• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1190351
審判番号 不服2006-25710  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-15 
確定日 2009-01-08 
事件の表示 平成 9年特許願第116577号「通気性袋」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月 4日出願公開、特開平10-291546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成9年4月18日の出願であって、平成18年9月22日付けでなされた拒絶査定に対し、これを不服として平成18年11月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年11月15日付けで明細書を対象とする手続補正書が提出されたものである。

第2 平成18年11月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成18年11月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1.本件補正
本件補正は、平成18年3月13日付けの手続補正書により補正された明細書をさらに補正するものであり、特許請求の範囲についての補正は、請求項1を削除し、補正前の請求項2に記載されていた、
「【請求項2】 内面が熱接着性樹脂層からなる四角形状の非通気性の積層フィルムの相対向する両端縁を所定寸法だけ重ね合わせ筒状とした状態で、その重ね合わせ部の内側にテープ状通気性基材を重ね合わせ、前記熱接着性樹脂層面と前記テープ状通気性基材面とを、前記テープ状通気性基材の巾方向における両側端部に形成された側端接着部と該側端接着部間に間欠的に複数形成された横接着部とからなる梯子状接着部により接着形成すると共に、上下端縁部を熱接着して形成され、前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と、前記先端部分と対向する前記積層フィルムの表面とが、前記横接着部に対応する位置にて部分的に接着された構成からなることを特徴とする通気性袋。」
を、補正後の請求項1に繰り上げて、さらに、
「【請求項1】 内面が熱可塑性樹脂層からなる四角形状の非通気性の積層フィルムの相対向する両端縁を所定寸法だけ重ね合わせ筒状とした状態で、その重ね合わせ部の内側にテープ状通気性基材を重ね合わせ、前記熱可塑性樹脂層面と前記テープ状通気性基材面とを、前記テープ状通気性基材の巾方向における両側端部に沿って縦方向に形成された側端接着部と、該側端接着部間に間欠的に横方向に複数形成された接着部であって、該接着部においては、前記重ね合わせ部で上側に端縁部が位置する前記積層フィルムの熱可塑性樹脂層面が少なくともテープ状通気性基材面に接着されている横接着部とからなる梯子状接着部により接着形成すると共に、上下端縁部を熱接着して形成され、前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と対向する前記積層フィルムの表面に熱接着性樹脂層が予め形成され、前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と、前記先端部分と対向する前記積層フィルムの表面とが、前記横接着部に対応する位置にて部分的に接着された構成からなることを特徴とする通気性袋。」
と補正している。
そして、補正前の請求項3に記載されていた、
「【請求項3】 前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と対向する前記積層フィルムの表面に熱接着性樹脂層が予め形成され、前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分が前記側端接着部より内側に後退した位置に設けられていることを特徴とする請求項2記載の通気性袋。」
を、補正後の請求項2に繰り上げて、さらに、
「【請求項2】 前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分が前記側端接着部より内側に後退した位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の通気性袋。」
と補正している。

補正後の請求項1は、補正前の請求項2に記載された梯子状接着部を「前記テープ状通気性基材の巾方向における両側端部に沿って縦方向に形成された側端接着部と、該側端接着部間に間欠的に横方向に複数形成された接着部であって、該接着部においては、前記重ね合わせ部で上側に端縁部が位置する前記積層フィルムの熱可塑性樹脂層面が少なくともテープ状通気性基材面に接着されている横接着部とからなる」とすることより、梯子状接着部の側端接着部と横接着部の縦横関係を明確にするとともに、梯子状接着部の横接着部が、上側に端縁部が位置する積層フィルムとテープ状通気性基材とを接着させるものであることを限定するものである。
さらに、補正後の請求項1の「前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と対向する前記積層フィルムの表面に熱接着性樹脂層が予め形成」することを追加する補正は、補正前の請求項2に記載された「前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と、前記先端部分と対向する前記積層フィルムの表面とが、前記横接着部に対応する位置にて部分的に接着された構成」の接着構造をより具体的に限定するものである。
したがって、この補正は、補正前の請求項2に記載されていた発明を特定するために必要な事項をさらに限定する補正を含んでいるとともに、願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、この補正により、産業上の利用分野や解決しようとする課題に変更が生じないことは明白であるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について次に検討する。

2.本願補正発明
本件補正後の本願の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書(本願補正明細書)という。)及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-2490号公報(以下、「第1引用文献」という。)、実願平3-59503号(実開平5-13953号)のCD-ROM(以下、「第2引用文献」という。)、実願昭47-63777号(実開昭49-23315号)のマイクロフィルム(以下、「第3引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

<第1引用文献>
(a)「1は酸化防止を目的としてバリヤー性を得るために塩化ビニリデンによる被膜層2をポリエチレンテレフタレートやナイロン、ポリプロピレンなどからなるフィルム層3の内面に設け、前記被膜層2の内面にポリエチレンのフィルム層4を設けてなる素材により作られた収納袋本体であり、この収納袋本体1は1枚の素材を筒状に湾曲させて端部5,5同士を完全に突き合わせずに端部5,5間にスリット状の間隔をあけて通気路6を形成し、前記端部5,5を繋ぐべく収納袋本体1の内側において通気性を有するテープ状のシート7を位置させ、このシート7の幅方向両端と前記端部5,5との重なり部をヒートシールにより接合させている。・・・なお、前記筒状の収納袋本体1の内部には味噌など呼吸によりガスを発生する内容物が収納され、筒状の長さ方向端部はヒートシールにより閉じられている。」(段落【0007】)
(b)「そこでこのような収納袋内部への酸素の流入をできるだけ少なくするために、図5および図6に示す第2の実施の形態のように、前記素材の端部5,5にそれぞれ連なり前記通気路6の外側で互いに重なる覆い片5a,5aを設けておくことも可能である。この覆い片5a,5aの一方は通気路6の外側に重なり、他方は一方の覆い片5aの外側に重なって、2枚の覆い片5a,5aにより前記通気路6の内部への空気の流入を少なくしている。さらに詳しくは、通気路6の外側に重なる一方の覆い片5aは通気路6の長さ方向適所において前記シート7の不織布層9に熱接着されているが、不織布層9の全面に対しては熱接着されていない。10は熱接着部である。なお、他方の覆い片5aの一方の覆い片5aの外側に対して熱接着されていない。」(段落【0012】)
(c)「収納袋内部への酸素の流入をできるだけ少なくして内容物の品質の低下を抑えるために、図7および図8に示す第3の実施の形態のように、前記素材の端部5,5にそれぞれ連なり前記通気路6の外側で合掌状態で互いに重なる覆い片5b,5bを設けておくことも可能である。この覆い片5b,5bは通気路6の長さ方向適所において前記シート7の不織布層9に熱接着されているが、不織布層9の全面に対しては熱接着されていない。11は熱接着部である。そして、通気路6の幅方向中央で合掌状態で互いに重なる覆い片5b,5bは前記熱接着部11の位置で熱接着されている。12は熱接着部である。」(段落【0013】)
また、図面の第7図の記載から熱接着部11と熱接着部12は対応する箇所にあるものと認められる。

ここで、第1引用文献の上記(a)は第1の実施の形態として記載されているものであり、(b)は第2の実施の形態として記載されているものであるが、上記(a)の構成は第2の実施の形態にも採用されていることはその構成上明らかであるから、第1引用文献には、次の発明(以下、「引用発明(1A)」という。)が記載されているものと認められる。
引用発明(1A)
「被膜層2をポリエチレンテレフタレートやナイロン、ポリプロピレンなどからなるフィルム層3の内面に設け、前記被膜層2の内面にポリエチレンのフィルム層4を設けてなる素材の相対向する両端部5,5間に通気路6を形成するとともに、この両端部5、5にそれぞれ覆い片5a,5aを設け、一方の覆い片5aを通気路6の外側に重ならせ、他方の覆い片5aを一方の覆い片5aに重ね合わせ筒状とした状態で、その重ね合わせ部の内側に通気性を有するテープ状のシート7を重ね合わせ、前記ポリエチレンのフィルム層4とテープ状のシート7とを、前記テープ状のシート7の幅方向両端と前記両端部5、5との重なり部をヒートシールにより接合させた接合部と、前記通気路6の長さ方向の適所に形成された熱接着部10であって、この熱接着部10においては、通気路6の外側に連なる一方の覆い片5aが前記テープ状のシート7に接着されている熱接着部とからなる接着部10により接着形成され、筒状の長さ方向端部はヒートシールにより閉じられた収納袋。」

また、第1引用文献には第3の実施の態様として上記(c)の構成が開示されているから、第1引用文献は、さらに、次の発明(以下、「引用発明(1B)」という。)が記載されているものと認められる。
引用発明(1B)
「素材の端部5,5にそれぞれ連なり前記通気路6の外側で合掌状態で互いに重なる覆い片5b,5bを設け、この覆い片5b,5bは通気路6の長さ方向適所において前記シート7の不織布層9に熱接着させるとともに、覆い片5b、5bとシート7の熱接着部11と覆い片5b、5b同士の熱接着部12を対応する箇所に設けられた収納袋。」

<第2引用文献>
(d)「なお、上記実施例において、不織布3の全面を覆っている非通気性の包材シート2が運搬中等に捲り上がってしまわない様に、該包材シート2の端部近傍と不織布3もしくは包材シート2の他方の端部近傍とを部分的に熱接着するように構成してもよい。」(段落【0017】)

<第3引用文献>
(e)「・・・14はカール防止のための予備点熱接着部である。」(第4ページ第9?10行)
また、図面1に、この予備点熱接着部14が上部の側縁端6と下部の側縁端10の間に設けられることが記載されていること、及び、予備点熱接着部14がカール防止を目的とするものであることから、上部の側縁端6の先端部分と、先端部分と対向する下部の側縁端10の表面とが、部分的に接着される構成が開示されていると認められる。

4.対比
本願補正発明と引用発明(1A)とを対比する。
引用発明(1A)の「素材」を構成する、「フィルム層4」は、ポリエチレンであり、また、ポリエチレンは本願補正明細書の段落【0011】に「低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等からなる熱可塑性樹脂フイルムとの積層体が使用される。」と記載されていることからも明らかなように、熱可塑性樹脂である。また、引用発明(1A)の収納袋本体1が四角形状のものから形成されることは明らかであり、かつ、収納袋本体1は通気のためにシート7を設けているから、引用発明(1A)の「素材」が四角形状の非通気性であることは明らかである。してみれば、引用発明(1A)の「素材」は本願補正発明の「非通気性の積層フィルム」に相当する。
また、引用発明(1A)の「シート7」は通気性を有するものであるから、本願補正発明の「テープ状通気性基材」に相当する。
また、引用発明(1A)の、シート7の幅方向両端と端部5,5との重なり部をヒートシールにより接合した部分が、本願補正発明の「側端接着部」に、また、引用発明(1A)の、通気路6の外側に重なる一方の覆い片5aが通気路6の長さ方向適所において前記シート7の不織布層9に熱接着されている部分が、本願補正発明の「間欠的に横方向に複数形成された接着部」にそれぞれ相当する。
すると、本願補正発明と引用発明(1A)との両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「内面が熱可塑性樹脂層からなる四角形状の非通気性の積層フィルムの相対向する両端縁を所定寸法だけ重ね合わせ筒状とした状態で、その重ね合わせ部の内側にテープ状通気性基材を重ね合わせ、前記熱可塑性樹脂層面と前記テープ状通気性基材面とを、前記テープ状通気性基材の巾方向における両側端部に沿って縦方向に形成された側端接着部と、該側端接着部間に間欠的に横方向に複数形成された接着部により接着形成すると共に、上下端縁部を熱接着して形成された通気性袋。」
【相違点1】
本願補正発明では、接着部においては、重ね合わせ部で上側に端縁部が位置する前記積層フィルムの熱可塑性樹脂層面が少なくともテープ状通気性基材面に接着されている横接着部となっているのに対し、引用発明(1A)では、通気路6の外側に重なる一方の覆い片5aがテープ状のシール7に接着されている点。
【相違点2】
本願補正発明では、側端接着部と横接着部により梯子状接着部を構成しているのに対し、引用発明(1A)では、本願補正発明1の側端接着部、横方向に複数形成された接着部に相当する構成を有しているものの、これらが梯子状となっているか否か明確でない点。
【相違点3】
本願補正発明では、積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と対向する積層フィルムの表面に熱接着性樹脂層が予め形成され、積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と、先端部分と対向する前記積層フィルムの表面とが、横接着部に対応する位置にて部分的に接着された構成を有しているのに対し、引用発明(1A)はそのような構成を有しない点。

5.判断
そこで、相違点1?3について検討する。
(1)相違点1について
引用発明(1A)には、上記相違点1の構成を有しない。しかし、引用発明(1B)に、覆い片5b,5bを通気路6の長さ方向適所においてシート7の不織布層9に熱接着させることが記載されているから、接着部においては、重ね合わせ部で上側に端縁部が位置する覆い片5bが少なくともシート7に接着されていると認められる。そして、引用発明(1A)と引用発明(1B)はそれぞれ別の実施の形態として記載されているものであるが、いずれも収納袋という同一の技術分野に属するものであり、相互の構成要素を必要に応じて採用し得るものであることは明らかであるから、引用発明(1B)の上記構成を、引用発明(1A)に適用し、上側に端縁部が位置する覆い片5aがシート7に接着されるようにすることは、これを妨げる特段の事情も見当たらず、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
引用発明(1A)の側端接着部、接着部が全体として梯子状の接着部を構成することは明記されていないが、このような構成とすることは接着部分の配置の好適化にすぎず当業者であれば容易に想到し得たものである。

(3)相違点3について
引用発明(1A)には、上記相違点3の構成を有していない。しかし、第2引用文献に、包材シート2の端部近傍と包材シート2の他方の端部近傍とを部分的に熱接着すること、また、第3引用文献に、上部の側縁端6の先端部分と、先端部分と対向する下部の側縁端10の表面とが、部分的に接着される構成が開示されている。そして、袋において端縁の重ね合わせ部が捲れ上がらないようにしようとすることは、本願出願前より広く知られた技術的課題であるから、第2、第3引用文献の上記構成を引用発明(1A)に適用し、他方の覆い片5aの側端縁を一方の覆い片5aの表面に接着するようにすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、引用発明(1A)は、他方の覆い片5aに熱接着性樹脂であるフィルム4が設けられているのみであり、一方の覆い片5aの表面に熱接着性樹脂層を有していないが、フィルム同士を接着する際に一方のフィルムにのみ熱接着性樹脂層を設けるか、また、対向するフィルムの両方に熱接着性樹脂層を設けるかは当業者が必要に応じて選択し得るものであり、引用発明(1A)に第2、第3引用文献の上記構成を適用するに際し、一方の覆い片5aの表面に予め熱接着性樹脂層を設けるようにすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
さらに、本願補正発明のものは、上側の端縁部の先端部分と、先端部分と対向する表面とが、横接着部に対応する位置にて部分的に接着されるものであるが、接着位置をどのような位置にするかは当業者が必要に応じて決定すべきことであり、また、引用発明(1B)に、覆い片5b、5bとシート7の熱接着部11と覆い片5b、5b同士の熱接着部12を対応する箇所に設ける構成が開示されているように、複数の接着部を対応させた位置に設けることは当業者であれば適宜なし得ることである。
してみれば、引用発明(1A)に、第2、第3引用文献の上記構成を適用し、他方の覆い片5aの側端縁を一方の覆い片5aの表面に接着するに際し、その接着位置を横方向の接着部と対応させて位置させることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、請求人は、「また、「積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と対向する前記積層フィルムの表面に熱接着性樹脂層が予め形成され」ていて、かかる熱接着性樹脂層を形成しておくことにより、横接着部のヒートプレスを行えば、同時に部分的な熱接着も形成できるので、製造効率が良いという効果も奏します。」と、本願補正発明の効果を主張している。しかし、そもそも本願の発明の詳細な説明にはそのような効果に関する記載はなく、また、当該効果は、ヒートプレスをどのように行うかを具体的にすることにより初めてもたらされるものであるが、そのようなヒートプレスに関する具体的な記載もない。したがって、請求人が主張している効果は明細書の記載に基づかないものである。また、たとえ、そのような効果があるとしても接着を効率良く行うということは通常に考慮すべきことであり、同時に接着可能な箇所を同時に接着することも特別なものではないから、当該効果は進歩性を推認し得るほどのものではない。

6.補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成18年11月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」、「本願発明3」という。)は、平成18年3月13日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されて事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 内面が熱接着性樹脂層からなる四角形状の非通気性の積層フィルムの相対向する両端縁を突き合わせ筒状とした状態で、その突き合わせ部の内側にテープ状通気性基材を重ね合わせ、前記熱接着性樹脂層面と前記テープ状通気性基材面とを、前記テープ状通気性基材の巾方向における両側端部に形成された側端接着部と該側端接着部間に間欠的に複数形成された横接着部とからなる梯子状接着部により接着形成すると共に、上下端縁部を熱接着して形成された構成からなることを特徴とする通気性袋。
【請求項2】 内面が熱接着性樹脂層からなる四角形状の非通気性の積層フィルムの相対向する両端縁を所定寸法だけ重ね合わせ筒状とした状態で、その重ね合わせ部の内側にテープ状通気性基材を重ね合わせ、前記熱接着性樹脂層面と前記テープ状通気性基材面とを、前記テープ状通気性基材の巾方向における両側端部に形成された側端接着部と該側端接着部間に間欠的に複数形成された横接着部とからなる梯子状接着部により接着形成すると共に、上下端縁部を熱接着して形成され、前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と、前記先端部分と対向する前記積層フィルムの表面とが、前記横接着部に対応する位置にて部分的に接着された構成からなることを特徴とする通気性袋。
【請求項3】 前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分と対向する前記積層フィルムの表面に熱接着性樹脂層が予め形成され、前記積層フィルムの重ね合わされた上側の端縁部の先端部分が前記側端接着部より内側に後退した位置に設けられていることを特徴とする請求項2記載の通気性袋。」

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載(以下、「引用発明」という。)は、上記第2、【理由】、「3.引用文献」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明2は、上記第2、【理由】、「2.本願補正発明」に記載した本願補正発明から、側端接着部と横接着部の縦横関係の特定と、梯子状接着部の横接着部が上側に端縁部が位置する積層フィルムとテープ状通気性基材とを接着させものであるという特定を省いたものであり、他の構成については、本願補正発明と差違がない。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要素を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2、【理由】、「4.対比」、及び、「5.判断」で検討したように、引用発明(1A)、(1B)、第2、第3引用文献に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明2も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明2は、引用発明(1A)、(1B)及び第2、3引用文献に基づき当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-17 
結審通知日 2008-10-20 
審決日 2008-11-27 
出願番号 特願平9-116577
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳田 利夫  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 熊倉 強
村上 聡
発明の名称 通気性袋  
代理人 金山 聡  
代理人 土井 育郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ