更中の情報、設定値情報、その他演出に関する情報等。 【0085】 (演出用周辺機器出力制御手段) 演出用周辺機器出力制御手段81cは、出力情報受信手段81aで受信した情報に基づいて、出力情報解読手段81bの解読結果に従い、演出用周辺機器の出力を制御するものである。具体的には、ゲームの進行に合わせて、バックランプ33や効果ランプ29の点灯/消灯、スピーカ51からのサウンドの出力、さらには、液晶表示パネル40による演出画像の表示を制御する。 ここで、液晶表示パネル40によって出力(画像表示)を行う場合には、演出用周辺機器出力制御手段81cは、所定の画像データをキャラクタROM85bから引出し、画像制御IC85aによって画像データに所定の信号処理を施し、液晶表示パネル40に送信して画像表示させるように制御する。 上記引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「役抽選用の乱数発生手段と、この乱数発生手段が発生する乱数を抽出する乱数抽出手段と、乱数抽出手段が抽出した乱数値を、抽選テーブルと照合し、前記乱数値が属する領域に基づいて、役の当選の有無及び当選役を判定する判定手段とを備える役抽選手段と、 遊技者によりストップスイッチ42がオンされることにより発せられるリール停止信号を検知したときのリール31の位置、遊技状態、役抽選手段の抽選結果、及び既に停止している他のリール31がある場合には当該他のリール31の停止位置等を参照して、リール31の停止位置を決定するリール停止位置決定手段と、を有するメインCPU71を搭載しているメイン制御基板70と、 前記メイン制御基板から送信されてきた演出用周辺機器の出力に関する情報を受信する出力情報受信手段と、この受信した情報に基づいて演出用周辺機器の出力を制御する演出用周辺機器出力制御手段が設けられたサブ制御基板と、 スロットマシン10の出玉率の段階設定を行うためのスイッチである設定キー、設定キーの操作後に有効になる段階設定の処理を行うためのボタンである設定ボタン、を備え、 メイン制御基板に設けられた出力情報送信手段71gは、サブ制御基板80のサブCPU81に対して、遊技中の演出に係る情報、具体的には設定値情報、を含む演出用周辺機器の出力に関する情報を一方向でサブ制御基板80に送信する遊技機」 4.対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを比較する。 引用発明は「乱数値」「抽選テーブル」等を用いて役の当選の有無及び当選役を判定しており、これは本願補正発明の「当選役を電子抽選により決定する」ことに相当するから、引用発明の「役抽選手段」は、本願補正発明の「当選役決定手段」に相当する。 以下同様に、「リール停止位置決定手段」は「リール停止制御手段」に、「メイン制御基板」は「主基板」に、「サブ制御基板」は「副基板」に、それぞれ相当する。 また、引用発明には「出玉率の段階設定」とあるが、出玉率を段階設定するために所定の当選役の抽選確率を変更することは例をあげるまでもない周知慣用技術であり、どの当選役について抽選確率を変更するかは人為的決定事項に過ぎないから、引用発明の「スロットマシン10の出玉率の段階設定を行う」「段階設定の処理を行う」点は、本願補正発明の「前記電子抽選による少なくとも一部の当選役の抽選確率を変更する」点に相当する。 そして、引用発明は「出玉率の段階設定を行うためのスイッチである設定キー」及び「段階設定の処理を行うためのボタンである設定ボタン」を備えているから、出玉率の段階設定に関する設定値情報が何らかの形で記憶保存されることは明らかである。引用文献1には設定値情報をメイン制御基板において記憶している点の明示はないが、上に示すような役抽選手段における役の抽選確率の変更にあたり、役抽選手段が設定値情報を参照する何らかの手段は当然必要となること、引用発明はメイン制御基板からサブ制御基板へ設定値情報を送信しており、メイン制御基板における出力情報作成手段も設定値情報を取得する何らかの手段を備えていると判断できること、情報を必要な箇所において保持することは技術常識であることを考慮すると、引用発明においても、メイン制御基板が「設定値を記憶する手段」を備えることは明らかである。 さらに、引用発明の「受信した情報に基づいて演出用周辺機器の出力を制御する演出用周辺機器出力制御手段」は、「主基板からの出力信号を受ける演出制御手段」であることにおいては、本願補正発明と一致している。 よって、両者は、 「実行された遊技の当選役を電子抽選により決定する当選役決定手段と、この当選役決定手段で決定された当選役とリールの停止操作タイミングに基づいて回転中のリールの停止制御を行うリール停止制御手段と、前記電子抽選による少なくとも一部の当選役の抽選確率を変更するために入力された設定値を記憶する第1記憶手段とを有する主基板と、 前記主基板からの出力信号を受ける演出制御手段を有する副基板と、 前記電子抽選による少なくとも一部の当選役の抽選確率を変更するために設定値が入力され、 前記主基板から副基板へ設定値を出力する遊技機。」 で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は、副基板が「抽選確率を変更するために第1記憶手段に入力された設定値を記憶する第2記憶手段と、前記主基板からの出力信号を受けることにより、前記第2記憶手段に記憶された設定値に基づいて、当選役の報知を行うか否かの抽選を実行する演出制御手段」を備えているのに対して、引用発明では、サブ制御基板は第2記憶手段に相当する手段を備えておらず、演出用周辺機器出力制御手段は第2記憶手段に記憶された設定値に基づいて当選役の報知を行うか否かの抽選を実行するものではない点。 [相違点2] 本願補正発明は、主基板が「前記リール停止手段の操作による遊技の終了から遊技開始手段の操作による次の遊技の開始までの間に」設定値を出力しているのに対して、引用発明では、メイン制御基板が設定値情報をサブ制御基板に送信しているものの、送信時期についてかかる限定が付されていない点。 [相違点3] 本願補正発明においては、副基板が「前記主基板から出力される設定値と前記第2記憶手段に記憶された設定値とを比較する比較手段と、該比較手段による比較の結果、前記第2記憶手段に記憶された設定値と前記主基板から出力された設定値とが異なると判定された場合に、前記第2記憶手段に記憶された設定値を、前記主基板から送信された設定値に変更する変更手段」とを備えているのに対して、引用発明のサブ制御基板は、そのような手段を備えていない点。 5.判断 [相違点1]について 本願明細書の【0005】?【0006】においては、「サブ基板では、入力された当選役の種類に応じてATモードに移行するか否かの抽選を行って」「ATモードを搭載したスロットマシンでは、メイン基板で出玉率の設定値の設定変更(例えば設定値1?6)を行った際に、サブ基板での設定値(ATモードへの移行抽選の当選確率の設定値)も同一値に変更されるようになっている。」と記載されているように、ATモードを備える遊技機において、副基板が「抽選確率を変更するために第1記憶手段に入力された設定値を記憶する第2記憶手段と、前記主基板からの出力信号を受けることにより、前記第2記憶手段に記憶された設定値に基づいて、当選役の報知を行うか否かの抽選を実行する演出制御手段」を備えることは周知技術に過ぎない点と判断できる。なお、この点に関して、本件出願当時ATモードを備える遊技機が既に多数市場に出ていた点については例を挙げるまでもないことであるが、それを示す参考文献として「パチスロ必勝ガイド8月号増刊」(白夜書房、平成13年8月1日発行)における「サバンナチャンス大解剖」の記事を参考まで挙げることができる。当該参考文献においては、例えば16ページに「サバチャン抽選に関することはサブ基板上で処理」「メイン基板上の各役抽選で「純粋なハズレ」を引くことが絶対条件。純粋なハズレを引くと、メイン基板かドット演出等の処理を行う「サブ基板」へと信号が送られ、この時点で初めてサバンナチャンスが抽選されるのだ。」と記載されており、また18ページには「サブ基板 状態別サバチャン抽選確率」として設定1?6に応じてサバチャンへの移行抽選の当選確率が異なる点が示されている(この文献において「サバンナチャンス」とは「ATモード」のことであり、「サバンナチャンス」を略して「サバチャン」と表記している。)。また、当該参考文献においては、サブ基板において設定値が記憶される点の明記はないが、サブ基板では所定の契機に抽選が行われるものであり、そのような継続的に行われる処理に備えて必要な情報を保持しておくことは、通常の技術者であれば格別の困難なく設計できる範囲のことに過ぎない。 ところで、本願補正発明においては「抽選確率を変更するために」とある。ここで「抽選確率」とは何を指すか不明瞭ではあるが、その後の記載において「当選役の報知を行うか否かの抽選を実行する」とあり、またAT抽選に関する当業者におけるルール常識(例えば、上記参考文献も参照)を勘案すれば、「抽選確率」とは「当選役の報知を行うか否かの抽選」の確率を示すことが明らかであると判断できる。 したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知慣用技術に基づき、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 [相違点2]について 引用発明においては、メイン制御基板からサブ制御基板へ設定値情報を送信しているものの、設定値情報の送信時期についての明示はない。 しかし、サブ制御基板において情報をその必要性に応じて保持することが設計事項である点は、前記「[相違点1]について」において検討したとおりであり、また設定値情報は遊技場の利益に密接に関わる情報であるから、その改変防止は当業者が通常考慮する事項である。そして、例えば特開平11-276699号公報の【0060】に、「メイン基板31における基本回路53は、表示制御コマンドデータを送信するときにはいつでもセキュリティチェック符号を付加するのではなく、数10ms毎にセキュリティチェック符号が表示制御コマンドに付加されるように制御してもよい。」と記載されているように、サブ制御基板における確認のために所定の間隔でメイン制御基板からサブ制御基板に情報を送信する点は周知技術であるから、引用発明において、設定値情報についても定期的に確認を行うべくメイン制御基板からサブ制御基板に設定値情報の送信を行うことは、当業者にとって容易に想到できることである。 また設定値情報の具体的な送信時期については、引用文献1の【0075】には、メイン制御基板からサブ制御基板へ送信する情報として、設定値情報以外にも様々な情報が例示されているが、いずれも当該事象の発生に応じて、すなわち必要に応じて送信できる情報であるから、設定値情報についても、送信時期について特段の規制があるものではなく、必要に応じて送信できるものである。そして、データ通信の技術分野において、データ容量的に空いたタイミング等、適当な時期を選択することは、例を挙げるまでもなく周知慣用の技術に過ぎず、また、スロットマシン等の遊技機においてメイン制御基板とサブ制御基板への情報送信における混雑度等を考慮すれば、ゲームとゲームの間は遊技に関する情報を送信する必要性が低下する時期であることは明らかであるから、そのようなゲームとゲームの間をデータの送信時期として選択することは当業者にとって想到容易なことと判断される。 よって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明から、当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点3]について 引用発明には、メイン制御基板からサブ制御基板へ送信された設定値情報について、サブ制御基板における比較手段や変更手段はない。 しかし、サブ制御基板において情報をその必要性に応じて保持することが設計事項である点は、前記「[相違点1]について」において検討したとおりであり、また必要な情報を常に新しい情報に更新することは例を挙げるまでもなく一般的な技術常識に過ぎないことであるから、引用発明におけるメイン制御基板からサブ制御基板へ設定値情報を送信するという技術思想を踏まえれば、設定値情報の受信にあたってサブ制御基板において設定値情報を上書きすることは、当業者であれば容易に想到できることに過ぎない。 なお、上書きは変更手段であって、比較手段に相当するものではないが、データの受信の度に上書きすれば常に新しい情報に更新されるのであるから、不正な状態を解除できるという審判請求書において主張している作用効果も奏するものである。また設定値を比較することによってその他どのような技術的効果が生じるのかは不明であるが、データの比較手段自体は確認や照合手段等において、例を挙げるまでもなく周知慣用技術に過ぎず、また設定値情報は遊技場の利益に密接に関わるものであるから、常に正確な状態を保つことが望まれることは論を待つまでもなく、何らかの異常が生じたことを検知するために、そのような比較手段を設けることも、当業者にとって格別想到困難なものでもない。 そうすると、相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知慣用技術から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 [むすび] したがって、本件補正は、請求項2以下について検討するまでもなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。よって、結論のとおり決定する。 第3. 本願発明について 1.本願発明 平成18年3月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成17年7月13日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)について以下検討すると、本願発明は前記「第2[理由]1.」に平成17年7月13日付の手続補正における請求項1として記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2[理由]3.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本願補正発明において「前記リール停止手段の操作による遊技の終了から遊技開始手段の操作による次の遊技の開始までの間に」とあったところを「所定のタイミング」とし、また同様に「該比較手段による比較の結果…異なると判定された場合に…変更する」とあったところを「異なる場合に…変更する」として、限定を解除したものである。 また、「主基板から出力される」に代えて「前記送信手段から送信された」とした点については、前記「第2[理由]2.」で検討したように、「前記送信手段」とは「主基板」を指すと解するのが相当であるから、「主基板から出力される」に代えて「前記送信手段から送信された」とする補正は、進歩性の判断に影響を与えるものではない。 そうすると、本願発明に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]5.」に記載したとおり、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、平成18年3月27日付の手続補正は却下され、そして、本願発明は引用文献1に記載された発明並びに周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2以下について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-22 |
結審通知日 | 2008-10-29 |
審決日 | 2008-11-11 |
出願番号 | 特願2001-313551(P2001-313551) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鉄 豊郎 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
池谷 香次郎 小原 博生 |
発明の名称 | 遊技機及びプログラム及び記憶媒体 |
代理人 | 小林 和憲 |