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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1190310 |
審判番号 | 不服2005-23090 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-01 |
確定日 | 2009-01-08 |
事件の表示 | 特願2001-117466「二輪車のライディングシミュレーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月25日出願公開、特開2002-311811〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成13年4月16日の出願であって、平成17年7月13日の審査請求時に手続補正書が提出され、平成17年8月4日付け拒絶理由通知に対して、平成17年10月5日付けで意見書及び手続補正書がされ、その後、平成17年10月25日付けで拒絶の査定がなされ、これに対して平成17年12月1日付けで審判請求がなされたものである。 2.本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明は、平成17年10月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたところの以下のものと認める。 【請求項1】 「入力装置に対する操作者の操作に基づいた入力情報と、仮想車両の模擬空間内での位置情報と、模擬的な背景情報をもとに、前記操作者に対して、模擬視界を表示する手段を備える二輪車のライディングシミュレーション装置において、 操作者の着座部を交換可能とすると共に、左手操作レバーを、クラッチレバーとしての使用形態と後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態とで変更可能としたことを特徴とする二輪車のライディングシミュレーション装置。」 以下、「本願発明」という。 3.当審の判断 3-1 引用例:特開平10-78748号公報の記載内容 拒絶査定にいたった拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された特開平10-78748号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。 【特許請求の範囲】 「【請求項1】搭乗者が操作可能な模擬二輪車と、 前記模擬二輪車を実際の二輪車の挙動に則して駆動する駆動機構と、 前記模擬二輪車および前記駆動機構が装着される基台と、 前記模擬二輪車上の搭乗者の操作および動きに応じて前記駆動機構を制御することにより、該模擬二輪車の動作を制御する制御機構と、 前記基台と前記制御機構とを着脱自在な連結機構と、 を備えることを特徴とする二輪車のライディングシミュレーション装置。 【請求項2】請求項1記載の装置において、前記連結機構は、前記基台側の信号線と前記制御機構側の信号線とを互いに接続させるコネクタと、 前記基台と前記制御機構とを互いに位置決めする位置決め手段と、 前記基台と前記制御機構との平行度を維持する平行度維持手段と、 を備えることを特徴とする二輪車のライディングシミュレーション装置。 【請求項3】請求項2記載の装置において、前記位置決め手段は、前記基台または前記制御機構に設けられるローラと、 前記制御機構または前記基台に設けられ、前記ローラが嵌合するローラ受け部材と、 を備えることを特徴とする二輪車のライディングシミュレーション装置。 【請求項4】請求項2記載の装置において、前記平行度維持手段は、前記基台または前記制御機構に設けられ、該制御機構または該基台に突き当て支持される二以上の突起部材を備えることを特徴とする二輪車のライディングシミュレーション装置。 【請求項5】請求項1記載の装置において、前記基台は、該基台を床上で移動させるための移動手段と、 該基台を前記床上で移動不能に固定するための固定手段と、 を備えることを特徴とする二輪車のライディングシミュレーション装置。」 段落【0001】「【発明の属する技術分野】本発明は、模擬二輪車を使用してライディングシミュレーションを行う二輪車のライディングシミュレーション装置に関する。」 段落【0002】「【従来の技術】従来から、人間が搭乗して操作可能な模擬二輪車と、所望の走行状態を画面に表示するCRTディスプレイとを組み合わせたライディングシミュレーション装置が、遊戯用として、あるいは二輪車の運転教育用として使用されている。」 段落【0003】「例えば、特開平4-51076号公報に開示されているように、上に設けられ、前後、左右および上下方向に移動自在な移動台と、この移動台の動きを駆動する駆動手段と、前記移動台上に設置され、人間が搭乗して操作可能な模擬二輪車と、該模擬二輪車上の搭乗者の操作ならびに動きに応じて該駆動手段を制御する制御手段とを具備するライディングシミュレーション装置が知られている。」 段落【0004】「【発明が解決しようとする課題】ところで、この種のライディングシミュレーション装置を二輪車の運転教育に使用する場合、多種の車格、例えば50cc、125cc、250cc、400ccおよび750cc等の種々の二輪車に対応できることが望まれている。」 段落【0005】「しかしながら、上記の従来技術では、移動台、駆動手段、模擬二輪車および制御手段が一体的に組み込まれており、単一の車格にしか対応することができない。従って、車格が異なる毎に、専用のライディングシミュレーション装置を用意しなければならず、作業用および設置用スペースが拡大するとともに、設備費が相当に高騰するという問題が指摘されている。」 段落【0006】「本発明は、この種の問題を解決するものであり、種々の異なる車格の二輪車に容易に対応することができ、経済的で汎用性に優れる二輪車のライディングシミュレーション装置を提供することを目的とする。」 段落【0007】「【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するために、本発明は、搭乗者が操作可能な模擬二輪車およびこの模擬二輪車を駆動する駆動機構が基台に装着されており、この基台が、前記模擬二輪車上の搭乗者の操作および動きに応じて前記駆動機構を制御する制御機構に対し連結機構を介して着脱自在に構成される。このため、異なる車格の模擬二輪車を用いる際には、所望の模擬二輪車およびその駆動手段が装着された基台を連結機構を介して制御機構に装着すればよい。これにより、同一の制御機構で種々の異なる車格の模擬二輪車に容易に適用することができ、極めて経済的であるとともに、汎用性に優れる。」 段落【0008】「また、連結機構は、コネクタ、位置決め手段および平行度維持手段を備えており、基台が制御機構に結合されると、前記基台と前記制御機構とが相互に高精度に連結される。その際、位置決め手段がローラとこのローラが嵌合するローラ受け部材とを備える一方、平行度維持手段が二以上の突起部材を有しており、簡単な構成で着脱作業が高精度に遂行される。」 段落【0009】「さらにまた、基台には、床上を移動するための移動手段が取り付けられており、この基台の取り扱い性が向上する。しかも、基台が制御機構に連結された際には、固定手段を介して該基台が移動不能に固定される。」 前記段落【0002】、【0003】の記載によれば、本願出願前から、人間が搭乗して操作可能な模擬二輪車と、所望の走行状態を画面に表示するCRTディスプレイとを組み合わせたライディングシミュレーション装置が、存在しており、例示される特開平4-51076号公報に開示されているような、基台上に設けられ、前後、左右および上下方向に移動自在な移動台と、この移動台の動きを駆動する駆動手段と、前記移動台上に設置され、人間が搭乗して操作可能な模擬二輪車と、該模擬二輪車上の搭乗者の操作ならびに動きに応じて該駆動手段を制御する制御手段とを具備するライディングシミュレーション装置が知られている。 しかしながら、段落【0004】、【0005】に記載されるように、多種の車格、例えば50cc、125cc、250cc、400ccおよび750cc等の種々の二輪車に対応するものは存在しておらず、段落【0006】に記載されているように、当該引用例においては、種々の異なる車格の二輪車に容易に対応することができ、経済的で汎用性に優れる二輪車のライディングシミュレーション装置を提供することが目的とされている。 そして、段落【0007】?【0009】の記載を参照するに、異なる車格の模擬二輪車を用いる際には、所望の模擬二輪車およびその駆動手段が装着された基台を連結機構を介して制御機構に装着することで、同一の制御機構により種々の異なる車格の模擬二輪車に対応できるものであることが把握できる。 してみるに、当該引用例には、前記特許請求の範囲に記載の構成を備え、前記段落【0007】?【0009】に記載される特徴を加えた、以下の発明が記載されている。 「搭乗者が操作可能な模擬二輪車と、 前記模擬二輪車を実際の二輪車の挙動に則して駆動する駆動機構と、 前記模擬二輪車および前記駆動機構が装着される基台と、 前記模擬二輪車上の搭乗者の操作および動きに応じて前記駆動機構を制御することにより、該模擬二輪車の動作を制御する制御機構と、 前記基台と前記制御機構とを着脱自在な連結機構と、 を備えた二輪車のライディングシミュレーション装置。」 (以下、これを「引用発明」という。) 3-2 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 シミュレーション装置には、自動車・電車等の地上を走行するもの、飛行機・ヘリコプター・宇宙船等の飛行するもの、船舶・潜水艦等の海上・海中を航行するもの等の各種のものが存在する。 そして、これらシミュレーション装置は、模擬機体に搭乗した者の操作に応じた走行・飛行・航行する状態を画面に映し出して、実機の操作を模擬体験するものであって、通常、実機における駆動系は備えておらず、搭乗者が操作する操作装置を備え、これから操作に基づいた入力情報を受け取り、この入力情報に基づいて、模擬機体の姿勢を適宜にシミュレートする駆動機構と共に、画面にはそれに応じた状況を写し出す機構及びこれらを制御する制御装置を備えているものである。 また、操作者は、写し出された画面に応じて操作を行うのであり、いわば模擬空間内での位置に応じて操作を行うこととなる以上、前記制御装置においては模擬空間内で位置情報に基づいた制御が行われるものである。 よって、引用発明における「模擬二輪車」は「搭乗者が操作可能な」とあるのみで、当該操作が何をもって行われるかの詳細は特定されていないものの、「二輪車」を想定した場合の操作をシミュレートする以上、通常において搭乗者が操作すべく実車両が備えているレバー、ペダル、或いはスイッチ類等は当然に備えられているものといえる。 また、引用発明では模擬二輪車を備えるものの、模擬視界を与える手段の特定がないが、先行技術とするライディングシミュレーション装置において、所望の走行状態を画面に表示するCRTディスプレイを備えていることが記載されている以上、同様に、操作者がみるべき画面を表示する手段、すなわち、模擬視界を表示する手段を当然に備えているものといえる。 すると、引用発明と本願発明とは、以下の点で一致している。 《一致点》 「入力装置に対する操作者の操作に基づいた入力情報と、仮想車両の模擬空間内での位置情報をもとに、前記操作者に対して、模擬視界を表示する手段を備える二輪車のライディングシミュレーション装置。」 他方、引用発明と本願発明とでは、以下の点で相違している。 《相違点1》 本願発明においては、模擬視界を表示する手段が、「模擬的な背景情報をもとに」表示するものと特定されているのに対して、 引用発明においては、この特定を有するか定かでない点。 《相違点2》 本願発明においては、「操作者の着座部を交換可能とすると共に、左手操作レバーを、クラッチレバーとしての使用形態と後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態とで変更可能とした」との特定を有するのに対して、 引用発明においては、この特定を有するものとはいえない点。 3-3 判断 前記相違点1について検討する。 シミュレーション装置の技術分野において模擬視界を表示するに際しては、仮想的な空間を準備するもの、実際の地図に基づく空間を用いるもの等が存在し、また、表示手法に関しても、予め道路、建物、樹木、山等を模擬した絵・画像を準備してこれらを合成して画面を構成するもの、或いは、実際に走行して撮影した情景を加工して表示するもの等、各種のものが存在する。 してみるに、相違点1に係るように「模擬的な背景情報をもとに」表示を行うことは、当業者であれば、用途要請に応じて適宜に採用し得た程度のことである。 前記相違点2について検討する。 引用例においては、シミュレーション装置の技術分野において、シミュレートの対象となる機体の設定を小規模な範囲で変更する際に、模擬自動車、模擬飛行機等の全体を交換するのではなく、一部の装備のみを交換する事項は、従来から周知である(例えば、特開平5-11685号公報、特開平8-117442号公報等を参照。)。 また、どのような仕様の機体を想定した装備として構成するかは、シミュレート対象の実機を参照して当業者が適宜選択する事項でしかない。 さらに、シミュレーション装置の技術分野のみならず、あらゆる技術分野において、機械の用途を変更可能にする際に、機体すなわち艤装部分を交換する形態を採用するか、あるいは、機体すなわち艤装部分の一部を変化させる形態を採用するかという選択は、当業者が用途の要請に応じて適宜に採用する選択であって、どちらの形態を採用するかは、設計上の微差に属するというべきである。 してみれば、相違点2に係る構成の前段のごとくに「着座部を交換可能」となし、加えて、同構成後段のごとくに「左手操作レバーを、クラッチレバーとしての使用形態と後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態とで変更可能」とする構成を採用することは、当業者であれば容易に想到し得る程度のことであって、格別なこととはいえない。 3-4 請求人の主張について なお、審判請求書を補正する平成18年1月30日付け手続補正書において、請求人は、以下のように主張しているので、これらについて付加的に検討しておく。 「新請求項1に係る本願発明は、1つの部品に2つの異なる機能を設け、これを使用目的に合わせて切り換えてシミュレートできるようにしたものであって、具体的には、二輪車のシミュレータにおいて、左手操作レバーを、シミュレートする二輪車の種類によってクラッチレバーとブレーキレバーとで切り換えて使用できるようにすることによって、複数種類の自動二輪車のシミュレートを可能にするものです。」 「なお、審査官殿は、自動二輪車に、左手操作レバーを、クラッチレバーとして使用する車種と後輪ブレーキ用レバーとして使用する車種があることは、広く一般的に知られている、と述べておられますが、1台の自動二輪車において、左手操作レバーが、クラッチとブレーキの機能を切り換えて共用されているものは存在いたしません。」 「請求項1に係る本願発明が示す「操作者の着座部を交換可能とすると共に、左手操作レバーを、クラッチレバーとしての使用形態と後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態とで変更可能とした」という構成は、引用文献1、参考文献1及び2、並びに拒絶査定の理由に記載された公報(特開平10-198264号公報、特開平10-318358号公報、特開2000-157719号公報)には記載がなく、それを示唆する記述もありません。従って、引用文献1、参考文献1及び2からは、本願発明が示す効果、「二輪車のシミュレータにおいて、左手操作レバーを、シミュレートする二輪車の種類によってクラッチレバーとブレーキレバーとで切り換えて使用できるようにすることによって、複数種類の自動二輪車のシミュレートを可能にする」という効果を予測することはできません。」 本願発明に係る請求項1には、「操作者の着座部を交換可能とすると共に、左手操作レバーを、クラッチレバーとしての使用形態と後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態とで変更可能とした」なる特定が記載されており、請求人が主張しているのは、このうちの後者であるレバー構成に係るものである。 確かに、当該請求項1には、「左手操作レバーを、クラッチレバーとしての使用形態と後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態とで変更可能とした」なる記載があり、当該使用形態を変更可能とするものには、「1つの部品に2つの異なる機能を設け、これを使用目的に合わせて切り換えてシミュレートできる」形態が含まれていることは認める。 しかしながら、当該記載により特定される内容は、この「1つの部品に2つの異なる機能を設け」ることのみならず、「左手操作レバー」を「変更可能」とするのであるから、「そっくり取り換える」こと、「一部分のみを取り換える」こと等、各種の形態が包含されていると解される。 本願に係る手続補正の経緯を参照するに、ここで検討している「左手操作レバー」を「変更可能」とする態様に係る記載は、当初明細書においては、特許請求の範囲には存在せず、段落【0028】に「なお、原付においては、大型二輪車や中型二輪車で使用していた図示しないクラッチレバー(左手操作レバー)を、後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態に変更してもよい。」とされるのみであった。 しかしながら、平成17年7月13日付け手続補正により、段落【0008】に「さらに、前記模擬二輪車の左手操作レバーを、クラッチレバーとしての使用形態と後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態で変更可能としてもよい。」なる追加記載がされ、最終的に、平成17年10月5日付け手続補正により、現在の請求項1に係る特定として特許請求の範囲に「左手操作レバーを、クラッチレバーとしての使用形態と後輪ブレーキ用レバーとしての使用形態とで変更可能とした」なる特定がなされたのである。 したがって、当該特定を行った実施の態様は何ら当初の本願明細書に提示はされておらず、単に文言上、使用形態の変更可能性が示唆されているのみのである。 してみるに、具体的態様の提示もなく、単なる示唆に過ぎず、さらには、実現する形態として主張される「1つの部品に2つの異なる機能を設け」る以外の各種の形態も含まれると解さざるを得ない記載をもって、殊更に、引用文献と相違するとの主張は、本願明細書の記載に裏付けられたものとはいえず、請求人の主張は採用できない。 また、「1台の自動二輪車において、左手操作レバーが、クラッチとブレーキの機能を切り換えて共用されているものは存在いたしません。」との指摘についても、本願発明或いは引用発明がシミュレーション装置である前提を忘れた主張であって、妥当なものではなく採用できない。 3-5 まとめ 以上に検討したとおりであるから、相違点は当業者が容易に想到し得る程度のことであって、本願発明は、引用発明と周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、その作用効果も当業者が容易に推察可能なものでしかない。 すなわち、本願発明は引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-07 |
結審通知日 | 2008-11-11 |
審決日 | 2008-11-25 |
出願番号 | 特願2001-117466(P2001-117466) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大山 栄成 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
菅野 芳男 湯本 照基 |
発明の名称 | 二輪車のライディングシミュレーション装置 |
代理人 | 千葉 剛宏 |
代理人 | 宮寺 利幸 |
代理人 | 佐藤 辰彦 |