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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1190254
審判番号 不服2006-5264  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-22 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 平成6年 特許願 第232333号「遊技機制御装置」 拒絶査定不服審判事件 〔平成8年3月12日出願公開、特開平8-66524〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1、手続の経緯】
本願は、平成6年8月31日の出願であって、平成17年10月6日付け拒絶理由通知に対して、同年11月7日付けで手続補正がされたが、平成18年2月23日付けで拒絶査定され、これに対し、同年3月22日に拒絶査定不服の審判が請求された。
合議の結果、審判長は、平成20年8月26日付けで拒絶理由通知を通知した。これに対して、同年10月17日付けで手続補正がされた。

【第2、平成20年10月17日付け手続補正についての補正却下の決定】【第2の1、補正却下の決定の結論】
平成20年10月17日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

【第2の2、補正却下の決定の理由】
【第2の2の1、本件補正前及び本件補正後の本願発明】
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので、特許請求の範囲については、以下のように補正された。

(本件補正前請求項1)
遊技機の各部を制御することにより一連の遊技を進行させる遊技プログラムを外部記憶手段から読み込んで、該遊技プログラムを実行可能な形式に変換し、該変換した遊技プログラムの実行を制御する遊技プログラム制御手段を備え、
コンパイラ及び遊技規定に関する遊技関数を内蔵ROMに格納し、
前記遊技プログラム制御手段は、
前記遊技プログラムに基づいて前記遊技機の各部を制御する中央処理装置の動作を制御するオペレーティング・システムから成り、
該オペレーティング・システムは、
前記内蔵ROMに格納されると共に、外部記憶手段から前記遊技プログラムを読み込み、前記遊技関数を使用しコンパイラによって遊技プログラムをコンパイルして、当該遊技プログラムを中央処理装置が実行可能とし、
前記遊技関数を利用する形式で遊技プログラムを構成し、該遊技プログラムを外部記憶手段に格納するようにしたことを特徴とする遊技機制御装置。

(本件補正後請求項1)
遊技機の各部を制御することにより一連の遊技を進行させる遊技プログラムを外部記憶手段から読み込んで、該遊技プログラムを実行可能な形式に変換し、該変換した遊技プログラムの実行を制御する遊技プログラム制御手段を備え、
コンパイラ及び遊技規定に関する遊技関数を内蔵ROMに格納し、
前記遊技プログラム制御手段は、
前記遊技プログラムに基づいて前記遊技機の各部を制御する中央処理装置の動作を制御するオペレーティング・システムから成り、
該オペレーティング・システムは、
前記内蔵ROMに格納されると共に、外部記憶手段から前記遊技プログラムを読み込み、前記遊技関数を使用しコンパイラによって遊技プログラムをコンパイルして、当該遊技プログラムを中央処理装置が実行可能とし、
前記遊技関数は、前記遊技プログラム制御手段を組み込んだ素子と同一パッケージの内蔵ROMに内蔵されて外部から直接にはアクセスできない構成であるとともに、前記外部記憶手段は、遊技規定に関する処理プログラムを含まない構成であり、
前記遊技関数を利用する形式で遊技プログラムを構成し、該遊技プログラムを外部記憶手段に格納するようにしたことを特徴とする遊技機制御装置。 (下線部は補正箇所である。)

【第2の2の2、本件補正目的】
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「遊技関数」と「内蔵ROM」の構成について限定的に減縮し、さらに「外部記憶手段」と遊技「プログラム」の構成について限定的に減縮したものである。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

【第2の2の3、独立特許要件】
本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか即ち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて以下に検討する。

(引用発明)
平成20年8月26日付け拒絶理由通知に引用された刊行物である特開昭53-144213号公報には、次のことが記載されている。

a.(第1頁左下欄第2行?第2頁左上欄第14行)
「発明の名称 プログラム可能なテレビゲーム及び学習方式
特許請求の範囲
1.マイクロプロセッサユニットと、該マイクロプロセッサユニットに接続された記憶手段と、上記マイクロプロセッサユニットに接続され、メモリカートリッジを取りはずし可能に受け入れる手段とを有し、上記メモリカートリッジは、記憶領域を有し、該記憶領域は、ゲーム又は学習のための手順をマイクロプロセッサに実行させるための命令を含んでいることを特徴とするプログラム可能なテレビゲーム及び学習方式。
発明の詳細な説明
本発明は、マイクロプロセッサにより制御されるテレビゲーム及び学習方式に関するもので、特に、かかる方式における機能を変更するための新規且つ改良された手段に関するものである。
テレビゲーム及び学習方式のコントローラとしてマイクロプロセッサが出現するに伴い、一般家庭のユーザに適合される多機能のシステムを現実に、提供できるようになった。しかしながら従来のマイクロプロセッサを用いたテレビゲーム方式は、ユーザからみて融通性に難点がある。また、この方式は、ユーザが、任意にその機能を拡張するために、部品を追加したり、ユーザが作成したプログラムを入力できるように構成されていない。
本発明の目的は、ゲームの手順又は学習の手順を決定するプログラムを含んでいる交換可能なカートリッジを用いたテレビゲーム及び学習方式を提供することにある。
本発明の他の目的は、ユーザが簡単な方法でプログラムを入力できる家庭用テレビゲーム及び学習方式を提供することにある。
本発明の他の目的は、この種の分野に熟練していない人でも自分自身でプログラムを作り、ゲーム又は学習を容易に実行できるような家庭用のテレビゲーム及び学習方式を提供することにある。
本発明の方式は、マイクロプロセッサと、高級なプログラム言語翻訳器を基本ユニットとして用いている。この基本ユニットは又、キーボードや、他の制御スイッチを含んでいる。該基本ユニットは、ユーザプログラムを格納するメモリカートリッジを受け入れ得るように構成される。このメモリカートリッジは、ROM(Read only memory)であっても、RAM(Random access memory)であってもよい。両方のタイプのカートリッジは交換可能にできる。RAMカートリッジは、ユーザがカセットテープレコーダや、キーボードを用いて書いたユーザプログラムを持つことができる。ROM及びRAMカートリッジは共に、高級言語で書かれたユーザプログラムを格納する。基本ユニットの翻訳器は、この言語をマイクロプロセッサの機械語に翻訳する。」

b.(第2頁左上欄第18行?同頁右上欄第12行)
「第1図は本発明の概念図を示すもので 、ユーザプログラムのカートリッジと、補助的な入力装置との両方が用いられるようになっている。この方式は、基本ユニット13を有し、該ユニットに、ユーザプログラムカートリッジ25が適当なカートリッジプラグ29によって接続される。カートリッジ受入部27は、上記カートリッジプラグ29を受け入れるように基本ユニットに設けられている。基本ユニット13は、16キーのキーボード15を有しており、このキーボードは、ユーザがデータを入力するために用いられる。更に、基本ユニット13は電源スイッチ17及び制御スイッチ19を有する。コード21は家庭用電源から基本ユニットに電力を供給する。ケーブル23は、基本ユニットを家庭用テレビに接続する。」

c.(第2頁右上欄第18行?同頁右下欄第17行)
「ユーザプログラムカートリッジ25はメモリに格納されているプログラムによってテレビゲーム及び学習方式の機能を指令する。プログラムカートリッジに用いられるメモリ装置は固体集積回路で構成することが望ましく、ROMでもRAMでもよい。ROMを含んでいるユーザプログラムカートリッジ25は複数のゲームプログラム又は、いくつかの学習手順を格納する。実行されるべき所定の手順(シーケンス)はユーザにより、制御スイッチ19を操作することにより選択される。もし、ユーザが将来異なるゲーム又は学習手順を実行したいと望んだ時には、別のユーザプログラムカートリッジ25を購入することができる。かくしてユーザは、ユーザプログラムのライブラリをもつことができ、必要に応じて任意にゲーム或いは学習を行うことができる。
このシステムは、これらのユーザプログラムカートリッジの便利さ及び価格の点において非常に有効な方式である。ユーザプログラムカートリッジ25のサイズ及び価格を低減するためには、それに含まれるメモリの容量をできるだけ小さくしなければならない。これは、ユーザプログラムとしてベーシックプログラム(Basic program)のように、機械語よりも高級な言語に書かれたプログラムを用いることにより解決できる。このためにシステムの一部として、翻訳プログラムが要求されるが、そのようなシステム構成をもつことの利点は、翻訳器を用いることによる不利益をはるかにしのぐものである。
例えば、ユーザプログラムは、カートリッジ25に高級言語で格納されているので容易にそれを変更したり、機能を高めるようにすることができる。主コンピュータシステムはユーザプログラムカートリッジ25のいかなるプログラムによつても阻害されることはない。というのはユーザプログラムは必ずシステムの翻訳器を通して実行されるからである。ユーザプログラムカートリッジ25は、高級言語のプログラムを含んでいるのでそのプログラムは同一の翻訳器を有する他のシステムにより実行することもできる。」

d.(第3頁左下欄第17行?第4頁左上欄第6行)
「第2図は本発明の一実施例のブロック図である。基本ユニット13は処理モジュール45、システムメモリモジュール47、カートリッジソケット27、文字及び色パターン表示回路49,51,53,55、音声発生装置57、入力部61、出力部59、キーボード15及び制御スイッチ19を有している。処理モジュール45はシステムの他のモジュールと、アドレスバス63、データバス65及び制御バス67を含むバスにより接続されている。
処理モジュール45はINTEL 8080Aという公知のマイクロプロセッサユニットを基にして構成される。この処理モジュールは、更に水晶クロック発生器、デコーダ及び電源の切入制御回路を含む。
アドレスバス63は、直接に8080マイクロプロセッサユニット(図示省略)と接続される。アドレスバスは8080マイクロプロセッサとシステムメモリモジュール47との間を接続している16本のライン(図示省略)を有する。アドレスバス63は更にカートリッジソケット27、パターン及び文字メモリ制御装置49、出力ポート59及び入力ポート61に接続される10本のライン(図示省略)を含む。
データバス65は処理モジュール45の制御デコーダ回路に接続された8本のラインを含み、これらのラインはシステムプログラムモジュール47、カートリッジソケット27、文字及びパターン制御装置49、出力ポート59及び入力ポート61に接続されている。」

e.(第4頁右上欄第5?12行)
「システムメモリ47は、読み出し専用部ROM Aと、ランダムアクセス部RAM Aとを有する固体集積回路であることが望ましい。そのようなメモリの構成及びアドレス制御は良く知られており、ここでは説明を省略する。メモリ47はROM Aの中にシステムプログラムと、翻訳器を含んでいる。RAM Aはシステムの機械語コードの作業エリアである。」

f.(第4頁右上欄第18行?第5頁左上欄第8行)
「ダイレクトメモリアクセス制御装置(以下DMAと略す)49、DMA RAM51、映像発生装置53及びVHF変調器55はテレビ91に表示するための色パターン及び文字の信号を発生する。テレビに表示するための色パターン及び文字信号を発生する装置はこの技術分野において良く知られている。そのような従来技術が上記の機能を実現するために用いられ得る。しかしながら、DMA制御装置49、DMA RAM51及び映像発生器、VHF変調器との関連装置は、1977年4月6日に米国に出願された出願番号785100(対応日本出願第 号)に記載されたものを使用することが望ましい。
出力ポート59及び入力ポート61は標準のインターフェイス装置である。出力ポート59はアドレスバス63、データバス65及び制御バス67と、映像発生器53、音声発生器57及び16キーのキーボード15との間のインターフェイスの役割をする。すなわち、出力部ポートはライン83を通して信号を音声発生部57に供給する。音声発生部57は音声信号をライン89に発生し、これがCRT上の表示出力に伴う音声信号を発生するためにテレビに供給される。出力ポート59はライン81を通して映像発生器53にアドレス信号を供給する。更に出力ポート59はI/O書込み信号をライン85を通してキーボード15に供給する。入力ポート61はキーボード15によって発生された信号と、処理モジュール45にライン87を介して接続されている2個の制御スイッチ19との間のインターフェイスの役割をする。
次に第3図を参照してメモリカートリッジ25の実施例について説明する。このメモリカートリッジ25はROM B91を有している。このメモリ91はカートリッジプラグ29に接続され、プラグ29は第2図のカートリッジソケット27とはめ合わされる。カートリッジプラグ29を通して10本のラインよりなるアドレスバス93がROM B91に接続される。
データバス97は8本のラインからなり、ROM91から情報をとりだすためにカートリッジプラグ29に接続されている。制御バス95はメモリ制御回路に読み出し信号を公知の方法で供給する。
第4図はメモリカートリッジ31の別の実施例を示す。このカートリッジは、ランダムアクセス部RAM C99Aと、読み出し専用部ROM C99Bの両方を有する固体メモリ99を具えている。カートリッジプラグ33は第2図におけるカートリッジソケット27とはめ合わされる。カートリッジプラグ33は10本のアドレスバス101を通してカートリッジメモリ99に接続されている。」

g.(第5頁左下欄第2?16行)
「第5図はメモリの利用形態を表わすマップで、第2図のシステムにおける記憶領域の機能を示している。各記憶領域の容量は勿論例示的なものであり、任意に決定し得る。このシステムにおいて最も大きいメモリユニットは読み出し専用ユニットROM Aであり、第2図におけるシステムプログラムの格納用メモリ47の一部を構成する。このROM Aは6Kビットのものが望ましく、変更をしない形でシステムプログラムを格納する。システムプログラムは本質的に、制御ルーチン、システムのサブルーチン及びカートリッジメモリに格納された高級言語プログラムを翻訳するための翻訳ルーチンよりなる。
説明の便宜上、翻訳器は、ベーシック翻訳器(Basic interpreter)であるものとする。」

h.(第8頁右上欄第9行?第9頁右上欄第5行)
「第6図は第2図示のシステムの一般的な機能の流れを示す。実線112は制御情報の流れを示し、点線114はデータの流れを示す。電源スイッチオンの信号113又はオフの信号115がシステムメモリROM Aに格納された初期値設定サイクル117(initialization cycle)をトリガーする。この初期値設定サイクルは構成チェックルーチン(configuration check routine)を含む。この構成チェックルーチンは読み出し専用メモリカートリッジがとりつけられるのか、或いはプログラム可能なランダムアクセスメモリカートリッジがシステムにとりつけられるのかを決定する。
もしプログラム可能なカートリッジ、すなわちランダムアクセスメモリカートリッジが挿入されると、カートリッジのROM Cに格納されたプログラム読み出しルーチン121が開始される。プログラム読み出しルーチン121は命令に基ずいて、キーボード135又はテープレコーダ137からデータを受け入れるようにする。キーボード135又はテープレコーダ137からのデータは、ベーシックコードのような高級言語で記述されたユーザプログラムである。ユーザプログラムがこのようにしてカートリッジのエリア125に入力されるとすると、今、一旦ユーザプログラムが入力されると、プログラムルーチンはシステムメモリのROM Aに格納されている翻訳ルーチン123を実行可能にする。もし、カートリッジが読み出し専用メモリ又はプログラム不可能なメモリを含む場合には、構成チェックルーチン119は翻訳ルーチン123に直接いくことになる。翻訳器はその格納領域、例えばカートリッジのROM B又はROM Cの高級言語のユーザプログラムをとりだし、プログラムの各ステートメントを機械語に翻訳し、TV表示装置139に直接データを供給する。
TV表示装置139は、翻訳器123からデータを受け入れる他、キーボード135又はテープレコーダ137からデータを入力しながらプログラム読み出しルーチン121の実行結果のデータを直接受け入れることができる。
このTV表示装置139は、プログラム編集ルーチン131の実行結果のデータを受け入れ、又、キーボード135からのデータを監視する。編集ルーチン131はROM Cに格納されている。TV表示装置にデータを供給する他、その編集ルーチンは、ROM B及びRAM Cのユーザプログラムエリアにデータを供給する。TV表示装置139はプログラムリストルーチンの結果のデータを受け入れる。このルーチンはROM B又はRAM Cのユーザプログラム領域125から入力したデータを用いる。プログラムリストルーチン129はROM Aに格納されている。このプログラムリストルーチン129はROM Cに格納されているカセット読み出し/書き込みルーチン133の結果のデータの受け入れを監視する。このルーチン133ではカセットレコーダ137にデータを送出したり受信したりする。
16キーのキーボード141はROM Aにおける翻訳ルーチン123及び命令読み出しルーチン127の両方にデータを供給する。命令読み出しルーチン127はいろいろな命令信号を発生する。即ち、翻訳器123に再動作(rerun)信号を、プログラムリストルーチン129にリスト信号を、プログラム編集ルーチン131に変更信号を、又、カセット読み出し/書き込みルーチン133に指令信号をそれぞれ送出する。翻訳器から命令信号を受け入れる他に、命令読み出しルーチン127はプログラム編集ルーチン131、カセット読み出し/書き込みルーチン133及びプログラムリストルーチン129から指示された動作が終了したことを示す信号に応答する。
ユーザプログラム領域125はキーボード135からプログラム編集ルーチン131を介して、又テープレコーダ137からカセット読み出し/書き込みルーチン133を介してシステムプログラムを受け入れる。」

以上の記載から、上記引用刊行物には、次の発明(以下、引用発明という)が開示されていると認められる。

「テレビゲームの映像発生器53や音声発生器57を制御することによりテレビゲームを進行させるテレビゲームの手順をマイクロプロセッサに実行させるための命令を含んだユーザプログラムをユーザプログラムカートリッジ25から読み込んで、テレビゲームのユーザプログラムを実行可能な形式に変換し、テレビゲームの実行を制御する基本ユニット13を備え、翻訳器と制御ルーチン、システムのサブルーチン及び高級言語プログラムを翻訳するための翻訳ルーチンよりなるシステムプログラムを含んでいるROM Aを備え、システムプログラムは前記ユーザプログラムカートリッジ25のいかなるプログラムによっても阻害されることがないものであり、ユーザプログラムをユーザプログラムカートリッジ25に格納するようにしたテレビゲーム。」

(本願補正発明と引用発明との対比、一致点、相違点)
上記両発明を比較する。

(両発明の対比)
a.引用発明の「テレビゲームの映像発生器53や音声発生器57を制御することによりテレビゲームを進行させるテレビゲームの手順をマイクロプロセッサに実行させるための命令を含んだユーザプログラムをユーザプログラムカートリッジ25から読み込んで、テレビゲームのユーザプログラムを実行可能な形式に変換し、テレビゲームの実行を制御する基本ユニット13」は、本願補正発明の「遊技機の各部を制御することにより一連の遊技を進行させる遊技プログラムを外部記憶手段から読み込んで、該遊技プログラムを実行可能な形式に変換し、該変換した遊技プログラムの実行を制御する遊技プログラム制御手段」に相当する。

b.引用発明の「翻訳器」及び「ROM A」は、それぞれ、本願補正発明の「コンパイラ」及び「内蔵ROM」に相当する。また、引用発明の「システムのサブルーチン」は、本願補正発明の「遊技規定に関する遊技関数」と、「遊技を行うための共用手順」で共通する。そして、引用発明の「ROM A」が「翻訳器」や「システムのサブルーチン」等を格納したものであること、及び「システムのサブルーチン」は「ROM A」に内蔵されていることも明らかである。

c.引用発明の「システムプログラム」、「ユーザプログラム」、「ユーザプログラムカートリッジ25」及び「マイクロプロセッサ」は、本願補正発明の「オペレーティング・システム」、「遊技プログラム」、「外部記憶手段」及び「中央処理装置」に相当する。そして、引用発明の「システムプログラム」が、本願補正発明と同様の処理を行って「ユーザプログラムをマイクロプロセッサが実行可能とし」ていることは明らかである。

d.引用発明の「システムのサブルーチン」は「システムプログラム」の一部であり、該「システムプログラム」はユーザプログラムカートリッジ25のいかなるプログラムによっても阻害されることがないものである。そして、阻害されることのない理由は、(引用発明)の欄で摘記したc.の記載によれば「ユーザプログラムは必ずシステムの翻訳器を通して実行されるから」であり、他に「システムプログラム」にアクセスする部分を引用発明は有していないので、「システムのサブルーチン」は、外部から直接にはアクセスできない構成であるといえる。

e.引用発明の「テレビゲーム」は、本願補正発明の「遊技機制御装置」に相当している。

(一致点)
以上のとおりであるから、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致している。
「遊技機の各部を制御することにより一連の遊技を進行させる遊技プログラムを外部記憶手段から読み込んで、該遊技プログラムを実行可能な形式に変換し、該変換した遊技プログラムの実行を制御する遊技プログラム制御手段を備え、
コンパイラ及び遊技を行うための共用手順を内蔵ROMに格納し、
前記遊技プログラム制御手段は、
前記遊技プログラムに基づいて前記遊技機の各部を制御する中央処理装置の動作を制御するオペレーティング・システムから成り、
該オペレーティング・システムは、
前記内蔵ROMに格納されると共に、外部記憶手段から前記遊技プログラムを読み込み、コンパイラによって遊技プログラムをコンパイルして、当該遊技プログラムを中央処理装置が実行可能とし、
前記遊技を行うための共用手順は、内蔵ROMに内蔵されて外部から直接にはアクセスできない構成であり、
前記遊技プログラムを外部記憶手段に格納するようにした遊技機制御装置。」

(相違点)
そして、本願補正発明と引用発明とは、以下の4点で相違している。

(相違点1:本願補正発明の「内蔵ROM」の格納内容について)
本願補正発明の「内蔵ROM」には、「遊技規定に関する遊技関数」が格納されているのに対し、引用発明の「ROM A」には、「システムのサブルーチン」が格納されている点。

(相違点2:本願補正発明の「遊技プログラム」構成について)
本願補正発明の「遊技プログラム」は、遊技関数を利用する形式で構成されているのに対し、引用発明の「ユーザプログラム」は、どのように構成されているか明らかでない点。

(相違点3:本願補正発明の「パッケージ」の構成について)
本願補正発明の「遊技プログラム制御手段を組み込んだ素子」と「内蔵ROM」とは同一パッケージになっているのに対し、引用発明の基本ユニット13を構成する「マイクロプロセッサ」等と「ROM A」が同一パッケージになっているか否か不明である点。

(相違点4:本願補正発明の「外部記憶手段」の格納内容について)
本願補正発明の「外部記憶手段」は、「遊技規定に関する処理プログラムを含まない構成」であるのに対し、引用発明の「ユーザプログラムカートリッジ25」は、どのような処理プログラム含むか含まないかが明らかではない点。

(上記相違点1?4に関する当審合議体の判断)
(相違点1について)
最初に、一般的なコンピュータ技術に関して述べる。
「関数」、「サブルーチン」共に、予めよく用いられる「ある手順」を格納しておくものである。そして、プログラムにおいては、「関数」や「サブルーチン」を必要なときに呼び出して「ある手順」を行わせ、その処理結果のみを得て、次の手順に進むように利用されている。即ち、本願補正発明の「遊技規定に関する遊技関数」と、引用発明の「システムのサブルーチン」のプログラムの中での利用のされ方に格別の差異はなく、本願補正発明の「遊技関数」が「遊技規定に関する」ものであるのに対し、引用発明の「システムのサブルーチン」が遊技のどのような部分に関するものであるかが不明という点で差異がある。
ところで、本願補正発明が具体的に利用される分野である、パチンコ遊技機等の法的規制の対象となる遊技機においては、法的に遊技規定が定められており、本願出願前から、この種の遊技機製造者の知るところである。そして、遊技規定が様々な遊技プログラムに共用される規定である点を考慮すると、引用発明のテレビゲームにおいて、このような遊技規定のある遊技機として利用する際に、システムのサブルーチンを遊技規定に関するものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
上記相違点1についての項で述べたように、引用発明を、本願補正発明が具体的に利用される分野である、パチンコ遊技機等の遊技規定のある遊技機として利用する際、システムのサブルーチンとして「遊技規定に関する遊技関数」を格納することは、当業者が容易に成し得ることである。そして、その場合、ユーザプログラムカートリッジ25に格納されるユーザプログラムを、該「遊技規定に関する遊技関数」を利用する形式で構成することは、当業者が当然行う事項である。

(相違点3について)
本願補正発明の「遊技プログラム制御手段を組み込んだ素子」と「内蔵ROM」とが同一パッケージになっているという構成は、少なくとも、両義に解釈される。第1には、「遊技プログラム制御手段を組み込んだ素子」と「内蔵ROM」とが、例えば、同一の筐体等の内部に格納されている構成である。第2には、「遊技プログラム制御手段を組み込んだ素子」と「内蔵ROM」とが、例えば、ワンチップ、即ち、半導体の同一基板上に形成されている構成である。
上記第1の構成と解釈すると、引用発明の基本ユニット13を構成する「マイクロプロセッサ」等と「ROM A」とは、同一の筐体である基本ユニット13の内部に格納されていることは、引用刊行物の第1図、第2図、及び、それらに関する記載から明らかであるから、上記相違点3は、実質的な差異にはならないか、適宜成し得る設計事項程度のものでしかない。
上記第2の構成と解釈すると、遊技機等の分野においても、ワンチップ上に中央処理装置とROM等の内蔵メモリとを形成した、所謂、ワンチップマイコンが、本願出願前から周知技術として採用されていることであるから、引用発明の基本ユニット13を構成する「マイクロプロセッサ」等と「ROM A」とを、半導体の同一基板上に形成することは、やはり、適宜成し得る設計事項程度のものでしかない。
結局、上記相違点3も、当業者にとって、格別困難な事項と判断することはできない。

(相違点4について)
上記相違点2についての項で述べたように、引用発明を、本願補正発明が具体的に利用される分野である、パチンコ遊技機等の遊技規定のある遊技機として利用する際、ユーザプログラムカートリッジ25に格納されるユーザプログラムを、本願補正発明のように「遊技規定に関する遊技関数」を利用する形式で構成することは、当業者が当然行う事項である。遊技規定に関する処理は遊技関数に任せることができるので、ユーザプログラムに遊技規定に関する処理プログラムが必要なくなることも、当業者にとって明らかである。そうした場合に、引用発明のユーザプログラムカートリッジ25に格納されるユーザプログラムを「遊技規定に関する処理プログラムを含まない構成」とすることも、当業者が当然行う事項である。

(補足、本願補正発明の効果:改竄防止について)
上記引用刊行物には、その第2頁右下欄第10?14行に「主コンピュータシステムはユーザプログラムカートリッジ25のいかなるプログラムによつても阻害されることはない。というのはユーザプログラムは必ずシステムの翻訳器を通して実行されるからである。」と記載されている。このことから観て、ユーザプログラムによって、システムのサブルーチンが改竄されることはないから、改竄防止の効果も格別のものではない。

(上記各相違点についての判断のまとめ)
以上、本願補正発明は、その効果も格別のものではなく、上記相違点1?4について判断したように、引用発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(補正却下の決定のむすび)
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【第3、本願発明について】
【第3の1、本願発明の認定】
平成20年10月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は(以下、「本願発明」という。)、平成17年11月7日付の手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「遊技機の各部を制御することにより一連の遊技を進行させる遊技プログラムを外部記憶手段から読み込んで、該遊技プログラムを実行可能な形式に変換し、該変換した遊技プログラムの実行を制御する遊技プログラム制御手段を備え、
コンパイラ及び遊技規定に関する遊技関数を内蔵ROMに格納し、
前記遊技プログラム制御手段は、
前記遊技プログラムに基づいて前記遊技機の各部を制御する中央処理装置の動作を制御するオペレーティング・システムから成り、
該オペレーティング・システムは、
前記内蔵ROMに格納されると共に、外部記憶手段から前記遊技プログラムを読み込み、前記遊技関数を使用しコンパイラによって遊技プログラムをコンパイルして、当該遊技プログラムを中央処理装置が実行可能とし、
前記遊技関数を利用する形式で遊技プログラムを構成し、該遊技プログラムを外部記憶手段に格納するようにしたことを特徴とする遊技機制御装置。」

【第3の2、引用発明】
上記平成20年8月26日付けの拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項、及び、その引用刊行物に開示されていると認められる引用発明は、上記【第2】の(引用発明)の欄に記載したとおりである。

【第3の3、対比・判断】
本願発明は、上記【第2】で検討した本願補正発明の構成の限定事項を削除したものである。そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記【第2】に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第3の4、むすび】
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2008-11-07 
結審通知日 2008-11-10 
審決日 2008-11-21 
出願番号 特願平6-232333
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
森 雅之
発明の名称 遊技機制御装置  
代理人 鹿嶋 英實  

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