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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1190346
審判番号 不服2006-21947  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-28 
確定日 2009-01-08 
事件の表示 特願2003- 24281「半導体装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日出願公開、特開2004-235548〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年1月31日に出願したものであって、平成18年4月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月26日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、同年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

そして、本願の請求項1?17に係る発明は、平成18年6月26日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 半導体基板と、該半導体基板の上部に形成された梯子型水素化シロキサンからなる第一の絶縁膜と、該絶縁膜上に接して設けられた酸素を構成元素として含む第二の絶縁膜とを備えることを特徴とする半導体装置。」


2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-87332号公報(以下、「引用例1」という。)、特開2001-345317号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)引用例1:特開平11-87332号公報
(1a)
「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項2】 半導体基板上に第1の金属配線を形成する工程と、
その上部にSOGを塗布、焼成する工程と、
その上に無機絶縁膜を形成する工程と、
・・・を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】 前記SOGが水素化シルセスキオキサン・・・のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。」
(1b)
「【0002】
【従来の技術】近年、半導体集積回路は、微細化が進んでおり、特に論理回路においての多層配線では、その傾向が顕著に見うけられる。多層配線のメタル配線間隔が、微細になってくると、メタル配線間に発生するクロストーク(配線信号が隣の配線にのってしまう現象)の問題が起こってくる。その防止対策としては、配線間絶縁膜に低誘電率の絶縁膜を使用すると効果があり、種々な低誘電率材料のデバイスへの試行が報告されている。
【0003】その中で、無機膜で低誘電率化が可能なHSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)ポリマーが注目されている。」
(1c)
「【0016】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の最良の形態は、第0のP-SiO_(2)膜101上の第1のメタル102上に第1のP-SiO_(2)膜103が500?1000Å形成されており、その上にHSQ焼成膜104が塗布形成されている。その上に第2のP-SiO_(2)膜105が形成され、CMPにて平坦化されている。」
(1d)
「【0021】
【実施例】次に本発明の実施例について図2を参照して詳細に説明する。図2において、本発明の第1の実施例は、第0のP-SiO_(2)膜201上に第1のメタル202を形成した後(図2(a))、その上にTEOS、O_(2)によるプラズマCVD法で第1のP-SiO_(2)膜203を形成する。さらに、MIBK(メチルイソブチルケトン)を溶媒とするHSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)を約3000rpmの回転で塗布し、150℃、200℃、350℃のN_(2)雰囲気でのベークを行う。その後、縦型炉を使用してN_(2)雰囲気中で400℃の温度でキュアを約60分施工して約4000ÅのHSQ焼成膜204を形成し、その上にTEOS、O_(2)によりP-CVD法で第2のP-SiO_(2)膜205を約14000Å形成し、CMP法によりメタルの上の膜厚が8000Å程度になるよう研磨を行う(図2(b))。」

(2)引用例2:特開2001-345317号公報号公報
(2a)
【0002】
【従来の技術】半導体集積回路装置の高集積化及び処理速度の向上が要望されている。半導体集積回路装置内の信号伝搬速度は、配線抵抗と、配線間の寄生容量によって制約される。半導体集積回路装置の高集積化によって配線幅及び配線間隔が狭くなり、配線抵抗が増大するとともに、寄生容量も大きくなってきている。配線を薄くすることによって寄生容量を小さくすることはできるが、これによって配線抵抗が増大してしまうため、信号伝搬速度の向上には繋がらない。信号伝搬速度を速めるために、層間絶縁膜の低誘電率化が有効である。
・・・
【0004】低誘電率材料として、Si-H結合を含むシロキサン樹脂や、シロキサン樹脂を多孔質化した樹脂等が注目されている。」
(2b)
「【0096】・・・拡散防止膜60の上に、下層の低誘電率被膜材料であるシロキサン樹脂溶液をスピンコートする。・・・
【0097】下層の低誘電率被膜61の上に、上層の低誘電率被膜材料であるシロキサン樹脂溶液をスピンコートし、溶剤を乾燥させ、アニールを行い、厚さ400nmの上層の低誘電率被膜63を形成する。溶剤の乾燥、及びアニールの条件は、下層の低誘電率被膜61を形成する時の条件と同一である。
【0098】低誘電率被膜63の上に、・・・酸化シリコンからなる厚さ50nmのキャップ層64を形成する。
・・・
【0105】上層の低誘電率被膜材料として、・・・ラダー型の樹脂として、水素シルセスキオキサン、・・・フッ素含有水素シルセスキオキサン等が挙げられる。」


3.当審の判断
(1)引用例1に記載された発明
摘記事項(1a)の請求項2には、半導体基板の上部にSOGを塗布、焼成する工程と、その上に無機絶縁膜を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が記載されているから、そのような方法によって製造された、半導体基板の上部にSOGが塗布、焼成され、その上に無機絶縁膜が形成された半導体装置が記載されているといえる。
摘記事項(1a)の請求項3には、上記SOGが水素化シルセスキオキサンであることが理解できる。
摘記事項(1c)乃至(1d)には、HSQ(水素化シルセスキオキサン)焼成膜の上に第2のP-SiO_(2)膜が形成されることが記載されているから、上記SOG膜の上に形成された無機絶縁膜は、P-SiO_(2)膜であることが理解できる。

これらを考慮して、摘示(1a)?摘示(1d)の記載を総合すると、引用例1には、次の「半導体装置」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体基板の上部に水素化シルセスキオキサンからなるSOG膜が塗布、焼成され、その上に、P-SiO_(2)膜である無機絶縁膜が形成された半導体装置」

(2)本願発明1と引用例1発明との対比
本願発明1と引用例1発明を対比すると、引用例1発明における「P-SiO_(2)膜である無機絶縁膜」は、本願発明1における「酸素を構成元素として含む第二の絶縁膜」に相当し、以下同様に、「塗布、焼成」は、「形成」に相当する。
また、水素化シルセスキオキサンは水素化シロキサンの一種であるから、引用例1発明における「水素化シルセスキオキサンからなるSOG膜」は、本願発明1における「水素化シロキサンからなる第一の絶縁膜」に対応する。

そうすると、両者は、
「半導体基板と、該半導体基板の上部に形成された水素化シロキサンからなる第一の絶縁膜と、該絶縁膜上に接して設けられた酸素を構成元素として含む第二の絶縁膜とを備えることを特徴とする半導体装置。」
で一致するが、次の点で相違する。

相違点:本願発明1における水素化シロキサンは、分子構造が梯子型である梯子型水素化シロキサンであるのに対して、引用例1発明における水素化シルセスキオキサンは、どのような分子構造を有するか記載されていない点。

(3)相違点についての検討
引用例1の摘記事項(1b)によれば、引用例1発明において配線間の絶縁膜として水素化シルセスキオキサンを用いる技術的意義は、メタル配線間に発生するクロストークの防止対策として、無機膜で低誘電率化が可能な水素化シルセスキオキサンを採用することにあることが理解できる。
他方、半導体装置において、低誘電率が要求される無機絶縁膜として、梯子型の分子構造を有する水素化シルセスキオキサンのような、梯子型水素化シロキサンを用いることは、引用例2の摘記事項(2a)乃至(2b)のほか、下記周知例1?3にも記載されているように本願出願前に周知の技術事項と認められるから、引用例1発明における水素化シロキサンを、低誘電率の無機絶縁膜として周知の梯子型水素化シロキサンとすることは、当業者が容易に想到し得るものといえる。

そして、本願発明1の奏する効果も、引用例1の記載及び上記周知技術から予測できないような格別に顕著なものとは認められない。

したがって、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

周知例1:特開2000-277606号公報
(周1a)
「【0026】図4は、本発明の第二の実施態様の工程説明図であり、装置断面図を工程順に沿って示したものである。
【0027】・・・シリコン基板上にMOS型トランジスタを形成後、・・・プラズマCVD酸化膜を・・・形成する。・・・続いて、シリコン窒化膜を・・・形成・・・する。
【0028】続いて、・・・ジメチルアリールエーテル絶縁膜を被着形成する。・・・続いて、このジメチルアリールエーテル絶縁膜の表面にシリコン窒化膜を・・・形成する。
・・・
【0030】・・・続いて、以上形成された構造の表面全面に再びジメチルアリールエーテル絶縁膜を被着形成する。・・・さらに、この後、HSQ膜をも重ねて全面に被着形成する。
・・・
【0032】さらにこの後、表面全面にTaN(窒化タンタル)膜を薄く被着形成する。・・・
【0033】TaN(窒化タンタル)膜全面に薄く銅をスパッタリング形成し、続いて、電解めっきを施して・・・十分厚く形成する。・・・
【0034】十分に厚く形成された銅の表面から少しづつCMP(化学機械的研磨)法を使用して・・・除去する。」
(周1b)
「【0040】・・・プロセスの容易性等から、上層絶縁膜を無機絶縁膜で構成する場合にはラダー型シロキサンを用いることが好ましい。ラダー型シロキサンは、無機膜の中でも誘電率が3.0と比較的低いうえに、分子中に構造欠陥がない分吸水性が少ないので、プロセス途中での脱ガスが起こりにくく好適なのである。」

周知例2:特開平9-219448号公報
(周2a)
「【0002】
【従来の技術】従来、低誘電率の層間絶縁膜の形成方法としては、・・・シロキサンポリマーの溶液を半導体基板に塗布した後、熱処理して形成する方法・・・等が知られている。
・・・
【0005】・・・シロキサンポリマーの溶液により層間絶縁膜を形成する方法においては、層間絶縁膜の比誘電率は2.5程度であってフッ素化シリカゾルの溶液により形成した層間絶縁膜の比誘電率よりも低い・・・。」
(周2b)
「【0052】(第2の実施形態)第2の実施形態としては、ラダー型シロキサンポリマーの溶液とシリカゾルの溶液とを混合して混合液を得た後、該混合液を下層の金属配線層が形成された半導体基板に塗布し、塗布された混合液を熱処理して層間絶縁膜を形成するものである。」
(周2c)
「【0080】尚、ラダー型シロキサンポリマーとして、・・・水素-シリコン結合を有するシロキサンポリマー・・・を用いてもよい。」

周知例3:特開平10-279687号公報
(周3a)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・本発明の目的は、低比誘電率、即ち、比誘電率が2.7未満の電気絶縁性薄膜を形成し得る電気絶縁性薄膜形成用組成物および電気絶縁性薄膜の形成方法を提供することにある。」
(周3b)
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の電気絶縁性薄膜形成用組成物は(A)電気絶縁性・硬化性の有機樹脂と、・・・溶剤からなる・・・電気絶縁薄膜形成用組成物に関する。
【0005】・・・本発明に使用される(A)成分の樹脂は、・・・水素シルセスキオキサン樹脂が特に好ましい。本発明に使用される水素シルセスキオキサン樹脂は、式:HSiO_(3/2)で示される3官能性シロキサン単位を主骨格とするポリシロキサンであり、一般式:(HSiO_(3/2))n(式中、nは整数である。)で表されるポリマーである。かかる、水素シルセスキオキサン樹脂はその分子構造によりラダー型と呼ばれるポリシロキサンとケージ型と呼ばれるポリシロキサンがあ・・・る。」


4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-06 
結審通知日 2008-11-11 
審決日 2008-11-26 
出願番号 特願2003-24281(P2003-24281)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 市川 裕司
國方 康伸
発明の名称 半導体装置およびその製造方法  
代理人 浜田 満広  

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