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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1190187
審判番号 不服2004-5136  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-11 
確定日 2009-01-09 
事件の表示 平成10年特許願第255624号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月28日出願公開、特開2000- 84177〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は平成10年9月9日に出願されたものであって,平成15年9月29日付の拒絶理由が通知され,平成15年11月25日付で意見および手続補正がなされ,平成16年2月3日付で拒絶査定がなされ,これに対して,平成16年3月11日付で拒絶査定不服審判請求がなされ、平成16年3月30日付の手続補正がなされ,当審において,平成19年12月3日付の拒絶理由が通知されると同時に,補正却下の決定がなされ,平成20年2月20日付で意見および手続補正がなされたものである。
そして,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,平成20年2月20日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下,「本願発明」という。)。

「【請求項1】 複数の図柄を表示可能な図柄表示部が設けられており,大当たりの生起を決定するための第一のカウンタ,及び前記図柄表示部に表示される特別図柄の大当たり図柄を決定するための第二のカウンタが接続された制御装置における制御にしたがって,図柄変動開始信号によりその図柄表示部の図柄が変動を開始し,その際に前記第一のカウンタが所定の数値を選択した場合に,前記第二のカウンタが選択した数値に基づいて所定時間後に複数の大当たり図柄の内の一つである大当たり図柄が確定表示されると,遊技者にとって価値ある大当たり状態が生起するとともに,前記図柄表示部に表示される図柄の変動時間を所定時間より短縮する変動短縮状態を生起させる一方,
大当たり図柄が確定表示される場合に,その確定表示前に,確定表示される大当たり図柄と同一あるいは異なる大当たり図柄を,遊技者に認識させ得る態様で一旦表示させるか否かを決定するための一旦表示決定プログラムを前記制御装置にて実行する遊技機であって,
前記複数の大当たり図柄の中から,遊技店において特定のサービスの提供を開始する指標となるラッキー大当たり図柄と,遊技店において特定のサービスの提供を終了する指標となるアンラッキー大当たり図柄と,前記ラッキー大当たり図柄およびアンラッキー大当たり図柄以外の普通大当たり図柄とを任意に選定するための選定手段が設けられており,
該選定手段によってラッキー大当たり図柄,アンラッキー大当たり図柄,及び普通大当たり図柄が予め選定されており,
前記制御装置には,前記第一のカウンタ及び前記第二のカウンタに加えて,前記一旦表示決定プログラムにおいて一旦表示するか否かを決定するための第三のカウンタが接続されており,
前記第一のカウンタが前記所定の数値を選択した際に,
前記第二及び第三のカウンタが数値を選択し,第三のカウンタにおいて選択された数値が特定の数値であると,第二のカウンタが選択した数値に対応した確定表示用の特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であるか否かの第一の判断を行い,
その第一の判断の結果,確定表示用の特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であると判断された場合には,再度前記第二のカウンタで数値を選択し,第二のカウンタで選択された数値に対応する特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であるか否かの第二の判断がなされ,該第二の判断の結果アンラッキー大当たり図柄であると判断された場合には,該図柄を図柄表示部に一旦表示し,前記第二の判断の結果アンラッキー大当たり図柄でないと判断された場合には,前記第二のカウンタで選択される数値に対応する特別図柄がアンラッキー大当たり図柄となるまで,第二のカウンタで数値を選択し直すことにより,
アンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄が一旦表示される場合に,アンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄を確定表示することを特徴とする遊技機。」

(1)引用例について
1)引用1について
当審の拒絶理由に引用された刊行物である特開平9-135947号公報 (以下,「引用1」という。)には,以下の技術事項が図面とともに記載されている。
・記載事項1
「【請求項1】 少なくとも1つ以上の図柄を表示可能な図柄表示部が設けられており,図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された少なくとも1つ以上の図柄が変動を開始し,所定時間後に確定停止表示されるとともに,確定停止表示された図柄あるいは図柄の組み合わせが,予め設定された複数の大当たり図柄の内の非特定大当たり図柄である場合に,遊技者にとって有利な第2の特別遊技状態が生起し,確定停止表示された図柄が前記複数の大当たり図柄の内の特定大当たり図柄である場合に,第2の特別遊技状態よりも遊技者にとってさらに有利な第1の特別遊技状態が生起するパチンコ機であって,前記図柄の確定停止表示前に,前記複数の大当たり図柄の内の何れかを一旦停止表示した後,図柄の再変動を行い,先に一旦停止表示された大当たり図柄と同一,あるいは異なる大当たり図柄を確定停止表示する機能を有することを特徴とするパチンコ機。」
・記載事項2
「【0003】通常の図柄合わせタイプのパチンコ機においては,予め複数種類の図柄の組み合わせが「大当たり図柄」として設定されている。また,機種によっては,その「大当たり図柄」が,「特定図柄」と「非特定図柄」に分けられており,「特定図柄」が表示されて「大当たり」が生起した場合には,「大当たり状態」終了後,次の「大当たり」が生起するまでの間,普通図柄が「当たり」となる確率を高めたり,普通図柄の変動時間を短縮したりして,普通電動役物への入賞率を増加させて遊技球がほとんど減少しない状態を生起させるとともに,特別図柄の変動回数を増大させて「大当たり」を生起し易くし,「非特定図柄」が表示されて「大当たり」が生起した場合に比べて遊技者にとって有利となるように設定しているものもある。
【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来のパチンコ機は,「大当たり図柄」が表示された場合であっても,「特定図柄」が表示された場合と「非特定図柄」が表示された場合とでは「大当たり状態」終了後の遊技内容に違いがあるので,遊技者は,「非特定図柄」が表示されて「大当たり」が生起しても大して感動せず,かかる事態の連続により,遊技に対する興味を失い易かった。また,「特定図柄」が表示された場合と「非特定図柄」が表示された場合とでは「大当たり状態」終了後の遊技内容に違いがあるため,3つの特別図柄の変動後に「大当たり図柄」に含まれる特別図柄を順々に2つ表示した場合であっても,先に表示された2つの特別図柄が「非特定図柄」に含まれるものである場合には,遊技者はさして大きな期待を抱かず,かかる事態の繰り返しにより,遊技に対する興味を失うこともあった。さらに,従来のパチンコ機は,各特別図柄の変動開始から停止表示開始までの間(たとえば,約6秒間),特別図柄表示部に各特別図柄が変動している様子を表示するだけであるので,遊技者は,かかる単調な時間の連続によって,遊技に対する興味を失うこともあった。」
・記載事項3
「【0012】さらに,普通電動役物4に遊技球が入賞した場合には,普通電動役物4に付設された入賞検出装置(図示せず)から特別図柄表示部3に図柄変動開始信号が送信され,特別図柄表示部3に表示された左図柄10,右図柄11,中図柄12の各特別図柄が変動を開始するようになっている。図柄の変動は,特別図柄表示部3の液晶画面中の左図柄表示部位,右図柄表示部位,中図柄表示部位の各表示部位において,図5に示した15図柄,すなわち「一段」,「二段」,「三段」,「四段」,「五段」,「六段」,「七段」,「八段」,「九段」,「名人」,「銀将」,「金将」,「角行」,「飛車」,「王将」の図柄が上から下へ移動する動画を表示することによって行われる。そして,所定時間後に停止表示となった各特別図柄が特定の組み合わせである場合には,遊技者にとって有利な「大当たり状態」が生起し,大入賞口7がきわめて高い確率で断続的に開成するように構成されている(なお,後述するように,各特別図柄の変動時においては,各特別図柄が一旦,ほぼ停止したように表示される場合もあるが,以下,かかる特別図柄の停止表示を「一旦停止表示」といい,変動から所定時間後の最終的な停止表示を「確定停止表示」ということもある)。また,大入賞口7は「大当たり状態」以外では開成しないようになっており,閉成状態である場合には遊技球が入賞しないようになっている。一方,普通電動役物4は,閉成時においても,開成時に比べて低い確率ではあるが,遊技球が入賞するようになっている。」
・記載事項4
「【0013】一方,パチンコ機1には,普通図柄の「小当たり」を決定するカウンタであるFRAN,普通図柄の「はずれ図柄」を決定するカウンタであるHZFC,「大当たり」の生起を決定するカウンタであるTRAN,特別図柄表示部3に表示される各特別図柄の内の左図柄10を決定するカウンタであるHZAC,右図柄11を決定するカウンタであるHZBC,中図柄12を決定するカウンタであるHZCC等の各カウンタが内蔵されている。
【0014】・・・
【0015】一方,「大当たり」の生起を決定するTRANは,電源投入時から0?329(330通り)の間を約0.675秒毎に1ずつ加算しながらループカウントしている。また,左図柄10を決定するHZACは,電源投入時から0?14(15通り)の間を約0.002秒毎に1ずつ加算しながら約0.030秒の周期でループカウントしており,右図柄11を決定するHZBCは,HZACが14から0になるときに0?14(15通り)の間を約0.030秒毎に1ずつ加算しながら0.460秒の周期でループカウントしており,中図柄12を決定するHZCCは,HZBCが14から0になるときに0?14(15通り)の間を0.460秒毎に1ずつ加算しながら約6.912秒の周期でループカウントしている。なお,HZAC,HZBC,HZCCのカウンタ値とそのカウンタ値に対応した図柄との関係は図4に示した通りである。
【0016】なお,パチンコ機1においては,左図柄10,右図柄11,中図柄12として,図5に示した14通りの図柄の内の何れかが表示されるようになっており,左図柄10,右図柄11,中図柄12の全て同一な図柄の組み合わせ,すなわち,「一段,一段,一段」,「二段,二段,二段」,「三段,三段,三段」,「四段,四段,四段」,「五段,五段,五段」,「六段,六段,六段」,「七段,七段,七段」,「八段,八段,八段」,「九段,九段,九段」,「名人,名人,名人」,「銀将,銀将,銀将」,「金将,金将,金将」,「角行,角行,角行」,「飛車,飛車,飛車」,「王将,王将,王将」の15通りの図柄の組み合わせが「大当たり図柄」として設定されている。」
・記載事項5
「【0017】また,パチンコ機1は,特別図柄表示部3に「三段,三段,三段」,「七段,七段,七段」,「名人,名人,名人」,「王将,王将,王将」の何れかの「大当たり図柄」(以下,「特定図柄」といい,「特定図柄」以外の「大当たり図柄」を「非特定図柄」という)が表示されたことによって「大当たり」が生起した場合(以下,「特定大当たり」といい,「非特定図柄」の表示によって「大当たり」が生起した場合を「非特定大当たり」という)には,「大当たり状態」が終了した後に,「大当たり」の生起確率,および普通図柄の「小当たり」の生起確率が高くなる「高確率状態」が生起するように構成されている(以下,「高確率状態」以外の状態を「低確率状態」という)。」
・記載事項6
「【0023】TRAN,HZAC,HZBC,HZCCの各カウンタの値が記憶された後には,まず,TRANの値が取り出され,大当たり判定が行われる。低確率状態においては,TRANの値が「73」の場合に「大当たり」と判定され,「73」以外の場合には「はずれ」と判定される。
【0024】「大当たり」と判定された場合には,記憶されているHZCCの値が取り出され,各特別図柄の変動開始から所定時間後に,そのHZCCの値に対応した図柄が,新たな左図柄10,右図柄11,中図柄12として,特別図柄表示部3に表示される。したがって,特別図柄表示部3には,前述の如き左図柄10,右図柄11,中図柄12がすべて同一の「大当たり図柄」が表示される。」
・記載事項7
「【0032】[リーチ動作(6)]「リーチ図柄」が表示された時点で,特別図柄表示部の中図柄表示部位を変動中の図柄を,左図柄表示部位・右図柄表示部位に表示されている図柄に差し替え,中速変動Cで25図柄分変動させた後,その速度のまま,大当たり判定の時点で記憶されたHZBCの値に対応した図柄が表示されるまで変動させてから,一旦,約0.491秒間停止表示する(この時点で,左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位には,「大当たり図柄」が表示されることになる)。しかる後,左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に表示された3つの図柄を,中速変動Dで約2.269秒間変動させた後,大当たり判定の時点で記憶されたHZCCの値に対応した図柄が表示されるまで変動させる。
【0033】なお,上記の(4)?(6)の「リーチ動作」における「一旦停止表示」は,最終的に特別図柄を停止表示する「確定停止表示」と異なり,各特別図柄を,完全に停止させず,各図柄表示部位において僅かな上下振動をさせる等の態様で表示する。一方,上記の(5)および(6)の「リーチ動作」においては,一旦「特定図柄」が表示されたにも拘らず図柄の再変動の後に「非特定図柄」が表示されることによって遊技者が不愉快な思いをする,という事態を回避するため,一旦,停止表示された左図柄10,右図柄11,中図柄12の組み合わせが「特定図柄である場合には,再度図柄が変動することなく「大当たり」が生起するようになっている。また,特別図柄の変動開始から停止表示に至るまでのタイムチャートは,図7に示した通りである。
【0034】そして,「リーチ動作」の後,「大当たり図柄」が表示された場合(「確定停止表示」された場合)には,遊技者にとって有利な「大当たり状態」が生起する。「大当たり状態」が生起すると,所定の電飾ランプが点滅し,効果音が発生して,雰囲気が盛り上げられる。」
・記載事項8
「【0036】さらに,特別図柄表示部3に「特定図柄」が表示(「確定停止表示」)されて「大当たり」が生起した場合には,「大当たり」終了後に,遊技者にとって有利な「高確率状態」が生起する。なお,「高確率状態」が生起した場合には,所定の電飾ランプが点滅し,かかる事態が周囲に報知される。
【0037】「高確率状態」においては,普通図柄の当たり判定で,記憶されているFRANの値が,3?99(97通り)である場合に,普通図柄の「小当たり」が生起する。このため,普通図柄の「小当たり」の生起確率は97/100に増大する。また,これに加えて,大当たり判定で,記憶されているTRANの値が「73,103,137,179,251」の場合に「大当たり」と判定される。このため,「大当たり」の生起確率は5/330に増大する。
【0038】さらに,「高確率状態」においては,普通図柄の変動時間が短縮されるため,普通電動役物4が頻繁に開成するようになるし,普通電動役物4の開成時間が2.3秒に延長され,遊技球が高い頻度で普通電動役物4に入賞し易くなるので,遊技者は,多くの賞品球を獲得することができ,ほとんど遊技球を消費しない。その上,特別図柄の変動回数が増大するとともに,上述の如く「大当たり」の生起確率が増大するため,きわめて高い確率で「大当たり」が生起することになる。また,「高確率状態」においては,普通図柄の変動時間ばかりでなく,特別図柄の変動時間も短縮される。
【0039】上記の如く構成された実施例1のパチンコ機は,「大当たり図柄」として「特定図柄」が表示された場合と「非特定図柄」が表示された場合とで,「大当たり状態」終了後における「高確率状態」生起の有無の違いがあるとともに,(4),(5),(6)のリーチ動作の如く,図柄変動時において,一旦,「非特定図柄」が表示された場合であっても,図柄の再変動後に「特定図柄」が表示される場合がある。したがって,遊技者は,図柄変動中に特別図柄表示部3にきわめて高い関心を示し,いつまでも興味を持って遊技をし続けることができる。」
・記載事項9
「【0045】・・・一旦停止表示になっている左図柄10,右図柄11と同一の図柄を中図柄表示部位に一旦停止表示した後(すなわち,左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に「非特定大当たり図柄」を表示した後),再度全ての特別図柄を変動させて,所定時間後に,「特定図柄」,あるいは「非特定図柄」を確定停止表示する。
【0046】・・・
【0047】・・・一旦停止表示となっている左図柄10,右図柄11と同一の図柄を中図柄表示部位に一旦停止表示した後(すなわち,左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に「非特定大当たり図柄」を表示した後),再度全ての特別図柄を変動させて,所定時間後に,「特定図柄」,あるいは「非特定図柄」を確定停止表示する。
【0048】・・・一旦停止表示となっている左図柄10,右図柄11と同一の図柄を中図柄表示部位に一旦停止表示した後(すなわち,左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に「非特定大当たり図柄」を表示した後),再度全ての特別図柄を変動させて,所定時間後に,「特定図柄」,あるいは「非特定図柄」を確定停止表示する。
【0049】・・・同様に、「第2段階表示」において「特定リーチ図柄」が表示されて「大当たり」が生起する場合には、必ず「特定大当たり図柄」が表示されて「特定大当たり」となるようになっている。・・・また、実施例2のパチンコ機1も、実施例1のパチンコ機と同様に、「非特定図柄」が表示された場合であっても、再度の図柄変動の後に「特定図柄」が表示されて「特定大当たり」が生起し得るように構成されている。」

以上の記載事項1?9及び図1?8によれば,引用1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下,「引用1発明」という。)

「左図柄10,右図柄11,中図柄12を表示可能な特別図柄表示部3が設けられており,大当たりの生起を決定するカウンタTRAN,および特別図柄表示部3に表示される左図柄10,右図柄11と中図柄12がすべて同一な図柄の組合せを決定するカウンタHZCCが内蔵され,
図柄変動開始信号により特別図柄表示部3の各図柄が変動を開始して所定時間後に確定停止表示され,確定停止表示された図柄が,予め設定された15通りの大当たり図柄の内の特定大当たり図柄である場合には,遊技者にとって有利な大当たり状態を生起するとともに,特別図柄表示部3に表示された特別図柄の変動時間も短縮され,
15通りの大当たり図柄の中には,特定大当たり図柄と非特定大当たり図柄が設けられており,
大当たり図柄が確定停止表示される場合の内の少なくとも一部の場合に,その確定停止表示前に,確定停止表示される大当たり図柄と同一あるいは異なる非特定大当たり図柄又は特定リーチ図柄が,遊技者に認識させ得る態様で一旦停止表示されるとともに,
一旦,「非特定大当たり図柄」が表示された場合であっても,図柄の再変動後に「特定大当たり図柄」が表示される場合があり,かつ,「特定リーチ図柄」が一旦停止表示される場合には,「特定大当たり図柄」を確定停止表示するパチンコ機。」

2)引用2について
当審の拒絶理由に引用された刊行物である特開平6-154394号公報(以下,「引用2」という。)には,以下の技術事項が図面とともに記載されている。
・記載事項ア
「【0024】次に,上記の遊技機1および遊技機1を集中管理する遊技店管理装置2の詳細な原理ブロック構成を図3に示す。また,遊技機1における制御の手順を図4ないし図6に,遊技店管理装置2における制御の手順を図7に,それぞれ示す。また,遊技機1における景品交換指示の手順の例を図8に示す。上記の図3ないし図8に基づいて,この遊技機1と遊技店管理装置2における制御の流れを以下に説明する。」
・記載事項イ
「【0025】まず,遊技店側では,いわゆる「大当り図柄」である特別図柄(通常の特別図柄と特殊図柄とを含む)を図3の特殊特定図柄設定手段により設定する。この特別図柄としては,特別遊技利益を付与するのみの通常特別図柄と,景品交換を所定期間不要とする特殊図柄(いわゆるラッキーナンバー)とを設定できる。また,通常特別図柄の中には,遊技者にとって最も不利な(上記特殊図柄の効果を打ち消してしまう)特定図柄(いわゆるアンラッキーナンバー)を設定することができる。また,これら通常特別図柄,特定図柄,および特殊図柄の発生確率は,ROM等に格納され,遊技機1の製造出荷時に設定される。これらの発生確率は,特殊特定図柄設定操作手段(外部の設定スイッチ等)により特殊特定図柄設定手段内の図示しない発生比率変更手段に指令を送り,遊技店側でも調整可能である。さらには,遊技店内の遊技機を集中管理する遊技店管理装置2から上記の特殊特定図柄設定手段に指令を送り発生比率を変更させてもよい。」
・記載事項ウ
「【0026】図4は,上記の発生率設定に関連したフローチャート図である。すなわち,通常特別図柄の発生率をステップS1で設定し,特殊図柄(ラッキーナンバー)の発生率をステップS2で設定し,ステップS3で,特定図柄(アンラッキーナンバー)の発生率を設定する。次に,特殊図柄(ラッキーナンバー)により獲得球の交換が不要となる期間(獲得球交換不要期間カウンタ値)を設定する(ステップS4)。そして,上記の設定された値を遊技店管理装置2へ送信する(ステップS5)。」
・記載事項エ
「【0034】次に,同様にして,通常の特別図柄が発生した場合は,図5のステップS19において獲得球交換不要期間カウンタの値が「1」だけデクリメント(減算)されると,カウンタ値は「零」となる。次いで,ステップS20でカウンタ値が「零」であることが判別され,上記のようにして確率交換不要期間カウンタの値が零になった場合には,獲得球交換不要期間が終了したのであるから,この旨の信号が獲得球交換不要信号出力手段に送られ,獲得球交換不要期間信号出力手段は,獲得球交換不要期間終了信号を獲得球交換不要期間報知手段に送って獲得球交換不要期間が終了したことを遊技者や周囲,遊技店員等に報知させる(図5におけるステップS21)。」
・記載事項オ
「【0037】次に,再度図柄表示装置(図2における特別図柄表示装置6)が変動表示を開始し,特別図柄で停止した場合,図3における特定図柄判別手段により「特定図柄(アンラッキーナンバー)である」と判別された場合(図5におけるステップS14)は,特定図柄判別手段から特定図柄判別信号が送出され,図3においては図示していない獲得球交換不要期間カウンタのカウント値が「零」に強制設定される(図5におけるステップS22)。すなわち,現在の特別遊技が終了した場合には,獲得球をいったん景品に交換しないと再遊技はできないことを意味している。」
・記載事項カ
「【0043】次に,図3の遊技店管理装置2における情報処理制御の内容を図7に示す。この遊技店管理装置2の判別信号記憶手段は,遊技機1から特別図柄判別信号と特殊図柄判別信号と特定図柄判別信号とを受信する。そして,この判別信号記憶手段は,特別図柄の発生を示す信号である特別図柄判別信号を計数(カウント)して記憶する(ステップS51)。また,特殊図柄(ラッキーナンバー)の発生を示す信号である特殊図柄判別信号を計数(カウント)して記憶し(ステップS52),また,特定図柄(アンラッキーナンバー)の発生を示す信号である特定図柄判別信号を計数(カウント)して記憶する(ステップS53)。」
・記載事項キ
「【0046】上記の計数値や演算値は,記憶保存手段に保存され(ステップS58),その後に表示指令操作があった場合は(ステップS59),表示データ選択指示(ステップS60)により選択されたデータ(計数値,演算値,日付等)を視覚的表示手段により遊技店側に表示する(ステップS61)。例えば,CRT等の画像表示装置に画像表示したり,プリンタ等によりプリントアウトする。遊技店は,これらの計数値や演算値を遊技店の経営データとして利用することができる。」
・記載事項ク
「【0048】第2の方式は,特殊図柄(ラッキーナンバー)と特定図柄(アンラッキーナンバー)とを設け,特殊図柄(ラッキーナンバー)の効果である獲得球の交換不要期間は,特定図柄(アンラッキーナンバー)の発生によって消滅する,という方式である。したがって,特殊図柄(ラッキーナンバー)が発生した場合は,特定図柄(アンラッキーナンバー)が発生するまでは,景品交換せずに遊技が可能である。この方式では,図8(A)に示すように通常特別図柄で停止した場合,あるいは,図8(B)に示すように特定図柄(アンラッキーナンバー)で停止した場合には,その特別図柄による特別遊技が終了した時点で,獲得球の景品への交換が指示される。また,図8(C)に示すように,特殊図柄(ラッキーナンバー)が発生した場合は,特定図柄(アンラッキーナンバー)が発生するまでは,通常特別図柄の発生による特別遊技を何回でも行うことができ,特定図柄(アンラッキーナンバー)が発生した場合には,その回の特別遊技が終了した時点で景品交換が指示される。」
・記載事項ケ
「【0049】第3の方式は,上記第1方式と第2方式の折衷方式であり,特殊図柄(ラッキーナンバー)と特定図柄(アンラッキーナンバー)とを設ける。そして,特殊図柄(ラッキーナンバー)の効果である獲得球の交換不要期間は,通常特別図柄の発生による特別遊技を消化するごとに減算され,獲得球交換不要期間カウント値が「零」になった時点で景品交換指示が出されるか,あるいは,特殊図柄(ラッキーナンバー)の効果である獲得球の交換不要期間は特定図柄(アンラッキーナンバー)の発生によって消滅する,という方式である。上記の実施例は,この第3の方式について説明したものである。」
・記載事項コ
「【0052】例えば,上記実施例では,ラッキーナンバーが1種類(例えば「7,7,7」)の例について説明したが,これは,複数種類設け,ラッキーナンバーの種類に応じて獲得球交換不要期間に差を設けるようにしてもかまわない。
【0053】また,上記の実施例においては,「獲得球交換不要期間」は,特別遊技の回数を単位としてカウントしたが,これに限定されるものではなく,図柄表示装置の作動回数,特別図柄の発生回数を単位とした期間,特定図柄の発生回数を単位とした期間,予め定められた所定の図柄(いわゆるアンラッキーナンバー等)が発生するまでの期間,所定時間が経過するまでの期間,所定数の遊技球が発射されるまでの期間,所定数の遊技球が入賞するまでの期間,あるいは遊技盤の所定位置において遊技球を所定数検出するまでの期間等であってもかまわない。」

以上の記載事項ア?コおよび図1?8を勘案すると,引用2には以下の技術事項が記載されている。

「遊技店において,特別図柄は,ラッキーナンバーの大当たり図柄からなる特殊図柄,アンラッキーナンバーの大当たり図柄からなる特定図柄,およびラッキーナンバーでもアンラッキーナンバーでもない通常の大当たり図柄の特別図柄とから構成され,ラッキーナンバーの大当たり図柄である特殊図柄は景品交換を所定時間不要とするものであり,アンラッキーナンバーの大当たり図柄である特定図柄は遊技者にとって最も不利である特殊図柄の効果を打ち消してしまうものであり,ラッキーナンバーの大当たり図柄の特殊図柄でもなくアンラッキーナンバーの大当たり図柄の特定図柄でもない通常の大当たり図柄の特別図柄は,特殊特定図柄設定手段により任意に設定可能な遊技機。」
(以下,「引用2に記載の技術事項」という。)

(2)対比
引用1発明と本願発明を対比すると,引用1発明の「左図柄10,右図柄11,中図柄12」は本願発明の「複数の図柄」に相当し,以下同様に,「特別図柄表示部3」は「図柄表示部」に,「カウンタTRAN」は「第一のカウンタ」に,「左図柄10,右図柄11と中図柄12がすべて同一な図柄の組合せ」は「特別図柄の大当たり図柄」に,「カウンタHZCC」は「第二のカウンタ」に,「確定停止表示」は「確定表示」に,「15通りの大当たり図柄の内の特定大当たり図柄である場合には」は「複数の大当たり図柄の内の1つである場合には」に,「有利な大当たり」は「価値ある大当たり状態」に,「一旦停止表示」は「一旦表示」に,「パチンコ機」は「遊技機」に,それぞれ相当している。

そして,引用1発明については,以下のi)?v)がいえる。

i)実質的具備事項1
引用1の記載事項6の「【0023】・・・まず,TRANの値が取り出され,大当たり判定が行われる。低確率状態においては,TRANの値が「73」の場合に「大当たり」と判定され,「73」以外の場合には「はずれ」と判定される。【0024】「大当たり」と判定された場合には,記憶されているHZCCの値が取り出され,各特別図柄の変動開始から所定時間後に,そのHZCCの値に対応した図柄が,新たな左図柄10,右図柄11,中図柄12として,特別図柄表示部3に表示される。したがって,特別図柄表示部3には,前述の如き左図柄10,右図柄11,中図柄12がすべて同一の「大当たり図柄」が表示される。」なる記載に基づけばパチンコ機は,大当たりの生起をカウンタTRANで決定するとともに,カウンタHZCCの値に対応したすべて同一の左図柄10,右図柄11および中図柄12からなる図柄の組合せが特別図柄表示部3に表示されるものである。
また,カウンタが制御装置に接続されること,および制御装置はカウンタのカウンタ値を用いて制御することは,パチンコ遊技機の技術分野における技術常識であって自明なことであるから,引用1発明は,大当たりの生起を決定するカウンタ,および特別図柄表示部3に表示される左図柄10,右図柄11と中図柄12を決定するカウンタが接続されて制御を行う制御装置を有していると解される。
そして,引用1発明の「特別図柄表示部3」「左図柄10,右図柄11と中図柄12がすべて同一な図柄の組合せ」は,本願発明の「図柄表示部」「特別図柄の大当たり図柄」に相当していることは上記したとおりである。
そうすると,引用1発明は,「大当たりの生起を決定する第一のカウンタ,および図柄表示部に表示される特別図柄の大当たり図柄を決定する第二のカウンタが接続された制御装置における制御にしたがって,」なる構成を実質的に具備しているということができる。
ii)実質的具備事項2
同記載事項1の「【請求項1】 少なくとも1つ以上の図柄を表示可能な図柄表示部が設けられており,図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された少なくとも1つ以上の図柄が変動を開始し,所定時間後に確定停止表示されるとともに,確定停止表示された図柄あるいは図柄の組み合わせが,予め設定された複数の大当たり図柄の内の非特定大当たり図柄である場合に,遊技者にとって有利な第2の特別遊技状態が生起し,確定停止表示された図柄が前記複数の大当たり図柄の内の特定大当たり図柄である場合に,第2の特別遊技状態よりも遊技者にとってさらに有利な第1の特別遊技状態が生起するパチンコ機であって,前記図柄の確定停止表示前に,前記複数の大当たり図柄の内の何れかを一旦停止表示した後,図柄の再変動を行い,先に一旦停止表示された大当たり図柄と同一,あるいは異なる大当たり図柄を確定停止表示する機能を有することを特徴とするパチンコ機。」に基づけば,一旦停止表示後,図柄が再変動して,大当たり図柄が確定停止表示されて,遊技者に有利な大当たり状態が生起するのであるから,カウンタTRANの記憶されたカウンタ値を取り出して,大当たり生起の判定を行い,大当たりに判定された場合には,記憶されたカウンタHZCCのカウンタ値が取り出されて,左図柄10,右図柄11および中図柄12の各図柄が変動を開始し,所定時間経過後に,複数の大当たり図柄の中の大当たり図柄(すべて同じ図柄の組合せ,いわゆるぞろ目)を確定停止表示して,遊技者に大当たり状態を生起させていることは明らかである。
また,同記載事項8の「・・・【0038】・・・きわめて高い確率で「大当たり」が生起することになる。また,「高確率状態」においては,普通図柄の変動時間ばかりでなく,特別図柄の変動時間も短縮される。【0039】・・・」なる記載に基づけば,大当たりが生起した際に,特別図柄表示部3に表示される特別図柄の変動時間は所定時間よりも短縮されていることは明らかである。
したがって,引用1発明において,「カウンタTRANで大当たり判定を行い,取り出されたTRANの値が大当たりである場合には,各特別図柄の変動開始から所定時間後に15通りの大当たり図柄の中のいずれか1つの大当たり図柄をカウンタHZCCの値に対応させて,左図柄,右図柄および中図柄12として,特別図柄表示部3に確定表示して,遊技者にとって有利な大当たりを生起するとともに,特別図柄表示部3に表示される図柄の変動時間を所定時間より短縮する変動短縮状態が生起している」ということができる。
そして,引用1発明の「特別図柄表示」,「カウンタTRAN」,「カウンタHZCC」,「有利な大当たり」は,本願発明の「図柄表示部」,「第一のカウンタ」,「第二のカウンタ」,「価値ある大当たり状態」に相当していることは上記したとおりである。
そうすると,引用1発明は,「図柄変動開始信号によりその図柄表示部の図柄が変動を開始し,その際に第一のカウンタが所定の数値を選択した場合に,第二のカウンタが選択した数値に基づいて所定時間後に複数の大当たり図柄の内の1つである大当たり図柄が確定表示されると,遊技者にとって価値ある大当たり状態を生起するとともに,前記図柄表示部に表示される図柄の変動時間を所定時間よりも短縮する変動短縮状態を生起させる」構成を実質的に具備しているということができる。
iii)実質的具備事項3
引用1発明は,最終的に大当たり図柄を確定停止表示させる場合に,その確定停止表示させる前の段階で,複数の大当たり図柄の中から何れか1つの図柄である確定停止表示させる大当たり図柄と同一もしくは異なる図柄を選択されて一旦停止表示され,その後,一旦停止表示した図柄を再変動させた後,先に一旦停止表示された大当たり図柄と同一もしくは異なる大当たり図柄を確定停止表示させて,遊技者に示しており,また,そのような制御を実現し得る一旦停止表示プログラムが上記実質的具備事項1に示したような制御装置に組み込まれ,かつ,その一旦停止表示プログラムが制御装置にて実行されているといえる。
したがって,引用1発明は,大当たり図柄が確定表示される場合に,その確定停止表示前に,確定停止表示される大当たり図柄と同一あるいは異なる非特定大当たり図柄を,遊技者に認識できるように,一旦停止表示させるか否かを決定するための一旦停止表示決定プログラムを実行しているということができる。
そして,引用1発明の「確定停止表示」,「一旦停止表示」は,本願発明の「確定表示」,「一旦表示」に相当していることは上記したとおりである。
そうすると,引用1発明は,「大当たり図柄が確定表示される場合に,その確定表示前に,確定表示される大当たり図柄と同一あるいは異なる非特定大当たり図柄を,遊技者に認識させ得る態様で一旦表示させるか否かを決定するための一旦表示決定プログラムを前記制御装置にて実行し,」なる構成を実質的に具備しているということができる。
iv)実質的具備事項4
同記載事項2の「【0003】・・・予め複数種類の図柄の組み合わせが「大当たり図柄」として設定されている。また,機種によっては,その「大当たり図柄」が,「特定図柄」と「非特定図柄」に分けられており,「特定図柄」が表示されて「大当たり」が生起した場合には,・・・普通図柄が「当たり」となる確率を高めたり,普通図柄の変動時間を短縮したりして,普通電動役物への入賞率を増加させて遊技球がほとんど減少しない状態を生起させるとともに,特別図柄の変動回数を増大させて「大当たり」を生起し易くし,「非特定図柄」が表示されて「大当たり」が生起した場合に比べて遊技者にとって有利となるように設定しているものもある。【0004】・・・」なる記載に基づけば,大当たり図柄は「特定大当たり図柄」と「非特定大当たり図柄」から構成され,その「特定大当たり図柄」は,「非特定大当たり図柄」に比して確率を高めたり,変動時間を短縮したりするのであるから,「ラッキー大当たり図柄」と言い換えできること,又逆に,「非特定大当たり図柄」はラッキー大当たり図柄である特定図柄以外の大当たり図柄であるから,「ラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄」と言い換えことができる。
また,同記載事項4の「・・・【0016】・・・左図柄10,右図柄11,中図柄12の全て同一な図柄の組み合わせ,すなわち,「一段,一段,一段」,「二段,二段,二段」,「三段,三段,三段」,「四段,四段,四段」,「五段,五段,五段」,「六段,六段,六段」,「七段,七段,七段」,「八段,八段,八段」,「九段,九段,九段」,「名人,名人,名人」,「銀将,銀将,銀将」,「金将,金将,金将」,「角行,角行,角行」,「飛車,飛車,飛車」,「王将,王将,王将」の15通りの図柄の組み合わせが「大当たり図柄」として設定されている。」および同記載事項5の「【0017】・・・特別図柄表示部3に「三段,三段,三段」,「七段,七段,七段」,「名人,名人,名人」,「王将,王将,王将」の何れかの「大当たり図柄」(以下,「特定図柄」といい,「特定図柄」以外の「大当たり図柄」を「非特定図柄」という)・・・」なる記載に基づけば,ラッキー大当たり図柄といえる特定図柄やラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄といえる非特定図柄を予め定められた15通りの大当たり図柄の中から任意に選択して決めることができるのであるから,そのように設定ができる選定手段を実質的に有していると解される。
さらに,引用1発明は,上記実質的具備事項2において示したように,大当たりが生起した際に,特別図柄表示部3に表示される特別図柄の変動時間は所定時間よりも短縮することにより,遊技者にとって有利な大当たり状態を生起させているのであるから,このような有利な状態を遊技店が遊技者に提供することを特定のサービスといえるとともに,特定図柄はそのサービスを提供する指標ということができる。
そして,引用1発明の「特定大当たり図柄」,「非特定大当たり図柄」は本願発明の「ラッキー大当たり図柄」,「ラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄」に相当しているといえることは上記のとおりである。
そうすると,引用1発明は,「複数の大当たり図柄の中から,遊技店において特定のサービスの提供を開始する指標となるラッキー大当たり図柄とアンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄を任意に選定するための選定手段が設けられており,」なる構成を実質的に具備しているということができる。
v)実質的具備事項5
上記実質的具備事項1において示したように,引用1発明は,第一のカウンタと第二のカウンタを実質的に具備している。
また,上記実質的具備事項3に示すように,引用1発明は,大当たり生起の決定を行う第一のカウンタと大当たり図柄の確定表示図柄を決定する第二のカウンタはそれぞれカウンタ値を選択しており,かつ,一旦表示させるか否かを決定するための一旦表示決定プログラムを制御装置にて実行するのであるから,引用1発明は,特別図柄表示部3に特定の大当たり図柄を一旦停止表示するためには,一旦表示をするか否かの決定を行うとともに一旦表示する大当たり図柄の決定を行う必要があること,および,確定表示するか否かを決定し,その確定表示する大当たり図柄を選択するに当たって,第二のカウンタを用いてカウンタ値の選択を行い,その第二のカウンタは制御装置に接続されていることも自明な技術事項である。
そして,引用1発明は,一旦表示するに当たって,一旦表示を行うか否かの決定とその一旦表示する非特定大当たり図柄の選択を行っているのであるから,引用1発明は,一旦表示するに当たって,一旦表示を行うか否かの決定とその一旦表示する非特定大当たり図柄の選択を行うカウンタを実施的に有していると解され,かつ,そのカウンタを第三のカウンタということができるから,引用1発明においては,第一のカウンタが所定の数値を選択した際に,第二のカウンタおよび第三のカウンタが数値を選択しているということができる。
ところで,引用1発明は,確定表示される大当たり図柄と同一または異なる非特定大当たり図柄を図柄表示部に一旦表示した後,大当たり図柄を確定表示することができる遊技機である。
そうすると,引用1発明は,「制御装置には,第一のカウンタ及び第二のカウンタに加えて,一旦表示決定プログラムにおいて一旦表示するか否かを決定するための第三のカウンタが接続されており,第一のカウンタが所定の数値を選択した際に,第二のカウンタおよび第三のカウンタが数値を選択する遊技機」を実質的に具備しているということができる。

以上の実質的具備事項i)?v)および図面を考慮すると,引用1発明と本願発明は,以下の点で一致するとともに相違している。

<一致点>
「複数の図柄を表示可能な図柄表示部が設けられており,大当たりの生起を決定する第一のカウンタ,および図柄表示部に表示される特別図柄の大当たり図柄を決定する第二のカウンタが接続された制御装置における制御にしたがって,図柄変動開始信号によりその図柄表示部の図柄が変動を開始し,その際に第一のカウンタが所定の数値を選択した場合に,第二のカウンタが選択した値に基づいて,所定時間後に複数の大当たり図柄の内の一つである大当たり図柄が確定表示されると,遊技者にとって価値ある大当たり状態を生起するとともに,図柄表示部に表示される図柄の変動時間を所定時間より短縮する変動短縮状態が生起し,
大当たり図柄が確定表示される場合に,その確定表示前に,確定表示される大当たり図柄と同一あるいは異なる非特定大当たり図柄を,遊技者に認識させ得る態様で一旦表示させるか否かを決定するための一旦表示決定プログラムを制御装置にて実行し,複数の大当たり図柄の中から,遊技店において特定のサービスの提供を開始する指標となるラッキー大当たり図柄とラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄とを予め任意に選定するための選定手段が設けられており,図柄表示部に一旦表示し,
制御装置には,第一のカウンタおよび第二のカウンタに加えて,一旦表示決定プログラムにおいて一旦表示するか否かを決定するための第三のカウンタが接続されており,第一のカウンタが所定の数値を選択した際に,第二のカウンタおよび第三のカウンタが数値を選択する遊技機。」

<相違点1>
本願発明においては,ラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄が,アンラッキー大当たり図柄と普通大当たり図柄から構成されるとともに,アンラッキー大当たり図柄は遊技店において特定のサービスの提供を終了する指標とされるのに対して,引用1発明においては,ラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄が,アンラッキー大当たり図柄と普通大当たり図柄で構成されているか否か不明であるとともに,そのアンラッキー大当たり図柄が遊技店において特定のサービスの提供を終了する指標としているか否か不明である点。
<相違点2>
本願発明においては,第三のカウンタにおいて選択された数値が特定の数値であると,第二のカウンタが選択した数値に対応した確定表示用の特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であるか否かの第一の判断を行い,その第一の判断の結果,確定表示用の特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であると判断された場合には,再度第二のカウンタで数値を選択し,第二のカウンタで選択された数値に対応する特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であるか否かの第二の判断がなされ,第二の判断の結果アンラッキー大当たり図柄であると判断された場合には,該図柄を図柄表示部に一旦表示し,第二の判断の結果アンラッキー大当たり図柄でないと判断された場合には,第二のカウンタで選択される数値に対応する特別図柄がアンラッキー大当たり図柄となるまで,第二のカウンタで数値を選択し直すことにより,アンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄ガ一旦表示される場合に,アンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄を確定表示するのに対して,引用1発明においては,特定リーチ図柄が一旦表示される場合には,特定大当たり図柄を確定表示する点。

(3)相違点についての検討
上記相違点について,検討する。
<相違点1について>
引用2の記載事項イの「【0025】まず,遊技店側では,いわゆる「大当り図柄」である特別図柄(通常の特別図柄と特殊図柄とを含む)を図3の特殊特定図柄設定手段により設定する。この特別図柄としては,特別遊技利益を付与するのみの通常特別図柄と,景品交換を所定期間不要とする特殊図柄(いわゆるラッキーナンバー)とを設定できる。・・・これらの発生確率は,特殊特定図柄設定操作手段(外部の設定スイッチ等)により特殊特定図柄設定手段内の図示しない発生比率変更手段に指令を送り,遊技店側でも調整可能である。さらには,遊技店内の遊技機を集中管理する遊技店管理装置2から上記の特殊特定図柄設定手段に指令を送り発生比率を変更させてもよい。」なる記載に基づけば,引用2に記載の技術事項において,ラッキーナンバーの大当たり図柄を遊技店において遊技者に有利となるような景品交換を所定期間不要とすることは,遊技店での特定のサービスの提供を開始するものといえる一方で,アンラッキーの大当たり図柄は,遊技店においては特殊図柄の効果を打ち消してしまうものであって,遊技者に有利となるような特定のサービスの提供を終了するものといえるから,引用2の記載の技術事項の「ラッキーナンバーの大当たり図柄である特殊図柄」は,「特定のサービスの提供を開始する指標」といえるとともに,「アンラッキーナンバーの大当たり図柄である特定図柄」は,「特定のサービスを終了させる指標」と言い換えでき,かつ,「通常の特別図柄」は,「ラッキーナンバーの大当たり図柄およびアンラッキーナンバーの大当たり図柄以外の普通大当たり図柄」と言い換えできることは明らかである。
よって,引用2に記載の技術事項の「特殊図柄としてのラッキーナンバーの大当たり図柄」は本願発明の「特定サービスの提供を開始する」に相当し,以下同様に,「特殊図柄としてのラッキーナンバーの大当たり図柄」は「ラッキー大当たり図柄」に,特殊図柄の効果を打ち消してしまう」は「特定のサービスの提供を終了させる」に,「アンラッキーナンバーの大当たり図柄からなる特定図柄」は「アンラッキー大当たり図柄」に,「ラッキーナンバーの大当たり図柄の特殊図柄でもなくアンラッキーナンバーの大当たり図柄でもない通常の大当たり図柄の特別図柄」は「ラッキー大当たり図柄およびアンラッキー大当たり図柄以外の普通大当たり図柄」に,「特殊特定図柄設定手段」は「選定手段」にそれぞれ言い換えできるから,引用2に記載の技術事項は,「遊技店において,ラッキー大当たり図柄とアンラッキー大当たり図柄とラッキー大当たり図柄およびアンラッキー大当たり図柄以外の普通大当たり図柄を任意に選定するための選定手段を有し,ラッキー大当たり図柄は特定のサービスを開始する指標とするとともに,アンラッキー大当たり図柄は特定のサービスを終了させる指標とする遊技機。」(以下,「引用2発明」という。)なる発明と言い換えることができる。
そして,引用1発明と引用2発明は,ともにパチンコ遊技機における大当たり図柄において,大当たり図柄を複数種類設け,遊技店で選定手段を用いて確定表示する大当たり図柄を選定でき,選択されて確定表示される大当たり図柄の種類に応じて,遊技者に有利な状態と不利な状態を生起せしめて,遊技の趣向を高めることができる点で共通するのであるから,両者の間で技術を相互に利用することに格別困難性はない。
そうすると,引用1発明のラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄を,引用2発明の遊技店において特定のサービスを終了させる指標とするアンラッキー大当たり図柄およびアンラッキー大当たり図柄以外の普通大当たり図柄とすること,すなわち本願発明の上記相違点1に係る構成となすことは,当業者が容易に想到し得る程度のことということができる。
<相違点2について>
引用1発明は,第一のカウンタ及び第二のカウンタと第三のカウンタを実質的に備えており,かつ,特定リーチ図柄が一旦表示される場合に,確定表示される図柄が,非特定大当たり図柄であると,遊技者が不愉快な思いをするとの趣旨の下で,非特定大当たり図柄が確定表示されないようにするために,特定リーチ図柄を一旦表示する場合には,特定大当たり図柄を確定表示する遊技機である。しかし、最終的に、特定大当たり図柄を確定表示するのであれば、特定大当たり図柄を一旦表示させても遊技者に不愉快な思いをさせることは全くないので、特定リーチ図柄を一旦表示するのに代えて、特定大当たり図柄を一旦停止表示するようにすることは、当業者が適宜実施し得る設計事項ということができる。
一方,引用2発明は,遊技店において,ラッキー大当たり図柄とアンラッキー大当たり図柄とラッキー大当たり図柄およびアンラッキー大当たり図柄以外の普通大当たり図柄を任意に選定するための選定手段を有し,ラッキー大当たり図柄は特定のサービスを開始する指標とするとともに,アンラッキー大当たり図柄は特定のサービスを終了させる指標とする遊技機である。
そうすると、引用1発明に,引用2発明の「ラッキー大当たり図柄とアンラッキー大当たり図柄とラッキー大当たり図柄およびアンラッキー大当たり図柄以外の普通大当たり図柄」を適用するに当たり,適宜設計変更を行いつつ、確定表示用の特別図柄がアンラッキー大当たり図柄である場合には,一旦表示される特別図柄をアンラッキー大当たり図柄にする,すなわち,アンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄が一旦表示される場合には,アンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄を確定表示させることは,一旦「特定図柄」が表示されたにもかかわらず,図柄の再変動後には「非特定図柄」が表示されることによって遊技者が不愉快な思いをするという事態を回避するために当然に考慮されるべき事項であり,そのための具体的構成として,第一のカウンタ,第二のカウンタおよび第三のカウンタを適宜利用して,第三のカウンタにおいて選択された数値が特定の数値であると,第二のカウンタが選択した数値に対応した確定表示用の特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であるか否かの第一の判断を行い,その判断の結果,確定表示用の特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であると判断された場合には,再度第二のカウンタで数値を選択し,第二のカウンタで選択された数値に対応する特別図柄がアンラッキー大当たり図柄であるか否かの第二の判断がなされ,第二の判断の結果アンラッキー大当たり図柄であると判断された場合には,該図柄を図柄表示部に一旦表示し,第二の判断の結果アンラッキー大当たり図柄でないと判断された場合には,第二のカウンタで選択される数値に対応する特別図柄がアンラッキー大当たり図柄となるまで,第二のカウンタで数値を選択し直すことにより,アンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄が一旦表示される場合に,アンラッキー大当たり図柄以外の大当たり図柄を確定表示すること,すなわち本願発明の上記相違点2に係る構成となすことは,当業者が容易に想到し得た程度のことということができる。

(4)作用効果
本願発明によって奏する効果も,引用1発明および引用2発明に基づいて,普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあると認められない。

(5)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用1発明および引用2発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-06 
結審通知日 2008-10-21 
審決日 2008-11-04 
出願番号 特願平10-255624
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 川島 陵司
小原 博生
発明の名称 遊技機  
復代理人 井上 敬也  
代理人 石田 喜樹  

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