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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1190194
審判番号 不服2006-12336  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-15 
確定日 2009-01-09 
事件の表示 特願2001-402111「ウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月18日出願公開、特開2003-201330〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成13年11月27日に特許出願された(国内優先日 平成12年11月28日及び平成13年10月24日)ものであって、平成17年3月17日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年6月9日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月10日に手続補足書が提出されたが、平成18年4月21日付けで拒絶査定がされたところ、同年6月15日に審判請求がされ、同年7月14日付けで手続補正書及び、同年9月13日付けで手続補正書(方式)が提出され、その後、同年10月10日付けで、前置報告がなされ、平成19年11月12日付けで当審で審尋がなされ、平成20年1月31日に回答書が提出されたものである。

II.平成18年7月14日付け手続補正書による手続補正に対する補正の却下の決定
[結論]
平成18年7月14日付け手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成18年7月14日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に係る以下の補正事項Aを含むものである。
補正事項A:
「【請求項1】ポリイソシアネート化合物成分(A)、ポリオール成分(B)(該ポリオール成分はベンジリックエーテル型フェノール樹脂100重量部に対して多価アルコールまたはそのアルキレンオキシド付加物20?100重量部を添加し、減圧下に加熱して得られる変性フェノール樹脂を全ポリオール成分に対して3重量%以上になる量を含む)、水(C)、異なる表面張力を有するシリコーン系界面活性剤の2種類以上の混合物からなり、そのうち表面張力の高い方の成分は22dyne/cmよりも大きい表面張力を有し、表面張力の低い方の成分は22dyne/cm以下の表面張力を有する整泡剤(D)をウレタン化触媒および/または三量化触媒(E)の存在下に反応させることを特徴とするウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。【請求項2】 発泡体の密度が15kgから50kg/m^(3)である請求項1記載のウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。
【請求項3】 発泡体が断熱防水用ボードである請求項1または請求項2記載のウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。
【請求項4】 発泡体がパネル用芯材である請求項1または請求項2記載のウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。
【請求項5】 発泡体が金属サイディング用芯材である請求項1または請求項2記載のウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。」を、
「【請求項1】ポリイソシアネート化合物成分(A)、ポリオール成分(B)該ポリオール成分はベンジリックエーテル型フェノール樹脂100重量部に対して多価アルコールまたはそのアルキレンオキシド付加物20?100重量部を添加し、減圧下に加熱して得られる変性フェノール樹脂を全ポリオール成分に対して3重量%以上になる量を含む、水(C)、異なる表面張力を有するシリコーン系界面活性剤の2種類以上の混合物からなり、そのうち表面張力の高い方の成分は22dyne/cmよりも大きい表面張力を有し、表面張力の低い方の成分は22dyne/cm以下の表面張力を有する整泡剤(D)、難燃剤のリン酸トリエチル(F)を混合し、ウレタン化触媒および/または三量化触媒(E)の存在下に反応させることを特徴とする断熱防水ボード用ウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。」と補正する。

2.補正事項Aの補正の適否
補正事項Aは、特許請求の範囲の請求項1において、「難燃剤のリン酸トリエチル(F)を混合し」を追加したものであるが、難燃剤は補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項ではないことに鑑みると、補正事項Aは補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項を限定するものということはできない。そうすると、補正事項Aは、請求項の限定的減縮を目的とする補正には当たらない。
したがって、補正事項Aは特許法第17条の2第4項第2号に規定する目的を満たしているとは認められない。
そして、補正事項Aは同法同条同項第1号に掲げる請求項の削除、同法同条同項第3号に掲げる誤記の訂正、又は同法同条同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。

3. まとめ
したがって、補正事項Aは、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものでないから、補正事項Aを含む本件補正は、同条第4項の規定に違反するものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

III.本願に係る発明
II.で述べたとおり、平成18年7月14日付け手続補正書による手続補正は補正の却下の決定がされたので、本願の明細書及び図面は、平成17年6月9日付け手続補正書により補正された明細書及び図面(以下、「現明細書等」という。)である。
したがって、本願の請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明9」という。)は、それぞれ、現明細書等の特許請求の範囲の請求項1?9に記載される事項により特定されるとおりのものと認められ、本願発明1は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ポリイソシアネート化合物成分(A)、ポリオール成分(B)(該ポリオール成分はベンジリックエーテル型フェノール樹脂100重量部に対して多価アルコールまたはそのアルキレンオキシド付加物20?100重量部を添加し、減圧下に加熱して得られる変性フェノール樹脂を全ポリオール成分に対して3重量%以上になる量を含む)、水(C)、異なる表面張力を有するシリコーン系界面活性剤の2種類以上の混合物からなり、そのうち表面張力の高い方の成分は22dyne/cmよりも大きい表面張力を有し、表面張力の低い方の成分は22dyne/cm以下の表面張力を有する整泡剤(D)をウレタン化触媒および/または三量化触媒(E)の存在下に反応させることを特徴とするウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。」

IV.原査定の妥当性についての検討
1.原査定の理由の概要
本願発明1に関わる原査定の理由の概要は、平成17年3月17日付けの拒絶理由及び平成18年4月21日付けの拒絶査定からみて、本願発明1は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というにある。
刊行物1: 特開平11-286530号公報
刊行物2: 特開平8-134169号公報

2.引用文献の記載
2-1.刊行物1の記載
ア: 「【請求項1】ポリイソシアナート化合物成分(A)、ポリオール成分(B)、水(C)、異なるHLB値を有する界面活性剤の2種以上の混合物からなる整泡剤(D)をイソシアナート三量化触媒(E)の存在下に反応させることを特徴とするウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体の製造方法。
【請求項3】 前記した異なるHLB値を有する界面活性剤のうちHLB値の高い方の成分はHLB値が22よりも大きく、HLB値の低い方の成分のHLB値が22以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載のウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体の製造方法。
【請求項4】 前記したHLB値が22よりも大きい方の成分が有機ポリシロキサン共重合体であり、HLB値が22以下の成分がジメチルシリコーンオイルである請求項1?請求項3記載のウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体の製造方法。
【請求項10】 ポリイソシアナート化合物成分(A)、ポリオール成分(B)、水(C)、異なるHLB値を有する界面活性剤の2種以上の混合物からなる整泡剤(D)をイソシアナート三量化触媒(E)の存在下に反応させることにより製造されたウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。」(請求項1,3,4,10)
イ: 「 【0007】
【発明の実施の形態】本発明に使用されるポリオール成分は、一般にウレタン発泡体の製造に用いられるポリオールの混合物である。即ち、エチレングリコール、・・・変性フェノール樹脂、アクリルポリオール樹脂であり、これらを単独であるいは、2種以上を混合して用いてもよい。」(段落【0007】)
ウ: 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・本発明は、クロロフルオロカーボン化合物を使用しないで水を発泡剤として使用し、かつ高発泡倍率とした場合でも、難燃性、耐熱性、低発煙性の優れた特徴を保ち、常温時及び熱時、湿熱時収縮の起こらないウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体の製造方法を提供することを目的としている。」(段落【0003】)
エ: 「【表1】

」(段落【0024】)
オ: 「【0025】以下に、使用した原料を明記する。
BEP:変性フェノール樹脂(保土谷化学工業(株)製、BEP2100M、OH価620)
PL-107:芳香族ポリエステルポリオール(東邦理化(株)製、OH価190)
Terol236:芳香族ポリエステルポリオール(Oxid Co.製、OH価245)
SOR-220:ソルビトールのプロピレンオキシド付加物(武田薬品工業(株)製、OH価200)
MF-78:グリセリンベースのエチレン・プロピレンオキシド付加物(武田薬品工業(株)製、OH価37)
・・・」(段落【0025】)
カ: 「【0002】
【従来の技術】従来、難燃性、耐熱性、低発煙性の優れた断熱材として、ウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体が知られている。・・・」(段落【0002】)

3.本願発明1についての検討
3-1.刊行物1に記載された発明
刊行物1には、摘示ア、イの記載からみて、「ポリイソシアナート化合物成分(A)、ポリオール成分としての変性フェノール樹脂(B)、水(C)、HLB値が22よりも大きい成分である有機ポリシロキサン共重合体と、HLB値が22以下の成分であるジメチルシリコーンオイルの混合物からなる整泡剤(D)をイソシアナート三量化触媒(E)の存在下に反応させることにより製造されたウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

3-2.本願発明1と刊行物1発明との対比
本願発明1(以下、「前者」という。)と刊行物1発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、ウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体において、後者における「イソシアナート三量化触媒(E)の存在下に反応させる」が前者における「ウレタン化触媒および/または三量化触媒(E)の存在下に反応させる」に相当することは明らかであるし、後者の整泡剤(D)である「HLB値が22よりも大きい成分である有機ポリシロキサン共重合体と、HLB値が22以下の成分であるジメチルシリコーンオイルの混合物」はSi系界面活性剤の2種類以上の混合物である点で、本願発明1の整泡剤(D)と一致するから、両者は「ポリイソシアネート化合物成分(A)、変性フェノール樹脂、水(C)、Si系界面活性剤の2種類以上の混合物からなる整泡剤をウレタン化触媒および/または三量化触媒(E)の存在下に反応させることを特徴とするウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体。」である点で一致し、以下の点で相違している。

(1)前者の変性フェノール樹脂は「ベンジリックエーテル型フェノール樹脂100重量部に対して多価アルコールまたはそのアルキレンオキシド付加物20?100重量部を添加し、減圧下に加熱して得られる変性フェノール樹脂」(以下、「本願発明1の変性フェノール樹脂」という。)であると規定されているのに対し、後者ではそのように規定されていない点(以下、これを「相違点1」という。)および、変性フェノール樹脂の含有量について前者では「全ポリオール成分に対して3重量%以上になる量」と規定されているのに対し、後者では特に規定されていない点(以下、これを「相違点2」という。)。
(2)前者の整泡剤が「異なる表面張力を有するシリコーン系界面活性剤の2種類以上の混合物からなり、そのうち表面張力の高い方の成分は22dyne/cmよりも大きい表面張力を有し、表面張力の低い方の成分は22dyne/cm以下の表面張力を有する整泡剤(D)」と規定されているのに対し、後者では「HLB値が22よりも大きい成分である有機ポリシロキサン共重合体と、HLB値が22以下の成分であるジメチルシリコーンオイルの混合物からなる整泡剤(D)」と規定されている点(以下、これを「相違点3」という。)。

3-3.相違点についての検討
3-3-1.相違点1について
摘示イ、オには、変性フェノール樹脂(保土谷化学工業(株)製、BEP2100M、OH価620)が用いられるものであることが記載されているから、刊行物1の変性フェノール樹脂として、BEP2100Mを用いることは当業者が容易になし得る事項であるし、このBEP2100Mは本願現明細書の実施例中に開示されている変性フェノール樹脂と同じである(段落【0024】参照)ことからすると、これは本願発明1の変性フェノール樹脂に相当する。
よって、刊行物1に記載の変性フェノール樹脂として、本願発明1の変性フェノール樹脂を選択することは当業者が容易になし得る事項である。

3-3-2.相違点2について
変性フェノール樹脂の使用量については、刊行物1発明において、難燃性、耐熱性、収縮性等(摘示ウ参照)を考慮して、ポリオール成分中の割合を調整し、最適範囲を設定しようとすることは当業者が容易になし得る事項である。

3-3-3.相違点3について
本願現明細書の段落【0012】には、本願発明1に使用される整泡剤のうち、表面張力が22dyne/cmよりも大きいものが有機ポリシロキサン共重合体であり、表面張力が22dyne/cm以下のものがジメチルシリコーンオイルであることが記載されていることからすると、本願発明1における整泡剤は有機ポリシロキサン共重合体とジメチルシリコーンオイルの混合物を包含するものと認められる。してみると、本願発明1の整泡剤(D)は刊行物1発明の「HLB値が22よりも大きい成分である有機ポリシロキサン共重合体と、HLB値が22以下の成分であるジメチルシリコーンオイルの混合物からなる整泡剤(D)」と重複するものと認められる。
よって、この点において本願発明1と刊行物1発明との間に差異はない。

3-4.本願発明1の効果についての検討
本願発明1の効果は、「CFCやHCFCを使用することなく、収縮の少ない、かつ難燃性、耐熱性、接着性、反応性の良好な低密度のウレタン変性ポリイソシアヌレートフォーム(PIR系)を提供することが可能となった。」(本願現明細書【0037】)とされるものであるのに対し、刊行物1発明の目的・効果は摘示ウにあるように、「クロロフルオロカーボン化合物を使用しないで水を発泡剤として使用し、かつ高発泡倍率とした場合でも、難燃性、耐熱性、低発煙性の優れた特徴を保ち、常温時及び熱時、湿熱時収縮の起こらないウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体の製造方法を提供する」ことであるから、刊行物1発明の効果は本願発明1の効果と接着性、反応性以外は共通するものであり、接着性、反応性については本願現明細書中で具体的にデータを持ってその効果を示しているわけではないので、本願発明1の効果は、刊行物1発明の効果と比較して格別顕著なのものとすることはできない。
したがって、本願発明1の効果は刊行物1の記載から当業者が容易に予測できる程度のものである。

3-5.本願発明1のまとめ
本願発明1は、当業者が刊行物1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、これについては特許を受けることができない。

3-6.回答書で提示された補正案についての検討
請求人は回答書で、本願発明1の「ウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体」を「断熱防水ボード用ウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体」に限定する補正をする機会を与えてほしい旨述べている。
しかしながら、刊行物1にはウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体が従来から断熱材として使用しうることが記載されており(摘示カ)、発泡体の断熱材をボードに用いることは自明であるし、断熱材である以上防水性もある程度有しているし、また、ウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体が耐水性を有することは周知である(例えば特開平6-172480号公報の段落【0007】参照)ことからすると、刊行物1発明のウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体を断熱防水ボード用に用いることは当業者が容易になし得る事項にすぎない。

V.むすび
以上のとおりであるから、本願発明2?5について更に検討するまでもなく、本願は、拒絶を免れないので、原査定は妥当なものである。
 
審理終結日 2008-03-17 
結審通知日 2008-04-08 
審決日 2008-11-04 
出願番号 特願2001-402111(P2001-402111)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08G)
P 1 8・ 572- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 新司  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 野村 康秀
亀ヶ谷 明久
発明の名称 ウレタン変性ポリイソシアヌレート発泡体  

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